妄想ジャンキー。202x

あたし好きなもんは好きだし、強引に諦める術も知らない

追記、山村基毅「ルポ介護独身」

2015-01-07 16:38:06 | 読書




一気読みしました。独身者の在宅介護をめぐるルポ。認知症や介護制度もキレイな部分だけではなく、汚ない部分まできちんと「語って」あったのが好感を持てました。

色々と考えさせられたんだけど、介護施設(病院もだろうけど)って経営側の原理でうかつに潰れちゃならないんだなと。利用者さんを守ってるんだけじゃなくて、その家族の生活も背負ってるのかもしれない。

そりゃあ在宅介護に比べて介護施設は姥捨山なのかもしれない。誰だって在宅介護ができるならしたいと思う。

でも出来ないのが、出来たとしてもそれなりの犠牲があるのが現実。犠牲は例えば仕事だったり、結婚だったり、自分の人生だったり。

そんな思いでたどりついた姥捨山。その麓には、家族がいる。施設介護を選んだことに対して、何か悩んでいるのかもしれない。

そんな家族に対して、利用者さんを人質にとるような真似をしてはならないし、そもそも利用者さんの人権や尊厳を奪うことなんて許されることではないなと。





ルポは主に独身者の介護生活なんだけれど、独身の介護職員の話も気になった。

男の寿退社がある職場。収入は手取り15万行けばいいほう。いいところはいいんだけど。(余談ですが私の初任給は手取り8万でした。)

そんな経済的問題は確かにそうなんだけど、何より忙しい。他人と関わる仕事なのに、実生活では他人と関わる余裕がない。気持ち的にも体力的にも余裕がない。自由ってなんだろうと。

そういえば私も作り笑顔のしすぎ、ヒヤリハットの連続で、休日は顔面筋と腰と神経全力で休ませてた。プライベートまで優しさもとめられてちゃやってらんない。

そのせいかわからないけど、介護職に就職したときも、復帰したときも、当時付き合っていた彼氏とは別れている。実際はシフト勤務と公務員勤務で会う時間がとれなかったからなんですけどね。

本書で救いだったのが、「事実婚」の提案でした。最近ではあんな事件も起きてしまってるけれど。


介護をめぐる問題は、利用者負担を増やすとか減らすとか、介護保険の徴収額を増やすとか、処遇改善金を増やすとか、お金の問題じゃ解決しないと思う。

晩婚化や少子化、過疎化だとかいろんな問題と絡み合ってる。だから国には本気の政治をしてほしい。




(2015年1月7日追記)


在宅で家族を看取った経験があるわけではないのですが、友人や同僚(介護職)には何人かいます。もちろん現在進行形の人たちも。私にもいずれそのときが来るんだろうな、と覚悟はしていますが、まだあまり実感はありません。

「そのとき」に備えて少し考えておかねば、とふせんポイントをまとめました。カッコ抜きのところは、家族介護を経験した独身者の話の部分。

【あるある、そうなのよ】

高齢者の介護の先には望むと望まざるとに関わらず、「死」がぶらさがっている。

(ストレスを)発散すること、息抜きをすること、それを言い聞かせていた。が、そのこと自体がストレスになっていった。

いくら尽くしても尽くしても、けっきょく後悔や疑問は残る

「ボケていく自覚があるって、とっても辛いこと」

「介護って、どこまで行っても答えなんてないものだと思うんですよ」

(介護職の男性)「勤務時間も不規則なのでデートとかもできないわけ。あと収入も不安定ですしね。その割に肉体的にも精神的にも疲労が続く」

(介護職の男性)「仕事では他人と関わっているんだけど、実生活ではほとんど他人と関わっていない」





【シングル家族介護えげつない……】

高齢者の介護をするものが祝福されることは、ほとんどない。周囲に認められることもない。暖かい目に思える視線も、同情や憐れみを含んでいるから熱を持っているだけである。

退職の原因は介護とは関係ない。時期はまったくの偶然である。しかし父か倒れたことで、そのような夢(新しい仕事や留学、旅行など)根底から覆される。

「介護に携わった途端、シングルならではの『人生やり残した感』が湧き出てきました」

親が「私」を「私」として認識しなくなったとき、それでも相手を親として扱えるのかどうか

多くの介護者たちが口にするのは、こうしたサービスのパターンと自分の置かれた状況を合致させるのが難しいということ

受け入れる施設のほうは、介護者の事情をあまり鑑みてはくれない


【『うつくしき国』】

「もうこの状態が続くと、本当に母を殺すだろうと思いました」

「必ずしも一緒に暮らすのが幸せとは限らない」

どこで、誰が、担うのか

孤立「させない」介護ではなく、私じしんが孤立「しない」介護を模索し、試して行くしかない。






在宅介護をしている方、しそうな方、福祉関係職、将来在宅での介護や看取りを望んでる方……それなりに一読の価値ありだと思います。特に福祉行政に関係してる人たち。


(´-`).。oO(家族が要介護→やむなく離職→介護生活→介護終わり→再就職したい→ブランクとかいろいろあって難しい→そうだ、家族を世話した経験生かせないかな→介護職に就く……まさか在宅介護の推進で介護業界の人手不足をどうにかしようとしてるんじゃあないだろうな?)



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