これまた短編
幸田露伴の文章は 眺めただけで漢字っぽく
取りつきにくい感じがする
でも さわやかな感じで ちゃんと味わいたいなあと思いながら
むずかしそうと 引いてしまう
これが 幸田露伴についての
私の先入観
このはなし 短いので読む気になった
読むうち これは 絵巻物だ!
私が好きな文章は 読むうち目の前に絵が浮かんでくるような
そういうのが好き
話の内容は
貧しい少年が艱難辛苦の末学業にいそしむ境地までこぎつけたが
神経衰弱になり
転地療養を薦められるがまま 東北へと旅に出て
とある寺に滞在し
そのうち大地に溶け込むように
魂が自然に帰るような絵画と幻想的な出会いをし
病は癒えて
たぶん ただの農夫になって
身を消していくという話
とても東洋的であるような。
でも
読み終わったときイメージしたのは
脈絡もなく
アルチュール・ランボー で
でも やはり 東洋的かな
私には東洋の文学の素養がなさすぎる
そういうことを思い知らされるから
幸田露伴は怖い先生って感じなの
でも 文章の表現するところ
なんか 視覚的にすごい
何だナ
と鈍い声をして、土間の左側の茶の間から首を出したのは、六十か七十か知れぬ白髪の油気のない、火をつけたら心よく燃えそうに乱れ立ったモヤモヤ頭な婆さんで、皺だらけの黄色い顔の婆さんだった。
ね、すごくない?
私はこれで、もう一枚絵が描けるよ
しかも、これ、私?
そうか、六十か七十か わたしもう七十に近いし モヤモヤ頭だし
そうか しわくちゃでも なんと!
自然なこっちゃ!