2013 12/29の記事
その日私は、薄暗い豊原駅にいた。
なぜこんな事に。決して悪くは思っていない。望んできたのだ。だが何故かといえば私は黒磯駅近くにある栃木の至宝、晩翠橋を見にいったのだ。しかし、行ってみればまさかの改修工事中であった。そこで前から降りて見たかった豊原駅へと足を運んだ。だが当然、着いた頃には薄暗い事はわかっていた。だが私はヤケになっていたのだ。
降りた人は私と少女らしき人。2人だけだ。私は駅の中を簡単に撮り外に出る。寒い。東京とは全く異なる寒さ。改札もない。駅員もいない。だが無音‥というわけではなく川の流れるような音がこんこんと聞こえる。いわば自然が作り出す音のみ。
無。
まさに豊原駅をそう表したいと思う。まだ昼なら違ったのだろうが。そういえば先程の少女はどこにもいない。そもそも駅の前がもう山道のようになっている。ひょっとしたら彼女は幽霊だったのかもしれない。
とりあえず駅を撮る。この駅に来た人達をネット検索でたまに見たが夜来た人はあまりいないように思う。私が生きて帰れば貴重な資料となるはずだ。ここでちょっとした発見があった。
わかりづらいがこの階段の白い部分。これはペンキをブチまけたわけではない。雪だ。しかも触ってみるとパウダー状だ。いつ雪が降ったのだ?そうだ。私は今、豊原にいるのだ。忘れてはならない。
駅舎をこんなドラマチックに撮れたのは初めてだ。私が来たかった場所だけある。だが、気を引き締めていかなければならない。なんせ駅前が山道のようで家や自販機、コンビニもないのだから。そして辺りはもう薄暗い。
もうなんだかわからない。設定を最大限に明るくした。
なんて素晴らしい。まさに自然の里。必ず生きて帰りたい。
少し歩くと家が並ぶ道になってきた。人の家がある。何故こんなにも安心できるのだろう。車も通った。大丈夫。自販機もあった。そうだ。言ってもここは栃木県。東京とそんなに違う事はない。自然も豊か。良い場所じゃないか。コーンスープを買う。歩く。
カメラの設定でも誤魔化しがきかなくなった。もう暗い。一旦駅に引き返そう。先程のコーンスープをバックから取り出す。‥‥だがわずかな時間なのに、かなり冷えていた。飲む飲む。その途中、高架下のトンネルを発見。
怖い。ここより先に行ってみたいがここを通れば二度と帰れないような気がする。しばらくの葛藤の末、行かない事にした。禍々しいものを感じた。きっとあの先は地獄か時空の歪みか何かで全く異なる時代にタイムスリップするかパラレルワールドへ転移し、二度と戻っては来れないだろう。駅へ戻って今度は反対の道へと行く。やはり暗いので恐怖はあった。だが、闇というのは恐怖であり、また魅力なのだ。そしてそこに葛藤するのは人の真理なのだろう。
自転車置き場。
暗い道。歩く歩く。
トンネルだ。車が結構通る道に出た。私はしばらくこの道を歩いていたがある事を悟り、駅へと引き返すとした。寒い。もう一度道の雪を触る。パウダースノウ。いや、perfumeファンとしてはパウダリースノーと言っておこう。私は駅に近づくと電車が来るアナウンスを聞いた。私は小走りで駅に着き、最後にカメラを構える。
電車に乗り宇都宮を目指す。私は前述で、ある事を悟ったと書いた。
豊原駅周辺は私にとってはまさに理想郷のようだ。素晴らしい自然。さらさらの雪。川の音。静寂。今日もテレビや雑誌でパワースポットって言っちゃってる。ここに来てごらんよ。まさにパワースポットだよ。そして悟った事。私は暗闇を歩いた。時に恐怖しながら。幽霊が出たら怖いと。車は通るが歩いている人はいない。ただの一人も。だが車は通る。たまに近くに来ると急に速度を緩めたり。暗闇だしね。その時、私気づいちゃったんです、悟っちゃったんです。車を運転して通った人からしたら、私が幽霊のようだったということに。
暗闇の中で駅だけは明るく光る。
自然に囲まれた優しい駅、豊原駅。
今度は、夏か秋の明るい時間に訪れたい。