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【2010年7月10日】 京都シネマ
シェークスピアの作品は様々な形でふれる機会が多いが、モリエールの方はほとんど知らない。
しかし、解説の鈴木幸司氏が言うように、「モリエールに詳しい人も、詳しくない人も分け隔てなく映画を楽しめる」よう、上手につくられている。映画の中にはモリエールの作品の一部が、たとえば「タルチュフ」や「人間嫌い」・「守銭奴」といった作品の台詞や登場人物が、随所に埋め込まれているという。
映画自体は本当に良くできていて「恋に落ちたシェークスピア」よりも面白かった。
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物語は、まだ駆けだし役者兼劇作家に過ぎなかったモリエールが、自分の劇団運営の失敗から出た借金地獄に追われるように、パリを脱出し地方公演に出てそれが成功し、再びパリに戻るまでの13年間の歴史上の空白を埋めるフィクションという想定になっている。
借金のために投獄されていた身を、町人貴族のジュルダンによってその家付きの家庭教師にひきとられ、そこでいろいろの出来事に遭遇する。
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主な登場人物はモリエールの他に、ジュルダンとその妻のエルミール。夫は社交界の花形セリメーヌの気を引こうと無駄な努力を重ねるが、奥さんは色才兼備のしっかり者。
ドランド伯爵は、ジュルダンとセリメーヌの仲を取り持つ振りをして貢ぎ物をことごとく自分の懐に入れてしまう、口先だけのいい加減な男で、没落しかけた貧乏貴族。その息子を、爵位はないが豊富な財産はを持っているジュルダン家の娘と結婚させようとする。ジュルダンは爵位が欲しいから利害が一致するが、妻は娘の幸せを第一に考えるから反対する。
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一方、エルミールははじめそれとは知らず、モリエールの才能に惚れ込む。モリエールも好意を持って接近する。旦那はそのことに気がつかない。
娘の政略結婚が今まさに成立しようとしたとき、エルミールが機転を働かす。
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やはり、観る側の最大の弱点は、「モリエール」自身の作品自体を観たことも、その本を読んだこともなく、実際に知らないということである。
エルミールが一目見て、「素晴らしい」と感嘆するモリエールの書いた作品とはどんなものだったのか。俗人とは違う天賦の才能の発露とはどんなものか、具体的な材料、イメージがないから、その場面の展開に説得力がなく、不自然に映る。映画を観る第三者にも、「なるほど素晴らしい。」と唸らせる具体的な断片が提示されたら、もっとリアルに感動が伝わるのに、とこちらの知識の無さを棚に上げて、思ってしまう。
モリエールの作品の2つ3つでも知っていたら、もっと合点のいく別の楽しみ方ができたかと思うと少し残念だった。
「モリエール-恋こそ喜劇」-公式サイト