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本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

< 舟を編む(ドラマ編) >

2024年06月30日 | ドラマ。
すごくいいドラマだったね~~。幸せな、いい話。文句なかったですよ。

脚本家は蛭田直美なる人。唯一「これは経費で落ちません!」を見たかな。
あれは好きだった。が、こんなに可愛い、いい話を書ける人だとは。
今後どんどん書いて欲しい。見たい。

わたしは原作を読んで、映画を見て、今回このドラマ、だったが、ドラマが一番いいね。
あ、違うわ。最初に映画を見たんだ。
辛気臭くてあんまり好きじゃなかった。「辞典の編集」が中心であるべきだと
思うのだが、話の軸が馬締と香具矢(これ女の子の名前じゃないよなあ。
ひらがなでいいのに)の恋愛だった。もっと辞書編集の機微を書いて欲しいと思ったよ。

その後原作を読んで。原作は面白かった。今となっては詳細は覚えてないが。
でもちゃんと辞書のことを書いた、いい小説だったと思う。
ただ、やはり辞書編纂と恋愛部分があまり上手く組み合っていなかったイメージがある。


そしてこのドラマは、ちゃんと辞書編纂の話でしたよ!言葉の話でしたよ!
原作を凌駕したとまで思ったなあ。原作でもたしか、馬締が主人公でかぐやさんが
けっこう出て来て、しかし岸辺さんの立ち位置が……?と疑問に思った記憶があるので、
このドラマで岸部さんが主役になったことで話がすっきりしたね!

そして何より、辞書編纂の春秋が上手く描けていることに感銘を受けた。
最初の2、3回を見ていて「こんなに言葉にこだわれる日常って……」とエモさを感じた。
ないよ。思い通りに言葉を使える機会なんて。吟味して言葉を使える機会なんて。
いいなあ。

小説からは相当離れているよね。多分。
まあいうたら何だが、原作をたたき台として、ドラマ的に素敵に改編した。
登場人物がみんな素敵だったな。天童くんにも佐々木さんにも良い味わいがあった。
それぞれにいいエピソードがあって良かった。

何より、ラストが嬉しかったなあ。まさかそう来るとは思わなくて、
でも原作改変ありなら、これでもいいんじゃん!と目から鱗。
最後を恐れながら見ていたので、大歓喜。

最後、全員を拾ってくれたのも愛を感じて感動した。
最初に出てきた、ハブり女子たちをも拾ってくれたんですよ!嬉しい。


しかしまあ、野田洋次郎。「エール」で見て、良かったけど、いうたらあれは
チョイ役だったじゃないですか。今回のこれは、ある意味主役ですよ!

すごく良かった。嫌味がなくてユーモラスで、真摯で、台詞も決められて。
わたしは原作を読んだ時に、今の「いい男」になる前の柄本佑をイメージしていた。
野田洋次郎の馬締は、柄本佑で想像した時の馬締ととても近く、近すぎて、
別人なのがなかなか納得出来なかった。しばらくは脳がバグっていた。
これは本人もキャスティングも見事。

池田エライザも良かったねー。わたしは「名建築で昼食を」で見ていて、あそこでは
良かったけど、あれはドラマらしいドラマではなかった。好きだったけどね。
「騙し絵の牙」も見たが、あれは普通の役だった。
今回のこれでがっつり。一所懸命が似合ったし、可愛さも活きました。ハマった。
いい演技だった。

わたしは馬締さんに柄本時生もありだなーと思っていたのよね。そしたら出て来てびっくり。
松田龍平も出て来てびっくり。この遊びは驚いた。
柴田恭兵、年取ったなーと思っていたが、あれは演技なんですね?
入れ歯の微妙なしゃべりにくさを表現していたのかな?だったら偉い。
岩松了は安定の。
ミムラも良かった。

矢本悠馬。役者としては好きだし、いい役ではあったし、彼らの恋愛は可愛かった。
……が、超微妙なカンジで彼らの恋愛には不満があったんだよなー。

お互いに好意を持ちあうところからの、「恋」。
――この部分がわずかに足りないと思った。
ここまで仕上げてくれる脚本なら、この部分もうちょっと、もうちょっとだけ。
ここでマイナス3点。
シールはがし紙のエピソードは上手く盛り込んだね。泣いちゃった。

脚本も役者も演出も文句なし。
言葉をあんなに上手くキャラクターとして溶け込ませてくれる演出に感謝する。
デジタルの表現が濃すぎず薄すぎず、フォーカスのレベルがどんぴしゃ。

大渡海のブックデザインはハードルが高かっただろうが、期待を超えてきましたよ。
あれ、大辞林なり広辞苑なりとコラボしたら、多少売れたんじゃないだろうか。


大変良いドラマでした。幸せな世界を堪能させてもらった。感謝。





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