旅する心-やまぼうし

やまぼうし(ヤマボウシ)→山法師→行雲流水。そんなことからの由無し語りです。

またヒガンバナ~忌み花扱いされるこの花に寄せて

2020-09-29 23:46:52 | 花鳥風月

2020.09.28(月)午前、自転車のタイヤ交換のために二子玉川駅近くに行ったついでに、その周辺を散策。
駅すぐ近くのヒガンバナは満開。

それにしても、世田谷区の人たちは、この花が好きみたいだ。
住宅街の緑道にもたくさん咲いているし、とある会社の事務所前の花壇にもある。
そんなことを思いながらヒガンバナを見に歩き回っているわたしもまた、この花が好きだからなのだが・・・。

葉と花が別べつの時期に出てくるヒガンバナ。
花は葉を見ず、葉は花を見ず。
加えて葉は、寒さに耐えて冬を越す。
そのことを思うだけでも、愛おしくなる。

この花の呼び名は数多い。
彼岸花(ヒガンバナ)、曼珠沙華(まんじゅしゃげ/かんじゅしゃか)、狐花(きつねばな)。
このあたりはまだいい方だ。
それが死や不吉なイメージにつながり段々ひどいものなっていく。
死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)、幽霊花(ゆうれいばな)といったように・・・。

一方、花言葉はけっして捨てたものではない。
わが年齢ともなれば、口にするだけで気恥ずかしくなってくるというくらいのものになっている。
 • 白色:思うはあなた一人/また会う日を楽しみに
 • 赤色:情熱/独立/再開/あきらめ/悲しい思い出/思うはあなた一人/また会う日を楽しみに
 • 黄色:陽気/追想/深い思いやりの心

ところで、曼殊沙華とは法華経などの仏典に由来する名前であり、いわば天上の花という意味も持っている。
それなのになぜ、忌み花のように扱われるのだろうか。
「よくお墓に咲いている」からか。

思えばヒガンバナは、球根を含め毒を持っていることが古くから知られ、もぐらやネズミ、土中の生物から土葬した遺体を守るためお墓の近くに植えられている。
田んぼの畔(あぜ)や土手、河川堤防などに見られるのも、こうした動物によって穴を開けられる被害防止というもの。

(球根はもとより花全体にリコリンやガラタミンなど約20種の有毒アルカロイドがある。
“毒は薬と表裏一体“と言われるように、江戸時代には、球根をすり下ろして患部に当てて湿布剤として利用したりしていたという。
現代でも漢方薬や認知症薬などとしても使用されているとのこと。)

それに、そもそもこの花が中国大陸から日本に渡ってきたのは、飢餓の時に球根の毒を水にさらしてデンプンを食用にしたりするためという説もある。

さすれば、忌み花というよりは大いに“ありがたい(有り難い)花”ではないか。

翻って、死や不吉なイメージと連想されるのは、「死穢(しえ)」という意識が働くからなのだろう。

神道では古来、穢(けがれ)には赤不浄(血の忌み)、黒不浄(死の忌み)があるとする。
古事記や日本書紀に出てくるイザナギノミコトは、黄泉の国で醜い骸(むくろ)と化したイザナミノミコトから逃れ帰るときに、穢(けがれ)を祓う禊(みそぎ)をしたとされている。
(お葬式から帰ってきたとき清めの塩を体に振りかけるのは、神道に基づく行為。お寺でお葬式をして、清めの塩とはどういうこと?となってしまうが、このあたりが神仏混淆の歴史がもたらした精神世界と言うべきか・・・。)

これに対し、仏教の立場では、仏の目には浄・不浄はなく、わたしたち凡夫の目が浄・不浄を見るのだと教えている。

いずれにしてもつらつら考えてみるに、ヒガンバナ、彼岸花、曼殊沙華は、穢(けがれ)などといった意識を持ちながら見てはいけない素晴らしい花だと、わたしには思える。

種田山頭火

 曼珠沙華(まんじゅしゃげ)咲いて ここが私の寝るところ
 歩きつづける 彼岸花咲きつづける
 なかなか死ねない 彼岸花さく


中村汀女

 曼珠沙華(まんじゅしゃげ) 抱くほどとれど母恋し


木下利玄
 
 舂(うす)づける彼岸秋陽に狐花 赤々そまれりここはどこのみち


※ 過去記事は

「ヒガンバナ、彼岸花、狐花、曼殊沙華(2008.10.03)」 ⇒ こちら

「ヒガンバナ(2019.09.26)」 ⇒ こちら











(二子玉川公園内の帰真園)


(園内のシロシキブ)


(公園からの眺望:多摩川を挟んで対岸の武蔵小杉の方角。左の高層建築物はタワーマンション)


(久しぶりの青空に映えるキクイモの花)


(多摩川と鉄橋:左から田園都市線の車両が駅に向かっている。)


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