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Curvesのビジネスについて考える

2008-07-16 19:08:52 | ビジネスモデル分析
○ 概要
Curvesというアメリカ生まれのスポーツジム、シャワーもない部屋にフィットネスマシンが置いてあるだけの簡易な施設のようですが、「30分で、筋トレ・有酸素運動・ストレッチが手軽にできる」、「女性専用」を売りにフランチャイズ(FC)方式で急成長(現在全国に600店舗を展開)しているようです。このような急成長ビジネスを「ビジネス分析」してみましょう。

○ 市場及びターゲット顧客 
  このスポーツジムのターゲット顧客は、会社帰りや、ちょっとした空き時間に運動して痩せたいと考えている若年~中年の女性でしょうか。(フィットネス機器を使った筋トレもありますから、あまり高齢の女性はターゲットではないでしょう)
  女性にターゲットを絞り込むということで、従来のフィットネス市場の半分しか抑えられないのではないかという懸念は素人考えのようです。今まで「男性 にスッピンで運動しているところ(ダイエットしているところ?)を見られるのは嫌だ!」、「遠くまで行って何時間もかかるものではなく、もっと近所で手軽な運動をこまめにしたい!」という女性顧客のニーズをとらえています。従来のフィットネスクラブからの特定セグメントの顧客収奪に加え、更にこれまでフィットネスクラブに行ったことがない潜在顧客の掘り起こしにも成功しているようです。

○ 競合状況
  価格帯(5,000~7,000円/月)から考えて、従来型のフィットネスクラブ(フィットネス機器やテニスコート、プールなどの施設を備えたセント ラルスポーツクラブや、コナミスポーツクラブなど)は当然、競合と考えられるとは思われます。ただ、こうした従来型フィットネスクラブが半径1Km圏内に 林立しているところにも、果敢に出店しているところから考えて、「もっと手軽にリーズナブルな値段でコマメに運動したい、という絞り込まれた顧客のニーズ」のみを拾い上げることで、真正面からの競合は避けている感じです。
  むしろ、「フィットネスクラブは高いので、通販で購入したエアロバイクなどを家の中でこいで、ひたすら隠れて痩せようとしていた主婦」などをターゲットにしていると思われることから、家庭内フィットネス器具販売企業の方が競合度合は高いかもしれません。

○ この企業のビジネスモデル

  女性専用小規模スポーツジムの運営ノウハウを提供するかわりに、フランチャイズ加盟者(以下FC加盟店)から、加盟金収入、ランニングロイヤリティ、フィットネス器具や店舗で販売する商品、店舗で使用する消耗品などの卸売による利益などを得る仕組みだと思われます。
  FC加盟店オーナーの立場から考えてみると、シャワー等もなく、数台のフィットネス器具を設置するだけで、あとは主にアルバイトスタッフが指導するだけですので、初期投資負担が飲食店ビジネスなどに比べて、比較的少なくて済むものと想定されます。
  また、オペレーションコストについて考えてみると、食材仕入などがなく、人件費と賃料、FC本部へのロイヤルティだけですので、ロイヤルティ率さえそこそこなら、比較的低くおさえられていると想定されます。その意味で、うまく顧客を募集し、定着化させるノウハウさえ持ち合わせていれば(本部が指導してくれれば)、 従来のフィットネスクラブに比べ、より小さな商圏でも成立する「ストック型ビジネスモデル」であると考えられます。(フィットネスクラブ業界におけるゲリラ的存在といえるかもしれません)
  上記の特徴は、FC本部側にとっては、出店余地が極めて大きい(従来型フィットネスクラブが林立するところでもそれなりに出店できるし、これまで、従来型フィットネスクラブが出店できなかった田舎の地域にも出店できる)ということになりますから、短期的には成長可能性もそれなりにあると思われます。「メタボ関連」の有力候補かもしれません(笑)。

○ リスク分析

ただし、ちょっと考えただけでも以下のようにビジネスモデルは穴だらけです。

・初期投資額が低く、似たようなフィットネス器具もそろえられないことはないでしょうし、指導ノウハウもそれほど特殊なものではないようですから、参入障壁は極めて低く、真似されやすい。

・利用会員は銀行引き落としなどのストック型であるとはいえ、一定期間の実質的な解約禁止条項はつけづらく、近隣に「シャワー付きお手軽フィットネス」が同値段で出てきたら、すぐに顧客離反が起きそうで、スイッチコストは高くない。

・施設型ビジネスであり、新規会員を何人獲得しても、基本コストはほとんど固定費のみで、追加コストはかからないものと推測されることから、FC本部は、売上の捕捉をしっかり確認できる仕組みを作らないと、FC加盟店の会員数のごまかし等に対処できず、「ロイヤルティの回収漏れ」が生じる可能性がある。

・FC本部に、「一定期間で教え込める指導ノウハウ」以外の「売り」がなく、FC加盟店がずっと加盟し続けるメリットが少ない。ということは、元FC加盟店の経験のあるオーナーなら、他人名義などを借用して簡単に競合店舗を作ることができる可能性があります。

※一般的に
FC飲食ビジネスなら、独自食材
FC小売ビジネスならPB商品や緻密な需要予測にも使えるPOSシステム
FC中古車販売なら、適正な値段での中古車買取を可能ならし める市場売買情報など
FC本部には、FC加盟店が離れたくてもずっと離れられない「キラーコンテンツ」があるものですが、このビジネスにはそれが見当たらないような気がします。

○ 結論

このビジネスに関する数字はまだほとんど見ていませんが、どう見ても「スピード命」の先行者利得獲得型体育会系ビジネスモデルとしてしか見えず、短命のような気がして、投資する気は萎えます。


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