河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
加えて、日々の思いをブログに移入しています。

畑――葵の上

2023年08月08日 | 菜園日誌

かつては犬を何匹か飼ったが、ご近所から鳴き声がうるさいと苦情が出て、以来、飼うのをやめた。
その代わりに飼いだしたのがメダカ。
10匹ほどから飼って、五、六年たった今では200匹はいるだろうか。
なのだが、今は姿が見ることができない。
卵を根に付着させて採卵するために入れているホテイアオイでびっしりだからである。

間引けばよいのだが、そろそろ花を咲かせるので放置している。
もともとは観賞用に輸入されただけあって、実に清楚な美しい花が咲く。
奈良県橿原市の新薬寺跡の周囲の田んぼに数十万本のホテイアオイが植えられていて、隠れた名所になっている。
毎年、観に行っていたのだが、去年から、理由はわからないが植え付け中止になった。
なんとも残念なことである。

そこで、水槽で増えたホテイアオイを畑の隣の田んぼの隅に植えている。
爆発的に増えるので、要注意外来生物に指定され、世界や日本の侵略的外来種ワースト100にも指定されている。
だから、田んぼに植えてはいけないのだが、個人的利用と勝手に判断して植えている。
それが花を咲かせた。

ウォーターヒヤシンスという別名があるとおり美しい。
ところが、蓼食う虫も好き好きなのに、美しい花にはトゲがあるのか、日本ではこの花に寄ってくる虫がいないという。
美人過ぎて近寄りがたいのかもしれない。

そんなホテイアオイを、『源氏物語』の主人公光源氏の奥さんの名前にならって葵の上(あおいのうえ)と呼んでいる。
葵の上をうっとりと見ながら話しかける。
 はかりなき千尋の底の海松ぶさの 生ひゆくすゑは我のみぞ見む
 (限りなく深い海の底に生える海藻のように、豊かに成長していく黒髪を持つ君の将来を見届けるのは僕だけだよ)
葵の上が少しはにかみながら答える。
 千尋ともいかでか知らむ 定めなく満ち干る潮ののどけからぬに
 (深い永久の愛を言ったって分かるもんですか。満ちたり引いたり定まることのない潮のように、あなたはすぐに心変わりしちゃうんですから)
なんとも優雅な畑の逢瀬である。


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