受賞結果発表後に行われた審査員の記者会見の模様をどうぞ!
受賞結果の発表後に行われた審査員たちの記者会見
ウォン・カーウァイ審査員長:本当にいい時間を過ごせたよ。こんなに熱心に仕事をしたの初めてなんじゃないかな!(笑)朝の8h30から試写してたんだからね!モニカの涙や、ヘレナの笑い声が今既に懐かしい思い出だよ。
Q:皆の意見が一致したとのことについて。
ウォン・カーウァイ:作品が心に響くってことはそういう事だよ。観点は違っても心へ届けば一緒。ね、ヘレナそうだよね?
ヘレナ・ボナム・カーター:え、そうね、ええ、ごめんなさい、私本当に今回疲れ果ててしまったわ。1日に2本の映画を観る、しかも、今回のコンペ作品はとても重みのある作品ばかりで、あまりにものエモーションに消耗してしまったわ。ケン・ローチの作品は開催初日の作品だったので、とても強いインパクトがあったし、深い部分で残ってしまったの。今回のセレクションには5作品戦争の映画があるけれど、ケン・ローチによってアイルランドの歴史を学べたこと、真の兄弟同士でも殺し合うという、今までには理解の出来なかった事を理解させてもらえたことは印象的。
「疲れたわー」とヘレナ・ボナム・カーター
パトリス・ルコント:今回の審査員の中で一番疲れてないのが僕なんじゃないかな。ケン・ローチについては、この作品を観て感じたエモーションはとても大きかった。それから毎日試写をする度に審査員仲間と話し合ったが、最後までこの作品は心に響き続けていたんだ。素晴らしいコンペ作品が多く、それに対し与える事のできる賞が少なすぎる。特にこの場を借りていいたいのは、アキ・カウルスマキの『LAITAKAUPUNGIN VALOT』は素晴らしかった。賞を出せなくて本当に残念。
「いや、オレが一番疲れたんだ」とパトルス・ルコント
ティム・ロス:ぼくはソフィア・コッポラの『マリーアントワネット』、ポルトガル人監督のペドロ・コスタの『JUVENTUDE EM MARCHA』、中国人監督ルー・イェの『サマーパラス』に賞が与えられない事が残念。でも、ケン・ローチの作品では、普段映画を見て涙するときは目を瞑って秘かに泣くのに、のどから声が溢れ出ておいおいと泣いてしまったんだ!
パルム・ドール作品には声を出して泣いたと告白したティム・ロス
Q:最優秀女優、男優賞の両方にグループ賞を与えたのはなぜ?
ウォン・カーウァイ:今年の作品の役者は皆素晴らしかったのが理由だ。『ヴォルヴェール』とは『戻る』事を意味しますが、昔の作品の中の女優達に戻るという意味合いも持てるのでは。そうなった場合、この評価は一人の女優でなく、集団に対する賞であったほうが正当だと思われた。一つの作品を作るとき、我々は『家族』になるんだ。そして、『Days of Glory (原題)』に関しては、この作品の中での戦いは一人の戦いではなく、集団の戦い、そして最後の4人の戦いです。それは不正や人種差別に対してなどとの戦いです。一人の役者の賞にはなり得ない。今回わざとシンメトリックを保つ為に、女優賞、男優賞をグループにあてたのではなく、これらの優れた作品が我々の選択を導いたのだ。
Q:今回の審査方法について。
ウォン・カーウァイ:主催者側からは審査をするにあたって、最低映画祭期間中に3回の会議を持つようにとの条件をうけました。でも、僕らは自然と毎日作品を観る前と観た後に意見の交換をしたんだ。審査員としての意見より、一観客として皆で意見を交わし合ったよ。
Q:イタリア映画に賞はなかったけど?
モニカ・ベルッチ:ナンニ・モレッティや、パオロ・ソレンティノなど、素晴らしい作品があったのに、賞が行き届かなくて本当に悲しい気持ちよ。ナンニはパルム受賞歴もある巨匠、ソレンティノは若手の奇才な監督。新しい表現法を生み出しているわ。
地元のイタリア映画に賞が出なくて残念とモニカ・ベルッチ
サミュエル・L・ジャクソン:本当に。今回のイタリア映画も素晴らしかったが、賞は出なかったが、僕らの心の中での賞はでているよ。
ここでもやっぱりお洒落なサミュエル・L・ジャクソン
Q:ケンローチの作品の中で描かれているアイルランドの占領や破壊によるテーマはパレスチナを連想させましたか?
エリア・スレイマン:そういう第一印象は受けていないし、政治的コンテクストが違うからね、その理由で選んだのではありませんよ。とにかく、この作品に魅了されたんだ。上映が終わって、僕らは50分間喋る事ができなかった。映画祭期間の初めに上映されたので、皆の記憶から薄れてしまうのは残念だったか、結果的には最後まで心に残った作品だったよ。パレスチナと例えるなら、『サマーパラス』のほうが相似点があったと僕は思ったんだけど。いい作品が多くて、その数に対しての賞がなくて本当に残念。
良い作品が多すぎたと、エリア・スレイマン
Q:マリーアントワネットに賞がでてないのはなぜ?
ティム・ロス:『サマーパラス』にだって賞が出てないんだよ。皆のお気に入りだったのに!
Q:植民地制度の問題をテーマにして作品が多くなかった?それは今の流行の主題なのでしょうか?
エリア・スレイマン:あ、そのテーマは僕の専門分野なので、僕が答えようかな。このような主題を取り扱う映画が増えた事は偶然の出来事ではないのは確かでしょう。ただ、テーマを評して賞を決めたのではなく、どのようにしてテーマを扱っているか、表現しているかが重要なんだと思う。
Q:開幕時の記者会見では、ベージュ色の選択にならないようにって話していたけど、どのような色で選択されたと思う?
パトリス・ルコント:勿論ベージュじゃないですよ。本当に皆が心が愛した映画を選べたと思う。今年のセレクションは素晴らしかったので、全てのお気に入りの作品に賞を出せなかった、という事実も確かだが、もちろん賞を受けなかった作品の中には嫌いな作品だってあるよ。
ちょっとしゃべり疲れた様子の審査員長のウォン・カーウァイ
審査員のみなさん、お疲れ様でした!
私の受賞予想は『バベル』が監督賞かパルム・ドール。そして、『ヴォルヴェール』が女優賞か監督賞を受賞すると思っていたので予想が半分あたりちょっと驚きでした!例年カンヌの予想はいつもほとんど当たらないんで…。