おざわようこの後遺症と伴走する日々のつぶやき-多剤併用大量処方された向精神薬の山から再生しつつあるひとの視座から-

大学時代の難治性うつ病診断から這い上がり、減薬に取り組み、元気になろうとしつつあるひと(硝子の??30代)のつぶやきです

シューマンの『マンフレッド』序曲にみる強烈な人間中心主義

2024-04-29 06:19:16 | 日記
生への意志と絶えざる破滅からの誘惑、こうしたまったく矛盾したもののあいだで揺れ動き、やがてバランスを失い、爆発し、ついには自らを滅ぼしてゆくという人間の姿には、人を惹きつけてやまない魅力がある。

『マンフレッド』序曲は、まさにバランスを失って破滅へと向かう熱情の奔流そのものである。

そうであるがゆえに、私たちは音楽そのものを超えて、目をそらすことの出来ない激越した精神のドラマを見出さずにはいられないのであろう。

ロベルト・シューマン(1810~1856年)がギリギリのところではあったものの、まだ魂のバランスを保っていた頃に、『マンフレッド』序曲は書かれた。

さて、近代資本主義の成立とともに、その資本主義の余剰を消費するためだけの存在であるかのように「芸術家」という不思議な職業が出現する。

この存在は、資本主義の温情によって生かされているところがありながら、国家や資本主義という現実を否定して、現実をはるかに超えた美しい理念の世界を提示するのである。

しかし、結局のところ、理念は現実の前に斃れ、ベートーベンやシューベルトといったロマン派を切り拓いた巨匠たちは貧困のなかで死んでいった。

「結局、神の恩寵に頼らず、人間は自らの手で人類そのものを救済することは出来ないのであろうか?」
というのがロマン派の根源的な煩悶であった。

1848年、シューマンは、長らく夢見ていた、文学と音楽が和合した究極の理念を表現する作品を作ろうと試みる。

ドイツ語の語りと音楽とが一致して、人生そのものを芸術として示す作品に取りかかる。

それこそ、幼少の頃から愛読していた、イギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロン(1788~1824年)の作品のなかで、最も自分自身の分身と思えた『マンフレッド』のための劇音楽であった。

自らの過ちで恋人アスターティを死なせてしまった主人公マンフレッドは、魂の平安を得るために、
アスターティなどそもそもいなかったのだ、と、「忘却」を求めて、魔女と精霊たちを召喚するのだが、
「何かを与えることは出来るが、あなたから奪うことが出来るものは、あなたの命だけだ」
と言われてしまう。

ここから、死とはすなわち忘却なのかという哲学的な問答が交わされるのだが、結局マンフレッドは、誰に強制されるのでもなく、ましてや、契約の力で命を奪われるのでもなく、自ら死を選んでしまう。

バイロンは
「あまりにも人間的な罪を償うために、自らの意志で命を絶つ」というロマン派的解決を詩劇『マンフレッド』を通じて示したのかもしれない。

それは、自らの運命を神や精霊といった超越的なものに委ねるのではなく、
「自分の運命は自分だけが左右できるものだ」という強烈な人間中心主義である。

そして、
「私を滅ぼすことが出来るものは、私だけなのだ」
という叫びに、シューマンは深い感動を受けるのである。

シューマンは『マンフレッド』序曲について
「これほど、愛と情熱を注いだ作品はありません」
と友人に書き送っている。

また、実際、この曲を指揮した折、シューマンはスコアの存在さえも忘れ、自分自身がマンフレッドその人になったかのように没入しきっていた、と伝えられている。

この音楽は、悲劇性に満ちた激しい序奏で始まる。

そして、そこから展開されるのは、愛も忘却も得られないのならば、いっそのこと自らが滅びるとともに世界そのものも滅びれば良いという、ロマン派の魂が最悪の形で顕現する暗い欲望そのものである。

音楽は生への意志と死を求める情動とのあいだで引き裂かれるのである。

『マンフレッド』序曲こそ、まさにバランスを失って破滅へ向かう熱情そのものであろう。

シューマンの魂のバランスが限界に瀕していることも、この曲から、わかるように思う。

もしかしたら、人間は生まれたときに主題を与えられており、人生はそれを変奏しているだけなのかもしれない、と思うことがある。

人生の折にふれて浮上する旋律がいかに表面上異なって聴こえようと、その根底に在る旋律は生まれ落ちたときに与えられた、最初の主題そのものなのである。

それは、シューマンにとっては、生きる喜びや愛の歓びの旋律ではなく、「喪うこと」をみつめつづけた孤独な魂に特有な通奏低音だったのかもしれない。

ここまで、読んで下さり、ありがとうございます。

子どもの頃に読んだ、ビートたけしさんの文庫本を懐かしくて何冊か買いました( ^_^)

今回の見出し写真はそのなかのひとつです(*^^*)

昨日は暑かったです^_^;

体調管理に気をつけていきたいですね( ^_^)

今日も、頑張り過ぎず、頑張りたいですね。

では、また、次回。


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