先週の金曜日の夜に、指揮者のネルロ・サンティを生で聴くチャンスがあと何回あるかど
うか分からないので、前週に引き続き渋谷のNHKホールへ出かけNHK交響楽団定期演奏
会を聴きました。
演奏曲目は、前半がレスピーギの交響詩「ローマの噴水」と森の神々、後半はヴェルディの歌劇
「オテロ」から「柳の歌」「アヴェ・マリア」、ストラヴィンスキーのバレエ組曲
「火の鳥」(1919年版)でした。
レスピーギという作曲家ですが、始めはヴァイオリンやヴィオラの演奏者として活動した
が、その後は作曲に転向した音楽家です。作品としては、「ローマ三部作」と呼ばれる一連
の交響詩「ローマの噴水」、「ローマの松」、「ローマの祭り」やリュートのための古風な
舞曲とアリアの組曲が有名です。
今回は「ローマ三部作」の中から交響詩「ローマの噴水」が演奏されましたが、個人的に
波長が合わない作曲家です。このように好き嫌いがはっきりしてしまうと、音楽を聴く姿勢
にも影響がでてしまうのではないかと、個人的に心配してしまいますが、別に音楽評論で生
活して行く訳でもないので、気楽に感じた内容を述べています。
「ローマの噴水」ですが、繊細なタッチで噴水を中心とした心理的な風景描写を音で表現
したものだと思いますが、凡人にはこれらの音からレスピーギが思い描いた情景が浮かんで
こないのです。自分の想像性のなさを嘆きたくなるような感じで聴きました。
もっとも理解に苦しんだのは、2曲目の森の神々です。どちらかというとフランス音楽の
かったるさが出ているような楽想で、ソプラノのアドリアーナ・マルフィージがいくら名歌
手と言われても、聴く側からしたらこの音楽は正直言ってどのように聴いたらよいか分から
ないものでした。
前半の演奏を聴き、失望感で一杯となったので後半はどのようになるのか心配でしたが、
後半の1曲目であるヴェルディの 歌劇「オテロ」から「柳の歌」「アヴェ・マリア」は、
素晴らしい内容でした。
特に「アヴェ・マリア」は、最高の出来栄えで、前半のレスピーギを歌った同じプラノ歌
手とは思えないほど、声と言い表現する内容の技術面と心理面が見事に融合して、素晴らし
い演奏でした。
聴きながら自分も同化してしまうような名演奏だったと思います。声の柔らかさと安定し
た音程、さらに心に響く歌い方は流石名歌手だと思わせるものが多くありました。
後半の最後の曲はストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919年版)でしたが、
これもしっかりとした演奏構成で組み立てられており、N響の演奏能力の高さを示した内容
でした。個人的には、指揮者のネルロ・サンティがストラヴィンスキーの作品に挑戦するな
ど、考えても見なかったことなので、意外性を持ちながら聴いた次第です。
前月のアンドレ・プレヴィンや今回のネルロ・サンティのように、かなりの高齢なった指
揮者の演奏会は、次の機会を期待できないような感じを受けるので、今回のように2週連続
でN響を聴きに行くことになるのです。今後とも良い演奏を聴かせて欲しいものです。
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