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CAPMの理論的説明

2009-07-19 13:11:35 | Valuation
○ CAPM(1)考え方の整理
株式をはじめとする資産の評価の基本は

「将来のCFの期待値をPVに割り引く」

のが基本です。その際の「割引率」にはCAPMに基づく投資家の必要収益率(要求収益率)をもとにしたWACC(加重平均資本コスト)を使うのが慣例化しています。企業価値のテキストなどではこの点はほとんど前提とされていて、

・なぜCAPMなのか?とか
・CAPMを使うことにはどういう意味があるのか?

といったことがあまり書かれていません。そこでCAPMの理論的概要のおさらいを書きます。

また、CAPMは通常、個別株式の期待収益率をマーケットの収益率との関係で表現した式、とみられていますが、より一般的な「資産価格モデル」からも導出できます。


○ CAPM(2)不確実性下の投資

1.不確実性下の資産選択問題

(投資のリターンとリスク)
どんな投資案件の評価でも、ポイントは

・どれくらい儲かりそうか(リターンがありそうか)?
・どれくらいリスクがありそうか?

の2つでしょう。この投資リターンは、DCF評価でもおなじみのように、投資期間中に毎期もたらされるCFをPVに引き直して合計したものです。一方リスクは「投資した価値が変動すること」ですから、上記のCFのPVの和がどう変化するか、という要素を考えればよいことになります。

割引率は(市場から決まるので)所与とすれば、PVの変動要因は毎期のCFの予想値(「期待値」という表現が業界的に一般的)の変化です。もっと具体的にはCFの期待値からのバラツキがどれほどあるか、ということになりますから標準偏差または分散をみればよい、ということになります。

すなわち、投資の判断は

期待収益率E(R)とその標準偏差(分散)σによって決まる

と考えます。
なお、収益率の「平均」と「分散」の2つの変数を中心に考える投資理論を「平均-分散分析」と総称します。

(投資家側の考え方)
一般的な投資家はリターンとリスクの組み合わせをどう評価するのでしょうか?そのために

投資家の主観的満足度が等しいリターンとリスクの組み合わせ=効用無差別曲線

を考えます。効用無差別曲線とはリスク・リターンを座標軸とする平面で、異なるリスク・リターンの組み合わせに対して同じ満足度となる点をつないだ曲線です。さて、この効用無差別曲線は投資家のタイプによって異なります。通常は

 ・リスク回避的投資家
 ・リスク愛好的投資家
 ・リスク中立的投資家

の3パターンがあります。リスク回避的とは「同じリターンならリスクの小さい方を選ぶ」行動のことです。「リスクが1単位増えるなら、それに見合うリターンの増分はより大きくないと投資しない」行動だともいえます。リスク愛好的とは「同じリターンならリスクの大きい方を選ぶ」人です。「リスク中立的」とは「同一のリターンに対してどのリスクでも関係がない」場合です。当然ですが世の中は「リスク回避的」と考えてよいでしょうから、リスク回避的投資家を前提として考えていくこととします。

(マーコヴィッツの考え方)
マーコヴィッツは、上記の設定の下で不確実性下の資産選択問題を

「期待効用(u=u(E(R),σ))の最大化問題」

として定式化しました。ここでの前提条件は、

①効用関数は収益率の二次形式(二次関数)で表現できること
 または
②収益率の分布は正規分布すること

のどちらか最低1つの条件が必要なことが分かっています。これが満たされると、期待効用は収益率の期待値と標準偏差の2つのパラメータだけで規定され
リスク回避的投資家の期待効用 → 期待値の増加関数
リスク回避的投資家の期待効用 → 標準偏差の減少関数

となることが知られています。

次に、投資の対象がポートフォリオに拡張された場合についてです。


○ CAPM(3)ポートフォリオの場合

3.投資対象がポートフォリオの場合

投資の対象が同時に複数の証券を保有するプール、すなわちポートフォリオの場合のリターンとリスクは、たとえば資産数=i,jの2種類の場合、以下のようになります。

 ・収益の期待値は、複数の証券の収益率Ri、Rjを、保有割合Xi、Xjで加重平均したもの  
 ・収益の分散は、Xi2・σi2 + Xj2・σj2 + 2・Xi・Xj・σijとなります。
σは標準偏差、σij は両者の共分散です。

この式は資産数が増えても変わりません。

(ポートフォリオの分散効果)
RiとRjの変動がまったく同一パターンならば、すなわち両者の相関係数が1なら

ポートフォリオのリスクは2証券のリスクの単純な加重平均になります。

相関係数が1ではないかぎり、ポートフォリオ全体のリスク(分散)は単純な加重平均よりも低します。図形的にいうと、収益率の「平均-分散平面」ではさまざまな投資比率の下でのリスク・リターンの組み合わせが双曲線になるのです。

(最適ポートフォリオの決定)
このことと、前回に説明したリスク回避的な投資家の右上がりの効用無差別曲線を見比べると、最適ポートフォリオを決定することができます。すなわち、投資が可能な点の集合は双曲線の線上またはその内側だけです。一方、リスク回避的投資家ならば同じリスクならできるだけ高い位置の収益を求めたい。すると最適なポートフォリオは右上がりの効用無差別曲線と双曲線の投資可能集合との「接点」で決まることになります。この接点で決る最適ポートフォリオを接点ポートフォリオといいます。

(N個の証券の最適ポートフォリオの選択)
ポーフォリオに含まれる証券の数がN個に拡張された場合でも、上記の説明は基本的に同じです。空売りが無制限に許されているならば、双曲線の内側が投資可能集合になります。ただし双曲線上のポートフォリオは「同じ収益率を他のポートフォリオよりも最も小さい分散(リスク)で実現できる」ので、分散投資の効果がもっとも大きい点になります(最小分散境界)。
 リスク回避的投資家は最小分散ポートフォリオのうち、双曲線の上半分しか選択しません。

下半分では、同じ分散でも期待収益率が上半分より劣るのでもともと選ばれないからです。この「上半分」の部分を「効率的フロンティア」とよびます。なお、双曲線の頂点はすべてのポートフォリオの中でもっとも分散が小さいので「大局的最小分散ポートフォリオ」とよばれています。

今まではリスク資産だけでポートフォリオを組んだケースを説明しました。次は、無リスク証券を導入した場合の最適ポートフォリオの決定について説明します。


○ CAPM(4)無リスク資産がある場合

4.無リスク資産(安全資産)が存在する場合

前回までは収益の変動が不確実な危険資産しか存在しない場合を考えていました。ここでは「将来収益の変動がないという意味で無リスクな資産(安全資産)」を考察に導入します。無リスク証券の収益率をRfとすると、リスク(σ)がゼロの証券です。平均-分散平面では収益率を示すタテ軸上(y軸上)のみに位置します。

無リスク証券Rfと効率的フロンティア上の点Sを含むポートフォリオは、一定の割合でRfとSを含むわけですから、平均-分散「平面上」でRfとSを結んだ直線上のどこかに存在します。ただし無リスク証券がある場合、平面上のどんな点でも選ばれるわけではなく、Rfから効率的フロンティア上に引いた接線の上の一点しか選択されません。接点TよりE(R)が低い投資も実行可能ではありますが、効率的ではないから選ばれません。また接点Tより上の点ではそもそも投資が実行不可能です。この接点Tを「接点ポートフォリオ」とよびます。ポートフォリオをもっと特定すれば、
 
 ・Rfの場合 :全額無リスク証券に投資。 
 ・Tの場合  :全額接点ポートフォリオに投資。
 ・RfT間の点の場合 :一部を無リスク証券、残りを接点ポートフォリオに投資。
 ・RfTの延長線上の点の場合:Rfで借入した資金と自己資金の合計をTに投資。

といった具合になります。なおリスク回避的投資家が、線分Rf-T上のどこに投資するかは「効用曲線の位置と形状に依存する」ことになります。

なお接点ポートフォリオT(リスク証券の中身の割合)の決定には投資家の効用関数(選好)は関係してきません。接点ポートフォリオは、N個の証券の予想(E(Ri)、σi、σij)と無リスク利子率Rfが与えられると決まってしまいます。

すなわち、無リスク証券が存在するかぎり、無リスク証券とTとの組み合わせの決定は、「リスク証券の中」の最適な組み合わせの決定とは分離できるのです。

これを「分離定理」といいます。

次は、議論を市場全体に拡張した場合を考察します。


○ CAPM(5)市場への拡張

5.市場モデル

ポートフォリオの分散投資効果をより明示的に分析するには、分散投資によって消去不可能なリスクと消去可能なリスクとに分けて計測するのが自然です。そこでリスクを以下のように定義します。

 ・総リスク = 分散投資によって消去不可能なリスク + 分散投資によって消去可能なリスク

これをシャープが表現した市場モデルは以下のとおりです。

 ・E(Ri)=α+β・E(Rm)+e
  
個々の証券の収益率E(Ri)の動きは共通の指標と線形関係(=α+β・E(Rm))にあると仮定した、単一指標モデルです。マーコヴィッツ流のポートフォリオ選択理論を大規模なポートフォリオ分析に効率よく適用するためのものです。ただ当時単一指標として市場ポートフォリオや市場指数をどのように選択するかは、経験的な判断に任されていました。後に資産価格理論が発展することで、こうした市場モデルに基礎付けが与えられることになります。

ここで、αとβは正確な線形関係を示すパラメータで、個々の証券に固有の数値です。βは収益率にシステマティックな動きを与えるので「システマティックファクター」といいます。また(α+e)は証券に固有の動きを示すので「非システマティックファクター」とよびます。ただしαは定数で、eは確率変数です。eはシステマティックファクターではなく確率変数なので期待値はゼロ、共分散ゼロです。したがって上の式は
 
 E(Ri)=α+β・E(Ri)
 
となります。この関係を表す直線を「証券特性直線」(SCL)といいます。βは(マーケットの変動と個別証券の変動の)回帰分析から実証的に求められます。

 βi=Cov(E(Ri),E(Rm))/σm2

すなわち、βは「証券iの収益率と市場収益率との間の共分散」を「市場の収益率の分散(σm2)」で除したものになります。また個別証券の分散は

 σi2 = βσi2σm2 + σe2

です。第一項を「システマティックリスク」、第二項を「非システマティックリスク」とよびます。

次はCAPMを導出するための前提条件について説明します。


○ CAPM(6)CMLとCAPMの前提条件

6.資本市場理論とCAPMの前提条件

 (Modern Portfolio Theoryと資本市場理論)
「個別証券のリスクとリターンの予想」とこの2つのパラメターに対する選好態度を所与としたとき、個々の投資家はどのようにして期待効用を最大にする最適なポートフォリオを選択すべきであるかというものでした。これをMPT(現代ポートフォリオ理論)といいます。
 
 一方、すべての投資家がMPTにしたがって行動すると仮定した場合、人々の個人的に合理的な最適化行動が集計された市場においてリスク証券の価格がどのように形成されているかを分析する理論を資本市場理論といいます。市場が均衡状態にあるとき、証券の価格はどのように決まっているのか、を問題にするわけです。

この理論の中心は、シャープ、リントナーに始まるCAPM(資本資産価格モデル)とそれに続くロスのAPT(裁定価格理論)です。以下、鍵となるCML(資本市場直線)とCAPMの前提条件について説明していきます。

(CML:資本市場線の導出)
前提条件として以下を準備します。

①すべての投資家はリスク回避的であり、期末資産の総期待効用の最大化を目的としています。また、投資家は最適ポートフォリオの選択には投資収益率の期待値と分散という2つのパラメータだけで選択可能であることを知っているものとします。
②証券市場において、投資家はプライステーカーです。
③すべての証券は分割可能、完全な流動性があります。
④証券保有にかかる税金や取引コストはありません。
⑤リスク証券の空売りは無制限に可能とします。
⑥すべてのリスク証券の数量は期首において定数とします。

これらの意味は次のとおりです。①はMPTから求められる条件です。②は一部の投資家が価格支配力を持っていると効率的な資源配分が可能にならないというミクロ経済学からの必要条件です。③は、もしこれを仮定しないと一部の証券に流動性制約や代替性がないことになり、価格を決めることができなくなるからです。④についても、税制や証券の発行コストが無視できない場合、それを前提とした投資家行動によって競争的市場が成立しなくなるためです。⑤はポートフォリオフロンティアにおける投資を全て可能にするための条件です。⑥は、これが仮定されないとモデルの初期値が定まらず、モデルを解くことができなくなるからです。

以下の2つの条件はMPTにおける仮定への追加です。

⑦すべての投資家はE(Ri)、σ(Ri)、Cov(E(Ri),Rj)について同質的予想を持っているものとします。
⑧すべての投資家は、同一の利子率Rfで、好きなだけ貸借できるものとします。

仮定⑦と⑧により、すべての投資家にとって効率的フロンティアは同一となり、無リスク資産Rfが存在するときの最適ポートフォリオはRfT上で選択されることになります。
このとき、個々の投資家のポートフォリオは異なっていてよいのですが、それは無リスク資産とリスク証券との保有割合の違いだけであり、接点ポートフォリオはTで同一となっています。

このときTは、市場に存在するすべての証券を含み、かつその構成割合は市場全体における各リスク証券の構成割合と同一となっています。このようなポートフォリオTを「市場ポートフォリオ」(M)とよびます。

Mは市場の均衡状態を前提としています。なぜなら、均衡でないとするとリスク証券の需給が一致しておらず、保有されていないリスク証券が存在することになってしまうからです。

市場全体が均衡していなければ、リスク証券の構成比が市場全体と等しいMにおいても同じ比率で需給が不均衡となっていることになります。

このとき、効率的ポートフォリオpの期待収益率とリスクの間には以下の均衡関係が成立しています。
 
E(Rp)=Rf+((E(Rm)―Rf)/σm)・σp
 
直線RfM(の延長線)は「資本市場線」(CML)とよばれ、効率的ポートフォリオの期待投資収益率は、均衡において、期待投資収益率の標準偏差によって測られる投資リスクとの一次の正の関係にあります。

CMLの勾配は、リターンを増やそうとすれば、どれだけのリスクを追加負担しなければならないかを示しています。したがって、この傾きを

「リスクの市場価格」

といいます。これに対してRfは「安全証券への投資額」が「安全証券の発行量」と等しくなる「均衡利子率」を示すものであり、

「時間の市場価格」

とよばれています。

次はCAPMそのものを説明します。


○ CAPM(7)CAPMの説明

7.CAPM

CMLの式は投資家のポートフォリオの期待収益率と市場ポートフォリオの関係を示しています。一方で、個別証券の期待収益率と市場ポートフォリオとの関係は
  
 E(Ri)=Rf+((E(Rm)-Rf)/σm)・Cov(E(Ri),E(Rj)/σm

となります。これは、市場の均衡状態における個別証券の期待収益率は、「無リスク証券の利子率」に「この証券のリスク度に応じて決まるリスクプレミアム(リスク1単位当りの市場価格×リスク量)」を加えた値に等しくなる、ということを意味します。これを書き換えると

 E(Ri)=Rf+(E(Ri)-Rf)・(Cov(Ri,Rm)/σm2)

となります。(Cov(Ri,Rm)/(σm2)は「ベータ・リスク」または単にβと呼ばれ、市場ポートフォリオのβを1.0とスケールして個別証券のリスク量を測定したものです。したがって均衡状態において
 
 E(Ri)=Rf+(E(Ri)-Rf)・β

が成立しています。この式がCAPMを表すものであり、導出者の名を冠して「シャープ=チントナー型のCAPM」とよびます。この関係をβ-E(Ri)平面において表した直線を「証券市場線」(SML)といいます。

SMLはRfを始点として、M(E(Rm),βm)を通る直線です。市場ポートフォリオも一つのリスク証券ですから、その期待収益率は無リスク利子率よりも大きいはずなので、SMLは右上がりのハイリスク・ハイリターンの関係にあります。CAPMは、個別証券は均衡状態においてこのSML上に位置するように価格付けされることになることを述べているわけです。上記の式をさらに変形すると

  E(Ri)=Rf+((E(Ri)-Rf)/σm2)・(Cov(Ri,Rm))

とも書けます。(Cov(Ri,Rm))を「共分散リスク」といいます。なお、前節のシャープの市場モデルにおけるβを回帰分析で推定したとき、βは

 βi=Cov(E(Ri),E(Rm))/σm2

でした。これは、Mが等しいかぎりCAPMのβに等しくなります。このことからCAPMのβは「システマティック・リスクの尺度」とよばれます。
 βが個別証券のリスク尺度となるのは「分散投資をすれば消去可能なリスクを負担しても、市場はリスクプレミアムを支払わないことを反映したものです。あるいは、標準偏差をリスクの尺度とするCMLが効率的ポートフォリオに関してのみ成立し、個別証券にあてはまらないのは、標準偏差(総リスク)が分散投資家にとってリスクではないことの反映でもあります。多数の銘柄に分散投資することによって消去可能な個別銘柄の非システマティックリスクは、分散投資家にとってはリスクではありません。もしCMLが個別証券にも当てはまれば、それは分散投資によるリスク軽減効果が存在しないか、あってもそれを市場が評価しないことを意味しています。

CAPMによると、均衡状態では個別証券はSMLやCML上で価格付けされていなければなりませんから、もし実際の価格がこの直線上にない場合は「買い」か「売り」の対象と判断することができます。

すなわちCAPMを投資管理に用いることができるわけです。もし個別証券がSMLより上方にあれば予想収益率が期待均衡収益率より高い=過小評価されていることとなり「買い」となります。逆に下方にあれば過大評価ですから「売り」になります。この『予想収益率と期待均衡収益率との差をアルファ』とよびます。なお、CAPMの式を書き直して

  Ri-Rf=αi+βi・(E(Rm)-Rf)+e

と超過収益率の形にした場合、この直線を「特性直線」とよびます。もしCAPMが成立していれば切片αはゼロです。これは回帰分析によりパラメータαとβを推定・検定することで誤って価格付けされているかどうかを調べることができます。すなわち、CAPMは投資管理の尺度を与えているともいえるのです。
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