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No !
男の子が自分のうちで手紙を書いています。手紙を書き終わった男の子は、ジャケットを着て、郵便ポストまで手紙を投かんしに行きます。
通りに出ると、頭上を戦闘機が飛んでいくのが見えます。轟音がしているに違いないのに、でも、男の子は顔も上げません。
しばらくすると男の子の背後で火の手があがり、向こうの町か村が爆撃されたことがわかります。さっきの戦闘機は丘の上を飛び去っていきます。でも、男の子は、振り返ることもしません。
通りでは、警察官でしょうか、制服を着た男が市民を脅しつけています。でも、男の子はそちらに視線を向けることもなく、歩いていきます。
やがて、ポストにつきました。そこには年長らしい少年がいて、男の子の邪魔をしようとします。その時、男の子はひとこと "No" と言います。年長の少年は、ポストと男の子の間にたちふさがるようにして、からかうように "No?" と聞き返します。男の子は大きく広げた掌を少年に向けて突き出し、きっぱりと大きな声で "No!" と言います。ひるんだ少年が道を譲ると、男の子はポストに手紙を入れます。
この "No." "No?" "No!" だけが、この本にでてくる会話のすべてです。
戦闘機が頭上を飛んでも見上げもしない、爆撃音がしても振り返りもしない、官憲が市民を圧迫していても一瞥もしない。そう、男の子は戦火の町に住んでいるのです。戦争は彼の日常なのです。
ひとことの解説も、語りもない絵本ですが、読み手は激しく胸を突かれます。
男の子が書いていた手紙は…? 大統領あての親書でした。
大人の読者には、この時代に生きている大人として自分は何をしているのか‥‥を問われて、読むのが辛い本です。
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