(2002/ニキ・カーロ監督・脚本/ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、ラウィリ・パラテーン、ヴィッキー・ホートン、クリフ・カーティス、グラント・ロア/102分)
過疎化と伝統が失われていく村の現状を憂いたマオリの族長と、伝統を受け継ごうとするも女性であるが故に思いが受け入れられない孫娘との葛藤を描いたニュージーランド映画。
主演の少女が史上最年少の主演オスカー候補になったと話題になった作品だ。
豊かな自然が残っている為、「ラスト・サムライ」や「ロード・オブ・ザ・リング」のロケ地にもなったニュージーランドだが、そのニュージーランドの映画を観るのは多分初めてだ。
ジェーン・カンピオンの「ピアノ・レッスン(1993)」もニュージーランドが舞台であったものの、製作はオーストラリア。但し、どちらも島国ならではの“海”の風景が印象深い。
原題は【Whale Rider】。“クジラ乗り”ですな。
ニュージーランドに初めて来たマオリの偉大なる祖先はクジラの背に乗ってやってきた、という古い言い伝えがあるらしい。
マオリの当地の族長コロ。その息子ポロラニに初めての子供が出来るが、妻は出産後に死亡。生まれた双子の一人(男の子)もすぐに死んでしまう。残された赤ん坊は女の子。代々受け継いできた長の跡継ぎの事のみに関心があるコロに愛想をつかしたポロラニは子供を残して村を出て行く。
ここまでがプロローグ。
その12年後。少女となったその時の赤ん坊が主人公で、この映画での語り手となっている。名前はパイケア。マオリに伝わる“偉大なる祖先”と同じ名だ。
伝統に縛られる父と自由を求める息子の葛藤。家督制度、男尊女卑。そんな古い因習をかたくなに守ろうとする老人コロももう一人の主人公。コロの憂いも映画はしっかりと描いてはいるものの、日本の一般人である私には切実さがそれ程伝わってこないというのが正直なところです。
村を出ていったポロラニに替わってパイケアは祖父母に育てられ、コロにも懐いているしコロも可愛がっている。ヨーロッパでアーティストになったポロラニだが、毎年パイケアの学校の大きな行事には参加しに来ており、今年も約束通りやってきた。
ポロラニに新しい恋人が出来たことが分かり、またしてもコロと一悶着有る。『お前が望むなら、一緒に来ないか?』というポロラニの言葉に、一度は父親と一緒に村を出ようとするパイケアだったが、途中で思いとどまる。
パイケアと別れた後、族長として新しい指導者の育成に専念しようと覚悟していたコロは、その後戻ってきたパイケアを冷たく扱うようになる。
中盤、学校の学習発表会でコロに自分の気持ちを伝えようとパイケアがスピーチをするが、愛するおじいちゃんはアクシデントで来れない。涙をこぼしながらのスピーチが哀しい熱演で、これでケイシャちゃんのオスカーノミネートが決まったのでしょう。
さて、コロに起きたアクシデントとは・・・。
美しく自然を切り取ったカメラはレオン・ナービーという人。水中カメラによるクジラの撮影も出てきます。
ゆったりとした演出で、後半は神がかり的なムードも出てくるので、コロの憂いに理解が示せない人はファンタジーとして観た方が楽しめるかも知れません。
▼(ネタバレ注意)
学習発表会に向かおうとしたコロは浜辺に打ち上げられた沢山のクジラを発見する。
マオリにとってはクジラは神聖な動物なのでしょう。発表会が終わってクジラに気が付いた人々も総出でクジラを助けようとする。パイケアも何とかしようとするが、ここでもコロは『クジラに触るな。』と邪険に扱う。
人々の賢明の作業にも関わらず、クジラは動こうとしない。
徹夜の介護で疲れ果てた村の人々が家路に着こうとした頃、パイケアのお祖母ちゃんがパイケアが居ないことに気付く。そして、さっきまで浜辺に転がっていたクジラ達が海に向かって泳ぎだしたのにも気付く。
沖に向かって進んで行くクジラたち。ひときわ大きなクジラの、その背には・・・。
▲(解除)
マオリ族の内部の話に終始するのでマオリの紹介映画のようにも見えます。ただ、老若男女、村にいる人は誰も仕事をしていないようで、時々現れる大人達も遊び人風だし、どうして生活しているのか気になりました。ニュージーランドの先住民マオリは、オーストラリアのアボリジニとは違って優遇されているようですが。
コロはポロラニに対して、『村の惨状を見過ごすのか・・・』みたいなことを言っていたけど、“惨状”とは何を意味するのでしょうか? 精神的な風土の崩壊を言っているのでしょうか?
主演のケイシャちゃんは1990年生まれ。撮影時は12歳。アカデミー賞にノミネートされた時は13歳でした。「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールスに似たお顔立ちです。「スター・ウォーズ エピソード3(2005)」にも出ているそうですが、そういえばコレ未見でした。お楽しみが一つ増えましたです。
監督のニキ・カーロは、カンピオンと同じく女性で、通常の人間ドラマを描きながら、全体として神話的なムードも出せているのは立派。この後シャリーズ・セロン主演の「スタンドアップ(2005)」を撮っている。コチラは実話が元になっているので、さて如何なもんでしょうか? こちらも女性ならでは視点が気になる映画です。
過疎化と伝統が失われていく村の現状を憂いたマオリの族長と、伝統を受け継ごうとするも女性であるが故に思いが受け入れられない孫娘との葛藤を描いたニュージーランド映画。
主演の少女が史上最年少の主演オスカー候補になったと話題になった作品だ。
豊かな自然が残っている為、「ラスト・サムライ」や「ロード・オブ・ザ・リング」のロケ地にもなったニュージーランドだが、そのニュージーランドの映画を観るのは多分初めてだ。
ジェーン・カンピオンの「ピアノ・レッスン(1993)」もニュージーランドが舞台であったものの、製作はオーストラリア。但し、どちらも島国ならではの“海”の風景が印象深い。
原題は【Whale Rider】。“クジラ乗り”ですな。
ニュージーランドに初めて来たマオリの偉大なる祖先はクジラの背に乗ってやってきた、という古い言い伝えがあるらしい。
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マオリの当地の族長コロ。その息子ポロラニに初めての子供が出来るが、妻は出産後に死亡。生まれた双子の一人(男の子)もすぐに死んでしまう。残された赤ん坊は女の子。代々受け継いできた長の跡継ぎの事のみに関心があるコロに愛想をつかしたポロラニは子供を残して村を出て行く。
ここまでがプロローグ。
その12年後。少女となったその時の赤ん坊が主人公で、この映画での語り手となっている。名前はパイケア。マオリに伝わる“偉大なる祖先”と同じ名だ。
伝統に縛られる父と自由を求める息子の葛藤。家督制度、男尊女卑。そんな古い因習をかたくなに守ろうとする老人コロももう一人の主人公。コロの憂いも映画はしっかりと描いてはいるものの、日本の一般人である私には切実さがそれ程伝わってこないというのが正直なところです。
村を出ていったポロラニに替わってパイケアは祖父母に育てられ、コロにも懐いているしコロも可愛がっている。ヨーロッパでアーティストになったポロラニだが、毎年パイケアの学校の大きな行事には参加しに来ており、今年も約束通りやってきた。
ポロラニに新しい恋人が出来たことが分かり、またしてもコロと一悶着有る。『お前が望むなら、一緒に来ないか?』というポロラニの言葉に、一度は父親と一緒に村を出ようとするパイケアだったが、途中で思いとどまる。
パイケアと別れた後、族長として新しい指導者の育成に専念しようと覚悟していたコロは、その後戻ってきたパイケアを冷たく扱うようになる。
中盤、学校の学習発表会でコロに自分の気持ちを伝えようとパイケアがスピーチをするが、愛するおじいちゃんはアクシデントで来れない。涙をこぼしながらのスピーチが哀しい熱演で、これでケイシャちゃんのオスカーノミネートが決まったのでしょう。
さて、コロに起きたアクシデントとは・・・。
美しく自然を切り取ったカメラはレオン・ナービーという人。水中カメラによるクジラの撮影も出てきます。
ゆったりとした演出で、後半は神がかり的なムードも出てくるので、コロの憂いに理解が示せない人はファンタジーとして観た方が楽しめるかも知れません。
▼(ネタバレ注意)
学習発表会に向かおうとしたコロは浜辺に打ち上げられた沢山のクジラを発見する。
マオリにとってはクジラは神聖な動物なのでしょう。発表会が終わってクジラに気が付いた人々も総出でクジラを助けようとする。パイケアも何とかしようとするが、ここでもコロは『クジラに触るな。』と邪険に扱う。
人々の賢明の作業にも関わらず、クジラは動こうとしない。
徹夜の介護で疲れ果てた村の人々が家路に着こうとした頃、パイケアのお祖母ちゃんがパイケアが居ないことに気付く。そして、さっきまで浜辺に転がっていたクジラ達が海に向かって泳ぎだしたのにも気付く。
沖に向かって進んで行くクジラたち。ひときわ大きなクジラの、その背には・・・。
▲(解除)
マオリ族の内部の話に終始するのでマオリの紹介映画のようにも見えます。ただ、老若男女、村にいる人は誰も仕事をしていないようで、時々現れる大人達も遊び人風だし、どうして生活しているのか気になりました。ニュージーランドの先住民マオリは、オーストラリアのアボリジニとは違って優遇されているようですが。
コロはポロラニに対して、『村の惨状を見過ごすのか・・・』みたいなことを言っていたけど、“惨状”とは何を意味するのでしょうか? 精神的な風土の崩壊を言っているのでしょうか?
主演のケイシャちゃんは1990年生まれ。撮影時は12歳。アカデミー賞にノミネートされた時は13歳でした。「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールスに似たお顔立ちです。「スター・ウォーズ エピソード3(2005)」にも出ているそうですが、そういえばコレ未見でした。お楽しみが一つ増えましたです。
監督のニキ・カーロは、カンピオンと同じく女性で、通常の人間ドラマを描きながら、全体として神話的なムードも出せているのは立派。この後シャリーズ・セロン主演の「スタンドアップ(2005)」を撮っている。コチラは実話が元になっているので、さて如何なもんでしょうか? こちらも女性ならでは視点が気になる映画です。
・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】
<「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールスに似たお顔立ち
どこかで見たような顔だち…と思ってましたが、そうそう!彼女に似てますねー!
「スター・ウォーズ エピソード3」は私も未見です。見る機会があったらバイケアちゃんに注意したいと思います。
ビールスはあの後サッパリですが、ケイシャちゃんはどうなりますかねぇ?
映画のほうはしっかりと作られていましたが、好きなタイプの作品ではないです。リアリズムとファンタジーの匙加減が今一つ上手く行っていないような感じが残りました。
群馬は本州の真ん中なので、台風には殆ど縁がないです。良いところにすんでいます。難点は雷と冬の空っ風。生命に及ぶ被害は少ないですが、生活しにくい。
「木枯らし紋次郎」の故郷でしたっけ?そういえば、少し前のNHKの朝ドラの舞台が高崎でしたね。
私はエイッと“ファンタジー”にカテゴライズしました。ケイシャちゃんだけですね、楽しみは。