*殻便*[カ・ラ・ダ・ヨ・リ]*2004-2005

コリアン・ディアスポラ・アーティスト Yangjah の日々の旅をおすそわけ。

初オーディション

2004-11-07 | Performance
今日はAIHALL workshop&performanceのオーディションに行って来た。

とはいってもその振付家の笠井叡さんの公演も一度も観たこともなかったわたし。
ただ、いつもすごいなと憧れを抱いている花嵐のメンバーが皆、
「笠井さんのワークショップはいいよ!!!」
と言ってたのがなぜかずっと心に残っていたのだ。
そして、振付にはいい印象がなく、いつも即興のパフォーマンスをしているわたしは、
「振付っていったい何?」
と疑問に感じ続けていた。

さぶくなると冬眠に向かうわたしにはちょうどいい企画では?と応募を心に決めていたが、わたしの良き相談役の末っ子の妹(彼女もアーティスト、好好みつこさん)になにげなく口にしたところ、「え?」と驚かれてしまった。

「集団行動が苦手やのに、無理せんとマイペースでいいやん。さぶい時は冬眠しな、こころとからだのバランス崩すで!」との直球に「その通り!」とうなずいたわたし。

それでもやっぱりなんとなくこころにひっかかっていた。

それでこの前一緒にパフォーマンスをした美晴ちゃんにも相談したところ、
「とりあえずオーディションだけでも受けてみたら。」との一言に
「それもそうだ。」とまたまた納得したわたし。(主体性がないみたいやね)

というか走り出したら止まらないわたしの気質を自分でもわかっているので、充電する時期も大切だとやっと実感している今日このごろ。

それでもとりあえず応募用紙だけは送り、その後も揺れに揺れ、なんとか今日のオーディションは受けに行った。

笠井さんがどんな人なのかという好奇心だけを頼りに。



初めてのオーディション。
緊張よりも、好奇心が先立つ。
ちょうど知り合いのダンサーも数名来ていて、なんだかますますわくわくしてきた。
トイレに行くと、オーディションが行われる部屋で笠井さんが前屈して頭を垂れている姿が目に入った。笠井さんでも緊張しはるのかな?



そしてオーディション本番。

まずは笠井さんが今回のワークショップとパフォーマンス公演についてお話をされた。
「振付を振り付ける」というテーマに至った経緯(笠井さん自身のダンス経験など)の話を聞いて、想像していたよりも飾り気のない素直な人なんだなと好印象を受けた。
「彗星の先端にいつもなりたい」という言葉が印象的だった。

かるく体ほぐしをした後、「今の自分の状態を即興で踊る」。


そして、笠井さんがその場でつくった振付を皆で踊る。
まずは笠井さんについて踊り、次に笠井さんなしで踊る。
踊ってないはずの笠井さんがまるで本当にいるかのようにその姿を意識しながら。

「記憶をたどらない」
「いつも彗星の先端になる」
「外から動きが流れてくる」

今まで自分が避け、苦手とし、嫌悪していた振付とはなにかが違うらしい。
この時点で、もし受かったら参加しようと決意した。


次に、即興で内からの踊り。

過去に「あーなんであんなことしたんだろ?」と後悔する現在の自分の動きと
「終わったことなんて関係ないさ」とただ今を生きて未来に向かう自分の動きを
交互にするというもの。

一回目はそれぞれ自由なスピードで、笠井さんの合図で交互に踊ればよかったが、
二回目にはそれぞれ一定のスピードで,かつ合図で交互にと言われ、戸惑った。


最後には「地球最後の3分間」という踊りを、ひとりひとりが皆の前で踊る。

死に対して人は拒絶感や恐れを抱くけれど、もし最後の瞬間もこころから開き直り楽しめたら、実は死なないのかもしれないという話をしてくれた。
「彗星の先端になる」というのはそういうことなのかなと思う。

希望者から踊るので、早くしてしまいたいのだが、なんだかためらってしまう。
結局4番目くらいに踊る。(全部で16、7人いたのかな?)

短い時間なのでなんだか思いきり集中して、すぐには呼吸が戻らずインタビューにもむせてしまった。とほほ。
それでも合格通知がもらえ(なんと即答で返事がもらえるシステムだった!)さっきの決意の通り、参加を決めた。

いろんな人が踊るのを見て、笠井さんとのインタビューを聞いて、
やっぱりダンスはいいなあと実感。
からだはまっすぐにその人の情熱をあらわす。

笠井さんは真剣にそれぞれのダンスを観て、ひとりひとりと向き合い、ダンスへの想い、自分のからだ、ワークショップや公演について質疑応答を丁寧に行った。
そしてほとんどの人がオーディションを通過した。ひとりひとりが合格の言葉を受ける度、こころが温かくなった。

振付だけでなくオーディションへの偏見もくつがえされ、すかっとした一日だった。