テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

スイート・チャリティ

2007-10-05 | ミュージカル
(1969/ボブ・フォッシー監督/シャーリー・マクレーン、ジョン・マクマーティン、リカルド・モンタルバン、チタ・リヴェラ、サミー・デイヴィス・Jr、バーバラ・ブーシェ、バッド・コート/147分)


 先日ご紹介したイタリア映画、「カビリアの夜」をアメリカにもってきて、ミュージカルでリメイクしたのがこの「スイート・チャリティ【原題:Sweet Charity】」であります。実はこちらを観たくって、それでは元ネタの「カビリア」も観なくてはと一緒にレンタルしたのでした。

 allcinema-ONLINEで、<20世紀のミュージカル史上最大の振付&演出家>と紹介されているボブ・フォッシーの、劇場用映画初監督作品で、確かに初々しいというか、実験的な試みをしている所がありました。
 例えば、ヒロインと恋人がデートをする場面で、カップルの静止画像を使い、楽しそうなBGMに乗せてカメラが止まっている二人の映像をなぞっていくという手法。その静止画像から次のシーンが始まる時に、止まっていた登場人物が動き出すという映像も幾つかありました。
 二人が初めて出逢うのが故障で急停止するエレベーターの中で、スクリーン中央にエレベーターだけを写して回りを真っ暗にするという映像もあり、この映画が最初かどうかは知りませんが印象に残りました。

 さて、「カビリアの夜」が元ネタといっても、実は(“実は”が多い!)その前に、この話は舞台のミュージカルになっておりまして、フォッシーは舞台の監督でもあったわけです。
 舞台化のシナリオはニール・サイモン。67年「裸足で散歩」、68年「おかしな二人」、70年「おかしな夫婦」と乗りに乗っている時期の作品ですが、映画のシナリオは(サイモンさんが忙しかったからでしょうか)、ピーター・ストーンという人が書いています。ネットで調べると、ストーンは「シャレード(1963)」の原作者兼シナリオライターでした。

 マクレーン扮するヒロインは、娼婦ではなくダンスホールのホステス。職業柄、そちらの経験も豊富で、後半に登場する真面目男(マクマーティン)に自分の仕事を素直に告白できないでいるところは、カビリアと同じでした。冒頭での前の恋人との別れ、映画スター(モンタルバン)とのめぐり逢いと一夜のデートなども一緒。後半の恋人との関係だけがカビリアとは少し違っていて、さすがにミュージカルですから、カビリアのように残酷には出来なかった模様です。

 切ない男と女の気持ちのすれ違い、思い違い、勘違い・・・。特典映像では、別バージョンのラスト・シーンが収録されていて、それはそれで納得できる結末でした。要するに、男と女の話なんてどうにでもなる、という事でしょうか。(笑)

 日本でも舞台ミュージカルで幾度か上演されているようですが、確かに何曲かは聞き覚えがありました。
 ただ、どうなんでしょう。ストーリーとは直接繋がっていない、例えば映画スターとのデートで行った、ナイトクラブでの歌や踊りにミュージカル・シーンをもってくるというのは。「ウエスト・サイド」などでは、歌も踊りも登場人物の紹介や、ストーリーの一部になっていたのに比べると、回り道のような気がしましたね。
 ついでに言いますと、フォッシー原作の「シカゴ」のナイトクラブの部分は、登場人物の紹介や内面の描写になっているので、その点は問題ないと思っています。

 スタイルが良いシャーリーなので、ジュリエッタのようなおかしみは出ないですが、終盤の彼女の演技には泣かされる人もいるでしょう。チャリティの正式名が、“チャリティ・ホープ・バレンタイン(Charity Hope Valentine)”というのは笑えます。
 全体の調子はフォッシーにしては明るめ、3年後のオスカーを獲った「キャバレー(1972)」の哀愁を帯びた雰囲気の方が似合ってる感じがしましたな。

 カメラは「卒業」などの名カメラマン、ロバート・サーティース

 尚、ラストシーンのヒッピーの一人にバッド・コート(「いちご白書(1970)」、「M★A★S★H マッシュ(1970)」)が出ていました。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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