山崎元の「会社と社会の歩き方」

獨協大学経済学部特任教授の山崎元です。このブログは私が担当する「会社と社会の歩き方」の資料と補足を提供します。

【秋学期 第2回】 会社の将来性評価について

2010-10-04 03:58:45 | 講義資料
 今回のテーマは、企業の将来性を評価することについてですが、先ず、春学期の5月6日の同じテーマの授業で使ったものと同文を以下に引用しておきます。



 よくあるアプローチですが、学生の就職人気ランキングを見てみましょう。先ず、2011年3月大学卒業予定者の就職希望先のランキングです。
 日本経済新聞が実施した2011年3月卒業予定の大学3年生を対象とした就職希望企業調査での人気企業ランキングで、調査期間は2009年11月5日~2010年1月19日、有効回答数8,277(男子3,851、女子4,426)です。

就職人気企業ランキング2010(就職希望企業調査)
【2011年3月大学卒業予定者】
(順位)(企業名)    (人数)
1 東京海上日動火災 835
2 三菱東京UFJ銀 行 657
3 三井住友銀行 590
4 日本生命保険 519
5 全日本空輸 492
6 JTBグループ 458
7 三菱UFJ信託銀 行 408
8 東海旅客鉄道 400
9 三菱商事 399
10 三井物産 396
10 パナソニック 386
12 東日本旅客鉄道 368
13 三井住友海上火災 保険 366
14 みずほフィナン シャルグループ 357
15 ソニー 330
16 伊藤忠商事 319
17 明治製菓 318
18 第一生命保険 317
19 サントリーホール ディングス 313
20 電通 292

<就職転職情報ナビ:http://rank.in.coocan.jp/recruit/nikkei201103_1.htmlから>

 それぞれの企業への就職を希望することに対する賛否は、授業で、口頭で述べますが、まあ、こんなものなのかなあ、という感じです。いずれも「それなりに」立派な会社ですが、勤めてもつまらないだろうなあという会社が幾つか、それに、「これは地雷か?」という将来性に疑問符の付く会社が幾つかあります。
 眠らないで聞いていて下さい!

(注;文章の調子で、「眠らないで」と書きましたが、これまでのところ、私はむしろ眠っている学生が少ないことに驚いています。自分の学生時代と較べてはいけないのでしょうが、獨協大学の学生は、授業にもよく出るし、真面目に話を聞いているというのがこれまでの印象です)

 さて、過去の就職人気ランキングを見てみましょう。
 たぶん、皆さんが既にご覧になっているであろう「リクナビ 2011」の『就職ジャーナル』の記事の一部です。
(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj/student/ranking/ranking_vol02.html)

★1965年
1 東洋レーヨン
2 大正海上火災保険
3 丸紅飯田
4 伊藤忠商事
5 東京海上火災保険
6 三菱商事
7 旭化成工業
8 松下電器産業
9 住友商事
10 三和銀行

★1970年
1 日本航空
2 日本アイ・ビー・エム
3 丸紅飯田
4 東京海上火災保険
5 伊藤忠商事
6 三井物産
7 三菱商事
8 松下電器産業
9 住友商事
10 電通

★1975年
1 日本航空
2 伊藤忠商事
3 三井物産
4 朝日新聞社
5 三菱商事
6 丸紅
7 東京海上火災保険
8 日本放送協会
9 日本交通公社
10 電通

★1980年
1 東京海上火災保険
2 三井物産
3 三菱商事
4 日本航空
5 日本放送協会
6 サントリー
7 三和銀行
8 安田火災海上保険
9 日本生命保険
10 住友商事

★1985年
1 サントリー
2 東京海上火災保険
3 三菱商事
4 住友銀行
5 日本電気
6 富士銀行
7 三井物産
8 日本アイ・ビー・エム
9 松下電器産業
10 日本生命保険

★1990年
1 日本電信電話
2 ソニー
3 三井物産
4 三菱銀行
5 東京海上火災保険
6 三和銀行
7 東海旅客鉄道
8 住友銀行
8 日本航空
10 全日本空輸

★1995年
1 日本電信電話
2 東京海上火災保険
3 三菱銀行
4 三井物産
5 伊藤忠商事
6 東海旅客鉄道
7 三和銀行
8 三菱商事
9 第一勧業銀行
10 富士銀行

★2000年
1 ソニー
2 日本電信電話
3 日本放送協会
4 NTT移動通信網
5 サントリー
6 JTB
7 電通
8 博報堂
9 本田技研工業
10 資生堂

★2005年
1 トヨタ自動車
2 電通
3 ジェイティービー
4 サントリー
5 日本航空
6 全日本空輸
7 東海旅客鉄道
8 日産自動車
9 博報堂
10 本田技研工業

【出典元】
データはリクルートワークス研究所による。1995年卒分までは「大学生男子の人気企業調査」、2000年卒分は「大学生の企業イメージ調査」、2005 年卒分は「採用ブランド調査」より。1965年卒~1995年卒分は男子学生のみ・文系のランキング、2000年卒、2005年卒については「男女計」の 全体のランキング。表記している社名は、ランキング発表時のもの(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj /student/ranking/ranking_vol02.html)



 さて、上記の変遷を見て何を感じますか?しばらく、考えてみて下さい。



 尚、先ほどの記事には、「10年後に元気な企業はどこ? 山崎元氏に聞く」というコラムがついていました。
 取材の際に何をお話ししたのか本人は忘れていますが、コメントを部分的に引用しておきましょう。時間があれば、記事全文をお読み下さい。
(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj/student/ranking/ranking_vol03.html)
 ちなみに、もう一方、勝間和代さんが同様の取材に答えたコメントも載っています。「業界が伸びるか、ではなく、会社が、自分が伸びるか、に視線を」、「就職活動は恋愛に似ている」といった言葉が載っています。こちらも是非、読んでみて下さい。
(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj/student/ranking/ranking_vol05.html)


 さて、以下は、私のコメントです。
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かつてファンドマネージャーという仕事をしていて、あらためてわかったのは、将来の成長企業を見極めることの難しさでした。10年後の成長業界や成長企業なんてわかりっこない、というのが正直な感想です。「将来の成長産業に」というのは就職活動ではよく言われることですが、やはりよく言われる「そのときの人気に振り回されてはいけない」という言葉には共感できる一方、「将来の成長産業や企業に入らないと」という言葉は現実的ではないと言わざるを得ません。
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そんなことより重要なことは、10年後に自分自身はどうなっているか、ということでしょう。自分が身につけたスキルや知識は、確かなもの。むしろこっちこそ意識すべき。その会社に入ったとき、自分はどんな社会人になっていたいか。それをもっと真剣に考えたほうがいい。例えば、10年目の先輩はどんな仕事をしているのかを知る。それは自分がやりたい仕事なのか、自分が目指したい姿なのか。それを見極めるべきです。
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20 代前半で職業を決めなければいけないのは大変なこと。だからこそ私は、5年ほどは試行錯誤していいと思っています。だいたい企業や仕事の情報といっても、すべての情報が手に入るわけではない。外から見えている企業や事業と、実際に中に入ってやってみるのとでは違うことも多い。やってみないとわからないわけです。
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<今からこれをしておこう! 山崎 元氏からのアドバイス>
大事なのは、10年後に業界や会社がどうなっているか、ではなく、自分がどうなっているか。自分の10年後の姿を意識すること。
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 敢えて自分でツッコミを入れるなら、10年後に元気な企業は?という質問に正面から答えずに、話題を逸らしています。
 私の認識について、どう思うかについても、考えてみて下さい。
 続きは、授業で。

  以上

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