お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

ひとに 必要な スペースは?

2010-12-15 | from Silicon Valley


不動産広告にはお決まりのパターンというのがありますね。たとえば日本だと「戸建て3LDK、南東角地、日当たり良好、バス停1分(最寄駅まで徒歩圏)、買い物至便」なんて書いてあると、これでグッドアドレスなら言うことなし、かなり期待してしまいます。

アメリカの不動産広告にも定型があります。たとえば一番短いパターンだと「SFH, 4BR, 2.5BA, LV, D, 2G」と言うようなスタイルで、これは順に「一戸建て(Single Family Home)、寝室(BR=Bed Room)が4つ、浴室(BA=Bathroom)2つ+トイレのみ1、リビングルームとダイニングルームがそれぞれ独立していて車2台分のガレージがついている」と読みます。実際の広告には、これに物件の広さ(面積の数字)、2階建てか平屋か、新築か中古か(中古は最近改築しているか)などの情報が載っています。

とある日曜日、のんびり新聞を眺めていたら「9BR, 11Bath, 3+Kitchen, VIP Suite, Media Room, 6cars Garage and more, $30M, also looking for agent」という広告が目に飛び込んできました。ビバリーヒルズのような豪邸ばかりの地域ならいざ知らず、住所を見るとふつうの住宅街。思わず「マジ?」と叫びそうになりました。

アメリカではリーマン・ショックではじけたバブルの後遺症がまだ尾をひいていて、不動産をめぐる話題と言えば、差し押さえや競売、開発途中で業者が倒産して完成しないまま半壊しているリゾートなど、相変わらず暗い話題が多いのですが、一方では、市場が落ち込んでいるときこそ「買い手市場」でもあって、低めの価格ながら市場はそれなりに活発に動いていることも確かです。アメリカばかりでなく日本でも、地方の温泉付きの土地を山や森林ごと中国のお金持ちが買い付けているとニューヨーク・タイムズ紙が報じていましたが。

さて、最近の新築あるいは改築物件の特徴は、建坪の割に部屋数が多いこと(敷地面積いっぱいに家が建っていて庭が狭い)、以前よりも寝室数に比して浴室とトイレの数が多いこと(寝室数と浴室の数が同じで且つトイレが一つ余分というのが最近のトレンド)です。寝室ばかりか浴室も文字通り専用個室化していて、子どもまでがそれぞれ自分専用の浴室とトイレを持って暮らすようになったわけです。もちろん昨今は、お金さえあれば何でも買える世の中ですし、シリコンバレーにはそれ以上の、この先何回生まれかわっても決してお金に困らない人たちがゾロゾロ住んでいるのですから、家がどんどん大きくなろうが、トイレの数が増えようが何の不思議もありません。でも、一方ではエコだ省エネだ節水だと言いながら、一方で、便利さの希求や人の欲望ってってどこまで大きくなるものなのでしょう?

見回せば子どもの世界でも、ハイスクールの駐車場に誕生日プレゼントのスポーツカーが配達されたとか、冬休みに親の専用ジェットでマイアミまで同級生と遊びに行ったとか、とても15歳や16歳とは思えない話題が日常茶飯事。『常識』のスタンダードが知らず知らずズレてしまいそうです。こういう環境だと「きちんと仕事について、勤勉に働いて、税金を納めて、ひとは初めて一人前よ」とか「ダディは家族のために一生懸命働いているのだから、お夕飯はお帰りまで待っていましょうね」なんていう会話は全然説得力がありません。なにしろ子どもに贅沢な暮らしさせている”金持ち父さん”は、実は、毎日おウチにいて、とても働いているようには見えず、おまけに毎晩ディナーを作ってくれるのは、そのお父さん!なんていうエピソードが身近にゴロゴロしているからです。そういうお父さんは、学校行事にもいつも積極的に参加して活発でみんなの人気者。出張ばかりのサラリーマンのお父さんとは違います。そうなると、仕事だからと、当然のごとく毎晩遅く帰ってくる日本のサラリーマンはまるっきり評価されません。やれやれ、親の苦労も知らないで・・・。

さて、そんなことを考えていたら、子どものころに読んだきりだったトルストイ原作の絵本を懐かしく思いだしました。『ひとにはどれだけの土地がいるか』です。小さいころに母が読んでくれたのは、絵本ではなくて、子ども向けの読み聞かせの本でした。ロシア民話をトルストイが童話に書いたと言われていますが、旧い絵本なので、まだあるかしら・・・と調べてみたら、嬉しいことにまだ刊行されていました。絵本って本当にロングテールですね。もっとも、この話、時代を超え状況を超えて、なお、ちっとも古くないですけれど・・・。





コメント
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