前回の続きです。
データー吸出しが終わったら、現状の車の状態を把握する作業に入っていきます。
絶対に必要なのは正確なA/F計 空燃費計です。
燃圧計や排気温度計、吸気温度計なども欲しいところですが、
A/F計があれば大体のセッティングはできます。
店ではA/F計に加えて、燃圧計、ブースト計(NAなら負圧計)吸気温度計
純正の制御信号(点火時期や燃料噴射率、エアフロ使用率等)が見れる診断機
もしくはトラストのi-タッチを必要に応じて取り付けます。
その後、車を走らせていくわけですが、
ターボ車であればブーストを低めに設定し、NAであれば徐々に回転数を上げるようにして
いきなりハイブーストや全開走行はしないようにした方が安全だと思います。
そしてA/Fが安全圏に入っているようであれば全開走行での現状チェックに入りますが
安全圏内の数字はターボ車両であれば10台後半から11台前半
NAであれば12台中盤といったところになると思います。
車両によって個体差はありますので注意してくださいね。
A/Fを凝視しながら少しでもヤバイ(薄い)と思ったらアクセルはすぐに抜いてください。
全体的に極端に薄いようであれば、燃料ポンプの異常やレギュレーターの異常
極端に濃くなる部分があればパイピング抜けや破れによるエア漏れの可能性があります。
メカニカルな部分を修理してからセッティングしてください。
全体的に若干濃いなーとか薄いなーとか言うレベルであれば
アサダサンはK定数の変更に移ります。
この辺りからの順番は各チューナーによって違いますし、考え方も違いますが
あくまでアサダサン的な順番で進んでゆきますね。
じゃあまずK定数だけを変更したときのA/Fの推移グラフを見てください。
ちょっと落書きしちゃってますが気にしないでください。
赤色がK定数の変更無しのときのものです。
安全マージンを考えるとこういう数字もありだと思いますがパワーは出ません。
そこでk定数を変更してゆきます。
このK定数と言うのは燃料噴射制御のバランスを取っている大元の数字だと思ってください。
インジェクターなどを大容量化したときにこのK定数を変更することが通常ですが
全体的なA/Fの微調整にも使えます。
この数字を大きくすればA/Fは濃い方向へ、小さくすればA/Fは薄くなります。
インジェクターを大きくしたときは、数字を小さくします。
例えばインジェクターが500ccでK定数 1 と言うエンジンがあって
調子よく回っているとします。
このインジェクターを1000ccに変えると単純にはいままでの倍の燃料が吹かれるので
プラグはベトベトになって点火できずエンジンは止まってしまいます。
そこでK定数を0.5に変更すると1000×0.5で500となり、噴射量としては元に戻ります。
実際はこんな簡単な数字では在りませんが、基本は分かってもらえたでしょうか?
じゃあこのK定数を少なくするとどうなるでしょうか。
結果は緑線です。グラフの波のかたちは類似しているものの
数値そのものが全体的に上がっていますね。
この数値では少し薄すぎますので、今度は比率計算して
高回転時に11.2ぐらいになるようにK定数を変更します。
それが青線になります。
じゃあどうすればこの数字を決定できるのか、
一番問合せが多いのがこの部分なんですが、企業秘密です!
なんて嘘です。
その計算式を教えます。
特別に難しい物ではないのですが、
A/Fの特性にクセがあるのでそれを理解する必要があります。
まず中学か高校で習った比率の計算式を思い出してください。
x:y=x´:y´というものです。
実際に数字を入れてゆくと
2:4=4:8 4は2の倍数で8は4の倍数
その倍率が同じであれば比率は変らないというあの式です。
じゃあ、この数字のどこかが分からなかったときはどうすればいいのでしょうか?
はい 関数と言う単語が出てきたあなたは学生時代をまじめに過ごしていたと思います。
仮に上の式の2が分からなかったとします。
x:4=4:8
どうやってときます?
比率の式はウチウチソトソトです。
つまり:をはさんで内側の数字を掛けたものと
外側の数字を掛けたものはイコールになります。
8x=16
x=16÷8
=2
ちゃんとあってますね。
これをA/FとK定数で応用します。
K定数が純正で255だったとします。
そのときのA/Fが10.2で濃すぎるとします。
じゃあ、K定数をいくつにすればA/F11.0にできるでしょうか?
275と答えた人・・・惜しいです。
上の計算式に当てはめると確かに275になるのですが
それじゃーA/Fは濃くなっちゃいます。
たぶんA/F9.4とか言う数字で濃い濃いです。
正解は235です。
A/Fは数字が大きくなると実際には薄く、小さくなると濃くなると言う
物理的には逆の性質を持っています。
なので比率計算のときも加算分を減算 減算分なら加算しなければいけません。
計算式は
255:10.2=x:11.0
10.2x=2805
x=275
この275は元の255と比べると25の加算となっているので逆に減算してやると
255-25=235と言う数字が出てきます。
正確にはこのほかにも色々な諸要素が関係するので一概には言えませんが
大体の計算はこの式で求める事が可能です。
実際A/F11.2を狙って計算したK定数で11.25弱を記録しているのでほぼ狙いどうりですね。
これぐらいの数値であれば全体的には良いと思うので
今度は燃料補正マップのセッティングに移って行きますが、それは実戦編3で紹介します。
どうですか?なんとなく理解できました?
特にモト〇ボのアサダサン!あなたのために書いています!(笑)