いつもいつも、思っていた。
すぐに大きくなって、離れていってしまうだろうギャバンと、もっと遊びたいと。
もう何年も、近所の公園へ出かけることも、ましてや遠出なんて、行く気にもならなかった。病気のせいでもなんでも、貴重な時間を無駄にしている気がしてならなかった。
春休みのギャバンと、出かけるなら、今日。
おばあちゃんの面会にいって、おばあちゃんの家は私にとっての1番のパラダイスで、
そこをギャバンに見せたい、見せたいと思っていた。
チャンスは前にもあった。11年前に亡くなったおじいちゃんの法事へは、いとこが誰も来なくても、親世代だけだと言われても、どうしてもいこうと思い、行こうとしたが、当日具合が悪くなって、なくなくあきらめた。
私の子供の頃は父側も母側も、盆や正月、法事や墓参りの時期には、大勢が集まるものだった。
時代、かな。状況は色々と変わり、何もかも、孫世代の私たちは呼ばれなくなった。
これでは、先祖代々のことは、誰が受け継いでいくのだろう。
私が行ったと知られるとマズイようだったのでこっそりいってきた。
案の定前日まで寝込み、しんどくてしんどくて、とても行けそうになかった。約束してたギャバンと、「明日、やめていい?ほら、雨やったし、下ぐしょぐしょやし‥最高気温13度で‥寒いかも」と告げてギャバンも了承してた。
大事な約束だったのに。また体調のせいで、行けない。こういう自分が不甲斐なくて情けなくてならない。
でも、黙っておこう。
また明日、もし元気だったら、誰にも内緒で行こう。
すると、頭痛やだるさはすっかりとれ、元気になっていた、朝。「行こう!!」
まずは、お墓参りへ。おじいちゃんごめんなさい、長いことこれんかったね。
水をかけて、お墓でのいろいろを、ギャバンはほぼ知らない。ほんとはお墓参りはこんな手ぶらじゃこないんだよ。
そして、孫世代に絶大な人気を誇る公園へと。
お腹減ったーというので、弁当を買うことに。すると、レストランがガラガラだったので、ここで食べることにする。
ギャバンはカツ丼。私は天丼。
うわ、おいっし。おいし!なにこれ。
おいしさに驚いてる。味噌汁も、ダシがきいてる!
本当に美味しそうに食べている。
それを見ているだけで幸せだ。
ずいぶんゆっくりな食事だったので、これ、山の上にランチしにきたみたいになるで。はよ遊ばんと。そう、このあと、面会なので。
うぉぉ。変わってない、滑り台!この滑り台は服の素材で滑りが変わるのだ!いとこと、何度も実感した。
滑り台の踊り場的なところの下に潜ると雨宿りだってできる。私たちはここのことならなんでも知ってる。
ローラースライダーはなんども滑ったことあるギャバンだが、「高っ!!長!!」
ふふ、そうだろうそうだろう。
急すぎてスピードの調節は難しくて止まるしかないし、ところどころ、ローラーが交換されており、そこでガクンと止まるので怖いらしい。
面白い‥とギャバン。
ヨシャ!!その言葉、待ってた!いただきました!そして誇らしい!
よその公園なら多分ギャバンを見守って終わりだっただろうけど、
子供の私がひょっこりと出てきて、子供の時同様に体が動いた。
石の、幅ひろめの滑り台を、よーいどん、で駆け上がる。
そんな姿に驚いたらしいギャバン。そして、負けたことにもっと驚いている。
母が子供に返っている‥
かなり急なので、これはすべんのは無理やな。とギャバン。
子供の私は、思い切って行く。
すると2か所で腰を打つ。ギャーーー!
つられてギャバンも滑り降りてくる。
またよーいどんで駆け上がる。走って登れるところの上は、サイドにある柵につかまらないと、トップまで行けない。
もちろん私が勝つ。
もう一回やる。
もう、勝つことに意地になり始めているわたし。
柵をつかみそこね、ずでーんとコケて、下まで落ちた!
ギャバンが、「ギャーーーってゆうてママが落ちていった」と後から言ってた。
しかも後から、「あの滑り台、下から登ったらあかんって書いてあったで‥ていうか普通下から登ったらあかんよな、滑り台って‥」「昭和のときはよかったん??」
しまった‥
その後も、鎖場や、タイヤや、足を埋め込んである坂道などを競走して駆け上がり、
ギャバンは楽しい楽しいと何度も、なんども言ってくれた。
いつもつまらなそうにするのに、
今日はすごく喜んでいる。
私が、一緒に遊べたのが、よかったのかな‥
と思うと、遅ればせながら、もっともっと前から一緒に遊んできたらよかったけど、
これからも、遊んだらいいやん!どんどん元気になって、走り回ったらいいやん!
そう思った。涙が出るほど、嬉しい時間だった。
おススメのジュースを二つ買って、
これから面会に行くので用意しておいた着替えで全身着替えて、帰り道へ。
ここは、畑やったよ、あれが家、ここが田んぼで、ママがつっこんで動けなくなったとこ
この川がママが入ってこけて動けなくなったとこ、など紹介しながら進む。
おばあちゃんて、すごい人なんやなぁ、とギャバン。色々見てそう思ったみたい。あの一階部分に、僕らが住んだらはできひんの?と、まさかの別荘地化説!
そんなに気に入ったの。
私の子やね。さすが❤️
その偉大なおばあちゃんは、面会でお墓参りしてきたよ、と言うと、何か言いたそう。何か、かなりの声量でしゃべっているのに、唇が閉じれなくて、聞き取れない。2回言ってくれたけど、聞き取れない。うーーーーん。すると、目がぼんやりとして、はぁーーっと息の音。ごめんね、理解、したかったな。
ギャバンからのお見舞い動画も、見せておく。伝わったかな。
おばあちゃん、また来るから。
ギャバンも、楽しかった、また来たい。って。
そうそう、テニスコートでテニスをしている中上級者っぽい人がいて、いいなーテニスしたいなー。コート借りてやる??と聞くと、
いや、あの人たちの横でやるのは申し訳ない、だって。そういうとこある。
自宅に帰り、まだ外で遊びたいという。
よかった。外遊びの楽しさ思い出したね。
ゴムひも付のテニスボールをうつ🎾道具で、テニスをする。ママにもやらして。思い切り打たないと全然返ってこないので強打する。というかできた。腰いためて、歩くのもままならなかったとき、テニスもスキーももう二度とできないのかと思った。いろんな「できるようになったこと」がうれしい。
ギャバンも、しばらくたってから見に行くと、ずっと練習をしてすごくうまくなってる。
うまいうまい。運動神経いいね!
というと、
「ママの子やからちゃう」
ウホッ!今なんと!?
いつもうちじゃダメダメキャラなのにそんな褒められ方をするなんてうれしすぎ。
一個一個、復帰していこう。
一個一個
幸せになっていこう。