お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

プリンスとプリンセス

2010-12-21 | about 英語の絵本

My Princess Boy

今日の絵本は「私のプリンセスボーイ "My Prncess Boy"」。レースやフリルのついた女の子の洋服でドレスアップするのが大好きな"男の子"のお話です。実はこのお話には実在のモデルがいます。男の子の名前はダイソン(Dyson)、お母さんはシェリル(Cheryl)。この絵本はお母さんのシェリルが書きました。

ダイソンが2歳のある日、プリスクールに"お迎え"に行ったシェリルは、息子を見て思わず凍りつきそうになりました。ダイソンが裾の長い赤いドレスを着てピンクのハイヒールを履いて遊んでいたからです。(まぁ!いやだ!恥ずかしい!)シェリルは赤面しました。そして先生に「衣装ボックスには男の子も楽しめる衣装を入れておいてくださいな。たとえば空手の胴着とか、いろいろ考えられるじゃありませんか」と言って帰りました。ところが……翌日、お迎えに行ったシェリルの前に「ママ~」と飛び出してきたダイソンは、今度は黄色いドレスを着ているではありませんか!

「ダイソンを傷つけたくなかったけれど、なんとかしなければ……と思ったことも確かです」とシェリル。「だって、まだたった2歳の子どもがこんな自己表現をしたがるなんて、私にはとても考えられなかったから」

「ドレスアップするの大好きだよ!きれいな服を着るとハッピーになるもん!」というダイソン。でもシェリルは、そんな彼の行動を受け入れられるようになるまで、しばらく時間が必要だったと率直に語っています。夫のディーン(Dean)と何度も話し合った結果、「ダイソンの好みを尊重して、好きなようにさせよう」と考えられるようになったのだそうです。

一方、父親のディーンは「『ダイソンを尊重する』と心を決めるのは、それほど難しいことではありませんでした」と語っています。「自分自身に問いかけた質問は一つだけ。それは『ダイソンが女の子の洋服を着たら、それで誰かを傷つけるだろうか?』でした。答えはもちろん『誰も傷つかない』でしたから、だったら好きにさせて、彼をサポートしてやろうと思ったまでです」

ダイソンは毎日女の子の服を着ているわけではありません。男の子のジーンズをはいて、トラックのおもちゃで遊んでいたりもします。でもいざドレスアップするとなったら、「絶対にきれいなドレスでなくっちゃ!」と言いはります。こんな彼の行動に慣れて、完全に平気になるまで、シェリルもディーンもほぼ1年半くらいかかったとか。しかも、もっと大変だったのは、ダイソンの友達にどうやって説明するかということでした。シェリルが「本を書こう」と思いたったのは、そのためです。

ダイソンの日常の暮らしぶり、そしてドレスアップが大好きな彼の気持ちを、間近から愛情あふれる視線で淡々と描写した絵本に、シェリルは「私のプリンセスボーイ」というタイトルをつけました。プリンセスボーイは、ダイソンが自分につけたニックネームです。

ダイソンの周囲の子どもたちが読んでくれれば……と考えて出版した絵本は、思わぬ反響を呼び、シェリルを驚かせました。いくつものプリスクールから問い合わせや注文が届くようになったのです。専門家も「ありのままのあなたが大好きよ(I love you--every piece of you!)」という暖かいメッセージが込められた素晴らしい本!と絶賛しています。

この絵本はパロアルトのボーダーズ書店で購入しましたが、ダイソンと両親のエピソードは、その後、ピープル誌(People)の記事で読んだものです(2010年11月15日号 p.71-72)。



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