お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

点と線からひろがる世界

2010-10-14 | about 英語の絵本

The Dot

絵画教室を開いている友人の話では、子どもたちに「絵を描くのは、好き?」と聞くと、小さければ小さいほどすぐに「好き!」と即答が返ってくるのに、年齢が上がるにつれ、口ごもるようになり……返事が遅くなって……そのうちだんだん「絵は苦手」とか「絵は嫌い!」と答える子の方が多くなってしまうのだそうです。

大人は?というと、子どもを絵画教室に連れてくる親に「絵を描くのは好きですか?」と聞くと、「好きではありません」「苦手です」どころか「絵は描けません」という答が多いそう。「お絵描き大好き!」な子どもが、こぞって「絵は描けません……」という大人になってしまう不思議は、実は洋の東西を問わない傾向で、日本でもアメリカでも事情は同じなのだそうです。

絵を描くのなんか大嫌い!だから学校の図画工作や美術の時間も大嫌い! かたくなにそう思っている女の子、バシティ(Vashti)がいました。
今日も、美術の時間中ずっと、配られた紙を前に頭を抱えています。だって絵なんか描けないもの……。なにを描けばいいのかもわからないんだもん……。悶々としているうちに終業のベルが鳴って、クラスメートは次々に作品を先生に渡して教室を出ていきます。でも彼女の画用紙は真っ白のまま……。

「もう、いいや!」 開き直って、白紙のまま提出しようとすると、先生がこう言います。「ねぇ、点(dot)を描いてみない?」
点?(点=●)?? ●!!!
バシティはいささかやけっぱちになって、画用紙の真ん中にマ―カ―で小さな点(●)を描きました。先生に持っていくと、にっこりして「名前をサインして!」 言われるまま、真ん中に一つだけ ● を描いた画用紙の一番下に、自分の名前を書いて提出しました。

ところが次の美術の時間、バシティがクラスに行くと、驚いたことに、このあいだの『点』の絵が、お洒落なフレームに入って教壇の後の壁に飾ってあるではありませんか! 
「点だけだったら、私にだって、もっと上手に描けるわ」 バシティは一念発起。これまで一度たりとも使ったことのなかった水彩絵の具を取りだして、いろいろな点を描いてみました。大きな点、小さな点、カラフルで色とりどりの点々。さまざまな素材を試して、いろいろな点を描きました。彫塑で立体の点のオブジェも創ってみました。

そして……? バシティの作品は学校の美術展で大好評を博したのです。美術展のさなかに、後輩の男の子が彼女を訪ねてきて言いました。「君みたいに絵が描けたらいいなぁと思って。ボク、線もまっすぐ引けないんだ……」
バシティは画用紙を差し出して彼に言いました。「線を描いてみて!」 男の子は戸惑いながら画用紙の真ん中にぎざぎざの線を引きました。そうしたらバシティは……?

この絵本は2003年に『Irma S & James H Black Honor賞』を受賞しています。この賞は、特にテキストとイラストが相俟って優れた効果をあげている絵本だけを選んで贈られるもので、また2000人以上の子どもたちが実際に最終選考に参加することでも知られています。




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