山崎元の「会社と社会の歩き方」

獨協大学経済学部特任教授の山崎元です。このブログは私が担当する「会社と社会の歩き方」の資料と補足を提供します。

【秋学期 5回目】 女性のキャリア・プランニングを考える

2010-10-27 18:09:17 | 講義資料
 前回、「28歳」と「35歳」という二つの年齢を軸にして、キャリア・プランニングの一般論についてお話しした。この考え方は、本講座でお伝えしたいと思っていることの中核をなすものであるが、十分考慮されていない重要な要素がある。
 それは、女性の場合に、キャリア・プランニングをどう考えたらいいか、という問題だ。特に、結婚・出産、一つに絞るとすると出産の問題をどう考えるかだ。

 例えば、会社で働く女性が、(A)25歳で出産するのと、(B)35歳で出産するのと、どちらがいいだろうか? もちろん、現実の人生の事情は人それぞれであって、簡単にパターン化できるものではないが、プランニングとしてどちらがいいかを考えることは有益だ。
 私(山崎)は、(A)を支持するが、学生諸君はいかがだろうか?
 私が、(A)を支持する上でポイントとなった考え方は、「機会費用」の概念だ。ご興味のある方は、「機会費用」について調べてみて欲しい。

(※)以下に、参考用の拙文を掲げる。「ダイヤモンド・オンライン」(10月19日)に掲載された文章だ(http://diamond.jp/articles/-/9782)。
 図は国税庁発表の「民間給与実態統計調査」(平成22年9月)から採った。

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「サラリーマン年収5.5%減で考える生活防衛手段」

<衝撃の5.5%減>

 民間勤労者の所得の実態を調べて、国税庁が9月に発表した「民間給与実態調査統計」によると、昨年12月末時点での民間給与所得者の平均年収は、前年から24万円(千円単位四捨五入。以下同じ)減って、406万円だった。調査開始以来、幅も率も最大の下落だという。
 5.5%減とは衝撃的だ。昨年12月末時点で消費者物価は対前年比-1.3%だったからこれを差し引くとしても、実質-4.2%もの大幅悪化だ。この種のデータについては、「実感」があるとか無いとか、感じ方に関する曖昧な話になることが多いが、これだけ大きな下落だと、多くの勤労者は生活条件が「実感として」悪化したと感じているだろう。
 昨年は、リーマンショック後の金融危機の影響を最大に反映している時期なので、今年も同じくらいのインパクトで悪化することはないだろう。しかし、完全失業率は昨年12月の5.2%に対して、今年の8月で5.1%とほとんど改善していない。先般、日銀が日銀としては異例ずくめの「包括緩和」に踏み切ったことからも想像できるように(内容的に異例であっても、規模とスピードの不十分さは「日銀的」だが)、今後、再び景気が悪化するリスクもある。
 事態がここまで酷くなると「生活防衛」という単語が頭に浮かんでくる。所得環境にこれだけの悪化が明白で、且つ今後にもリスクがあるとなると、サラリーマン皆がこれまでと同じ生活という訳には行かないだろう。とはいえ、具体的に何をしたらいいのか分からないのが、大方の読者の率直な心境ではないだろうか。
 今回は、「生活防衛」のための具体的な手段について考えてみたい。

<女性の稼ぎの厳しい現実>

 生活の経済的条件を改善するにはどうしたらいいだろうか。
 アプローチの仕方として定石は、収入支出の費目の大きな部分から考えることだ。厳密には、個々の項目の金額の大きさではなくて、変化の余地の大きさが問題だが、何ならば大きく変えることが出来るかが分からない場合が多いのではないだろうか。個人差もあるが、一般的に影響の大きそうな項目から考えてみよう。
 個人の生活の経済的条件に最も影響の大きな項目は、いうまでもなく「稼ぎ」だ。
 真っ正面から考えると、自分の労働に対する稼ぎを増やせばいいのだが、転職やスキルへの投資など正攻法での改善は簡単ではない。若い適応力のある人は、成長余地の大きい海外に関わるビジネスに自ら飛び込む「人的資本の国際化」がベストなのかも知れないが、そこまで行けない人も多い。
 そうなると、働きを増やすことを考えることになる。
 一つは、副業だ。勤務先の仕事以外の仕事で収入を得ることが出来るようになると、トータルの収入が増える効果があるし、本業の失業や減給リスクに対するヘッジになることのプラスもある。しかし、現実問題として、多くの企業は社員の副業を就業規則で禁止していたり、禁止していないまでも嫌っていることが多い。副業は、合理的な生活改善策だし、本来は皆が持つべき権利だが、現実には副業を持つことが難しい場合が多い(これは解決すべき大きな問題である)。
 稼ぎに関して、多くの場合現実的な改善策は共稼ぎ、およびその条件改善だ。
 典型的な例では、夫婦世帯で、夫だけではなく、妻も稼ぐ形が考えられる。この場合、妻がどのくらい稼ぐことが出来るかが問題になる。
 国税庁の同じ調査の中に、性別・年齢層別の平均給与(年収)のデータがある。これを見ると、女性の場合、25歳~29歳で289万円、30歳~35歳で291万円と30歳近辺で年収のピークを迎え、その後は、65歳~69歳の201万円へと稼ぎが減っていく。他方、男性の場合は、25歳~29歳の355万円の後にも上昇を続け、50歳~54歳の629万円がピークとなる。年齢区分を取り除いて全男性の平均を見ると500万円、全女性の平均は263万円だ。
 女性勤労者の年収を「勤続年数別」で見ると、大学卒業で直ぐに就職した(且つ転職しなかった)と想定される勤続30年~34年まで、就職からずっと年収は上がり続けている。「10年~14年」(ほぼ30代前半)で289万円、15年~19年で333万円、20年~25年で348万円と上昇し続け、25年~29年の382万円、さらに30年~34年の387万円でピークを迎えている。この調査にはいわゆるフルタイムの正社員以外のパートタイム労働者やアルバイトなどを含むせいもあって男女差は大きいが、勤続年数を重ねることが出来ると、女性の収入も上昇していることが分かる。
 もちろん、女性の場合も、正社員で男性と同じ仕事をし続けていれば、職場の差、個人差はあるものの、年収の動きは概ね男性に準ずるものになるはずだ。
 女性が働くこと、夫婦で共稼ぎすることは、現在、「当たり前」でないまでも「普通」のことになっている。その前提で何が問題かというと、結婚や出産を機に女性が職場を完全に離れてしまって、復職しようとした時の労働条件が悪いことだ。
 女性の出産に対して理解のある会社は増えつつある。その間の給与支給は減ったり途絶えたりするものの1年ないし2年の「産休」を取得して、ほぼ元の仕事・元の条件に復職できる制度を持つ会社が増えた。これは、当然のことだ。
 しかし、こうした制度を利用して出産と初期の産後の育児を終えてから復職して稼ごうとしても、問題は少なくない。
 先ず、母親の仕事時間中に子供を預かってくれる保育園が足りない。これは、各方面から指摘を受け、政府も問題を認識しているのだが、スピーディーに解決する見込みがない。政府は頼りにならないという前提で、何とか手段を講じなければならない。
 保育園が確保できても、問題は終わらない。送り迎えの時間にピタリと間に合わせることが難しいからだ。早出も残業できません、という前提で、フルタイムの仕事をこなすのは、職種によっては非常に難しい。「お迎え」だけでも代わりにやってくれる人手があるといいのだが、核家族ではそうも行かないことが多い。
 付け加えると、母親の体力の問題もある。出産が高齢化していることもあり、仮に夫が協力的であったとしても、家事と職場を両方こなすことの体力的負担は大きい。
 ついでに指摘すると、出産年齢の高齢化は、多くの場合、経済合理的とは思えない。若年で低収入の時期の方が産休の機会コストは明らかに低い。会社の側から見ても、若手社員の2年よりも、中堅社員の2年が空白になることのダメージの方が大きいだろう。出産の高齢化には、晩婚化など他の問題も絡んでいるが、出産・育児をなるべく早い時点に持ってくることができれば、経済的にも体力的にもメリットは大きい。
 これらの問題を解消するためには、生活上の戦略が必要になる。

<住居費その他の生活コスト>

 稼ぎの問題を脇に置いて、支出について考えよう。ここでも大きい方から考えるとすると、住居のコストが問題になる。
 不況と人口減を背景に、不動産価格も家賃もじわりと下がりつつあるが、昨年のような所得環境の悪化があっては、とても追いつかない。低金利ではあるが、将来がデフレで、労働環境も良くない可能性があるとすると、大きな債務を負って、資産を特定の物件に固定する住宅ローンには慎重にならざるを得ない。
 一方、前記のように共稼ぎで子育てをする生活を考えると、住居の立地はなるべく便利な場所がいい。一日に30分通勤時間が節約できるということは、夫と妻とで、往復2時間分の時間の節約が発生することを意味する。休憩に使うにしても、別の稼ぎ(端的には残業代)や自己投資(勉強や交友)に使うにしても、時間には間違いなく経済価値があり、これに鈍感ではいけない。
 また、地方によって生活の事情は変わるが、都市部では、便利な立地に住居を持つことが出来ると、自動車を持たなくても暮らせるようになることのコスト節約効果が大きい。自動車の代金、ガソリン代、保険料、加えて駐車場料金などを考えると、たとえば、東京都内で山手線の内側に住んでいる場合、公共交通を利用し、必要なときにタクシーを使うスタイルの方が毎月のコストはずっと安い場合が多いのではないか。
 近年、若者が自分の車を持つことに対してかつてほど欲求を持たなくなる傾向が指摘されているが、文化的に自動車が既に「格好いい」ものではなくなったことの他に、生活上の合理性を反映したものではないか。

<「緩やかな大家族」のすすめ>

 地域差を考え、個人の住居に関する条件差の問題を考えると、誰にでも有効なアドバイスではないのだが、たとえば、夫婦の両親のどちらかが好立地な場所に持ち家を持っている場合、二世代同居型の住宅で暮らすことは、経済合理性がある。
 都会の住宅コストの大きな部分を占める土地のコストを節約できることに加えて、二所帯が生活上協力できることの効果が大きい。
 具体的には、子供所帯の方の妻がフルタイムで働く場合、保育園のお迎えを親所帯の誰かが代行してくれると、働く上での自由度が大いに増す。子供が小学校に入ってからも、下校後の子供(親世代からは孫)に関して、ある程度の面倒を見て貰うことが出来れば、大いに安心だ。食事等、生活はばらばらであっても、何かあった場合のバックアップが近くに存在することの安心感は大きい。
 親世代から見ても、子供や孫が近くにいることのメリットの他に、病気などのトラブルがあった場合に、子供所帯が近くにいることの安心があるだろう。
 協力し合うのは必ずしも親子でなくてもいいし、親子所帯が同じ土地に住むのではなく、近隣の「スープの冷めない距離」に住んでもいい訳だが、コストを節約し、土地・不動産の生産性を上げるという意味では、二世代住宅のような居住形態・生活スタイルは、もっと工夫されていいと思う。
 もちろん、嫁・姑の確執といった、人類にとって、世界平和の達成にも匹敵する大問題があるので、二所帯の距離感の慎重な調整が必要だが、たとえば、二世代住宅で当面の住居費負担を軽減することが出来れば、子供世代が早く結婚し、子供を生むことが、可能になる。一般に、結婚の条件として、男性側の年収が600万円くらい(都市部で専業主婦世帯として暮らすための必要年収の目途)を求めることが少なくないが、先の調査で男性の年齢別の年収を見ると、20代後半(25歳~29歳)で355万円、30代前半で427万円、となかなかそのレベルに達しない(平均年収が600万円を超えるのは、40台後半だ!)。
 振り返って考えてみると、戦後しばらくのまだ物質的に貧しかった時代は、大家族によって、生活における規模の経済性を発揮することで、多くの家庭が暮らしていた。今再び、当時のような大家族を主流のライフスタイルとして再構築することは現実的ではないと思うが、緩やかな大家族、具体的イメージとしては、漫画のサザエさんの一家よりも、もう少し緩やかなつながりだというくらいの生活スタイルを作ることができると、生活の生産性が上がるのではないだろうか。

<その他の問題>

 生活防衛、一歩進んで生活改善のために、打つべき手はまだまだある。
 夫の稼ぎ、ひいては人的資本の価値をいかに増やすかという「働き方の戦略」の問題もあるし、保険を節約あるいは卒業(特に医療保険はいらないことが多い)するなどの生活コストの改善、加えて、金融資産をいかに運用するか(金融機関のためでなく、自分のために!)といった諸問題がある。
 これらの問題については、また別の機会に考えてみたいと思う。
 
 以上

【秋学期 4回目】 キャリアプランニングのポイントは「28歳」と「35歳」

2010-10-19 16:15:27 | 講義資料
 今回は、年齢とキャリア・プラン(職業人生設計)の関係についてお話ししと思います。以下の文章は、春学期の授業でも使いましたが、「会社は2年で辞めていい」(幻冬舎新書)の原稿の抜粋です(注;今回、何カ所か手を加えています)。

 予習としては、
①28歳と35歳に注目する理由はなぜなのか、
②それは正しいのか、
③例外があるとするとどのような場合か、
④自分の問題としてはどのように考えるか、
といった点について、考えていただけるといいと思います。

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●キャリア・プランのポイントは二八歳と三五歳

 いわゆる「キャリア・プラン」について、基本的なことを述べておこう。
 二二、三歳で大学を卒業してどこかの会社に就職する、という場合の、キャリア・プランを考える上では、二八歳と三五歳の二つの時点がポイントになると思う。卒業がもう少し遅れる場合でも(早く卒業する場合よりも、試行錯誤できる期間が短くなるし、確かに幾らか「不利」ではある)、あるいは、一八、九歳の時点で就職する場合でも、ある程度は同じ事が言えると思う。
 先ず、二八歳までの期間は、自分の「職決め」のための試行錯誤が可能な時期だ。この期間であれば、業種も職種もすっかり変えてしまうような転職を、比較的無理なく行うことが出来る。一方、学生としての情報収集では、「働いた実感」が無いので、最初からズバリ適職を見つけるのは難しい。就職選択の成功を期するとしても、ある程度の試行錯誤が必要な場合があることを、覚悟すべきだ。
 試行錯誤が可能な年齢を二八歳までと計算したのには、大まかに二つの理由がある。
 一つ目は、仕事をある程度覚えるのに二年掛かるとして、三〇代の前半を、仕事を既に覚えた状態でフルに使いたいからだ。
 ある程度は養われているはずの仕事のスキルと経験、気力・体力、まだ失われていない新鮮な感覚、などの点からみて、ビジネスパーソンの実力的な全盛期は三〇代の前半だと思う。日本の多くの会社で、この年齢層が「戦力」として現場でフルに使われている。この時期に、先に述べた「人材価値」につながるような実績を作らないと、その後に、それを達成することは難しい。「三五歳を過ぎると、絶対に無理だ」などという他人の希望をすっかり否定するようなことを言うつもりはないが、かなり難しくなるのは事実だ。「能力が同じなら、年齢が過ぎるほど価値が低下する」という人材価値に対して働く「重力」に抵抗して人材価値を大きく持ち上げることが出来るのは、多くの場合、三〇代前半なのだ。
 二つめの理由は、新しい課題への適応力だ。かつて、ある電機メーカーのリストラ関連の業務を経験した方にお聞きしたのだが、たとえば、工場の労働者を半分にする場合、減らされる予定の労働者に、ソフトウェアの研修を行うと、何人かに一人は、システム・エンジニア(SE)に転換できたという。
 ここで、年齢(ヨコ軸)とSEへの転換成功率(タテ軸)をグラフに描くと、二八歳ぐらいで、大きく下方に折れ曲がったのだという。業務の種類にもよるのだろうが、年齢によって、新しい課題への対応力が変化することは否めない。
 理由はよく分からないし、たぶん、一つではないのだろう。頭の柔らかさの経年変化といった生物的な要因があるのかも知れないし、覚えた事が溜まっていて、追加の知識が入りにくくなるのか。あるいは、年齢が上がると他人に教えを請うことがスムーズでなくなるのかも知れないし、二八歳くらいから家族を持つようになる場合が増えるから、生活環境が勉強に適さなくなるといった、社会的要因があるかも知れない。何れにしても、いつまでも若くて吸収力が豊富な状態ではいられない。
 そして、仮に変化に対応できたとしても、先のような理屈で、人材価値を高く確保することが難しくなる。やはり、二八歳くらいまでには、自分の職を決める必要がある。
 ここでいう「自分の職」とは、たとえばメーカーであれば、単に業種や会社だけではなく、研究なのか、営業なのか、財務なのかといった、もう少し個別の分野に絞り込まれた、自分の時間と努力の投資先のことだ。
 もちろん、この決定を二八歳まで延ばした方がいい、というわけではない。早く決められるものなら、一年でも早く決める方が、吸収力のある若い時期を有効に使うことが出来るし、仕事で実績を上げるために使える時間が豊富だということだ。
 ただし、進路を早く決めることは、その進路にあって有利に違いないが、他の進路の可能性を早く捨てることになる。どのようなチャンスが将来あるかないかは分からないし、いつ、何に自分の職を決めるかどうかについては、賭けに近い判断の要素がある。漫然と時間切れになってしまった場合、ここでも「絶対に」とは言わないが、自分の職業人生のあり方を、自分で自由に選ぶことが難しい状況になってしまうことを覚悟すべきだ。モラトリアムには、時間的期限がある。
 二八歳の次に意識すべき「三五歳」は、目標として、これくらいの間に職業人としての自分の完成を目指し、何らかの仕事の実績を持つことを目指そう、という中間地点だ。
 人材市場の商品としてビジネスパーソンを見る場合、三五歳までの「一般的な部下」としても雇われやすい時期までに、ある程度の人材価値を確立しておきたい。「転職年齢三五歳限界説」は、最近の企業の好景気や人材の流動化でかなり緩和されてきたが、それでも、マネジャーが部下を雇うと考えた場合、自分よりも低年齢な部下を雇いたいとイメージする事が多い。三五歳を過ぎると、「一般的な部下」の道は狭まるので、できれば「何かが出来る人材」でありたい。そのためには、三〇代の前半に仕事上の実績を作っておく必要があるという計算になる。「ひとかどの人物」になる、とまで力まなくてもいいが、一応の人材価値を完成する期限を三五歳までだと考えておくのがいい。
 転職の相談も含めて、ビジネスパーソンの愚痴や相談を聞いていると、三〇代前半の人の悩みが、真剣でかつ深刻な場合が多い。
 ビジネスパーソンは、三〇代前半になると、一応能力の完成を見ていて、はっきり言うと、かなりの個人差がついている。一方、能力は伸びなくても地位が上がる会社が多いので、上司よりも部下の方が能力がある、という状態が、方々で起こる。上司が一番バカに見えて、会社が最も「かったるく」見える年代が、三〇代前半なのだ。
 三〇代前半は人事的な処遇に差が付き始める頃でもあるが、相対的に低く評価された集団が不満を持つばかりでなく、高評価のグループも、十分な差になっていないことを不満に思ったり、上司の仕事ぶりがいい加減であることや、会社の方針が頼りないことなどに、不満を持つ。しかも、会社から見ると、仕事は覚えているし、無理も利く、使い頃の年齢なので、仕事の負担は重いことが多い。「こんなことで、この先いいのか?」と激しく悩む人が少なくない。
 三〇代前半になると、有能な人の多くは、大きく育ったヤドカリのように、会社という殻が、身に合わなくなってくる。三〇代前半は、自分に合った仕事の「場」を求めるという意味での転職の適齢期である。
 これが、三〇代の後半になり、四〇代になり、ということになると、不満に対する慣れが出てくるし、自分が三〇代前半以下の労働を利用する側に回れる場合もある。そして、徐々に転職は難しくなるし、自分自身の人材価値を上げることも難しくなることを自覚し始める。転職によって状況を変えるオプションについても、イソップ童話に出てくる、手の届かないところにあるブドウの房を眺めるキツネのように、「あのブドウは酸っぱい」と言うような態度を取る場合が増えてくる。まあ、気持ちは分からないではない。
 ちなみに、会社員の場合、三五歳から先は個人差が大きくなるが、この先については、たぶん、四五歳か遅くとも五〇歳くらいまでに、会社から離れた自分の人生について、プランニングを持つ必要が生じるだろう。
 ぎりぎりまで会社の中のことしか考えずにいて、「六〇歳の定年を前に、五八歳から、蕎麦打ち教室に通い出して、六〇歳に開業して、繁盛しています・・・。」という具合には、なかなか上手く行かない場合が多いだろう。
 蕎麦屋に限らないが、商売ができるレベルを確保するために相当の準備が必要な場合が多いだろうし、商売が軌道に乗るまでには、それなりの苦労や無理が必要な場合もある。まして、蕎麦屋よりもスケールの大きな仕事をしたい場合は(決して、蕎麦屋が悪いとは言わないが)、調査も含めてもう少し長い準備の期間が必要だろう。前倒しに退職したり、副業の形でビジネスを立ち上げたり、体力などの上で無理が利く年齢を有効に生かすことも考えるべきだ。
 長寿化自体はいいことなのだが、六〇歳から先の人生がかなり長いのに、人生設計が会社任せになっていて、一度きりの人生を不完全燃焼で終えている高齢者が少なくないような気がする。
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 以上、年齢別のキャリアプランニングの考え方のあらましを述べたが、いかがだろうか?学生の段階では、具体的なイメージが湧きにくい場合が多いかとも思うが、「就職のさらに先」のことも、考えてみて欲しい。
 ここで述べたのは「標準的な(と山崎が思う)」プランニングだが、他人との「競争」という観点でこれを眺めると、たとえば、自分の進路を早く決めることが出来れば早くスキルの蓄積が出来て、有利な立場に立ったり、身に着けたスキルの利用期間を長く取ったりすることが出来るようになる。しかし、文中でも述べているように、早く進路を決めることは、場合によってはもっと自分に向いていたり、有利だったりする進路を捨てる結果になるから、進路決定のリスクや機会費用についても真剣に考える必要がある。
 何れにしても、今の時点で、「就職の先」にかなり長くて平坦ではない道があることを意識して置いて欲しい。

【秋学期 3回目】<補足>面接に関する大人(?)の意見

2010-10-13 04:20:54 | 講義資料
 私のブログのコメント欄から、ご参考になるかも知れないと思ったカキコミを拾いました。結局の所、面接に簡単でマニュアル的なノウハウはないということなのかも知れませんが、お時間があれば読んでみて下さい。

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★ 就職も恋愛も同じ (エリカ)
2010-05-18 23:32:06
わたしも就活であんまり自己分析を深堀りしても
しょーがないんじゃないかと思っているうちの一人です。
山崎さんの質問はかなりベタ(=事前対策が可能なもの)ですよね。

同じコンセプト(?)で、わたしも出会って初期段階での
異性への質問はごく簡単なものにしています。
(1)好きな食べ物は何か
(2)どこに旅行するのが好きか
(3)好きな異性のタイプは
みたいな感じ。
答えの内容そのものより、答え方(スピード、ロジック等)を見る。

(3)の質問に対して「好きになった人がタイプ」と
答える人がたまにいますが、こういう人はかなり高い確率で
コミュニケーション能力が低い(=人間関係が苦手)ですね


★ やる気! (ゆうじ)
2010-05-19 00:45:40
 山崎様、いつも楽しく拝見しています。

 さて、私が四度の就職活動でアピールしたのは”やる気”でした。いかにその業種、その会社に入りたいのかを面接官に話しました。能力に自信のない私には他に頼るものがなかった訳ですが、採用する側もやる気のある職員が欲しいのだろうと思います。

 恋愛に譬えれば、「自分はあなたが好きなんです」という事を相手に伝える以上の口説き方はないと思うのですが・・・。


★ 会社の寿命 (佐藤健)
2010-05-19 02:12:24
もう随分前のことですが、会社の採用面接で落とされたことがありました。要らないと伝えられたときは当然のことながら不甲斐なさを感じました。
それから、三年後その会社の事業が傾き別の会社に吸収されたと人伝に聞きました。小さくそして創業からの期間もそう長くない会社でしたが、その話を聞いたときは不採用の知らせを受けた直後以上に落ち込みました。大きくなって生意気な口を利くようになっても、まるで会社を見る目が無かったことにガックリきました。

求職者は売り手で会社は品定めをする買い手だから採用面接はもともと厳しいはずだし、あまり正直に出ても損することがあるでしょうからつらい一方でしょう。
しかし求職者だって選ぶ自由があります。想像には限界がありますからコネを当たってどんどん気になる業界全体や会社の事業の状態を教えてもらったらいいと思います。業界内では秘密でも何でもない事でも、よそ者には全くの想定外なことって結構あると思います。
その上で採用面接に臨めたらいいですね。
そもそも会社の方だって10年後の見通しなんて正確なことは分からないですし、そんなに凄い権威なものではないはずです。お互いサバサバした気持ちでいられれば、それでいいと思います。


★ 論理力を鍛える (tomtomclub)
2010-05-19 09:45:08
 まだ時間的な余裕のある1、2年生であれば、とにかく文章を書く機会を探して、できれば大学の先生なりに添削して鍛えてもらって欲しいと思います。公務員試験や司法試験、会計士試験の講座等から専攻科目に近いものを選んで論文を書くのもいいでしょう。日本の高校・大学では文書を書く機会が少ないので、OJTで鍛えられるケースが多いと思われるのですが、書くことで意識的に論理力をトレーニングするのが望ましいですね。
 あとは、はやいうちに海外に貧乏旅行してみることを勧めます。これは就職云々だけではなくて、本当に学生時代にしかできないことなので、少し無理してでもやる価値があります(コミュニケーション力にもいい効果があると思います)。
 本当に差し迫った時期には、OB訪問でロールプレイを徹底するのも必要かもしれません。他人とのコミュニケーションのときには自分では意識していない意外な癖がでてくるものです。岡目八目といいますから、素直に指摘を受け止めましょう。
 こうしてみると、目新しい意見もないようですが、少しでも参考になればと思います。


★ 選ぶ相手がなにを求めているかを考えてみる… (おしるこ☆善哉)
2010-05-19 11:03:35
『面接では…相手に気分よく話させることの効果の方がずっと大きいような気がする』…

そのとおりだと思います。ただ、山崎さんらしい物言いですが、まじめな学生にその真意が正しく伝わるか心配です。

就活者は、選ぶ立場になく、選ばれる立場にあるのですから、選ぶ相手の求めに対して今の自分がどう応えられるのかという姿勢がいいのではないかと思います。

特に、自己アピールでは、自分のすごい『実績』を言わなければいけないと勘違いしている学生が多いようですが、採用担当者が本当に知りたいことは、その実績を出すために、『何に気づき、どう考え、どう行動したか』ではないでしょうか


★ この本にまとめられています! (Naockey)
2010-05-19 16:26:49
山崎さん

こんにちは、Naockeyです。

山崎さんのエントリーを読んで、過去に読んだ本を思い出しました。

内容がほぼ同じです!!
この本を学生さんに推薦されたらいいのではないでしょうか?

『 ロジカル面接術 2008年基本編』 (単行本)
津田 久資 (著), 下川 美奈 (著)

私はこの本を読んで、ものすごくしっくりきました。
過去に読んだ就活本が空虚に思えました。


下記の2つに分解でき、それぞれの構成要素を提示しています。

①私は御社に貢献できます(自己PR)
・問題解決力
・行動力
・コミュニケーション力

②私は御社と相性がいいです(志望動機)
・自分のやりたいことがあっている
・会社のカルチャーにあっている


★ ニュアンス (おさる)
2010-05-19 18:33:48
「こいつなら面倒見てあげてもいいかな~」と思える方を採用し、「この方にぜひ面倒見てもらいたい!」と思えるようなら気に入られるよう自らを売り込む、というシンプルな思想でやってきました。

人間どうしたって面倒や世話を他人にかけるわけですから、「かける(であろう)面倒の分よりも働きますから」というニュアンスが伝われば良いのでは?


★ 御社か、あなた(面接官)か (山崎元)
2010-05-21 17:25:11
Naockyさま

ご本の紹介ありがとうございます。

下記の2つに分解でき、それぞれの構成要素を提示しています。

>①私は御社に貢献できます(自己PR)
>・?問題解決力
>・行動力
>・コミュニケーション力

>②私は御社と相性がいいです(志望動機)
>・自分のやりたいことがあっている
>・会社のカルチャーにあっている

確かにロジカルです。
但し、人間は感情の動物であり、ガクモンの世界でもやっと行動経済学のようなものが出てくる時代です(世間では「悪用」されているようですが)。

「御社」を「あなた(面接官)」と置き換えるココロが必要ではないでしょうか。

特に転職の面接の場合、ターゲットは抽象的な「御社」ではダメです。「私を採ると貴方にとって得」で「私と貴方とは相性がいい」という事を伝染させないといけません。新卒就職の面接にも似た要素があろうかと思います。


★ コミュニケーション能力 (おさる)
2010-05-21 17:48:37
皆様がご指摘の「コミュニケーション能力」ですが、これが実に奥が深い。
いくつか考え付くままに「コミュニケーション能力」を構成すると思われる要素を考えてみました。

1.モノゴトを理解する能力(立場とか利害とか好き嫌いとか、山崎さんがご指摘のボキャブラリー・セットを理解することもこの範疇です)
2.ノウミソを使っていると思わせる回答力(どなたかのご指摘のように「好きになったヒトがタイプ」という回答には、無難さを追求したニュアンスがある分だけノウミソを使っていない感じが伝わってしまいます)
3.ウケを狙う芸人魂(面接で「笑い」が取れれば勝ちだと思います。ヒトとしての愛嬌とかサービス精神というです)
4.タニンに対する好奇心(「他人が何に興味・関心があるのか?」に対して興味・関心がゼロなヒトだと正直言ってキツイでしょう)

以上の4つなど(他にもあるかもしれませんが)を駆使してジブンを語りながら共感を得るという作業がインタビューなのでしょう。

【秋学期 3回目】 面接について(春学期5月20日の教材からの転載)

2010-10-13 02:11:45 | 講義資料
 以下の文章は、5月18日に、私のブログに書いたものです。
 面接に当たっては、特別な準備はいらないと思いますが、敢えてコツらしきものを述べるとこんな感じか、と思う点について書いてみました。
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 Twitterで、大学生の就職事情が厳しいことについて同情的なツイートを書いたら、ある方から「自分がどうありたいのか、とことん本気かどうか? あがいているか? 」というツイートが返ってきた。私は、これは学生に対するアドバイスあるいは、意見であろうかと解釈して、「自分探しよりも、会社を知ることが大事。自分にではなく、会社・仕事に興味のある人を会社は採る 」と返信した。

 思うに、面接では、自分のあれこれをアピールすることよりも、相手の話を聞くこと、それも有り体に言えば、相手に気分よく話させることの効果の方がずっと大きいような気がする。
 私の得意分野ではないが、恋愛にあっても多分そうなのではなかろうか。「ボクはこんなに凄いのだ!」と自慢するよりも、身の上話を真剣(風)に聞いたり、相手に自慢話をさせるような展開に持ち込んだりする方が遙かに好感を得られやすいような「気がする」。

 さて、受ける側から見た面接の成否は、面接官が、相手に好感を持つかどうかで決まる。人相風体や身体の動きに表れる印象も重要だろうが、会話にあっては、「あなた(=面接官様)の仰っていることを、私はよく理解しました!」という印象を与え続けて、「あなたとあなたの会社に興味と敬意を持っています」という気分を伝えることが、有力な手段になる。
 部活動で活躍した話とか、アルバイトでのエピソードなどは、学生本人にとっては唯一で貴重な経験であっても、面接官にとっては関心の湧かない「みな同じ」に聞こえやすい話だろう。まして、自分が何者であるかについてとことん考えた話など聞きたくもないにちがいない。面接は、体験告白や人生相談の場ではない。
 また、初対面の相手に突然やる気や積極性などをアピールされても鬱陶しいとか、痛々しいと思うだけだろうし、アピールに変な意外性があると(人間は「意外性」を警戒する生き物だ)「使いにくい部下(かも知れない)」だと思うかも知れないし、そう思われると多分それだけで致命傷だ。
 学校名を伏せて面接を行っても、高偏差値の大学の学生が採用されやすい事実は、おそらく言葉のやりとりの的確さにある。そして、その背景に、頭の良し悪し(この場合、主に理解力と論理性)や国語力の違いがあるのではないだろうか。
 採用する側から見ると、どちらかといえば「頭がいい」部下を採りたいだろうが、より直裁には「使いやすい部下」、「役に立つ部下」を採りたいと思っているはずだ。この感情に素速く合わせることができるのが真に頭のいいキャンディデート(候補者)ということになるだろう。

 あまり細かなテクニックを言っても気になるだけかも知れないが、面接では、先ず、「相手の言語」に素速く且つ最大限合わせることに注力すべきだ。
 面接官が使う言葉のスピードや響き、語彙の傾向などを把握して、なるべくこれに合わせようとするだけでも印象が違う。
 これは、一般的なビジネスにもいえることで、たとえば相手が使う外来語の頻度やレベルなどを素速く把握して、相手のボキャブラリー・セットに合わせて話すと効果的だ(たとえば、相手が外国語に興味を持っていないのに、原語の発音風のカタカナ語を会話に混ぜると、「有能すぎるバカ!」だと思われて上手く行かない)。
 そして、最初の二、三分で面接官が得た印象がその後の話によって大きく変わることは稀だから、最初に集中しよう。
 面接官の質問の意味を正確に聞き取って、これに答えることが大切なのはいうまでもないが、面接官にも話をさせるように仕向けるといい。聞き役ばかりを続けているのは、結構疲れるものだから、自分も少しなら話をしたいと思っている面接官は少なくないはずだし、相手に対する興味や敬意を表すには質問が効果的な場合がしばしばある(勿論、次から次へと質問するのは「やり過ぎ」だ)。
 面接官が気持ちよく話すことのできる話題に持ち込むことができればラッキーだが、やりとりのテンポが良ければ、無理をする必要はない。
 最近の就活事情は詳しく知らないが、訪問先の会社については、ホームページで分かる程度の予備知識で十分だと思う。知らないと誠意を疑われるような常識的なことは知らないとまずいが、細かな業務内容や制度については知らなくてもいいだろう。新卒採用の場合、会社側は「素材」を採るという意識のはずであり、細かな知識は求めていないはずだ。
 ほとんどの場合、相手が欲しがるのは「(自分の言うことをよく分かる)感じのいい部下」だ。「僕は感じのいい部下になりそうだから、面接官はきっと気に入るだろう」と自己暗示をかけて、「やっぱりそうだ!」という気分で相手の目を見て、相手のテンポに合わせて話を始めよう。
 面接の時間はあっという間に過ぎる。

 私は新卒の面接をそうたくさんやったわけではないが、質問のパターンをほぼ決めていた。
(1)学生時代は何を専門に勉強されたのですか?内容を分かりやすく説明して下さい。
(2)当社を志望された理由は何ですか? 他社と比較して当社のことをどう思いますか。
(3)もし当社に入社されたら、どんなことがしたいですか?
基本的な質問内容はこの三つだけだ。

 質問(1)に的確に答えられるかどうかで、採否に必要な情報の8割は分かる。自分が勉強した内容を、分かりやすい言葉で大人に説明できるのはかなり頭のいい学生であり、この意味で頭のいい学生は、問題達成に対する意欲が高いので、有能な社員になり得る。相手が学生といえども、クイズを出題して頭の良し悪しを探る、というのは相手に対して失礼というものだろう。クイズなど出さなくても、話を聞けばビジネスに使う種類の頭の良し悪しは十分分かる。
 質問(2)は、学生の志望動向に関する情報収集(内定を出したら、採用できるだろうか?、どこと競合しているのだろうか?)と、「社会性」のチェックを兼ねている。第二志望だろうが、第三志望だろうが、(嘘が交じっても)破綻のない理由を的確に言うことができるかどうか、を確かめている。
 質問3は、敢えていえば「意欲」のチェック項目だが、学生は、まだ社員として働いたことがないし、会社の中についてよく知らないはずだから、感心するような答えが返ってくることを期待してはいない。こうした無理な質問にどう答えるかで、学生の意欲や工夫の上手下手がある程度分かる。ここで、話を上手にできる学生は、意欲があるのと共に、かなりコミュニケーション能力が高いといえる。
 基本的には、上記の三つの質問のバリエーションでやり取りして、学生を判断していた。

 ちなみに、転職の面接の場合には、「(主に「今の」だが、過去のも重要)会社を辞める理由は何ですか?」が四つ目の(重要な)質問になる。
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 次の文章は、リクルート・エージェント社のウェブサイトに、「転職原論」の第7回目の記事として掲載された拙文の抜粋です。
(http://www.r-agent.co.jp/guide/genron/genron_07.html)

 転職の面接は自分という商品を売る「商談」であるという考え方を述べてみました。就職の面接とも重なる点があろうかと思いますので、読んでみて下さい。

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(転職原論:第七講) 面接の本当の達人

(1)応募書類は相手の立場に立って書く

 転職に自分から応募するとき、面接抜きに、書類選考だけで採用が決まることは、ほぼ無い。転職しようとする場合、最初に目指すのは、面接まで辿り着くことだ。通常は、履歴書と職務経歴書を送って、面接の可否の連絡を待つことになる。面接のアポイントメントが取れたら、履歴書・職務経歴書は役割を果たしたと考えていいだろう。基本的には、面接が勝負だ。
 上手い履歴書、あるいは職務経歴書の書き方として、特別なノウハウがあるわけではないが、基本的に考えるべきことは「読み手の立場に立って書く」ことで、これに尽きる。初歩的には読みやすく正確に書くということが大事だし、もう一歩先のレベルでは、先方が応募者の何を知りたいと思っているのかを推測して書くことが重要だ。自分を表現したりアピールしたりするのではなく、自分に関する情報を相手に適切に伝えるのだ、という気持ちで書くといい。
 仕事に無関係な趣味の資格などを書いても仕方がないし、応募職種にもよるが、外資系の会社に応募するのに「英検二級」なら書かない方がまだいい(どのみち面接でテストされるだろうが「英検一級」なら履歴書に書いた方がいい)。一方、募集している仕事に関係のある経験やスキルを持っている場合はそれが伝わるように職務経歴書を書こう。

(2)面接の前に準備しておくこと

 面接で先方が知りたいことは、(A)募集職種に於ける候補者の能力と経験(この人にこの仕事を任せて大丈夫だろうか?)、(B)候補者の人柄(一緒に仕事をして楽しい人だろうか?)、(C)どれくらい入社したい気持ちがあるのか(本当に来てくれるのだろうか?)、(D)将来も働いてくれるだろうか(近い将来、辞めてしまう心配はないか?)といったことだ。
 新卒学生の面接なら、「学校で勉強したことを簡単に説明して下さい」、「どうして当社に入社したいのですか」、「当社に入ったら何をしたいと思いますか」という三つくらいの質問をすることで、(A)~(C)くらいまでは短時間で分かる。たとえば、学校の専門について訊くと、どの程度まじめに勉強したか、それを他人に過不足無く分かりやすく説明できるか(素人に専門内容を説明できる人は「頭がいい」)、といったことが相当程度分かる。学生なら、上記の三つの質問に関して答えを自分のものにしておけば大丈夫だが、転職の面接の場合、もう一つ準備が必要だ。それは「(以前の、或いは、今の)会社を辞めた理由は何ですか?」という質問に対する回答だ。仕事の能力に問題がない場合、採用する側が一番聞きたいのはこの質問に対する答えだ。
 この質問で問われるのは、過去の経緯と仕事に対する考え方とと共にビジネス的なコミュニケーション能力だ。嘘を答えてはいけないし、露骨な答えや、投げやりな答えはビジネスのやりとりとして不適切だ。
 しかし、会社を辞める事に関しては、何となく疾しい感じがして必要以上に言い訳口調になったり、過去の経緯があると感情が高ぶったりすることがある。この質問を上手くこなせない場合、面接全体の出来にも影響するので、過去の転職について「辞めた理由」、これからについて「辞めてもいいと思っている理由」の二点は、あらかじめ答えを紙に書いて、自分で吟味してみるくらいの周到な準備が必要だ。

(3)いきなりお金の話はしない

 面接は、基本的に、①採用側から見て候補者が仕事とに合っているか、②候補者側から見て会社と仕事に関して疑問はないか、そして①、②について問題がないことが確認されたら、③経済的な条件を含めて条件面で合意できるか、という流れで進むと考えておこう。「仕事」が第一に重要で、給料を含めて「条件」はその次の話題、というのが尊重すべき建前だ。
 最初に質問するのは採用側だし、その後に「何か質問はありませんか?」と訊かれても、「要は幾ら貰えるのですか?」といった質問をするのは印象が悪い。ドライだと言われる外資系の会社でも、これは、そうだ。
 お金が重要でないとは言わない。しかし、仕事が何で、どのように進める必要があるのかということは、転職後の居心地と共に将来の自分の人材価値にも関わることなので、非常に重要なのだし、面接中は「仕事の内容の方がお金よりも大切だ」と思っている方が結果がいい場合が多い。

(4)面接は自分という商品を売る「商談」

 面接の服装だとか、応募書類の作り方だとか、あるいは話の仕方にしても、基本的には「面接は自分(の仕事)という商品を売るための商談なのだ」と理解しておけば良く、殆どの物事はその延長線上で判断できるはずだ。
 商談だから、時間も服装も相手に合わせる(相手に対する敬意が伝わるようにする)ことが大事だし、話の呼吸も、交渉の詰めが肝心でリスクや曖昧さを取り除かなければならないことも、転職面接の基本的な考え方は全て商談と一緒だ。
 尚、さまざまな調査で面接は、最初の1分くらいの印象で決めた結果と長時間やりとりして決めた結果とに殆ど差がないことと、誰かが好印象を持つ相手は、他の面接者が見ても好印象を持つらしいことが報告されている。最初の印象で決まるのは事実だろうが、最初が良ければ後で失敗してもいいということではないだろうし、後の準備に自信がなければ最初に好印象を与えることも難しい。
 一つの心構えに集中するとすれば「これからお互いにとって良いビジネスを作るのだ」という緊張感のある楽しみな感じを自分に言い聞かせることだろう。
 もう一言付け加えておこう。書類選考も、面接も、相手の都合で決まることだから、落選することがある。筆者も、過去の転職活動で何度も不採用を経験してきた。不採用の通告は、人間としての自分が否定されるか嫌われるかするような情けない気分になりやすいものだが、これも「あくまでも『商談』の不成立であり、自分の全人格ではなく、「ある種の労働」が商品なのだ」と割り切って気分を切り替えよう。
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 <<ここまで春学期テキスト【5月20日】から再掲載>>

【2010年 秋学期 2日目c】仕事のやり甲斐について

2010-10-06 15:38:35 | 講義資料
 以下の文章は、春学期に使ったメモで、リクルート・エージェント社のホームページに「転職原論」の第一回目として山崎が書いた文章の一部で、仕事のやり甲斐について書いた部分だ。時間があれば、全文を読んでみて欲しい。
(URLはhttp://www.r-agent.co.jp/guide/genron/genron_01.html)

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<仕事のやり甲斐の要素は二つ>

 仕事の「やり甲斐」というものが何なのかはなかなか説明しにくいが、
(A)自分の仕事が誰かのためになっていることが実感できるか、または、
(B)自分の仕事が以前よりも成長していることが実感できるか、の二つの要素に分解できる。

 お客さんでも、同僚でも、自分の仕事が役立っているという実感があると仕事にやり甲斐がある。もちろん、相手から何らかの感謝の気持ちが伝わってくれば素晴らしい。また、同じ仕事をしていても、たとえば、1年前、2年前よりも自分がその仕事についてよく理解してよりよい仕事をしているという自分の成長が自分で分かるなら、これも仕事の張り合いになる。

 もちろん(A)と(B)の両方があるにこしたことはない。経験的にいって、ある職場にいて、(A)か(B)かどちらかがあれば、その状況は我慢が利く。しかし、(A)も(B)もないという状況では、その仕事に対して精神的な張りを保つのが難しい。
 生活のための条件や、キャリアプラン全体を考えなければならないが、転職を考える大きなきっかけだと思う。
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 皆さんは、仕事のやり甲斐とは何だと思っているだろうか(あるいは期待しているか)?

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 せっかくの機会だから、もう少し考えてみよう。
 他人に役立つ実感があって、時間の中で成長を感じることが出来る仕事の条件とは何だろうか。
 一つは、月並みな話で恐縮だが、それ自体が「価値のある仕事」だと思えるようでないとキビシイ。価値は、一般的価値(真、善、美など)でも、社会的な意議(人助け)でもいいが、「儲かるけれども、いい仕事ではないな」と思うような仕事にはやり甲斐がない。
 もう一つの条件は、仕事に関連して、広い意味の「勉強」が有効であることが大事だ。勉強し続けるためには、対象に興味を持てるのでなければならない。
 ここで、少々面倒なのは、価値や興味は、学生時代から自覚的に持っているものというよりも、働く中で見つけたり、出会ったりする場合が多いことだ。学生時代には、分からないかも知れないし、それは仕方がない、と私は思う。
 こうした事情を考えると、職業人生の前半に、試行錯誤の時期があってもおかしくない。

【秋学期 第2回目b】ドラッカーに学ぶ「職」の考え方

2010-10-04 04:25:02 | 講義資料
 就職と転職、職の選択について、ドラッカーの名言集を参考に考えてみましょう。以下は、拙著「転職哲学」(かんき出版社)の原稿からの引用です。


<経営の神様、仕事を語る>

 ビジネスパーソンなら、ほとんどの方が、P.F.ドラッカーの名前をご存知だろう。ドラッカーは、経営学の分野では飛び抜けた権威であり、「経営の神様」と呼ばれることがある。日本にもファンが多く、ドラッカーの著作を座右の書として繰り返し読む経営者も少なくない。
 また、ドラッカーの仕事は、経営分野だけにとどまるのではなく、時代の流れを読む社会思想家の側面もある。「断絶の時代」、「ネクスト・ソサイエティー」(共にダイヤモンド社)といった社会の動きを捉えたベストセラーもある。特に、知識の価値への注目、知的労働者に関する考察などは、注目した時期も早く内容も深かった。
 ドラッカーの著作は数多く、そのほとんどが翻訳されている。これらの著作から名言をコレクションした名言集が4冊出ているが、この中から「仕事の哲学」(上田惇生訳、ダイヤモンド社)に注目してみた。1ページに数行の名言が一つというゆったりした編集であり、簡単かつ気楽に読める。若いビジネスパーソンにとっては、仕事や転職について考える手掛かりに良い本だと思う。
 本の帯には「不得手なことに時間を使ってはならない。自らの強みに集中すべきである」という言葉が引かれている。この言葉に完全に賛成するかどうかは人によるだろうが、今自分が自らの「強み」を使っているのかどうか、あるいは自分の「強み」とは何か、ということに注意を向けることは大切だ。チェックポイントとして、この言葉は繰り返し役に立つ。ドラッカーはもともと有能なコンサルタントだった。彼の言葉は抽象的な内容を語るときでも常に実用的だ。

<職業の選択>

「仕事の哲学」は是非手元に置きたくなるようなタイプの本なのだが、忙しい人は同書の第5章「進むべき道」という章(71ページ~82ページ)を立ち読みしてみて欲しい。章のトビラを含めても12ページで1ページ平均4行弱の分量なので、本当に立ち読みできる。この部分には、転職を考える人にとって参考になる考え方が凝縮されている。
 まず「今日の問題は、選択肢の少なさではなく、逆にその多さにある」(p72;以下、それぞれの名言の部分を引用)という言葉が目に付く。ドラッカーは、「知識」が、職業の定められた社会を、職業の選べる社会に変えたという。今や親の職業を子供が継ぐといった形では職業は決まらない(政治家には多いようだが・・)。職業を選ぶことが出来る豊かな社会になった、ということなのだが、それだけ職業選択の悩みも増えた。
 次の言葉は奥が深い。職業選択にあたって若者が考えるべき事は「正確には、何をしたらよいかではなく、自分を使って何をしたいかである」(p73)とドラッカーは述べている。単に「好きなことをせよ」とか「したいことをはっきりさせよう」と言うのではなく、素材として自分を使うことで何が可能で且つやりたいかを考えろと述べている。
 自分が自分を使用人の立場で使える経営者となった時に、どのようなビジネスをするかを考えるとよい。サラリーマン(なぜかまだ「サラリーパーソン」とは言いませんね)という選択はある会社の特定の仕事に自分という唯一の社員を派遣する人材派遣業だ。どの分野を専門にしたらよいか、経営的に考えて条件をどう交渉するか、など様々な考え方が湧き、自分の戦略を客観的に考えることが出来る。
 次の言葉は、若いビジネスパーソンに是非知って欲しい。「最初の仕事はくじ引きである。最初から向いた仕事につく確率は高くない」(p76)職業選択にあって、最初から完璧を期することは難しいのだから、気楽に考え、行動してみようということだ。ただし、これは同時に、多くの場合は後に転職することが必要になるという覚悟がいるということだ。
 結果的に転職しないサラリーマン人生であってもいいが、転職を当たり前の選択肢だと考えておく方が「向いた仕事」に就いて充実した人生を送ることが出来る可能性が高い。

<転職する時>

 ドラッカーは会社を辞めるべき時についてかなり積極的に発言している。まず、自分の価値観に反する組織にはいるべきでないと注意する。「自らの価値観に反するところに身を置くならば、人は自らを疑い、自らを軽く見るようになる」(p77)。
 筆者の経験で恐縮だが、会社を、辞めたい、辞めなければならない、と思うときは、その会社が嫌ということもさることながら、自分がダメになるような感覚こそが最大の問題だった。
 また、辞めることが正しい時として「組織が腐っているとき、自分がところを得ていないとき、あるいは成果が認められないとき」(p78)を挙げている。これらの辞めて良いときの三条件は簡潔明快だ。「出世はたいした問題ではない」(同)とダメを押してもいる。
一つの組織で限界を感じたとき、ついダメなのは自分の方ではないかと過剰な自責に傾いたり、将来を悲観したりしがちだ。しかし、ドラッカーは、企業には人を同じ環境に閉じこめがちな欠点があると指摘し、「閉じこめられているほうは飽きる。燃え尽きたのではない」(p79)と励まし、新しい環境に「植え替えられる」(同)ことが必要なだけだと説く。勇気が出てくる言葉だ。
 また、今や人生が企業の寿命よりも長くなったことから、変化の必要性を説いているが、「変化といっても、かけ離れたところに移る必要はない」(p80)とアドバイスしている。転職の場合も、多くは同じ分野、或いは隣接分野に転職することが正解になる。
「心地よくなったら変化を求めよ」(p81)とも述べている。ドラッカーは別の場所で、変化をマネージするには、自分自身が変化を作り出すのが一番だと言っており、自ら作り出す変化の価値を強調している。もちろん、変化にはリスクがつきものだが、自分が変化しなくてもリスクに晒されているわけだし、自分から意図的に作り出す変化は案外怖くないものだ。たとえば、自分から転職するのと、会社から解雇されたり会社が傾いたりする可能性と、どっちがマネージしやすい状況かと考えてみよう。
 待っていて外部から与えられる変化(たとえば会社や環境の変化)よりは、転職などで自分が作り出す変化の方がコントロールしやすいと思う。一般に、「変化」というものをもっと積極的に捉えていいのではないだろうか。

【秋学期 第2回】 会社の将来性評価について

2010-10-04 03:58:45 | 講義資料
 今回のテーマは、企業の将来性を評価することについてですが、先ず、春学期の5月6日の同じテーマの授業で使ったものと同文を以下に引用しておきます。



 よくあるアプローチですが、学生の就職人気ランキングを見てみましょう。先ず、2011年3月大学卒業予定者の就職希望先のランキングです。
 日本経済新聞が実施した2011年3月卒業予定の大学3年生を対象とした就職希望企業調査での人気企業ランキングで、調査期間は2009年11月5日~2010年1月19日、有効回答数8,277(男子3,851、女子4,426)です。

就職人気企業ランキング2010(就職希望企業調査)
【2011年3月大学卒業予定者】
(順位)(企業名)    (人数)
1 東京海上日動火災 835
2 三菱東京UFJ銀 行 657
3 三井住友銀行 590
4 日本生命保険 519
5 全日本空輸 492
6 JTBグループ 458
7 三菱UFJ信託銀 行 408
8 東海旅客鉄道 400
9 三菱商事 399
10 三井物産 396
10 パナソニック 386
12 東日本旅客鉄道 368
13 三井住友海上火災 保険 366
14 みずほフィナン シャルグループ 357
15 ソニー 330
16 伊藤忠商事 319
17 明治製菓 318
18 第一生命保険 317
19 サントリーホール ディングス 313
20 電通 292

<就職転職情報ナビ:http://rank.in.coocan.jp/recruit/nikkei201103_1.htmlから>

 それぞれの企業への就職を希望することに対する賛否は、授業で、口頭で述べますが、まあ、こんなものなのかなあ、という感じです。いずれも「それなりに」立派な会社ですが、勤めてもつまらないだろうなあという会社が幾つか、それに、「これは地雷か?」という将来性に疑問符の付く会社が幾つかあります。
 眠らないで聞いていて下さい!

(注;文章の調子で、「眠らないで」と書きましたが、これまでのところ、私はむしろ眠っている学生が少ないことに驚いています。自分の学生時代と較べてはいけないのでしょうが、獨協大学の学生は、授業にもよく出るし、真面目に話を聞いているというのがこれまでの印象です)

 さて、過去の就職人気ランキングを見てみましょう。
 たぶん、皆さんが既にご覧になっているであろう「リクナビ 2011」の『就職ジャーナル』の記事の一部です。
(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj/student/ranking/ranking_vol02.html)

★1965年
1 東洋レーヨン
2 大正海上火災保険
3 丸紅飯田
4 伊藤忠商事
5 東京海上火災保険
6 三菱商事
7 旭化成工業
8 松下電器産業
9 住友商事
10 三和銀行

★1970年
1 日本航空
2 日本アイ・ビー・エム
3 丸紅飯田
4 東京海上火災保険
5 伊藤忠商事
6 三井物産
7 三菱商事
8 松下電器産業
9 住友商事
10 電通

★1975年
1 日本航空
2 伊藤忠商事
3 三井物産
4 朝日新聞社
5 三菱商事
6 丸紅
7 東京海上火災保険
8 日本放送協会
9 日本交通公社
10 電通

★1980年
1 東京海上火災保険
2 三井物産
3 三菱商事
4 日本航空
5 日本放送協会
6 サントリー
7 三和銀行
8 安田火災海上保険
9 日本生命保険
10 住友商事

★1985年
1 サントリー
2 東京海上火災保険
3 三菱商事
4 住友銀行
5 日本電気
6 富士銀行
7 三井物産
8 日本アイ・ビー・エム
9 松下電器産業
10 日本生命保険

★1990年
1 日本電信電話
2 ソニー
3 三井物産
4 三菱銀行
5 東京海上火災保険
6 三和銀行
7 東海旅客鉄道
8 住友銀行
8 日本航空
10 全日本空輸

★1995年
1 日本電信電話
2 東京海上火災保険
3 三菱銀行
4 三井物産
5 伊藤忠商事
6 東海旅客鉄道
7 三和銀行
8 三菱商事
9 第一勧業銀行
10 富士銀行

★2000年
1 ソニー
2 日本電信電話
3 日本放送協会
4 NTT移動通信網
5 サントリー
6 JTB
7 電通
8 博報堂
9 本田技研工業
10 資生堂

★2005年
1 トヨタ自動車
2 電通
3 ジェイティービー
4 サントリー
5 日本航空
6 全日本空輸
7 東海旅客鉄道
8 日産自動車
9 博報堂
10 本田技研工業

【出典元】
データはリクルートワークス研究所による。1995年卒分までは「大学生男子の人気企業調査」、2000年卒分は「大学生の企業イメージ調査」、2005 年卒分は「採用ブランド調査」より。1965年卒~1995年卒分は男子学生のみ・文系のランキング、2000年卒、2005年卒については「男女計」の 全体のランキング。表記している社名は、ランキング発表時のもの(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj /student/ranking/ranking_vol02.html)



 さて、上記の変遷を見て何を感じますか?しばらく、考えてみて下さい。



 尚、先ほどの記事には、「10年後に元気な企業はどこ? 山崎元氏に聞く」というコラムがついていました。
 取材の際に何をお話ししたのか本人は忘れていますが、コメントを部分的に引用しておきましょう。時間があれば、記事全文をお読み下さい。
(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj/student/ranking/ranking_vol03.html)
 ちなみに、もう一方、勝間和代さんが同様の取材に答えたコメントも載っています。「業界が伸びるか、ではなく、会社が、自分が伸びるか、に視線を」、「就職活動は恋愛に似ている」といった言葉が載っています。こちらも是非、読んでみて下さい。
(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj/student/ranking/ranking_vol05.html)


 さて、以下は、私のコメントです。
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かつてファンドマネージャーという仕事をしていて、あらためてわかったのは、将来の成長企業を見極めることの難しさでした。10年後の成長業界や成長企業なんてわかりっこない、というのが正直な感想です。「将来の成長産業に」というのは就職活動ではよく言われることですが、やはりよく言われる「そのときの人気に振り回されてはいけない」という言葉には共感できる一方、「将来の成長産業や企業に入らないと」という言葉は現実的ではないと言わざるを得ません。
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そんなことより重要なことは、10年後に自分自身はどうなっているか、ということでしょう。自分が身につけたスキルや知識は、確かなもの。むしろこっちこそ意識すべき。その会社に入ったとき、自分はどんな社会人になっていたいか。それをもっと真剣に考えたほうがいい。例えば、10年目の先輩はどんな仕事をしているのかを知る。それは自分がやりたい仕事なのか、自分が目指したい姿なのか。それを見極めるべきです。
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20 代前半で職業を決めなければいけないのは大変なこと。だからこそ私は、5年ほどは試行錯誤していいと思っています。だいたい企業や仕事の情報といっても、すべての情報が手に入るわけではない。外から見えている企業や事業と、実際に中に入ってやってみるのとでは違うことも多い。やってみないとわからないわけです。
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<今からこれをしておこう! 山崎 元氏からのアドバイス>
大事なのは、10年後に業界や会社がどうなっているか、ではなく、自分がどうなっているか。自分の10年後の姿を意識すること。
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 敢えて自分でツッコミを入れるなら、10年後に元気な企業は?という質問に正面から答えずに、話題を逸らしています。
 私の認識について、どう思うかについても、考えてみて下さい。
 続きは、授業で。

  以上