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弁理士試験に出る条約 TRIPS協定第3章第4節(1)

2016-09-12 22:25:51 | TRIPS協定
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 ちょっと税関の手続でも勉強してみましょう。
 そんなのは弁理士試験とは関係ない?
 いえいえ。TRIPS協定第第3部第4節は「国境措置に関する特別の要件」です。具体的にはわが国での税関における手続です。
 TRIPS協定は平成8年から出題され始めていますが、例えば、国境措置の中でも、TRIPS協定51条は今までに7回出題されています。意外なことに弁理士試験短答試験での出題頻度は高いので、無視できないですよ。(とはいえ最近は出題されていないが・・・でも油断はできませんねえ。最近の短答では。)

第4節には、(注)があって
注 加盟国は、関税同盟を構成する他の加盟国との国境を越える物品の移動に関するすべての管理を実質的に廃止している場合には、その国境においてこの節の規定を適用することを要求されない。

となっていますが、これは、当時のEC諸国(ヨーロッパ)のように域内の物の移動に何ら規制がされていない国々の間ではこのTRIPS協定の国境措置の規定は適用されない旨が第4節の注として述べられているということです。

【第51条 税関当局による物品の解放の停止】
 加盟国は、この節の規定に従い、不正商標商品又は著作権侵害物品(注1)が輸入されるおそれがあると疑うに足りる正当な理由を有する権利者が、これらの物品の自由な流通への解放を税関当局が停止するよう、行政上又は司法上の権限のある当局に対し書面により申立てを提出することができる手続(注2)を採用する。加盟国は、この節の要件を満たす場合には、知的所有権のその他の侵害を伴う物品に関してこのような申立てを可能とすることができる。加盟国は、自国の領域から輸出されようとしている侵害物品の税関当局による解放の停止についても同様の手続を定めることができる。
 注1 この協定の適用上、
  (a) 「不正商標商品」とは、ある商品について有効に登録されている商標と同一であり又はその基本的側面において当該商標と識別できない商標を許諾なしに付した、当該商品と同一の商品(包装を含む。)であって、輸入国の法令上、商標権者の権利を侵害するものをいう。
  (b) 「著作権侵害物品」とは、ある国において、権利者又は権利者から正当に許諾を受けた者の承諾を得ないである物品から直接又は間接に作成された複製物であって、当該物品の複製物の作成が、輸入国において行われたとしたならば、当該輸入国の法令上、著作権又は関連する権利の侵害となったであろうものをいう。
 注2 権利者によって若しくはその承諾を得て他の国の市場に提供された物品の輸入又は通過中の物品については、この手続を適用する義務は生じないと了解する。


【TRIPS協定51条の説明】
 TRIPS51条は、不正商標商品及び著作権侵害物品が輸入されるおそれがある場合に、国内市場への流入(自由な流通への解放)を税関当局が停止するように権利者が書面による申立手続ができる制度を採用しなければならない旨を規定する。
 この規定は、従来、わが国が、当時の関税定率法によって税関長が「輸入禁制品」として、麻薬とか拳銃とかと同様に知的財産権侵害物品についても職権で輸入を取り締まり、没収とか廃棄とか積戻命令等の対応をしていた時代に成立した規定である。
 (ただし、知的財産権侵害物品についてはその判断が難しいこともあり、現実には、権利者の申立てという名の「情報提供」に基づいて動いていた。)
 TRIPS協定51条は、そのような「情報提供」という形ではなく、不正商標商品や著作権侵害物品に対する輸入の差止の求めを「法律上の申立ての権利」として認めなければならない旨の規定である。このため、かかるTRIPS協定の規定をわが国においてどのように実現するかが議論されたようであるが、結局のところ関税定率法の改正において対応することになった(なお、平成18年6月には関税定率法から関税法にこの手続は移行されており、現在は関税法の規定に基づく。)
 本条は、不正商標商品と著作権侵害物品のみがそのような制度を設ける「義務」の対象であり(第1文)、それ以外の特許権等は任意である(第2文)。ただし、仮に不正商標商品や著作権侵害物品について義務付けられる書面による申立手続と同様の手続を特許権侵害物品等にも適用する制度を採用する場合には、「この節の要件を満たす」ことが義務付けられる点にも注意しておこう。
 ここで「不正商標商品」の定義は、注1(a)にて定義されており、基本的には同一商標同一商品に限られている。
 「著作権侵害物品」の定義は注1(b)にて規定されている。「著作権侵害物品」に関しては、著作隣接権侵害に係る物品も含まれていることに注意しておこう。
 輸出に関しても義務ではないが、輸出に関して規定を設けることは加盟国の自由である。わが国は、その後の改正で輸出に関しても実施行為に該当することになったので、輸出も規制の対象となる。
 注2では、権利者の許諾を得た場合や通過中の物品については特に問題になることはないことが示されている。麻薬や拳銃のような社会的絶対悪のような物品と異なり、知的財産権侵害物品は、権利者の許諾があれば輸出入は自由であるから、麻薬や拳銃とは異なり、手続については特別な規定が必要となることは容易に理解できるだろう。
 なお、相当する国内法は上述したように「関税法」である。ただし、関税法は、例えば商標権侵害品を違法であると判断する法律ではなくて、商標法においてその物品が商標権侵害品であると判断されるものについては、それを関税法では禁制品として輸出入を禁止することとしている、という法律的構成をとっている。このため、関税法の手続は、例えば不正商標商品については、商標法において商標権侵害物品であるか否かの厳密な判断を経た上での対応ということになる。

 ってことで、TRIPS第3部第4節について、話は奥に入っていきますね。
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