山崎元の「会社と社会の歩き方」

獨協大学経済学部特任教授の山崎元です。このブログは私が担当する「会社と社会の歩き方」の資料と補足を提供します。

【春学期 2回目】企業の将来性をどう考えるか

2011-04-27 18:58:05 | 講義資料
 今回は、「企業の将来性を評価する」ことについて考えてみたいと思います。

 先ず、このエントリーの図で皆さんのご関心が高いであろう就職ランキングの変遷を見てみて下さい。どのようなことをお感じになるでしょうか?

 学生の就職人気ランキングに関してよくある大人の感想は、
「企業の盛衰は長い間には随分変わるものだ」(← 本当にそう思う?)、
「学生の人気は当てにならない」(← 案外そうでもない、とは言えないか?)、 
「人気企業に入ったからといって幸せになるとは限らない」(←負け惜しみじゃないか?)、
といったものですが、先入観を捨てて、何が言えそうか、しばし考えてみて下さい。

 ご参考用に、企業の売上高ランキングと時価総額ランキングの変遷も別のエントリーの図表として載せておきます。

 また、昨年の秋学期の授業で使ったデータですが、このエントリーの図よりもさらに長期にわたる人気ランキングの変遷を以下に再掲載しておきます。

★1965年
1 東洋レーヨン
2 大正海上火災保険
3 丸紅飯田
4 伊藤忠商事
5 東京海上火災保険
6 三菱商事
7 旭化成工業
8 松下電器産業
9 住友商事
10 三和銀行

★1970年
1 日本航空
2 日本アイ・ビー・エム
3 丸紅飯田
4 東京海上火災保険
5 伊藤忠商事
6 三井物産
7 三菱商事
8 松下電器産業
9 住友商事
10 電通

★1975年
1 日本航空
2 伊藤忠商事
3 三井物産
4 朝日新聞社
5 三菱商事
6 丸紅
7 東京海上火災保険
8 日本放送協会
9 日本交通公社
10 電通

★1980年
1 東京海上火災保険
2 三井物産
3 三菱商事
4 日本航空
5 日本放送協会
6 サントリー
7 三和銀行
8 安田火災海上保険
9 日本生命保険
10 住友商事

★1985年
1 サントリー
2 東京海上火災保険
3 三菱商事
4 住友銀行
5 日本電気
6 富士銀行
7 三井物産
8 日本アイ・ビー・エム
9 松下電器産業
10 日本生命保険

★1990年
1 日本電信電話
2 ソニー
3 三井物産
4 三菱銀行
5 東京海上火災保険
6 三和銀行
7 東海旅客鉄道
8 住友銀行
8 日本航空
10 全日本空輸

★1995年
1 日本電信電話
2 東京海上火災保険
3 三菱銀行
4 三井物産
5 伊藤忠商事
6 東海旅客鉄道
7 三和銀行
8 三菱商事
9 第一勧業銀行
10 富士銀行

★2000年
1 ソニー
2 日本電信電話
3 日本放送協会
4 NTT移動通信網
5 サントリー
6 JTB
7 電通
8 博報堂
9 本田技研工業
10 資生堂

★2005年
1 トヨタ自動車
2 電通
3 ジェイティービー
4 サントリー
5 日本航空
6 全日本空輸
7 東海旅客鉄道
8 日産自動車
9 博報堂
10 本田技研工業

【出典元】
データはリクルートワークス研究所による。1995年卒分までは「大学生男子の人気企業調査」、2000年卒分は「大学生の企業イメージ調査」、2005 年卒分は「採用ブランド調査」より。1965年卒~1995年卒分は男子学生のみ・文系のランキング、2000年卒、2005年卒については「男女計」の 全体のランキング。表記している社名は、ランキング発表時のもの(http://job.rikunabi.com/2011/media/sj /student/ranking/ranking_vol02.html)

【春学期 1回目】ガイダンス

2011-04-20 19:08:51 | 講義資料
 2011年春学期の「会社と社会の歩き方」を開講します。

 1回目の今回はガイダンスです。
 「会社と社会の歩き方」は、キャリア・プランニングの考え方を中心に、将来ビジネス・パーソンとなった場合に知っておきたい物の考え方やノウハウを受講生にお伝えすることを目的とします。
 テーマは、その都度変更することがあり得ますが、キャリア・プランニングの考え方と転職のあれこれについては必ず取り上げる予定です。
 学生諸君は、おそらく就職の問題で頭が一杯でしょうが、職業人生は新卒の就職の後(通常は)40年近く続く長いプロセスであり、就職決定だけで決着がつくものではありません。「就職の後に何を考えたらいいか?」について、イメージだけでも持っておく方がいい。
 転職は、「しなければならない」というものではありませんが、誰でも「必要になる」場合がありますし、「転職もある」と考えることによって、キャリア・プランニングの幅が大きく拡がります。就職する前の皆さんに転職の仕方を教えるのはいかがなものかと思わなくもありませんが、「知っておいて損はない」と思うので、敢えてご説明しようと思っています。
 講義の予定は以下の通りです。「会社と社会の歩き方」の過去のブログ、及び、インターネットで無料で閲読できる拙稿があるものについて、関連するテーマの原稿のURLを載せて置きます。予習・独習をされたい向きは、ご参考にされて下さい。

第一回:ガイダンス+山崎元の転職(12回)遍歴自己紹介

 就活の先にある「キャリア・プランニング」の重要性について語り、授業の方向付けをすると共に、今後の授業予定のガイダンスを行う。
 併せて、「山崎元の転職小史」的な自己紹介を行う。私の職歴を表にまとめてみた。参照されたい。

第二回:会社の将来性を評価することが可能か

 「成長性のある業種・企業を選びましょう」とはよく言われることだが、学生、あるいはビジネスパーソンは、会社の将来性をどの程度判断することが出来るだろうか。
 結論を言えば、業種や会社の長期的将来性など分かりはしない。会社を評価するに際して「ある程度の常識」は存在するし、「会社の調べ方」も知っておく必要があるが、キャリア・プランニングにあたっては、「将来の見通しは難しい」「見通しが外れることがある」ということを前提条件として織り込む必要がある。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/2e561567667f296a1efddf62343596f1)

第三回:仕事のやり甲斐を決めるものは何か

 仕事は「やり甲斐」が大切だと言われる。これはその通りだ。人生の、そして一日の重要な時間を仕事に注ぎ込むのであり、やり甲斐の無い仕事は続けることが苦痛だ。
 では、仕事のやり甲斐を決める要素は何か、「価値観」と仕事との関係をどう考えたらいいか、等について私の考えを述べる。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/ec2d0cffdb37fbcda24f971e0caac46e

第四回:人材選考のポイントと戦略 (面接の“本当の”達人、とは?)

 人材を選ぶ側は何を考えているのだろうか? 特に、「面接」にあっては何が重要で、どのような準備が必要なのか。面接対策として万能の方法は無いが、改善の手掛かりはあるし、基本的に準備すべきことは、そう多いわけではない。
 学生を見、就活関係の報道を見ると、有効でない自己アピールや自分探しに嵌って、無駄な努力をしている学生が多いように思う。面接の極意は、自分をアピールすることではなく、「相手の気持ちを理解した」という共感の気配を相手に効果的に伝えることだ。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/4b1ea8f3dd7078dffec06ef8ece9e5ac
 http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/fb0302445c7ce5995edb16f2b44dc2f5)

第五回:職業人生設計の基本(「28歳」と「35歳」)

 本講義の中核となるパートだ。
 一つの目処だが、キャリア・プランニングにあっては、「28歳」と「35歳」という二つの年齢が重要だ。28歳までに、自分が時間と努力を投資する「自分の職」を決め、35歳までに「自分の人材価値」を確立することを実現したい。もちろん、それぞれに、理由がある。
 職の選択にあたっては、機会費用やチャンスのオプション価値を意識する必要があるし、人材価値と年齢の関係も経済原則として理解しておきたい。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/c949465747bde9f8323a24e196b20978)


第六回:女性、或いは外資のキャリアプランニング

 現実問題として、キャリア・プランニングには男女差がある。女性の場合、決定的に問題なのは、結婚と出産、特に出産とキャリア・プランニングの関係だ。
 たとえば、子供を早めに産むことと、遅めに産むこととの間には、どのような損得の差があるか。人生は計画通りにはいかないが、それでも、選択の損得とその発生要因を理解しておくことは有用だ。
 併せて、外資という選択肢のキャリア・プランニングについても考えてみる。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/d49af5523b2a345675d5e331754c3e80)

第七回:「稼ぎの差」ができる原因

 同じ大学を同じくらいの成績で同じ時期に出ても、何年かたつうちに、卒業生の間で、経済的には大きな差が生じる。端的に言って、稼げる職業と稼ぎにならない職業があるが、この差をもたらすものは何だろうか?
 経済学的にも興味深い奥の深いテーマだが、考えてみる価値がある。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/a95510bbf022e4c4e905c800eaf23f3b)


第八回:成果主義といかに付き合うか

 近年、「成果主義」が普及してきたことは間違いないが、成果主義と呼ばれるものには、日本の大企業で多く採用されている「陰気な成果主義」と、外資系に多い「陽気な成果主義」がある。前者には深刻な欠点があり、後者にも弱点がある。
 二つのシステムは、全く異質なものであり、両者をゲームのルールとして考えると、そこでのプレーヤーの行動スタイルも違っていなければならない。両方のルールを深く理解することは、現代のビジネスマンにとって必要であり、有効だ。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/1d1f4f9d85a75e516e3a232416ba0970)

第九回:組織内の「人間関係」と「出世」について

 組織で仕事をする上で、人間関係はきわめて重要だ。人間関係について、どのような原則を持っていたらよいか、なるべくシンプルで応用範囲の広い原則を考えたい。
 また、「出世」は昔も今もビジネスマンの大きな関心事だ。出世するタイプの人間像の特徴は何か、出世にこつはあるか?(→ある!)

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/38bb3fcad3630d36e23bd1ffb8b4fc32
 http://www.r-agent.co.jp/guide/yamazaki/20110120.html)

第十回:転職の理由と目的について

 前述のように、企業の先行きは見通せないものだし、企業と社員との相性も変化する。将来「転職」と絶対無縁であると言えるビジネスマンはごく少数だし、転職を選択肢に加えることによって、職業人生の可能性はかなり拡大することが出来る。
 転職の理由や目的について整理して理解し、どのような場合に転職を考えるべきかについて、将来考える手掛かりを持っておきたい。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/96e8d1b209b9cc5afb72373292dd8e7f)

第十一回:転職の具体的な手順と注意点

 転職にも、手順と方法、実行に当たっての注意点があるが、これを体系的に教わる機会は少ない。世にある多くの転職指南書は、採用内定を貰うところまでに話題が集中して、会社の辞め方や、新しい職場で注意すべきことなど、現実には重要な注意事項が漏れている場合が多いように思う。
 私の失敗談の教訓も含めて、将来役に立つ(かも知れない)実践的な転職ノウハウを伝えたい。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/0e415d949fb7915ae23642c8d9186b10)

第十二回:ビジネスパーソンの情報収集と勉強法

 多くの職種で、働きながら勉強を続けて自分をバージョン・アップし続けることが重要だ。また、ビジネスマンとして、日々の情報収集をどうやったらいいか、についても知っておきたい。
 私は、勉強マニアでも情報整理マニアでもない、どちらかといえば億劫がりのビジネスマンだが、私なりの勉強の方法論をお伝えしたい。

(http://www.r-agent.co.jp/guide/yamazaki/20101216.html)

第十三回:内部告発で組織人の倫理を考える

 正義について、会社(官公庁でも)と社会で大きなギャップが生じて、会社員が悩んだり、困ったりする場合は少なくない。近年、内部告発が増えているが、内部告発者には大きな悩みがある。
 具体的な例について考えてみると共に、私が当事者になった例についても語ってみたい。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/701b8a9fa3d41e869e7705c1daa076a1)

第十四回:「副業」あるいは「複業」のすすめ

 就職前の学生に、早くも副業を勧める、というのは、些か気が早いようにも思うが、現代のビジネスマンの仕事は一つでなくともいいし、現実に副業をしなくても、「別の仕事」の現実的可能性を確保しておく方が、より安全だ。
 副業に関するメリット、デメリット、一般的な注意事項などについて伝えると共に、私が経験した「評論家」を例にとって、副業の始め方、育て方などについてお話しする。

(http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_dokkyo/e/1c58e472035f683dd5038e9f132638b7)

第十五回:まとめ ~これから世に出る君たちに~

 最終回は、試験の予告と解説が中心になるが、併せて、私が授業を通じて言いたかったことの補足を行う。
 「会社と社会の歩き方」全体を通じた私の主張を総括すると共に、こらから働く若者に対して、(なるべく明るい!)メッセージを伝えたい。