けぶる稜線

ひいらぎのとげが語る

午後4時過ぎにスーパーで出遭った男

2024-04-22 07:19:18 | 日記
東京の西に位置するJRの駅。その駅に併設されている築数年の高層マンションの2階部分に大きなスーパーがある。リハビリと散歩を兼ねて歩く途中にあるのでこのスーパーにはよく立ち寄る。それに、夏は店内がひんやりとしていて真夏の憩いの場にちょうどいい。ついでに割引値段の傷物の野菜類や賞味期限が迫り1割や2割程度安くしてある肉類などを購入する。

ある日の午後、買い物籠を提げてブラブラと歩いていた。突然、40代後半であろう背の高い男が正面にいた。通りすがる瞬間、ほとんど商品の入っていない私の買い物籠の中をじろっと覗き込んだ。秒針の一針にも届かない時間であったがその目の動きや彼の内面から出る振動、或いは、波長みたいなものから、その男が他人には話せない厳しい生活で心がすさんでいるだろうことが内面を映し出す化学薬品が艶のない逆立った髪の先端から漏れるように出ていた。

私は年齢より若く見える、あるいは、バガボンド風に見えるらしく、その男も私に纏わりついている空気みたいなものが彼のものと混じるのかぶつかりあうのかを推し量ろうとしたのであろう。相手の生活状態や精神状態を推し量り、自分よりひどい生活状態だと推察された時に生じる貧しい優越感を味わいたかったのかもしれない。午後4時を過ぎた時間帯にスーパーで買い物籠をぶら提げている男はどんな奴かと勘ぐりたかったのかもしれない。

生活に虐げられた人間や日本社会の既定路線から外れ水飴の中をかいくぐるような生活に追いやられている人間は誰も同じようなやつれた顔付きになり似てくる。顔の筋肉がそがれ他人の目を避けるように都会の無記名の雑踏であるスーパー内を徘徊しているのだ。
(2017.09.05.投稿)




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