ゆうちゃんの独り言

モーツァルトが大好きで毎日欠かさず聴いています。人生の生き方は仏教で毎日般若心経を唱え、時間を見つけて寺巡です。 合掌

■ 第1667回と1668回NHK交響楽団定期演奏会を聴いて(A、Cプロ初日)♪♪

2010-02-13 13:00:17 | Weblog
 先週と昨日、N響の定期演奏会(AプロとCプロ)に行ってきました。今回は、N響初登
場の指揮者であるセミョーン・ビシュコフのよる演奏が注目を浴びていました。

 指揮者のセミョーン・ビシュコフですが、1952年にレニングラード(現在のサンクト・
ペテルスブルク)で生まれてたとのことで、年齢は凡夫とほぼ一緒です。当初は地元の音楽
院で学び、その後1973年のラフマニノフ指揮者コンクールで優勝してから人生が大きく
変わったのではないかと思います。

 政治的な背景があって、1974年に米国に渡り、バッファローフィルハーモニーやグラ
ンド・ラピッズ交響楽団の音楽監督を務めたのち、パリ管弦楽団の音楽監督やケルン放送交
響楽団の主席指揮者を歴任している指揮者です。

 顔はがっちりとし、どちらかというとひと癖あるような風貌(良い意味で言っています)
の指揮者で、このような指揮者は熱く燃える情熱のある演奏を行うタイプに見受けられます。

 実際の演奏曲目ですが、Aプロは、ショスタコーヴィチ:交響曲第1番ヘ短調作品10と
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」、Cプロは、ワーグナー:楽劇「トリスタン
とイゾルデ」から「前奏曲と愛の死」とマーラー:交響曲第5番嬰ハ短調でした。

 個人的に期待していたのは、マーラーの交響曲第5番でしたが、演奏を聴いた結果は、A
プロのロシア物のプログラムの方が圧倒的に演奏の質が高かったと言えます。

 個人的に、ショスタコーヴィチは敬遠するタイプの作曲家であり、ストラヴィンスキーは
まあま聴いていられる部類の作曲家ですが、今回の2つの演奏を聴きながら十分にビシュコ
フが主張したい内容が発揮できた演奏になっていたと思います。

 特にこれらの2曲は、全体では確かに一つの曲になっていますが、それを分解していくと
個々のパーツに分けられ、さらにそのパーツが楽器のパーツに分解されているのがはっきり
と表現できている事に驚きを感じました。

 過去にこの2曲は聴いたことがありましたが、今回のようにパーツ毎が上手く噛み合って、
あたかもプロセスが確立され、さらにそれらが上手く連携されている様子が鮮明に感じる事
が出来ました。

 これは、指揮者のビシュコフが曲を細部まで理解し、さらにそれらの要素に自分の主張を
組み入れて再構成した結果が、今回の演奏に出ていると思いました。ショスタコーヴィチも
良かったですが、個人的にはストラヴィンスキーの「春の祭典」は最高の出来であったと思
います。

 このような演奏を聴いたので、翌週に開催されるCプロの演奏会に期待が膨らむのは当然
のことです。過去にテンシュテットの指揮でアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団に
よるマーラーの5番を初めて聴いて感動し、涙を流した経験がある曲なので、なおさらの事
です。

 モーツァルトは勿論大好きですが、何故かあの感動を忘れられずにこのマーラーの5番は
捨てられない曲になった経緯があるのです。

 さて、Cプロの始めのワーグナーですが、弦の音のコントロール(始めは小さな音であっ
たのがだんだんと大きく広がりのある音に変化させる)が非常に上手く、このような表現を
した「前奏曲と愛の死」の演奏は初めて聴きました。とても新鮮に感じた演奏でしたので、
後半のマーラーはさらに良いだろうと期待が高まるのも無理がありません。

 休憩後、久しぶりに泣けるかなぁと期待し過ぎたのがいけなかったのかも知れませんが、
冒頭のトランペットの音色を聴いた瞬間に、悪い予感が走りました。期待している音色では
ないのです。

 マーラー特有の喜びを含んだ憂鬱で哀愁を帯びた音色ではないのです。さらにさらにビシ
ュコフの指揮は客席から観ていて上手い指揮に見えるのですが、それに伴ってN響が付いて
行っていないというかマーラーの感情が入っていない、表面上の淡白な表現になっているよ
うに感じました。

 演奏に関しては、マーラー特有のテンポを揺り動かしながら、内面の感情を表現すること
の難しさはありますが、今回は今一歩といった印象を受けました。良く言われることですが、
マーラーの演奏は一旦駄目になると全体がまとまらない失速状況に陥ることが多く、非常に
難しい楽想であると思います。

 個人的にこのような感想をもった演奏内容でしたが、演奏終了後の異常と思われるほどの
拍手とブラボーに対して、戸惑いを受けました。評価に関しては人それぞれであるので、何
とも言いませんが、演奏する側と聴く側がともに良くなるような事を前提に拍手をして欲し
いと思いました。

 一般的に言えることですが、最後に劇的に終わる曲は、それまでがあまり良くなくとも聴
き終わった後に全てが良いように思われがちです。しかし、そこは冷静に判断する必要があ
ると思いながら、NHKホールを後にしました。


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