WOWOWカンヌ国際映画祭ブログ

現地に飛んだスタッフが映画祭の様子を毎日レポート!

カンヌ映画祭、ウィナー達の喜びのコメント

2006年05月30日 | 現地レポート

記者会見場に順番に入ってくるカンヌ映画祭のウィナー達。興奮が止まない状態で行われた記者会見の模様をご紹介しましょう。皆、席につくなり煙草を一服する姿が目立ちホッとした様子でした。各自5分弱の短い会見でした。
---------------------------------------
◎最優秀監督賞 『バベル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督賞をとったら、という気持ちの準備をしないようにしていたから、舞台で何を言っていいかわからず、焦ったよ。ちゃんと立派な事を言えなかったような気がする!

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督

Q:この賞はメキシコにとってどんな意味があるでしょう?
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督勿論、国籍を超えて、一個人としても最高の報いだよ。僕が初めてカンヌに招待されたのは6年前。そして、今回初めてメキシコ映画がコンペに2作品も入った。それはとっても大事な意味を持っている。これからもラテンアメリカの物語が国際的にも評価を受け入れられ、興味を持ってもらえれば嬉しい。

---------------------------------------

◎審査員特別賞 『Red Road』
アンドレア・アーノルド監督先週公式上映で感動したばかり。5時間前にはロンドンにいた私よ。本当に感動的なことだよ。

---------------------------------------

◎最優秀女優賞、脚本賞 『ヴォルヴェール』
ペドロ監督が女優達皆の名前を紹介し、最後に自己紹介『You can call me Pedro』と上機嫌。

上機嫌なペドロ監督とペネロペ・クルス

Q:今回の受賞で一番大事な事は何?
ペドロ・アルモドバル監督:まるで、大きくなった気分だよ。監督というより、彼女達の親になった気分で喜んでいる。本当にすべて彼女達のおかげ。脚本も一人一人の女優が書き込んで作ったようなものなんだ。

Q:作品を観て、多くの人がペネロペが女優賞をとると噂していたけど、あなたの今の気持ちは?
ペネロペ・クルス勿論噂は知っていました。でも、あまり気にしすぎないように心がけたけど、正直やっぱり私も弱いひとりの人間だから期待はしてしまったわ。でも、こうして団体で賞を頂けて、スペイン女優として誇りに思える事をとっても嬉しく思っています。でも、トロフィーは誰が貰うのかしら??

主演はペネロペ・クルス

ペドロ・アルモドバル監督彼女達は私生活では一緒に住んでないからね!とにかく、こうして世界各国の人々がこの映画を観てくれるようになることが嬉しいよ。スペインには沢山素晴らしい女優がいるんだって事を世界に認めてもらえる、スペイン女優全員の賞です。

Q:ペドロに沢山助けてもらっていると?
ペネロペ・クルス初めてペドロの映画を観た時から、心の底から好きな監督でした。そのペドロとこうして10年前からの付き合いが始まり、私の人生の中にペドロが存在することを本当に幸せに思っています。

受賞した女優陣とペドロ監督

Q:今回の映画祭の期間中、皆がずっと『ヴォルベール』がパルムだと噂してたけど、今の気持ちは?ストレスは?
ペドロ・アルモドバル監督公式上映されて以来、速報誌の『le film francais』や『Screen』を毎日チェックしてたら、ずっとパルム候補一位だった。嬉しかったけど、でもこれらの速報誌で一位の座にいると、malediction(不運)を呼び、パルム・ドールは手に入らないジンクスがあるんで心配だったよ!でも、パルム・ドールじゃないにしても、充分大きな賞を頂けて悔いはない。感謝一杯。ひとつだけこの場を借りて言いたいが、映画祭主催者にギリギリまで連絡をくれないのは止めてくれって言いたいよ!カンヌに夕方入るには時間が必要だし、皆ハラハラして連絡を待っていた。ギリギリの朝11時30分に連絡がきて、すっ飛んできたんだ。本当、もう少しで閉会式に皆が揃えないところだったよ!そのストレスが顔に出ていただろう?

---------------------------------------
◎グランプリ(審査員特別賞)『FLANDRES』
Q:パルム・ドールを貰いたかった?
ブリュノ・デュモン監督いやいや、もう賞をとれるとは思ってなかったから、子供のように喜んでいるよ

ブリュノ・デュモン監督

Q:自分の作品がウォン・カーウァイやティム・ロスに認められると思った?
ブリュノ・デュモン監督カンヌ映画祭の選択も、ウォン・カーウァイやティム・ロスも既成の産業映画や娯楽映画を推奨する人たちじゃないからね。とにかく観る人一人一人の心を掴む作品にしたかった。ケン・ローチは尊敬する巨匠。彼がパルムで本当に嬉しい。独自のスタイルで作品を作るのはある意味大きなリスクを背負っているので、こうして賞を頂けると本当に勇気つけられるよ。

---------------------------------------
◎最優秀男優賞 『Days of Glory (原題)』

やったぜ男優陣!記念撮影を、っとアレ、ジャメルの姿が...

Q:(英語にて)なぜ表彰式であの歌を合唱したの?大事な歌なのですか?

司会者がジャメルにフランス語に訳すと、ジャメルなんで訳すんだよ、僕が英語がわからないとでも思ってるのかい??じゃあ、英語で答えるよ、『I,I,I, you know,an....how say... I just to say you Thank you!』 (場内爆笑)今回賞を貰えるなんて思ってなかったから、あまりにも興奮しすぎて、真面目になんて答えられないので、宜しく!

はい、こちらジャメルです。会見終わっているのに興奮してしゃべりまくってます。

ロシディ僕は英語ができるから、その質問に答えるよ!どの国でもそうだけど、戦争には必ず歌があるでしょう、戦場にいる兵士にとってはとっても深い思いが込められるものだと思う。だから僕らも今は死んでしまった北アフリカ出身の兵士たちを憶い、喜びの席で歌ったんだ

Q:映画によって亡くなった兵士を蘇らせることが出来ると思う?
ラシッド・ブシャール監督蘇らせるのではなく、この過去を多くの人に共有してもらいたい。フランスの歴史のひとつとして。帝国主義、植民地について事実を伝える事は大事な事。

Q:モロッコのジャーナリストですが、モロッコ人のジャメルに質問。こうした賞を受けて役者として...(質問が永遠と続く)
ジャメル君は本当に典型的なモロッコ人だなあ、質問に2時間かかってるぞ!
司会者時間が少ないので、質問は何ですか?Q:原住民をうまく演じられたと思う?(作品のフランス語タイトルである『Indigenes』は植民地時代にフランス人が現地の北アフリカ人をこう呼んでいた。)
ジャメル答えは短くするよ。『原住民』と呼ばれていた祖先の全ての真実を伝た、というような自惚れは一切ない。僕らはこれらの歴史のほんのメモ用紙の一部を演じたようなものだ。それに、このテーマは僕らが初めて映画にしたのではなく、52年頃に既に映画化されている。大事な事は語り続けることだと思ってる。(ちなみにジャメルはこの作品のプロデューサーでもある。)

ベルナール(陸軍伍長役)公式上映の際に、僕の横に実際にこの戦争へ行った元兵士が座っていた。作品を観ながら、歌のシーンでは一緒に口ずさみ、ずっとコーランを唱えていたよ。唯一、現実と違うと指摘されたのは、山の中の雪景色のシーンで、『雪はもっと降っていたぞ』と言われた。

ジャメル生き延びた兵士たちと合う機会があって、話を聞いているとき、『可哀相な』と同情を含んだ呼び方をしたら、彼等は胸をはって、僕らは被害者じゃない、同情される意義はない、と言われました。被害者でもなく、英雄でもない歴史的人物達なんだ、という事を理解したよ。
---------------------------------------

◎パルム・ドール(最高賞)『麦の穂を揺らす風(仮題)』
ケン・ローチ監督カンヌに来るのはこれで13回目。この数字が幸運を呼んだのかな。まさかパルム・ドールを貰えるとは思っていなかった。この作品は10年前からやりたいと思っていた内容。このようにして今日認められたってことを本当に嬉しく思おうよ。

パルム・ドールを手にするケン・ローチ監督

Q:今年のカンヌは戦闘的、過去の過ちを振り返る作品が多かったけど。
ケン・ローチ監督僕らは素晴らしい時代に生きていると思う。映画が世界政治に目を向ける手段として認められるというのは、4、5年前では考えられない事だと思うよ。映画が娯楽という小さな枠を出て、我々の生活の大事な部分に入れるようになったんだ。

Q:これはイギリス映画?それともアイルランド映画?
ケン・ローチ監督共同製作はしているが、スタッフもキャストも全てアイルランド人なので、アイルランド映画と言った方が正しい。でも、もっといいのは、世界映画と言うべき。映画は国籍に限度されるべきでないと思います。

記者にサインをするケン・ローチ監督

Q:審査員全員がこの作品をパルムドールに選んだ、と言いますが、本当だと思う?真相を調べた?
ケン・ローチ監督今さっき知ったばかりで、まだ裏調べをする余裕がないよ!

Q:出演俳優達とは話したの?
ケン・ローチ監督これから電話するところです。また、ケン・ローチ監督の「過去の真実を語ることは現在の真実を語ることでもある」というスピーチに私は思わずグッときてしまいました。ケン・ローチ監督、パルム・ドールおめでとうございます!