おざわようこの後遺症と伴走する日々のつぶやき-多剤併用大量処方された向精神薬の山から再生しつつあるひとの視座から-

大学時代の難治性うつ病診断から這い上がり、減薬に取り組み、元気になろうとしつつあるひと(硝子の??30代)のつぶやきです

層構造を持った人間の脳と意思決定

2024-07-09 08:26:20 | 日記
現在の世界のなかで、私たちが多くの誤った決断を下すのは、5000万年の哺乳類の進化の過程で私たちの祖先が直面した状況に、脳が、適応するようになっているからなのかもしれない。

進化はもっぱら、既存の組織の上に積み上げられ、古い組織に在った役に立つ機能は何であれ、新たに進化した組織の中に維持される。

爬虫類や哺乳類、霊長類の祖先の脳において、上手く機能した神経回路は、人間の脳に今も組み込まれており、人間性を生み出す重要な役割を果たし続けているようである。

爬虫類の脳から生じた基本的な身体制御の機能は、新皮質が司る意識の外側で自動的に発生し、新皮質の制御を必要としない。

哺乳類や霊長類の祖先に由来する情動反応や動機の多くは新皮質に伝わり、ある程度その支配は受けるものの、身体制御機能と同様に自動的に発生する。

一連の進化の過程で、情動は認知よりも速く発生し、言語や理性的思考を寄せつけない速さで他者や当人に情報を伝える。

物事に対する私たちの感じ方は、深く迅速で、たとえ詩人ががどれほど頑張っても言葉で言い表すことは難しいだろう。

人間が置かれる状況で起きる悲劇の多く(→ごくたまに栄光)は、もともと人間に備わっている理性よりも情動に基づいた意思決定から生じているようである。

いつも、理性を司る皮質はか弱く、情動を司る辺縁系の荒々しさや無頓着さに苦労しているのである。

理性的な皮質と情動的な辺縁系との間で繰り広げられる果てしない戦いの中心にあり、戦いの結果の鍵を握るのが、扁桃体である。

さまざまな機能を果たし、脳の奥深くで他の部位と密接に繋がっている扁桃体は、恐怖、快楽、怒りといったきわめて強い重要な情動のすべてが集まるところなのである。

理不尽な恐怖や、根拠のない怒り、中毒的な快楽といった感情の強さからもわかるように扁桃体は、反応が早いだけでなく反応を持続させ、支配的なものにしている。

皮質からある程度独立して機能しているために、扁桃体は、自動的で制御できないと思われる人間の行動を引き起こすのである。

扁桃体が生み出す理不尽で、自動的な恐怖、怒り、快楽追求は、進化における過酷な戦いにおいては、命を救ってくれたかもしれないが、今となっては、大抵の場合、長期的視野に立った、理性的な意思決定をする際に悪い影響を与えている。

しかも、そのような情動を変えたりコントロールしたりするのはきわめて難しいのである。

現代の認知科学と神経画像処理技術のおかけで、実験に基づく量的なエビデンスが得られ、人間の脳の異なる部位の説明が出来るようになり、ダーウィンやフロイトの洞察が確りと裏付けられた。

ダニエル・カーネマンはノーベル賞を受賞した研究をまとめた『ファスト&スロー』(Thinking,Fast and Slow)
を発表し、その中で、層構造を持った人間の脳が日常的に行う認知と、それがもたらす結果について論じている。

カーネマンは、フロイトと同様に、意思決定の形態を2つに分類している。

システム1は素早く、自動的に働き、感情的、かつ、直感的で、人間に本来備わっている思考形態に近い。

システム1は、使いやすい形に凝縮された古来の知恵に相当する。

システム2は、もっと新皮質の機能に近く、その思考は遅く、理性的であり慎重で、エビデンスに基づき、論理的法則に従った科学的なものである。

両システムとも、それぞれに相応しい場面においては、適切に機能する。

システム1の思考は、人類が進化の戦いの中で、目立たない片隅から、舞台中央の座を得るまでの長きにわたって生き残るための支えとなった。

しかし、今では、私たちが作り上げた、以前とは大きく変化した新しいステージで、この後、生き残っていくうえでの、大きな障害に、なっているのである。

システム1の思考は、広く知られた新しい問題に対して、迅速かつ柔軟に使うことが出来ないために、私たちの社会が陥りがちな、しかし自滅的な思考の源泉となりがちである。

自己中心的で攻撃的な本能は、賢い新皮質に大きく助けられながら、数百万人という人口のまばらな世界から、混み合った70億人の世界に私たちを放りだした。

しかし、その70億人が共に平和に、持続可能な形で今の時代をどう生きることが出来るか考える上で、そうした本能は、危険なほど時代遅れなものになってしまっているようである。

システム1の脳を最新の状態にするには、少なくとも数万年という進化の期間が必要だろうが、私たちにそのような時間的余裕は無いであろう。

私たちは、今後、あらゆる点で、最近発達した人間脳であるシステム2による理性的思考が、より原始的なシステム1の脳構造に組み込まれた反射的行動をどうにかして、うまく、コントロール出来るようにする必要があるだろう。

私たちが、これからも、生き残りたいと思うのであれば、理不尽な衝動や欲求実現の幻想を上回る、理性的な心の力を取り戻さなければならないのかもしれない。

ここまで、読んで下さり、ありがとうございます。

今日も暑いですね^_^;

今日も、頑張りすぎず、頑張りたいですね。

では、また、次回。