ビスケットのあれこれ

ビジュアル言語ビスケット(Viscuit)に関するあれこれを書いてゆきます.

作曲マシン

2013-12-29 03:19:47 | 1
ビスケットで音楽を作ります.

一番よくやる方法は,オルゴールと同じで,ステージの上での絵の並び方で曲を表現するという方法です.たとえば,最近YouTubeでも紹介されていましたが,このような作品が一つの例でしょう.これは,すでに誰かが作曲した曲をビスケットに演奏させるというものですね.

それに対して,今回紹介したいのは「ビスケット自身で曲を作る」プログラムです.

作曲マシンの基礎はループをどのように作るかになります.一番簡単には,

のように,1から8までの絵を描いて,それを順に繰り返すようなプログラムです.これで8個分,8分音符としたら8つで4拍の繰り返しを作れます.
メガネの右側に音アイコンを入れるとそのメガネが動いたときに音がでます.音アイコンを複数入れると和音になります.ここには,まだ他のプログラムがありませんから,誰にも邪魔されずに長さが8で繰り返されます.

ところがここに,

のようなメガネを追加します.これは,3が三角にぶつかると8に進む,というものです.三角にぶつからなければ4に進みますが,ぶつかるかどうかはステージでの絵の配置で決まるので,ここでループが崩れて曲が面白くなってきます.
これを実行するとこんな風になります(要Flash).ビスケットの実装が悪くて,リズムが少しよたってしまっていますが.

ここで,音楽の素人なりに,心地よい音楽について考えてみます.重要なのは2点です.

一つは,メガネの右側に入れる音アイコンの種類です.適当に入れて心地よく聞こえるように入れれのでよいのですが,そのコツとしては,5音音階(ペンタトニックスケール)と呼ばれる1オクターブのなかの5つの音を使う,という方法です.Wikipediaでは,中国の音階や琉球音階などが紹介されています.演歌もそうですね.私が一度ワークショップでやったときは,1オクターブの7つの音のなかで使わない音を2つ適当に決めてください.それ以外の5つの音を好きに使ってよいです,という指示を出しました.何か聞いたことがあるような雰囲気になります.

逆に半音階を含む全部の音を使ったからと言って,心地よくないかというとそうでもないのです.そのヒントは,もう一つのポイント,繰り返し構造にあります.最初は変なメロディに感じていた曲も,ある部分が繰り返されるように聞かされると,なぜか心地よくなってくるから不思議です.ただしきっちりと繰り返すのではなく,時々その繰り返しが裏切られたりすると,そこがまたしびれます.

ビスケットでの作曲マシンの肝は,どうやって繰り返し構造を作るかということになります.完全にランダムではダメですし,正確にきっちりと繰り返すのでもダメです.その中間です.ここがビスケットらしい部分になります.

これまで,この「やや繰り返し」を作り出すためにいくつかの方法が発見されてきました.その一つがこれです,

二つの絵の配置で繰り返しを作っています.これで作った演奏はこうなります.それぞれのメガネの指示に従って,二つの絵がぐるぐる回ります.この繰り返しの特徴は時々間違えることです.その間違えが「やや繰り返し」になってくれています.

この一連のメガネの作り方にはコツがあります.適当にやると,すぐにどれか少しのメガネだけで小さな繰り返しが出来てしまって,なかなか面白くなりません.できるだけ長いループを作るのが重要です.

やり方は,まずステージに二つの音符を適当な配置で置きます.そして,それと出来るだけ同じ配置でメガネの左側を作ります.

次に,その配置とはちょっとズレた別の配置をメガネの右側に作ります.すると,ステージの音符はその配置に近くなるように動いて止まります.

もし止まらなかった場合は,今作った右側の配置が左側の配置に近すぎるということなので,そこで止まるようにずらしてください.
次に,その止まった配置と同じものを,新しいメガネの左側に作ります.

そこで,さらにこの二つの配置とも違う新しい配置をメガネの右側に入れます.

すると,そこでアニメーションがまた止まるはずです.これを繰り返して行くと,どうしてもアニメーションが止まらなくなるので,そこでやめます.

整理すると,新しくメガネを作るときは,いま止まっている配置と同じ配置をメガネの左側に入れて,それまでのメガネの左側のどれとも近くないような配置をメガネの右側に入れて,その配置でアニメーションが止まるようにする,ということです.こうすると,長い繰り返しができます.ただし非常に曖昧な方法でループのステップが表現されているので,時々間違えます.この間違えが心地よくなります.時々間違えるとのは,誤差が蓄積して行くことで生じますが,誤差の蓄積の仕方も大体同じなので,間違えるタイミングも大きなループになります.あるフレーズAを3回繰り返すと1回違うフレーズになる,というのが繰り返されます.その誤差の蓄積も多少ずれるのでその全体の繰り返しが長く続くと時々,フレーズAが4回繰り返して1回間違うということが入ったりします.閏年が4年に一度ですが,100年に一度だけは閏年ではない,というのに似ています.

これだけでも楽しいのですが,さらに応用としては,ステージに入れる音符の絵を3つにする,というのがあります.音符は一つだけだと,動かないのでそこで止まっています.二つの組になった音符は音を鳴らしながら少しずつ動いて行きます.止まっている音符とぶつかったとき,3つの音符での相手の組み替えが起こります.3つ交互にペアを組み替えて進む場合もありますし,あっさり乗り換える場合もあります.これも別な不確定要素になります.

もう一つの方法は,2種類の絵で表現します.

回転する楽器と,ハンマーの絵です.楽器は単独では回転します.ハンマーは下に下がります.
楽器の青の部分にハンマーが当たると,楽器は半時計回りに周り,ハンマーは押し上げられ,何か音を出します.楽器のどの色に当たるか,というので5つのメガネが作られています.どれも次に隣の色がハンマーに当たるように回転させています.

ところが,楽器単独は一つ飛ばして回転しています.当たるとハンマーは押し上げられるので,ハンマーが次に楽器にぶつかるまでの間,楽器は素早く回転します.これで次にどの色に当たるのかが非常に微妙になっています.ハンマーが押し上げられる距離も色によって違いますが,ここに乱数の要素は入っていないため,同じ色に当たった場合は毎回同じ距離だけ飛ばされます.ここが繰り返しの要素が入っているところです.繰り返し具合をどれくらい強くするかは,単独の楽器の動きで調整されます.たとえば,単独の楽器が動かなければ,たぶん順番に色を叩くだけになるでしょうが,このように2つ分移動させるとかなりランダムっぽさがかなり増します.

この例では,楽器を沢山置いて,ハンマーも3つ置いています.ハンマーと楽器の組は,動かしているとすこしずつズレるので,別の動いていない楽器に近づいてゆき,そこでハンマーと楽器の組が入れ替わります.

動かしてみるとこうなります.
やってみると,リズムが面白かったので,鳴らす楽器をパーカッションにしてみました.非常に複雑で面白いリズムを聞くことができます.

まとめると,テキトーな音楽理論に基づき,全部の種類の音程を入れずに5種類くらいの音程で作ることと,完全な繰り返しでもなくランダムでもないような構造をいかに作り出すか,が重要であります.

どちらもまだ色々なバリエーションが考えられるでしょうね.

(後で,Flashが見れない人ようにYouTubeで動画をアップする予定です)

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