松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

食品安全委員会のクローン牛審議

2009-06-12 03:38:51 | Weblog
 食品安全委員会でクローン牛の評価をしてきた新開発食品専門調査会が、8日に開いた会合で、2月にまとめた「評価書案」を大筋変更しないことを決めたようだ。今後は、専門調査会から出てきた評価書案を本委員会で検討後、「評価書」として厚労省に答申することになる。

 毎日新聞その他各紙が伝えている。

 私は、このニュースを聞いて、ほっとした。なぜなら、産経新聞の5月27日付記事『クローン牛は安全か 消費者の7割「気持ち悪い」で再審議へ』を読み、気をもんでいたから。

 食品安全委員会は、評価書案について3月から1カ月間、パブリックコメントを実施した。産経新聞はそのことを報じ、『約7割が「気持ち悪い」などの批判的意見だったことに配慮して、安全性評価について再審議を行うことを検討している』と書いた。
 もしそれが本当なら、感情論によって科学的な「リスク評価」が左右されることになる。それをしたら、食品安全委員会のリスク評価結果はもう、信頼されない。
 リスク管理の方法は、感情にも配慮しなければならないだろうが、リスク評価は「気持ち悪い」というような感情によって変わるものであってはならない。

 産経新聞の記事を読んで、「まさか」という思いと、「今の食品安全委員会には、なにがあっても不思議ではない」という恐れの両方があり、たまたま5月末に講演会場で会った本委員会の委員に尋ねたところ、「専門調査会で再審議なんて、私は聞いてない」というお答えだった。
 産経新聞の記事は、誤報の可能性がある。そのため、私は専門調査会で公表されるパブコメの結果と審議を待って考えようと思った。

 結局、専門調査会の傍聴には行けず、議事録もまだ公表されていないので、審議の詳細はよくわからない。だが、各紙の報道によれば、パブコメで批判的な意見が大勢であったことが事務局から説明され、でも、大筋の結論は変わらなかったようだ。毎日新聞の記事は『専門調査会はこれらの意見に対し、「健全に発育したクローン牛や豚は、従来の繁殖技術による牛や豚と食品としての安全性は変わらない」などとの回答案を作成、近く公表する』と伝えている。

 当たり前だ。私は、評価書案は科学的には妥当だと思った。生命倫理や動物福祉、感情的な検討はまた別の次元で行わなければならないことであり、いくら批判を受けたとしても、食品安全委員会とは関係がない。


 ただし、気になることがある。中日新聞によれば、専門調査会で委員から、『消費者の不安などの意見が多いことを「厚労省や農林水産省にきちんと伝えるべきだ」として、食品安全委でその方法を検討するよう求める意見が出た』という。
 だが、それはしてはならないだろう。リスク管理の方法になんらかの影響を与えかねないことをするのは、リスク評価という「仕事」を逸脱する。

 BSE問題の時に、農水省がリスク評価と管理の両方をやっていたから、大きな問題となった。そして、管理のための評価ではなく、公正なリスク評価をするために、食品安全委員会は生まれたはずだ。
 管理機関が評価機関に影響を与えてはならないならば、評価機関も、管理機関に「きちんと管理に責任を持て」ということ以外は、なにも伝えるべきでないだろう。そうでないと、両者の独立性は保ち得ない。
 食品安全委員会のパブコメに批判的意見が殺到したという事実は、公表されている。その事実を、厚労省や農水省が情報収集して、管理の検討の時に考慮したらいいだけだ。

 専門調査会の委員自体が、組織の独立性を損ないかねない意見を平然と出しているように私には思える。非常に興味深い。
 この先は蛇足だが、実は、私は個人的には最近、リスク評価と管理をそれぞれ別組織で独立してやっていくのはもう無理、現実の問題に適応できない、と考えている。まだ論考中。また別の機会に書こうと思う。
 だが、無理であり将来的には統合を目指すべきであるとしても、うやむやにまた評価と管理が一体化、というのはごめんだ。

 食品安全委員会には現状では、しっかりと独立性を保ってもらわなければならない。そうでないと、「食の安全」への世間の信頼感はまた、大きく損なわれてしまう。その一方で、現在の形が本当に機能しているのか、リスク評価機関と管理機関の関係に別の形はないのか、次のステップの議論を始めてもよいのではないか。

池田さんの花だより~タチアオイ

2009-06-12 03:16:36 | Weblog
 虫だより(オオキンカメムシなど)を送ってくださる静岡の池田二三高さんからは、花だよりも届きます。最近いただいた便りを紹介します。なんだか、とても懐かしい花です。私が子どもの頃は、いろいろなところに植えられていたのに、最近はあまり見ないような…。

…………池田さんの花だより……………………
 タチアオイの開花が始まりました。この花の開花期間は長く8月まで咲き続けます。徐々に小さな花になってくるので今が見頃でしょう。名前のごとく、花茎がま真っ直ぐに勢いよく伸びて咲きます。一年草と宿根草の2タイプがあり、宿根草タイプは大株になるので花茎は背丈以上に伸びます。赤、黄、白と花色は豊富で大輪の数がまとまって咲くと実に壮観です。
 多くの種類のムシ達が訪花しますが、花粉が非常に多いので、花粉を好むハナバチの種類が好んで訪花します。八重咲きの品種もありますが、こちらの花には蜜や花粉はほとんどありません。