2001年に『息子の部屋』でパルムドールを受賞したイタリアの映画監督ナンニ・モレッティが新作『カイマン』にてカンヌへ戻ってきました!
初期の映画でもイタリアの政治を批判してきたナンニですが、今回の作品では、会社は倒産寸前、妻とは離婚寸前のB級映画のプロデューサー(シルヴィオ・オルランド)が監督志望の若い女性(『息子の部屋』で娘役を演じたジャスミン・トリンカ。立派な女優の道を歩んでいるようです)に『ベルルスコーニ』についての映画のシナリオを渡され繰り広げられるストーリー。
2001年のカンヌ映画祭でナンニのインタビューを事前申請したら、プレスの女史に、『まずは試写をして、作品についての感想をまとめてからインタビュー申請して下さい。ナンニはテレビインタビューはあまり好きでないので断る可能性のほうが高いです。』と言われ気合い入れて初回の試写で観て、これはパルムドールを受賞するに違いない!と確信した勢いで再度プレス女史に掛け合った。その甲斐あってか、『OK。そこまで言うなら何とかしましょう。でも今回WOWOWは唯一の日本のTV媒体よ。他は入れません。』そして結果的にナンニはパルムドールを受賞し、このインタビューは有り難い映像となった!
今年も11時の記者会見に晴々とした気持ちで出席する為に、朝8時半の初回プレス試写にて早速スクリーニング。
ユーモラスでもあり、神経質でも有名なナンニですが、記者会見では予想通りベルルスコーニやイタリアの政治状況についての質問攻め、『今日の記者会見は6時間くらい時間があるんだっけ?では…イタリアの政権について一からご説明しましょう…』と返したり。
ユーモアたっぷりのナンニ!
記者会見の一部紹介。
Q:イタリアの政治についての物語の映画でカンヌにくることで、理解されないという恐れはなかった?ナンニ:イタリアの政治状況が海外の人に理解できないというのは、一市民としては嬉しいことだよ。なぜならこうした正常では考えられない、6チャンネルあるテレビ地上波のうちの3チャンネルを所有している男がイタリアでは4度も首相に当選してきたのだから、こんな状況を海外の人は理解できないでしょう!でも、イタリア人はこういった状況を異常だと思っていないんだから恐ろしいことなんだ。僕は正当なコンペティションが好きだから、こうしてカンヌに作品を出品しセレクションされて来れるのは嬉しいかぎりだよ。イタリアでは正当なコンペティションさえできないんだから。このデモクラシー世界で選挙の後15日間も負けたことを認めない奴が国の頂点にいるなんて恐ろしいことだと思いませんか?
Q:『カイマン』はイタリアでは選挙前に公開されましたが、この映画の影響がベルルスコーニの敗戦につながったと思う?ナンニ:それはどうかな…プロデューサー:皆がナンニに選挙の結果に影響を及ぼしたか?と質問するけど、誰かこの過去10年でベルルスコーニに、あなたの当選はあなたがTV局を3チャンネルも持っていた事と関係があると思いますか?って聞いたことがありますか?ナンニ:イタリアでは『親愛なる日記』を出した後、なぜ内科に行かずに専門科医のところへ行ったんだとか、君が癌にかかったのはブルジョアな生活のせいだ、と批判ばかりされた。でもフランスでは作品も認められ、素晴らしい待遇を受けたんだ。これがイタリアとフランスの違いだね。フランスには本当に感謝しているよ。
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政治批判の映画ではあるけど、ナンニ独特の描き方、そして家族のあり方の多様性さ、などなど充分ナンニワールド満足度ありの作品です!
2001年の公式上映の後もナンニはリムジンに乗らず徒歩で海岸通りへスタッフと共に消えて行き、その一貫した態度に感動したけど、やはり今年も夜カールトンホテル前を歩いていたらナンニとバッタリ遭遇!
ナンニ大ファンの私は、思わず声をかけて写真を撮らせてもらった!
偶然夜道で会ったナンニは、とても紳士的でした!
握手してもらった彼の手は、とっても大きくて厚みのある魅力的な男の手をしていました!