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年収四百万円になったら帰宅は午前様。残業手当なし―。小泉内閣と財界が、事務系の労働者を対象にこんな制度をつくる準備をすすめています。早ければ来年の国会に法案が出る予定。空前のサラリーマン大増税とあわせて、月給から残業手当がなくなったら生活は大ピンチです。
■帰宅は午前様!?
残業代を払わずに何時間でも労働者を働かせることができたら、財界にとってどんなにいいか。しかし、一日八時間労働など労働基準法の規制があってやりたくてもできません。規制を超えて平日の残業や休日出勤をさせたら二割五分以上、深夜業の場合は五割増の割増賃金を払わなければなりません。
労働者が人間らしく働き、生活するための当たり前のルールですが、財界にとってはこれが邪魔。この規制から逃れるために、自己の裁量という名目でいくら働いても残業手当がつかない裁量労働制を導入しました。しかし対象者に制限があるなど使いづらいというのが企業の評価です。
■労基法に新設
そこで出てきたのが、ホワイトカラーエグゼンプションです。日本経団連が六月に「提言」を出しました。ホワイトカラーは労働時間規定の適用を除外(エグゼンプション)するという項目を労働基準法に設けるといいます。「一定の要件」をつけるとし、それが年収四百万円以上。あとは「地位、権限、責任、部下人数等とは無関係」といいます。
年収が四百万円を超えたホワイトカラーはすべて、労働時間規制の対象外にされ、定刻になっても帰れず、夜なべしても残業代なし。過労死しても「自己責任」です。こんな働き方になるということです。
この制度は、アメリカが本家です。アメリカには労働時間を制限する法律がなく、公正労働基準法で、労働時間が週四十時間を超えたら一・五倍の割増賃金を払うという条項があるだけです(七条)。そして二人以上の部下をもっている管理職や運営、専門職で週給四百五十五ドル以上(日本円で年収約二百五十万円程度)を要件に、七条の適用を除外する規定があります(一三条)。アメリカの場合はまだ管理、運営、専門職といった要件があるのに、日本経団連の「提言」は、それさえないひどい内容です。
二〇〇一年に小泉内閣が財界代表を中心に発足させた「総合規制改革会議」で初めて検討が提起され、〇二年三月の「規制改革推進三カ年計画」に盛り込まれて閣議決定。今年四月に有識者による研究会が発足。年内に報告をまとめ、来年の国会に法案を提出しようという早いテンポです。
■財界なぜ導入急ぐ
財界が導入に本気になった動機は、厚生労働省が〇一年四月六日付でサービス残業根絶の通達(四・六通達)を出したことです。これを力に労働者の申告が相次ぎ、トヨタなど主要企業が不払い残業代を支払わされました。通達後、四年余の間に六百五億円を超える巨額に達し、財界に衝撃を与えています。
通達の最大のポイントは、企業に労働時間管理の責任があることを明確にし、タイムカードやICカードなどで労働者の始業・終業時刻を毎日確認し、記録することを義務付けたことです。
実はこれは、日本共産党が一九七六年以来、国会で二百四十回を超えて主張してきた核心中の核心です。たとえば、通達がでる直近の二〇〇〇年四月の衆院予算委員会での志位和夫委員長(当時=書記局長)の質問です。サービス残業の一番の問題は、企業が実際より少ない残業時間を労働者に「自主申告」させるやり方にあることを指摘し、労働時間の把握と管理を企業に義務付けるよう求めました。
核心を突いた追及に、「共産党に国会で何度もとりあげられ、参った。通達にはその主張がかなり盛り込まれた」と省内で話題になりました。
■通達直後から
しかし、財界はこの通達を敵視し、直後から反撃の動きを開始します。「総合規制改革会議」がホワイトカラーエグゼンプションを「早急に検討着手」とうちだしたのが〇一年七月。通達の三カ月後でした。
労働行政攻撃も激化しました。口火を切ったのが、日本経団連の会長企業・トヨタのある愛知県経営者協会です。通達後、会員企業の35・7%が労基署の指導をうけたと腹を立て、〇四年三月に愛知労働局に、労働時間の把握は労使にまかせよという要望書を提出。このときの要望の一つが、ホワイトカラーエグゼンプションでした。
日本経団連は〇五年版の「経営労働政策委員会報告」で、「最近の労働行政は、企業の労使自治や企業の国際競争力の強化を阻害しかねないような動きが顕著である」と非難し、ホワイトカラーエグゼンプション導入を強調しています。
通達を力に不払い労働根絶の流れを強めるか、財界が狙う残業手当なしの過酷労働を許すのか。いま大きな岐路にたっています。
年収四百万円になったら帰宅は午前様。残業手当なし―。小泉内閣と財界が、事務系の労働者を対象にこんな制度をつくる準備をすすめています。早ければ来年の国会に法案が出る予定。空前のサラリーマン大増税とあわせて、月給から残業手当がなくなったら生活は大ピンチです。
■帰宅は午前様!?
残業代を払わずに何時間でも労働者を働かせることができたら、財界にとってどんなにいいか。しかし、一日八時間労働など労働基準法の規制があってやりたくてもできません。規制を超えて平日の残業や休日出勤をさせたら二割五分以上、深夜業の場合は五割増の割増賃金を払わなければなりません。
労働者が人間らしく働き、生活するための当たり前のルールですが、財界にとってはこれが邪魔。この規制から逃れるために、自己の裁量という名目でいくら働いても残業手当がつかない裁量労働制を導入しました。しかし対象者に制限があるなど使いづらいというのが企業の評価です。
■労基法に新設
そこで出てきたのが、ホワイトカラーエグゼンプションです。日本経団連が六月に「提言」を出しました。ホワイトカラーは労働時間規定の適用を除外(エグゼンプション)するという項目を労働基準法に設けるといいます。「一定の要件」をつけるとし、それが年収四百万円以上。あとは「地位、権限、責任、部下人数等とは無関係」といいます。
年収が四百万円を超えたホワイトカラーはすべて、労働時間規制の対象外にされ、定刻になっても帰れず、夜なべしても残業代なし。過労死しても「自己責任」です。こんな働き方になるということです。
この制度は、アメリカが本家です。アメリカには労働時間を制限する法律がなく、公正労働基準法で、労働時間が週四十時間を超えたら一・五倍の割増賃金を払うという条項があるだけです(七条)。そして二人以上の部下をもっている管理職や運営、専門職で週給四百五十五ドル以上(日本円で年収約二百五十万円程度)を要件に、七条の適用を除外する規定があります(一三条)。アメリカの場合はまだ管理、運営、専門職といった要件があるのに、日本経団連の「提言」は、それさえないひどい内容です。
二〇〇一年に小泉内閣が財界代表を中心に発足させた「総合規制改革会議」で初めて検討が提起され、〇二年三月の「規制改革推進三カ年計画」に盛り込まれて閣議決定。今年四月に有識者による研究会が発足。年内に報告をまとめ、来年の国会に法案を提出しようという早いテンポです。
■財界なぜ導入急ぐ
財界が導入に本気になった動機は、厚生労働省が〇一年四月六日付でサービス残業根絶の通達(四・六通達)を出したことです。これを力に労働者の申告が相次ぎ、トヨタなど主要企業が不払い残業代を支払わされました。通達後、四年余の間に六百五億円を超える巨額に達し、財界に衝撃を与えています。
通達の最大のポイントは、企業に労働時間管理の責任があることを明確にし、タイムカードやICカードなどで労働者の始業・終業時刻を毎日確認し、記録することを義務付けたことです。
実はこれは、日本共産党が一九七六年以来、国会で二百四十回を超えて主張してきた核心中の核心です。たとえば、通達がでる直近の二〇〇〇年四月の衆院予算委員会での志位和夫委員長(当時=書記局長)の質問です。サービス残業の一番の問題は、企業が実際より少ない残業時間を労働者に「自主申告」させるやり方にあることを指摘し、労働時間の把握と管理を企業に義務付けるよう求めました。
核心を突いた追及に、「共産党に国会で何度もとりあげられ、参った。通達にはその主張がかなり盛り込まれた」と省内で話題になりました。
■通達直後から
しかし、財界はこの通達を敵視し、直後から反撃の動きを開始します。「総合規制改革会議」がホワイトカラーエグゼンプションを「早急に検討着手」とうちだしたのが〇一年七月。通達の三カ月後でした。
労働行政攻撃も激化しました。口火を切ったのが、日本経団連の会長企業・トヨタのある愛知県経営者協会です。通達後、会員企業の35・7%が労基署の指導をうけたと腹を立て、〇四年三月に愛知労働局に、労働時間の把握は労使にまかせよという要望書を提出。このときの要望の一つが、ホワイトカラーエグゼンプションでした。
日本経団連は〇五年版の「経営労働政策委員会報告」で、「最近の労働行政は、企業の労使自治や企業の国際競争力の強化を阻害しかねないような動きが顕著である」と非難し、ホワイトカラーエグゼンプション導入を強調しています。
通達を力に不払い労働根絶の流れを強めるか、財界が狙う残業手当なしの過酷労働を許すのか。いま大きな岐路にたっています。