世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

中国が尖閣を欲しがる理由

2013年02月11日 | 政治
中国が尖閣の領有権を主張し始めたのは近海に海底資源があると国連が報告した後であり、資源欲しさに尖閣の領有権を主張していると、日本人は観ていますが、果たしてそれだけでしょうか? 中国は口に出して言えませんが、もっと重大な欲望を秘めていると思います。

中国は台湾を獲得する意志を隠しませんが、それは太平洋への自由な海洋進出が悲願だからです。台湾を獲得するには、台湾攻略の足場として尖閣諸島は欠かせない位置にあります。それで中国は是非とも尖閣を入手したくなったと推測してみては如何ですか? 

そうだとすると、海底資源への欲から中国が尖閣を欲しがっているというのは、本音をカモフラージュする中国の作戦に乗せられた間抜けな議論になります。

いま中国は南シナ海と東シナ海の覇権を握るため激しく周辺諸国と争っていますが、その終局の狙いは、南・東シナ海の覇権を確保して台湾を獲得するためなのです。両シナ海の海底資源は付け足しであって、台湾を獲得する作戦のためにも、また獲得した後のためのも、南シナ海と東シナ海の覇権が欲しいのです。

しかし、中国が両シナ海を覇権下に置くと、台湾が中国のものにならなくても、航海の自由が脅かされるので大きな脅威になります。この点は、昨年末、首相就任前の安倍首相が海外ウェブサイトに発表したセキュリティ・ダイヤモンド構想ではっきり述べています。南シナ海が北京の湖になっても良いのですかと。

尖閣は、台湾の北東に位置し、沖縄の与那国、石垣、宮古の北方にあり、台湾攻略の際の要衝になります。これが日本、従って米国の支配下にあると、中国の台湾攻略作戦の大きな障害になります。

多くの日本人は、この中国の本音を知りませんが、米国軍当局は百も承知であり、米議会も理解しています。ですから、米議会は尖閣について日本の立場を擁護し、行政府のクリントン長官も辞任直前に中国に釘を刺したのです。

この3月に政権交代する習近平は、党中央軍事委員会主席に就任以来、共産軍への影響力を高めようと東奔西走して軍関係機関の士気を鼓舞しています。その狙いは党の軍への影響力を高めることにありますが、結果において、周辺国との軍事緊張を高めることになっています。

海上自衛隊の護衛艦に対する射撃管制用レーダー事件は、このような習近平の最近の指導体制の中で起きたことを銘記すべきです。事件発生を党中央が知っていたとか、中国海軍の独走であったとかはが問題なのではありません。

尖閣諸島については、中国は領土問題があることを世界にアピールしたいのですから、事件が発生することを望んでいます。従って、射撃管制用レーダー事件は、中国の外交戦略の一部として実行されたことに疑いはありません。

それ故、中国艦の照射に対して海上自衛隊の護衛艦が慎重に対処し、政府が冷静に分析し事実確認をした後で、国際社会向けに発表したことは適切な対応でした。日本側の発表に対する中国の反応は、日本の指摘はでっちあげと言うのですが、そのような反応こそ中国の意図に図星を指された者の言い分です。

その後、日本の発表は「中国の名前を貶めるため」と言うに至っては、正に中国の意図が見抜かれたことを自ら語る言葉です。語るに落つるとは、このことです。
(以上)  
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