有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

「添田唖蝉坊論」と民衆知識人論

2017-02-28 08:49:44 | 出版
『歴史学研究』最新号(3月号)に、能川泰治さんの論文「添田唖蝉坊論」が載っていたので、早速、拝読。
大正期に東京のスラムに生きた演歌師・添田唖蝉坊論(そえだ あぜんぼう)の本格研究です。
何よりうれしかったのは、有志舎で出した『講座 東アジアの知識人』で提起した「知識人」論、なかでも「民衆知識人」という新しい概念提起を正面から受け止めて、民衆と知識人の関係に切り込んでくれています。また、そのなかで「大正デモクラシー」自体の再検討にも及びます。
加えて、「民衆知識人」と丸山真男の「亜インテリ」論との関係にも言及。

『講座 東アジアの知識人』で提起したときには、殆ど世間から無視された「民衆知識人論」をここまで正面から論じてくれるとは!(もっとも、同『講座』自体があまり売れていないので仕方ないが)
同時に、藤野裕子さんが『都市と暴動の民衆史』で論じた対抗文化論への違和感も表明されていて、そういう議論が巻き起こってくれるのを待っていました。
学術書出版社・編集者として嬉しいのは、自分の出した本が議論の対象になってくれること、それが学問と社会の発展に役に立っていると思わせてくれる。
異論反論、大いに結構。ともかく議論にならないと。

そういう意味で、一応、私の中では、『講座 東アジアの知識人』も『都市と暴動の民衆史』もすべてリンクしているのです。
そして、「添田唖蝉坊論」も実はすでに能川さんに単著をお願いしています(まだ、いつ刊行になるかは未定ですが)。
さらにさらに私の中では、こういったラインナップは「竹内好論」「丸山真男論」(某歴史家の方に執筆をお願いしている)にもつながっています。
いずれも原稿ができてくるのはもう少し先ですが、とても楽しみです。

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