絵本『100万回生きたねこ』の作者である佐野洋子さんの母『シズコさん』は毒親だった。
幼少期に母から虐待された佐野さん。テレビで『おしん』を観て、なんてことないと思ったと書いている。それくらい酷い虐待だった。
佐野さんのように虐待された訳ではないが、私の母も毒母だったので、時代は違えど共感する部分が多々あった。
「私は母のことを母親としてでなく人間として嫌い」という一文に一番共感した。
佐野さんの母シズコさんは「ありがとう」と「ごめんなさい」を絶対に言わない人だった。
しかし、シズコさんは晩年認知症になる。
認知症になったら「ありがとう」と言うようになり、優しいおばあさんになったのだ。
そして佐野さんの心境に変化が現れる。
佐野さんはシズコさんを自分の生活費よりもお金がかかる高級な老人ホームに入れるのだが、「私は母をお金で捨てた」と自責の念に駆られるようになる。
4歳の時に、つなごうとした手をふりはらわれ、以来ずっとシズコさんに触ることができなかった佐野さん。
呆けて優しいおばあさんになったシズコさんに、佐野さんはやっと触れるようになった。それは佐野さんにとってすごい事なのだった。
二人の間に優しい穏やかな時間が流れ始める。
7人子どもを産んで、そのうち3人の子を亡くし、夫を亡くし、4人の子どもを女でひとつで大学に行かせたシズコさんに、佐野さんは自分だったらそんなことはできないと、尊敬の念を抱くようになる。
そして、シズコさんを愛せなかった自分を責める。
シズコさんは認知症になってからも長生きして93歳で亡くなる。このとき佐野さんは乳がんが再発して骨転移していた。
「静かで、懐かしいそちら側に、私も行く。ありがとう。すぐ行くからね」
と締めくくられる巻末。泣ける。
シズコさんが亡くなった4年後に佐野さんは72歳で亡くなってしまわれた。
この本『シズコさん』は、毒母を持つ人にも持たない人にも、母娘の物語として女性にお薦めの一冊

私と毒子の物語は現在進行形である。
この先、毒子は呆けて可愛いおばあさんになるのだろうか。それとも性格の悪さに輪がかかり、悪態つきまくるクソババアになるのだろうか。それとも最期まで呆けないだろうか。
私は、ブログに『毒子』なんて書いていたことに罪悪感を覚える日が、将来来るのだろうか。
もうすぐ82歳の「毒子さん」にはまだボケる気配はなさそうだ。
毒子さんが健康でいてくれることには感謝してしている。

スパニッシュビューティー