統計のウソ!
“統計のウソ”のうち、特に「新聞・TVの世論調査における誘導質問やデータの操作」の問題と「ネット調査の信頼性」についてみていきます。まず、新聞やTVなどで実施される「世論調査」では、よく自社の主張に都合のいいデータ収集による世論調査の操作が見受けられます。一般的にマスメディアの世論調査におけるサンプリングは無作為が多く、調査対象者の偏りは少ないと思われますが、その質問内容自体に問題があることが多いのです。例えば、「ここ数年日本社会は、格差の拡大や凶悪犯罪の増加が問題となっていますが、あなたは住みにくくなったと感じますか。」という質問された場合、多くの人は「ハイ」と答えるでしょう。そしてその解釈は「今の日本社会は生活環境が悪化しており、これは構造改革の弊害だ。」とつなげていくのです。またアンケートは予め用意された回答を選択するものが大半で、これは質問者の想定内での結果にもつなげていけるもので、調査における「誘導」「操作」は簡単に行われてしまうのです。一方、TVの番組内での調査は、サンプリング自体意図的なものが多く、番組のテーマに合致した作為が多く見られます。街頭インタビューの映像は一方の答えのみをつなぎ合わせたり、調査結果も一部の地域のみで、サンプリング数も100人程度の有意性のほとんど無いものです。
次に、「ネット調査の問題」では、「ネット調査を行うと若い人に人気のある候補者や商品のポイントが高くなる」ことがよく言われます。これはネット利用層の問題(60代以降のネット利用者が少ない)や、ネットという匿名性による信頼性の問題(年齢・性別を偽る)、そして、アンケートを答えたい人〈積極的な人やポイント収集目的の人)に偏る、などがあります。つまりサンプリングの代表性の問題があるということです。ただ、ネットの無名性や在宅性という自由性・簡易性がアンケートを収集しやすく、“本音”の収集の可能性も多く、また大量のサンプリングのわりに調査費用が安い利点もあり、”統計のウソ”につながる信頼性の弱さを補完するメリットがあることは確かです。
とにかく、活字や映像を鵜呑みにせず、マスメデアを疑ってみることが必要ではないでしょうか。
来月は、これに関連して、「アンケート作成のポイント」を取り上げてみます。
参考文献:田村 秀 2006 「データの罠」集英社