パムッカレのホテルは、緑に囲まれた敷地のはなれだった。
本館は、フロントとロビー、レストランとジム、ハマム、室内プール、オープンテラスのバーなどで、客室は敷地内にいくつかある低層のはなれ棟となっていた。
私とNさんが宿泊した客室は本館から10m程グリーンロード(上の写真)を歩いたところにある2階立ての建物の2階。
ホテルの人が観光客の荷物をそれぞれの客室まで運んでくれる。
夜は街灯と足元灯でグリーンがライトアップされ、なかなか良い雰囲気で客室がはなれというのも悪くないなと思った。
部屋のキーを配りながら添乗員のIさんが、このホテル内には普通のプールの他に天然温泉プールがあることと合わせ、ハマムやマッサージを利用したい人は・・・と各種利用料金などの案内を加えた。

天然温泉プールの方は、中央に人口火山がしつらえられ湯気が立ちこめ大勢の観光客が楽しそうに入っていたが、水着を持ってこなかった私たちは残念ながら入ることができず、あー水着を持ってくればなぁと後悔。
下の写真は、ホテルのハマムなどの利用料金表。
ヨーロッパからの旅行客が多いせいかほとんどユーロで表示されていた。
ベリーダンスショーの案内ポスターとグリルサービスのワゴン。
屋外のバーやテラスでは、夜遅くまで、生演奏が流れヨーロッパからの観光客で賑わっていた。
友人のNさんは、まだお腹が本調子でなく部屋で休みたいとのことだったので、
私1人でこのホテルの「ハマム」を体験してみることにした。
ハマムは古代ローマ時代から続くトルコの伝統的風呂。
トルコ入りしてから宿泊した他のホテルにもハマムはあったが、時間的余裕がなく入れなかったのでここで是非体験したいと思った。
トルコタイルと大理石のハマムで、
頭の先から足の先まで、さっぱりリフレッシュできたのだが・・・
・・・それが、・・・ドッキリだった


まず、ホテルのフロントでハマム(TURKISH BATH)の申し込みをした。
(上の利用料金案内の写真にあるとおり10ユーロだが、私はKESE(垢すり)つきをオーダーした。全部で日本円にすると3500円程度だったと思う。)
渡された布に包まり(下着は着用して)ハマムの扉を開けると、湿度と熱気が充満していた。
ハマムは、30畳ぐらいの大理石のサウナに洗い場が付いているもの。
壁にそって1段高い台(幅3mぐらいの広さ、60cmぐらいの高さ)が取り囲んでいて、寝そべることができる。
(上の料金表の写真参照、小さくてわかりにくいかもしれないが)
5分ぐらいすると垢すり師がやってきた。
女性には女性の垢すり師。これ、当然!と思っていた。
ソウルでも日本でも、いつだって女性には女性の垢すり師だ。
し、しかし!
こんなのアリ???
な、なんと、ここでは男性の垢すり師!




しかも、上半身裸で、腰に赤いチェックの布を巻いただけの姿!


私の担当は、 ちょっとお腹の出たいかにもトルコ人という顔立ちのおじさんだった。
ようこそ、いらっしゃいませという感じに満面のスマイルで挨拶されたが、私は顔が引きつってしまった!
私が女性の垢すり師への変更を申し出ると、その垢すりおじさんはスマイルで
「No problem! No problem!」と。
「えっ、そっちは No problemでも、こっちが problemなのよ。」
そんな私にお構いなしで仕事が楽しくてしょうがないという感じの流れるような手順で、その垢すりおじさんは大理石の台に寝そべる私にバケツで陽気にザブーンとお湯をかけ、淡々と垢すりを進めた。


(ハマムには、シャワーというものはない。)
おかげで私は最後まで気が抜けなかった。
しかし、その垢すりおじさん、仕事は丁寧で力の入れ具合も適度で垢すり師としては優秀だったかもしれない。
全身の垢すりが終わると、1.5m程ある長いタオルに石鹸をつけバケツのお湯の中に浸したり出したりを繰り返し、なにやらザブザブやっている。
良く見るとその大きなタオルは袋状になっていて、「フーッ!フーッ!」とタオルの端に口をあてて長い息を吹き込んでいる。すると不思議に細かい泡がいっぱいタオルの表面に噴出してきた。
それをゆっくりユサユサ振りながら弾みをつけて寝そべる私の全身にかぶせ、それを2~3回繰り返し、体が全部隠れるほど泡だらけにした。
しばらくして今度はやわらかい専用布でこすって、何回もザブーンとバケツでお湯をかけた。
次は、大理石の台に腰掛けさせられ、頭から大量のお湯をザブーンと何杯もかけたと思ったら、豪快にシャンプーを始めた。
頭皮をマッサージされて結構気持ちよかったが。
最後に立て続けに頭からたっぷりのお湯をザブーンと何回もかけ、全身の石鹸分をすっかり洗い流した。
さらに丁寧なことに
どこからか乾いたバスタオルを持ってきて丁寧に拭き始めた。
私は、拭くのぐらい自分でやるからいいわよと思ったが、坦々と作業を進めるおじさんの様子に、マニュアルどおりにまじめに仕事しているのだろうと、何も言わず任せることにした。
タオルを片付けたその垢すりおじさんは「これですべて終わりだが、オイルマッサージを希望するか」とトルコ訛りの英語で聞いてきた。
担当が女性だったら迷わずお願いするところだったが、私はNo,thank youと答え、彼の仕事へのAppreciationを伝えた。
すると、紳士的スマイルで「Thank you」と言い、垢すりおじさんは出て行った。
更衣室のロッカーの鍵を返しに行くと、ホテルのフロントマンとその垢すりおじさんが並んで「Good night!」と見送ってくれた。


私も「Good night!」と手を振り、また、はなれの客室へ緑の木立の小道を通って部屋へ戻った。
すっきりはしたけれど、ドッキリのハマム初体験だった

(翌日宿泊したホテルには、「垢すりは女性には女性が担当しますのでご安心ください」とわざわざ日本語が書き添えられており、ハマム体験を1日ずらしていたらこのドッキリは存在しなかった。)
翌日、早朝に、私たちはホテルを出発した。
前夜遅くまで賑わっていたプールも早朝は静かだ。

この日は、全旅行日程中、1日の移動距離が最も長い約700Kmをバスで走行予定。
ドライバーのサルマンさんが、元気良く「オハヨウゴザイマ~ス!」と挨拶してくれた。
私も今日もよろしくと挨拶し、どうか無事故でとバスの中のナザール・ボンジュー(目玉のお守り)に心の中で祈りつつ乗り込んだ。