有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

大門正克さんの「コロナ禍を身近な歴史からとらえ返す ――オンライン授業「学童集団疎開の経験」を通して」を読んで

2020-06-11 14:20:01 | 出版
大門正克さん(早稲田大学)の「コロナ禍を身近な歴史からとらえ返す ――オンライン授業「学童集団疎開の経験」を通して」(大月書店note連載「社会的距離〈Social Distance〉を超えて」)を読みました。
とても面白かったし、考えるべき事が多くありました。

社会的緊張の下で生きるという事においては、「戦時期の経験」と「コロナ下の経験」に類似性があるというのはとても重要だと思います(単に「ウィルスとの闘いだ!」と叫ぶのとは真逆の意味で)。
そして、学生さんたちが「コロナ下」の現状から歴史をとらえ返し、さらにまた現在と未来を考えることができたという事も素晴らしい。
「歴史を学ぶ」「歴史から学ぶ」とはこういう事なのだと思います。

そして、歴史書出版・編集者として、学生さんの意見の中で一番興味深かったのは以下。
「日本史をほぼ学ばなかったので「苦手意識」があったが、それは「大きな歴史」に対してのものかもしれず、一貫して吉原幸子のような「小さな歴史」から歴史を考えるのは「初めての経験」だった。個人の経験の視点からは 「過去と現在の往還が可能」になり、この往還からは「大きな歴史の位置づけが変わりうる」ことや、「歴史的現在」が「鮮明に見え、今を生きるための指針ともなる」」。
こういう歴史書・学術書が必要なのだと思います。

そして、こういう良質の企画を進めている編集者の角田三佳さん、さすがです。

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