コロラド州より、小さな町の小さな物語

コロラドの魅力は小さな町にありました。人気の田舎町への小さな旅と、日々の暮らしのレポートです。

コロラドのワイルドライフ ④ あっ、鹿だ。

2009-10-23 07:03:30 | 日記
あっ、 鹿だ。


コロラドに来て、感動したことがある。 山の美しさ、強烈な稲妻と落雷、そして雪。 特に最初の年は、雪を見ると外に飛び出し、空から降ってくる雪、芝生に落ちた雪、木の枝にたまった雪など写真をいっぱい撮った。 コロラドに何年も暮らしていると、雪など珍しくもなくなるかな思ったが、意外に何年たっても雪が降りそうな空模様になるとソワソワする。
反対に、始めてみた時はあんなに感動したのに、すぐに嫌いになったのもある。 それは何かと言うと、呼びもしないのにやってくる鹿だ。





僕たち鹿です。 シカッとみてください。

 
「あっ、鹿だ。」
コロラドに引っ越してきたとき、公園に鹿がいっぱいいた。 車を運転していると、信号もないのに前の車が突然止まる。 何かな? と思うと、鹿が道路を横断している。 それも一頭ずつ、ゆっくりと。 ドライバーは鹿がみんな渡りきるまで、辛抱強く待っている。 不動産屋に連れられて家を見に行ったときも鹿がいた。 
「すごい、裏庭に鹿が来るんですか?」と驚く私に、不動産屋は「可愛いでしょう。」と笑った。

確かに私は感動したのだ。 山が近い。 自然がいっぱい。 家を買うなら絶対このあたり。 鹿が遊びにくるなんて、さすがコロラド。
しかしこの感動は、住みだして2-3ヶ月ですっかり冷めてしまった。

だいたい鹿はバカである。 漢字で書いても馬と鹿で馬鹿ではないか。 鹿は自分のテリトリーと人間のテリトリーの区別がつかないから、他人の裏庭に勝手に入ってくる。 そして、せっかく植えたお花を全部食べてしまう。 何を植えても、恐ろしいほどの食欲で、きれいさっぱり食べてしまう。
 
一度パンジーをいっぱい植えて、食べられないように、上に大きなネットをかけた。 ある朝、外を見ると、鹿が狂ったようにネットに噛み付き、首をブンブン振ってネットをはがしていた。 
友達が「クリスマスのデコレーションによく使う、葉がギザギザのプラントなら食べないらしいよ。」 と教えてくれたので、小鉢を買ってきて植えてみたが、これも全部食べられてしまった。 結局、メリーゴールド以外は、なにを植えても食べられてしまった。





そこのけ、そこのけ、お鹿が通る。


花だけではない。 鹿のおかげでもっとひどい目にあった。
新車を買って2ヵ月後、小学校の近くをドライブしていると、ドンという音がして、車が少し揺れた。 何だろう? と周りを見渡しても、変わったものはなにもない。 たまたま近くを散歩していた人がこちらを見ていたので、「なにがあったの。」 と聞くと、「鹿だよ。」 と言う。
 
「鹿がどうしたの。」 私は詳細が知りたかった。
「あなたの車の後ろから走ってきて、体当たりして、いったんコケたけれど、すぐ起き上がって逃げた。」 と教えてくれた。 
「どっちへ?」  「あっち。」 と彼は住宅を指差した。

車を調べると、運転手側のボディが凹み、バックミラーが壊れてぶらさがっている。 よーく見ると、ボディには鹿の毛が付いているではないか。
なんで? 住宅地だからゆっくり走っていたのに、鹿にはまったく気づかなかった。 でも、なんで体当たりして逃げるわけ?
くやしい、新車なのに。 無理して買ったボルボなのに。




道路を渡るときは、右をみて左をみて、好きな時にわたります。


この日から、鹿は目の仇になった。
もちろん、息子も私の見方で、鹿をみると水鉄砲をもちだし、鹿めがけて撃っていたが、鹿はびくともしない。 相変わらず、我が家の花を食べ、裏庭の一番いい場所で休憩し、芝生のうえにウンチをして帰る。

鹿のウンチのお掃除もまた大変だった。 鹿はパチンコ玉くらいの黒い丸い玉をドサッと捨てたようなウンチをする。 芝生の上にやられると、スコップをつかってもこぼれ落ちてしまう。 どうしたものか? と考えていたら、韓国の食料品店で買った長めのお箸を思い出した。 先のほうに輪状のすべり止めの切り込みがはいっている。
これだ、と思いキッチンからとりだしたが。。。確かに、鹿のフンは拾える。 でも、これって。。。




そこはトイレじゃありません。 トイレじゃないってば!


鹿が私をみつめている。 もし私がこのお箸でフンを拾い出したら、きっと仲間を呼んで笑うのだろう。 なんで私が鹿に笑われなきゃならないんだ。 これが自然に囲まれたコロラド生活か。
「かわいいでしょう。」と笑った不動産屋の顔も思い出した。

コロラドで鹿をかわいいという人は、あまりいない。
そのかわり、鹿には気をつけろ、と忠告してくれた人は多かった。車を運転していると、鹿が道路に突然飛び出してくるからだ。  もちろん、鹿をはねると可哀相だからではない。 鹿をはねると車が凹み、修理代が高くつくからである。

 

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