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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#387 【赤木の咆哮】

2010-11-18 | #12 大学 新人戦編
白金 48
慶徳 48




神の3P、牧のバスカン。

海南を全国第2位まで、押し上げたプレーが、慶徳を捉えた。



「そう簡単には差はひろげられねぇか。」

と諸星。

その表情からは、苦渋よりも嬉しさが読み取れる。


「白金の強さは、十分に理解している。問題はない。」

と赤木。

「さぁ、オフェンスだ。いくぞ!!」

藤真が鼓舞した。




第3Q、2分経過。


ここから、両校、素晴らしいプレーを見せ続ける。


諸星のアドバイスにより、視野を保てるようになった藤真は、オフェンスを散らし、アシストを重ねる。


かたや、白金の牧は、前半以上の機敏な動きを見せ、アシスト、得点、そしてリバウンドを奪った。




「一進一退とは、こういう試合のことをいうんですね。」

「2点差以上の差がつかない。」




「いけーーー!!白金ーー!!」

「ディフェンス!慶徳!!」

「オッ!オッ!オフェンス!オッ!オッ!オフェンス!」

「ケイトク!ディ!ディ!ディーフェンス!ディーフェンス!」




白熱試合展開に会場は、興奮と熱気に包まれている。


それに応えるように、各選手が素晴らしいプレーを見せる。


コートにいる全ての選手が、光り輝いていた。




「今日一番の盛り上がりって感じだな。」

と微笑む大和。

「これほど流れが動かない試合も珍しい。」

と品川。




『シュパ!!』


神のハイアーチシュートが炸裂。




「3Pーーーーー!!」

「ようやく3点差がついたぞーー!!」

「流れが変わるかもしれない!!」




『ザシュ!!』




「なっなにーーー!!」

「やっやり返したーー!!!」

「諸星の3Pだーー!!」

「同点!!!」




「離されてたまるかよ!!」

と諸星。

「良く決めたぞ!!」

「ったりめーだ!!」



神の3Pの直後、藤真のパスを躊躇することなく、打ち込んだ諸星。

強き思いをボールに宿し、3Pを決めた。




「あの辺の強さは、さすが諸星だな。」

「けっ。俺も決めてるぜ!」」

と三井。

「そうだな。あはっ。」

新庄は笑った。


(あのキレのあるドライブに、正確な外角まで・・・。これが世代最高のSG・・・。)

三井の額から汗が流れた。

そして、笑う。

(まぁいいぜ、今のうちに暴れていやがれ。2年後、俺はお前を抜いて、No.1SGになってやるからな!!)




会場にいる全ての視線がコートに注がれている。




「ここまで、全選手が実力を発揮しているように思えます。
ここは、選手交代やタイムアウトなど、思い切ったことをして、
流れを変えたほうがいいかもしれませんね。」

と織田。


「いや、そうは思えねぇぜ。」

と宮城。

「ん!?」

「まだ、実力の半分も出していないやつがいる。」

と三井。


宮城の見つめる先、三井の見つめる先には、あの男が映った。


「織田、お前も諸星や荻野の後輩なら、もっと仲間を信じるんだ。
偉大な先輩たちなら、この状況を打破できるとな。」にこ。

と花形がいった。


「はっはい・・・。」

織田には意味が理解できない。



宮城、三井の視線は、元チームメイトの赤木に注がれていた。


(おい!お前の力はこんなもんじゃないだろ!赤木!!)


(ダンナ!期待してるぜ!!)




その想いに応えるかのように、赤木が吼えた。



『パンパン!!』

手を激しく叩く。



「死守だーーー!!!」



「おう!」


赤木の咆哮に応える慶徳選手たち。


「ディフェンスだーー!!」




「ふん。ようやく、赤木らしく吼えやがった。」

と三井。




(敵ながら、ナイスタイミング。)

と牧。


「こっちも負けるな!!確実に1本獲るぞ!!」

赤木に対抗するかのように、牧が吼えた。




「赤木も、牧も吼えたぞーーーー!!!」

「いいぞ!!いけーー!!」

「両校がんばれーーーー!!!」




「へい!!」



『パシ!』



「こっち!!」



『パシ。』



刻んだパスを繋ぐ白金。



『キュッ!!』


「土屋がいった!!」



『ダッ!』


「中、来るぞ!!」



慶徳も声が出ている。



コート内では、今まで以上に声が飛び交っている。




「すっすごい!コートが活気だっている!!」

「厳しい時間帯になればなるほど、声が活力を与える。だから、チーム内の声も応援も必要なのよ!」 




『パシ!!』


パスで繋いだボールは、牧に戻った。

そして、対峙するのは、赤木。

白金のパスワークによって、慶徳はディフェンスを散らされていたのであった。




「牧と赤木だーー!!」

「面白い勝負だぞ!!」




「来い!牧!!!」



「赤木!いくぞ!!」



三井、仙道、藤真を襲った牧の牙が、ついに赤木に向けられた。




白金 66
慶徳 66







続く。

#386 【藤真の挑戦・牧の自信】

2010-11-16 | #12 大学 新人戦編
白金 45
慶徳 48




慶徳のオフェンス。

白金は、藤真へのボックスワン。



『ダムダム!!』


牧のプレッシャーをはねのけるように、力強いドリブル。



(たやすくパスは出させんぞ!)


『ダッダムッ!!』



クロスオーバー。

牧を抜きにかかる藤真。



『チィ。』



「ん!!」

「!!!」


「藤真!!」


「牧さん!!」




「スティールだーーー!!」

「牧が藤真のドリブルを止めたーーー!!」




藤真の手からボールが転がる。




「読まれたか?」

と新庄。

「前半に手の内を見せすぎてしまったのかもしれませんね。」

と織田。




振り向く藤真。


(獲らせるか!)



追いかける牧。


(もらった!)



『ダン!』


ルーズボールに飛び掛る藤真。


だが、ボールは牧が奪い取った。




「ターーンオーーバーー!!」

「牧が競り勝ったーーー!!!」




『ダムダム!!』


すぐさまドリブルを開始。

体勢を戻し、すぐに追う藤真。

牧は、一気に駆け上がった。



「藤真ーーー!!」



「牧!!!」



ワンマン速攻。



後ろに藤真。

ゴール手前、牧のスピードが一瞬落ちた。



「!!!」


牧の緩む口元が藤真の視界に入る。



『パシ!』


ボールを掴む牧。

あえて、藤真の視界に入れる。



(誘導か!)


誰が見ても明らかに、牧の持ち方は不自然であった。




「誘ってる。」

と観客席の仙道。

「ここでバスカン狙いか。」

と花形。




「ストップ!!」


後ろのほうから、諸星が叫んだ。


牧の右手によるレイアップシュート。

ボールは無防備な状態。



(誘っている。いや、いける!)


そう思った藤真は、ボール目掛けて跳んだ。



「うぉーー!」



『バッ!』


一瞬にして、ボールをカバーするように、牧の左手が藤真の左手の軌道に入った。



『サッ。』


その牧の腕を交わすように、藤真の左手が動いた。




「巧い!」

と仙道。

「いける!」

と花形。




「!!」


「!!!」



『パチ。』



「!!」


「!!!!」



『ピィーーーーー!!』



会場に響き渡る審判の笛のあと。



『パサ。』



牧のレイアップシュートは決まった。




「やっぱ、牧だぜーーーー!!!」

「バスカーーーーン!!!」

「同点に持っていけるぞーーーー!!!」

「牧が決めたーーーーー!!」




「ほら見やがれ!後半の牧は、前半とは比べ物にならない動きを見せるんだ!」

と宮城。

「あからさまに誘った牧に、勝負を挑んだ藤真。
どういうことだ?藤真なら、わかりきっていただろうに。」

と大和。


「牧さんとの距離を計るためかな。」

仙道が答えた。




藤真に詰め寄る慶徳選手。


「おいおい!誘っていたのバレバレだろ!どうした、藤真!」

と諸星。

「申し訳ない。だが、これで終わりだ。安心しろ。」

藤真は牧の腕を叩いた左手を見て答えた。

「大事なことは牧に勝つことじゃない。白金に勝つことだ。頼むぜ。」

「あぁ。」


「あと、真下がいいところで神のマークを外している。そっから攻めても面白と思うぜ。」

牧のプレッシャーで視界が狭まる藤真に、諸星らしいアドバイスをした。


「ふっ。ありがとうよ。」


続いて、赤木が静かに口を開いた。


「俺もブロックに跳んだかもしれんな。例え、ファウルになるとわかっていてもだ。」

「赤木・・・。いけると思ったが、そう簡単ではなかった。
俺にファウルされても絶対に決められるいう自信がまだあるんだな。牧には・・・。
シュートを決められたことよりも、そう牧に思われていることのほうが悔しい。」

藤真が左手を握り締める。

「俺は、そうは思わんぞ。
今の牧のプレーは、たまたまだ。10%、いや1%の確率でビッグプレーが成功しただけにすぎん。
次は必ず叩き落す。俺の知っている藤真という男はそういう男だ。」

「赤木・・・。」


「お前が牧に負けているとは思わん!」


「・・・。サンキュ。」

「次は止めろ。」

「あぁ。」にこ。



『シュルシュル。』


フリースローライン。

ボールを回す牧の姿。


(藤真のあのチェック。少し遅れていたら、叩かれていたかもしれぬな。もう狙うことは難しいだろう。)



『シュパ!』


ワンスローを静かに沈めた牧。


ここにきて、振り出しに戻した白金。


かたや、戻された慶徳。


だが、慶徳選手たちに落胆の表情はない。


むしろ、藤真の挑戦が再び彼らに大きな炎を灯した。




白金 48
慶徳 48







続く。

#385 【組織力と個人技】

2010-11-12 | #12 大学 新人戦編
白金 42
慶徳 48




諸星がシュートを決めた後の白金のオフェンス。


「気にするな。あれが諸星だ。」

「あぁ。わかってるで。」


(諸星・・・。ほんまえらい選手やな。)



『ダム!』


トップの牧。

対峙する藤真。



「ん。」

(そうきたか。)

と牧。




「ゾーンです!1-3-1のゾーンですよ!」

「外を抑えながら、白金の起点となるハイポを抑える。考えたわね。
だけど、果たしてこれで彼らを抑えられるのかしら。」




慶徳は、1-3-1のゾーンディフェンスを敷いた。

トップ藤真、左右に諸星と真下、センター赤木、ゴール下に野辺。

磐石な布陣。




またしても、仙道の予想が的中した。


(セオリーなら、神か。)




赤木がセンターでしっかりとハイポをケアしているため、土屋ら細身の長身プレーヤーではハイポを奪えない。



だが、牧は冷静であった。

慶徳が1-3-1のゾーンを敷いて来ることを予想していたかのように。



『ダム!』 


(白金には通用せんぞ!)


牧が、45°から藤真と真下の間に突っ込んだ。



『キュッ!』


『キュ!』


『バッ!!』


左右から藤真と真下が囲み、赤木が待ち構える。


縮まるゾーン。



『ビィ!』



牧は外にパスを放った。


そこには土屋。

3Pシュートの打てる間合い。




「打つか!!」

「土屋の3Pーーーー!!!」




真下が一瞬にして、土屋の前に飛び出た。




「速い!!」

「ナイスチェック!!」




『ビィ!』



1-3-1ゾーンを攻める鉄則。


コーナーとローポスト。


セオリー通り、土屋は、0°コーナーへとボールを流した。


そこには、当たり前のように神がいた。




「うわぁーーー!!神だーー!!」

「今度こそ打たれるぞーーーー!!」

「ゾーンだと神ががら空きだーーーー!!」




だが、慶徳も十分理解していた。



神が、0°に位置取ることを。



『キュ!!』



「!!!!」


「!!!」




「速い!!野辺のカバーが速いぞ!!」

「あれでは打てないーー!!」




「果たしてそうかな。」

笑う牧。

「神を甘くみるやないで。」

と土屋。



「!!!」


「なっ!!」


「打つ気か!」

と逆サイドの諸星。



神は、ゆっくりと体を後ろに反らしながら、0°から3Pシュートを放った。



懸命に腕を伸ばす野辺の手の上を軽く越える高いシュート。




「打ったーー!!!」

「しかも!高いーー!!」




そのシュートは、今までにないアーチの高い山なりのシュートであった。



ボールの行方を確認せずに、自軍コートに戻る神。



まるで、シュートが決まることを前提にして。



『スト。』



リングにあたることなく、真上から真下へ落ちるように、シュートが決まった。




「3Pーーーーーー!!!」

「キターーーーー!!!」

「なんていうシュートだーーー!!!」

「進化する最強シューターーーー!!」

「一気に3点差ーーーー!!!」




「決まったな。」

と荻野。

「えぇ。いいシュートタッチでした。」

「簡単に決めてしまうとは、さすがだな。」

「自信はありましたけど、簡単ではないですよ。野辺さんのチェック、リングを隠してきました。
あの辺の小技はさすがです。」

「あぁ、それはマッチアップしている俺が一番よくわかる。」

「野辺さんにも、注意が必要ですね。」

「あぁ。」

(神。今の3Pで、俺もいいイメージができたぞ。)

荻野は意味深な言葉を飲み込んだ。




「さすが白金。ディフェンスの変更にも組織で突破した。」

「神君の個人技も素晴らしかったですね。」

「演出したのは、牧君のペネトレイトと土屋君のアシストよ。
彼らが、冷静にゾーンの弱いところをついた。」


「1-3-1だとコーナーの神君が空いてしまいます。このままだと、うまく守れないのでは?」

「さぁーて、藤真君。どう動くかしら。」




「あの体勢で打ってくるか。」

と諸星は少し驚いている。

「神を少し甘くみたかもしれない。」


「ディフェンスを変更するか?」

「いや、このままいこう。諸星、真下、少し広く守ってくれ。
野辺は、今のでいいぞ。神には絶対プレッシャーをかけろ。
ゾーンが広く守る分、赤木には負担がかかるが、頼んだぞ。」

「あぁ。」


「さぁ、オフェンスだ!切り替えていくぞ!」

「おう!!」



ディフェンスが動いた第3Q、どちらが先に打ち破ることができるのか。


破壊力満天のオフェンスは、ともに止まらない。




白金 45
慶徳 48







続く。

#384 【止まらぬ攻防】

2010-11-11 | #12 大学 新人戦編
『ピィーーーーー!!』


第2Qが終了した。



土屋を持ってしても、全開した諸星のオフェンスをとめることは出来なかった。

外からリングを射抜き、中から切り裂く。

オフェンスマシーンと化した諸星は、第2Qだけで13点を獲得した。


だが、慶徳も白金同様に、牧、神、土屋が繰り出すオフェンスに苦戦を強いられた。

絶対的なインサイドプレーヤーのいない白金だが、身長でマークマンに勝る牧、神、土屋が、
代わる代わるハイポでボールを受け取り、パスを回し、オフェンスを散りばめ、得点を奪った。


ディフェンスに的を作らせない白金のトライアングルオフェンスの陰には、土屋の存在があった。


牧のハイポ時にはトップに位置取り、PGの代役をも務め、ハイポからアシストを決め、シュートで点を奪い、
リバウンドで体を張り、慶徳インサイドと競り合う、
要所でマルチな活躍を見せる土屋の存在が、白金のオフェンスを引率したのであった。




「諸星のやつもすげーが、牧たちはこの1週間で、どんな練習をしてきたんだ?
先週よりもパスが良く回っているぞ。」

と驚く三井。

「土屋の動きだな。土屋の動きが他の選手を巧く誘導している。」

新庄が答える。

「牧のペネトレイト、神の外角、両方をこなせる土屋。
この3人の歯車が完璧に組み合わさった今、なかなか抑えられるものではないな。」

と花形。

「でも、それは白金も同じですよ。土屋さんでさえ、大さんを抑えられていません。」

慶徳のフォローをする織田。

「オフェンスが動いた第2Q。次はディフェンスが動くぞ。」

と大和。



「1-3-1とボックスワン・・・かな。」

仙道がボソっと口にした。




「4点差で慶徳!」

「諸星君を中心に得点をあげる慶徳、かたや組織力でゴールを奪う白金。
対照的な両校のオフェンスだけど、このままだと流れは白金に向くわね。」

「どうしてですか?」

「組織で点を獲るということは例え誰が決めようが、全選手のモチベーションは、同じように上がるものなのよ。
反対に個人技ばかりだと、点を獲った選手のみテンションがあがってしまうってことに陥りやすい。
それを防ぐために、PGのフォローや控え選手たちの応援が必要になるわけだけど。」

「それじゃ、慶徳のPGは統率力に優れた藤真君だから、安心ですね。問題ありません。
つまり、相田さんの仮定する白金優勢ということにならないと思います。」

「うっ。いうようになったわね。」

「伊達に観ているだけじゃないですから。」にた。




第3Qが開始された。




白金 42
慶徳 46


4点差で慶徳がリードしている。



白金のオフェンス。




「・・・。」にこ。

観客席の仙道の口元が緩んだ。




「ボックスワンだーーー!!!」

「白金がディフェンス変更してきたぞーーー!!!」




仙道の読みどおりだった。


マンツーマンディフェンスから、ボックスワンへ変更。

赤木、野辺の強力インサイドを封じ、諸星の得点を封じるディフェンス。


それが。



PG藤真へのボックスワンであった。




「あたっている諸星ではなく、藤真にボックスワンだーーー!!」

「牧が藤真に張り付いたーーー!!」




「諸星へのパスの供給元をつぶし、オフェンスリズムを崩す作戦か。」

と新庄。

「だが、そう簡単にいくか?第1Qで牧は藤真にやられていたぞ。」

と品川。

「甘いっすよ。牧の本当の姿が見られるのは、これからっすよ。」

勝ち誇ったような宮城。


後半の牧の恐ろしさを十分に理解している宮城の率直な意見であった。




(体も心も十分すぎるほど温まったぞ。藤真!)


(いよいよ本領発揮か!牧!)


牧がプレッシャーをかける威圧的なディフェンス。

藤真も強気にボールをキープしているが、パスを出せる状態ではない。




「牧が凄いプレッシャーだーー!!」

「藤真が止まったーーー!!!」




(仕方ねぇ。)


「藤真!」


諸星がハーフライン付近まであがり、高い位置からパスを要求した。



『ビィ!』


逃れるように、藤真は諸星にパスを放った。

そして、自身は走り出す。



『キュッ!!』


(させんぞ!)



パス&ランを狙った藤真。

牧は、一瞬の隙も見せず、藤真にあたる。



「牧さん!」

「牧!あぶ」



『ドン!!』



「!!!」


「ぬ!!」



3Pライン外。

高い位置。

牧はスクリーンをかけられた。

藤真と牧との距離が広がる。

牧の肉体に対抗できる肉体を持つ、慶徳で唯一の男が牧の進路を妨害したのであった。



それは。



「赤木!!」



「藤真の邪魔はさせん。」


キングコングがダンプカーを止めた。



(サンキュ!赤木!)


藤真は一気にインサイドに切れ込む。




「赤木があんな高い位置まで!」

驚く三井。

「確かに、牧へのスクリーンは、赤木でないと不可能かもしれない。」

と花形。




その間、ボールは、諸星から0°の真下へ。

そして、ボックスの間をきれた藤真にパスを放った。




「あそこでもらっても、藤真はなにも出来ないだろう!!」

「荻野、村松のディフェンスも強力だぞ!!」




『パン!』




「えぇぇーーーー!!」

「なんだあのパスはーーー!!!」

「すっすげーー!!!」




真下から藤真へ渡ったボール。

藤真は、キャッチすることなく、そのまま逆サイドに流した。


藤真の巧みなパス。


そこには、同じく逆サイドからきれてきた諸星。

藤真が囮となり、諸星をフリーにさせたのであった。



『パシ!』


諸星キャッチ。


「ナーーイスパス!!」


躊躇なく放つ諸星のジャンプシュート。



「まだや!」


諸星の動きに咄嗟に反応した土屋。

チェックに跳んだ。



「!!!」



『チィ!!』


諸星を5cm上回る土屋は、中指をかすかにボールに当てた。



「触ったで!!リバウンドやーーー!!」

叫ぶ土屋。



「!!」にっ。


だが、諸星の表情は明るい。



わずかにホップした諸星のシュート。


戦場と化すゴール下をあざ笑うかのように。



『シュパ!!』 



ネットに吸い込まれた。



「なっなんやて!」

「少し強めに打った。お前のチェックを見越してな。」にや。



「・・・。」

(諸星・・・。)


「俺は、まだ止まらないぜ。」にや。



諸星全開。



その陰には、体を張り続ける赤木、帝王牧と同等の存在感を見せる藤真の姿があった。



白金 42
慶徳 48







続く。

#383 【諸星解放】

2010-11-09 | #12 大学 新人戦編
白金 21
慶徳 20




慶徳のオフェンス。


(第1Qよりも藤真が大人しい。何か仕掛けてくるか。)


(感づいたようだな。だが、それでも慶徳は止められない。)



藤真と牧が、対峙する一方で、3P内で慶徳選手は目まぐるしい動きを見せていた。



「土屋!」


『ガシ!!』


(んっ!)


土屋に対して、赤木がスクリーンをかけた。



(いけ。)


(OK!)


諸星が動く。



だが。



「なっ。」



相手が赤木だろうが、土屋も易々とスクリーンにかかる選手ではない。

壁のようなスクリーンをファイトオーバーで交わす。



更に。



『ガシ!!』


「っつう。」


土屋の前に、再び現れる慶徳の壁。

野辺がスクリーンをかけた。


土屋のディフェンスを崩す入念な慶徳のダブルスクリーンプレー。

体勢の崩れた土屋は、野辺を交わすことは出来ない。



「スイッチや!」



野辺をマークしていた荻野が諸星をマークした。



愛和学院の旧友の対決。



(荻野か。)にっ。


(諸星!)


トップの藤真と牧は、激しい攻防を見せる。



『ダム!』


『キュッ!』



(ここだ!)


牧の強烈なディフェンスを交わしながら、藤真はパスを放った。



『バシ!』




「諸星と荻野!!」

「愛和対決だーーー!!!」




赤木、野辺のスクリーンを経て、諸星は逆サイドでボールを受け取った。



(俺の切れ味は、お前が一番理解しているだろ!!)にや。



『キュッ!!』


『ダムッ!!』




「抜いたーーーー!!!」

「速いぞ!諸星!!」

「一瞬だーー!!!」

「すげーーーー切れ味!!」




ワンフェイク。


たったのワンフェイクだった。

諸星のスピードを理解していた旧友なれど、そのスピード、キレを止めることは出来なかった。


荻野を抜いた諸星。



『ダムッ!』



カバーリングの村松もあっさりと交わす。


そして。



「うりゃーーー!!!」



『ダッダン!』



尋常ではない跳躍力を見せた。

正面にも空中にも障害物は何もない。



『ガッシャーーン!!』



今まで封じ込めていた全ての力を解き放つように、渾身の力を込め、ボールをリングに叩き込んだ。




「うぉーーーーー!!」

「諸星のワンハンドダーーーンク!!」

「いきなりキターーーー!!」

「強烈だーーーーーー!!」




どよめく観客。

湧き上がる会場。




「大さん!!」

観客席の織田が、思わず立ち上がった。

「ついに動いたな。」

と大和。




「エンジン全開!!」

諸星が放つ。


「ディフェンスだ。」

とそっけない赤木。

「速く戻れ。」

と同じく藤真。


「ぬっ。なんだよ!少しは余韻に浸らせろよ!!」

慌てて戻る諸星。




「ついに解放してきたか?」

牧の顔は、なぜか嬉しそうであった。

「こっからが本当の勝負やな。」

「ええ。」

答える神。


「さぁ、いくぞ!!」

気合を入れる牧。



世代最強と呼ばれたSGが第2Q開始から始動した。


沢北と並ぶ切れ味を持った諸星。


慶徳は白金を突き放すことができるのか。


土屋は諸星をとめることができるのか。


第2Qは、両校のオフェンスが爆発する。




白金 21
慶徳 22







続く。

#382 【土屋解放】

2010-11-06 | #12 大学 新人戦編
白金 16
慶徳 18




白金ボールで、第2Qが開始される。

両校、メンバー変更はない。



『ダムダム!』


牧には、藤真。

マークマンの変更もない。



『キュ!』


牧が一歩踏み込んだ。



(来るか!)


『キュッ!』


藤真の速い対応。



その瞬間。

土屋へノールックパス。



『パシ。』


3Pライン中で、ボールを受け取る土屋。



「いくで。」

「へっ。来い!」




「土屋対諸星!!!!」

「豪華すぎるマッチアップだーー!!!」

「土屋いけやーーー!!!」




『キュッキュ!!』


『ダムッ!!』


土屋は、小刻みなフェイントから、諸星の重心を動かす。



『キュ!!』


「!!!」


諸星がフェイントにつられた。


(やりやがったな!!)




「攻めたーーーー!!」

「抜いたーー!!」




台形内まで、突っ込んだ土屋。

第1Q同様、赤木が詰め寄った。



『ダン!』


腕を伸ばし、長身を生かしたジャンプシュートの体勢。



『ダン!』


赤木もブロックに跳ぶ。



(予想通りや。)にっ。



『サッ。』


「!!」


土屋は長い腕で赤木の脇を通るアンダーパスを優しく放った。


ゴール下には、フリーの村松。


荻野が野辺を抑える。



『バス!!』




「ナイスパスだーーー!!!」

「来たぞ!!土屋ーーー!!!

「ナイッシュ!村松!!」




「ちっ。」

と赤木。

「土屋は、パスのセンスもいい。安易に出るのはまずい。」

と藤真。


「あぁ、そのようだな・・・。諸星、簡単にやられているぞ!!」

「出方をうかがっただけだ。」

強気な諸星。

(とはいえ、土屋のドライブ、シュート、パス、どれも世代トップレベル。
全てのプレーを抑えるのは難しい。まったくやりづらい相手だぜ。)



「いいぞ。」

「これからやで。」


『パン。』

牧と土屋が掌を叩いた。



第2Q開始直後、土屋淳が魅せた。

諸星を抜き去ったドライブ、赤木を引き付けたシュート、そこからの完璧なアシスト。

全てのプレーで高レベルを披露するまさにオールラウンダーに相応しい男。




白金 18
慶徳 18




第2Q最初の慶徳のオフェンス。


「藤真!!」


Vカットした諸星がボールを要求。

諸星警報発令が出たばかりだけに、白金の、土屋の意識が、諸星へと向けられた。



『ビィ!』



藤真のノールックパス。



『パシ!』



「!!」

「!!!」

「なっ!!」




「絶妙!!!!」

「巧い!!!」




一瞬だった。


ゴール下、赤木が村松の前を奪った一瞬。

藤真は強烈なワンバウンドパスを赤木に入れた。



「うおーー!」



『バス!』

赤木がねじ込む。


慶徳コートに戻りながら、藤真を指差す赤木。

微笑み答える藤真。



「おいおい!俺にボールを集めるって話は、どうなってんだ!」

と諸星が絡む。

「ふっ。」

「笑ってごまかすな!藤真ーー!」

「焦るな。チャンスは時機来る。」

と同じく微笑む赤木。


「ちきしょう。こっちは、テンションあげて待ってるのによ!」




白金 18
慶徳 20




白金のオフェンス。

土屋のハイポから、神へのノールックパス。



『シュパ!!』




「神だーーーー!!」

「3Pーーーーーー!!!」

「また土屋のアシストーー!!」

「牧、神ばりの阿吽の呼吸だぜ!!」




「ナイスパス。」

「ナイッシューや。」



「ちっ。土屋め。」

「ノッてきたな。」

エンドラインでボールを持つ野辺。


「神もエンジンがかかり始めたようだ。」

と赤木。


「おい!藤真!」

にらむ諸星。


「あぁ、やられたらやり返せ。」

「りょーーかい。」にや。



藤真が制御していた諸星の感情とオフェンスが、まもなく解放される。




白金 21
慶徳 20







続く。

#381 【セカンドオプション】

2010-11-04 | #12 大学 新人戦編
白金 14
慶徳 16




第1Qも終盤。

両者譲らぬ準決勝第2試合は、ロースコアの展開となっていた。




「派手な選手が多いせいか、オフェンス主体のチームのように思えていましたけど、
両校、ディフェンスもいいですね。」

「赤木君、野辺君の慶徳インサイドは強固なものだし、土屋君や荻野君もディフェンスはいい選手。
それに、他の選手もレベルは相当高い。真っ向勝負をすれば、当然の結果かもしれないわね。」

と分析する記者席の弥生。




牧 6P 2A

藤真 4P 3A


オフェンスでは、それぞれのPGがチームを引率している。


一方、ディフェンスでは。



『バチーーン!!!』


「ウホッ!!」


「ナイスだ!赤木!!」


2つめのブロックを成功させた赤木。

ゴール下の番人として、その力を遺憾なく発揮している。


『バチン!』


こぼれだまを拾う野辺。

赤木は野辺の存在があるために、思いきりよくチェックに飛び出すことができていた。




「両者とも基本に忠実なだけに、赤木と野辺、これは強力なインサイドだな。」

「赤木め。」

(俺より上にいくなよ。)

赤木を応援しながらも、素直に喜べない三井。




ボールは、野辺から諸星へ。


だが。


『パシ。』


冷静にいち早く反応した神が、スティールを成功させた。


「ぬっ。」

野辺の顔が、更に長くなる。



『シュ。』


神は、すかさず、牧へ。

攻撃の起点は、あくまで牧。


「いいぞ!神!1本獲るぞ!!」

「はい!!」


チームを鼓舞する牧。



再び、白金のオフェンス。



『パン!パン!』


「ドンマイ!ドンマイ!」

声をかける藤真。


「さぁ、止めるぞ!」

「おう!!」


藤真は、チームのミスに対して、すぐにフォローを入れた。

これにより、チームはモチベーションを落とすことはなかった。



牧紳一、藤真健司、両者はまさしくチームの中心にいた。



『ピィーーーー!!』



まもなくして、第1Q終了を告げるブザーが鳴った。




白金 16
慶徳 18



両校、2点ずつを追加し、第2Qを迎える。

2分間のインターバル。




白金ベンチ。

汗を拭う5人の選手。


「ええチームやな。藤真が巧くまとめとる。」

「そうですね。しっかりと、チームプレーに徹した統率のとれたチームです。」

土屋に答える神。

「さぁ、あとはいつ解放されるかだ。」

「解放?」

牧に荻野が尋ねた。


「今は、大人しく藤真の指示に従って、制御されているが、そのうちその制御も利かなくなるだろう。
いや、藤真自らがその制御を解くかもしれんな。」

「どういうことや?」


「土屋がしっかりと抑えていることもあるが、あの諸星が、このまま大人しくしてると思えるか?
あいつは今、藤真に制御されている。」

「確かに、第1Qの諸星は大人しかったな。抑えられるほど、反動もデカイとゆうことか。」

「第2Q来るかもしれんぞ。注意しといてくれ。」

「了解や。」




慶徳ベンチ。

「ふぅ。」

ベンチに座る諸星。

「白金相手に、第1Qは様子見とは、藤真にも恐れ入るぜ。」

「様子見ではなく、相手の出方を伺っただけだ。」

「何か見えたのか?」

赤木が尋ねる。


「出方を伺うという意味では、白金も同様だったようだな。」

「けっ。どうりで、土屋も神も大人しいわけだ。」

と諸星。


「藤真同様に、牧も切り崩しながら、ディフェンスの穴を探していたというわけか。」

野辺が答える。

「うちに隙はない。牧もわかっただろう。」


「で、第2Qはどうするよ。」

「作戦通り、諸星に集めていく。」

「待ってたぜ!!」

「赤木、諸星の援護を頼む。」

「あぁ、外すことは許さんぞ。」

「誰にいってやがる。」にや。

「土屋を侮るな。」

と野辺が釘を刺す。


「侮るか!全国大会、ジュニア選抜を通して、よく知る相手だ。
土屋のディフェンスのよさは、誰よりもわかっているつもりだぜ。」

「そんな土屋に勝てるのか?」

「土屋のディフェンスは本物だ。だが、俺のオフェンスも本物だ。俺にあって土屋にないもの。」

「ん!?なんだ?」

「まぁ、見てろ。」にや。

不敵に笑う。




再び、白金ベンチ。

「オフェンスは、どう攻める?」

と荻野。

「わいに任せろや。大人しくしていたのは、慶徳だけやないってとこ、示さなあかんな。なぁ、神。」

「えぇ。」にこ。

「牧、悪いが、次の主役はわいや。」

「ふっ。そこまでいうなら、任せたぞ。だが、諸星は手強いぞ。」

「あぁ、あいつの性格の意地悪さも十分にわかっているつもりや。」にや。




両校、第1Qの結果を考慮し、作戦の変更を行った。


白金は、元大栄学園キャプテンの土屋淳を中心に。


慶徳は、元愛和学院キャプテンの諸星大を中心に。


豪華すぎるセカンドオプションが始動する。




白金 16
慶徳 18







続く。

#380 【先制点】

2010-11-01 | #12 大学 新人戦編
準決勝第2試合

白金学院大学×慶徳義塾大学




どちらも得点を奪えないまま、3分が経過していた。


試合早々から、息の詰まるような攻防戦。


観客は、コートから眼を離すことはできず、両校のベンチは、応援にも一層の気合が入る。




「押せ!押せ!白金!!」

「ディ!ディ!ディーフェンス!!」

「押せ!押せ!白金!!」

「ディ!ディ!ディーフェンス!!」




観客席の三井らにも言葉はない。


そして。


この長い長い均衡状態を打ち崩したのは、あの男だった。



『キュ!!』


『ダムダム!!』




「また牧だーーーー!!!」

「3度目のペネトレイト!!!」

「いけーーーー!!!」




ここまで2本のペネトレイトで、慶徳ディフェンスを切り裂いたが、得点には結びついていない。



『ガツッ。』


牧と藤真の体が、わずかに接触する。


審判の笛は鳴らない。


牧はオフェンスファウルのラインを引き、藤真はディフェンスファウルのラインを引いていた。



『キュッ!!』


『クルッ!!』



バックロール。


だが、藤真は、牧のマークを外さない。




「また止めた!!!」

「藤真!ナイスディフェンス!!」

「牧のペネトレイトが封じられている!!」




そこに、ワンフェイクからインサイドへきれてきた神があわせる形。



「!!!」


真下も必死のディフェンス。



『キュ!!』


神、真下の裏をかく、急ストップ。



「!!!」



『キュッ!』


慌てて真下もストップするが、神との間には、十分なスペースが空いていた。



『ビュン!!』


牧から神へ。

海南の一時代を築き上げた最強のコンビプレー。



『パシ!』



ボールが神に渡るとともに、藤真が叫ぶ。



「来るぞ!!リバウンドだーーー!!」

「おう!!」



『ガシ!』


『ガツ!』



神の手から繰り出されるフェイダウェイ気味のミドルシュートがゴール下を戦場に変える。


だが、高さ、腕の伸び、スナップ、洗練された神の動きの前では、それも虚しいだけ。



『シュパ!!』



この試合、神が最初に放ったシュートは、3Pではなく、ミドルシュートであった。




「点が入ったーーー!!!」

「ようやく決まったーーー!!」

「得点板が動いたぞーーー!!!」

「神のシュートーー!!」




「いいぞ!神!!」

「ナイスパスです。牧さん。」



先制点は、白金が奪った。


慶徳にとって、一番警戒していたはずのプレーからの失点。


それを決めてきた白金。


先制点という以上に、慶徳にプレッシャーを感じさせる得点であった。




白金 2
慶徳 0




「さすが、神だな。平気な顔して決めてきやがった。」

と諸星。

「牧のパスも寸分違わぬ。」

「この先、このパターンは何度もあるに違いない。
神にはもっと注意が必要だ。真下、フェイスガードでかまわないぞ。」

『コク。』


すぐにディフェンスの確認を行う藤真。


「さぁ、うちも速いところ、点をいれていこうぜ。」

「リバウンドは俺と野辺が獲る。強気にいけ!」

「あぁ。」




白金先制点のあとの慶徳のオフェンス。


ここは、1本、確実に返しておきたいところ。


藤真のゲームメイクに注目が集まる。




「藤真さんの選択はインサイドですかね?」

「いや、ここまで赤木、野辺と2回止められている。
諸星を使いたいところだが、土屋のディフェンスが巧い。」

「慶徳有利との評価だが、ここまで互角。
インサイドのサイズが下回っていることを考えると、さすが白金といったところだな。」

「牧と神は、あのサイズの小さい海南を全国2位に押し上げた実績もある。」

「隙のないチームだ。」

観客席の拓緑の3人が話している。




神のシュートが、藤真をよりオフェンシブへと変えさせる。



『ダムダム!』


藤真の力強いドリブル。


牧は、藤真の眼を睨む。


(この眼、このドリブル。必ず仕掛けてくる!)


対して、藤真。


(いくぞ!!)



『ダム!!』


牧の読みは当たった。

いや、藤真も牧に読まれているという前提の上で、仕掛けていった。



『ドン。』


藤真と牧の体が、わずかに接触。


「!!!」

「!!」にっ。




「藤真君が、力ずくでいきましたよ!!パワードリブルです!!」

「冷静さを欠いた?いや違う!」




赤木、野辺は、白金インサイドを抑える。

諸星は、3P外、遠いところで土屋を引きずり出し、待機。

真下もまた、神を抑えていた。


ほぼ牧と藤真の1on1。



『ダム!!』


『キュ!!』


「うぉーー!!」


「来るか!!」


強引なドライブで、インサイドに切れ込む藤真。

牧が、強靭な体で、藤真のコースを抑える。



だが。



『ダン!!』


藤真は、かまわず跳んだ。


牧のディフェンスに物怖じしない高い跳躍。


白い左手から放たれるアーチの高いレイアップシュートは、わずかに牧のタイミングをずらした。



『スト。』


リングに一切触れることなく、ネットを通過する。



均衡状態の3分間が嘘のように、あっさりと同点。




「わぁーーーー!!!」

「藤真が決めたーーー!!!」

「強引にきたーーー!!」

「すげーー!!」

「牧を超えたーーーー!!!」




「牧!遠慮はいらない。」

「あぁ、そのようだな。もっと激しくいかせてもらうぞ!」


(俺に力勝負で挑んできたか。今までの藤真とはえらく違うな。)


牧が得意のペネトレイトからのパスアウトを見せれば、藤真が今までにないプレーを見せる。


対照的な2人が、このあと試合を組み立てていく。




白金 2
慶徳 2







続く。

#379 【牧×藤真&赤木】

2010-10-30 | #12 大学 新人戦編
慶徳のオフェンスが失敗し、白金に先制点のチャンス。


慶徳も白金同様、マンツーマンで対応する。

マークマンは変わらない。



(「白金が勝つには、120%の牧さんが必要ですよ。前半からね。」)

仙道の言葉が、脳裏をよぎる。


(いくぞ!)



『キュ!!』


『ダム!!』



一気に駆け上がる牧。

あっという間に、ハーフライン。


だが、慶徳の戻りは速い。


相対する牧と藤真。



(牧。)


(藤真。)



『キュッ!!』


『ダムッ!!』



間髪入れない牧のドリブルに、藤真は完璧に対応した。




「おぉぉーーーー!!!」

「あれを止めたーーー!!」

「すげーーー!!!」




『キュッ!』



(次は、キラークロスオーバー!)


藤真の予測。



『ダム!ダム!』


『キュッ!!』



「!!!」


「!!」にっ。




「まただーー!!!」

「牧のキラークロスオーバーを止めたーー!!」

「藤真が凄いーーーー!!!」




「やるな。」

止められた牧は、なぜか嬉しそうであった。


「簡単にはやられるわけにはいかないからな。」

なおも、牧を攻めさせない藤真のディフェンス。




観客席で観戦している三井らも驚きの表情を浮かべている。

「藤真のやつ・・・。」

「凄いディフェンスです。」

「気合十分だ。」




攻められない牧。


だが、焦りの表情はない。



(これでお前を抜けるとは思っていない。だが、これでどうだ。)



『ダム!』


『ドン。』



「うっ。」


牧がパワードリブルで、藤真に接触。

藤真の体が、わずかに後方へ退いた。




「ファウル!」

慶徳ベンチが叫ぶ。




だが、審判は、笛を鳴らさない。




「牧が強引に攻めてきたーーー!!」

「パワー勝負だ!!」

「いけーーー!!牧ーーー!!」




「ファウルのラインを引きましたね。」

と中村。

「ったく、専門的なこというようになったのはいいけど、その勝ち誇った顔は余計よ。」

「はっはい。」




「牧め、パワー勝負に出たか。」

「深津にも、藤真にもない最高のアドバンテージ。」

「止められるPGは、そうはいない。」

と観客席の花形ら。




牧のパワードリブルが、藤真の体をわずかに退けた。




「抜いた!!」

「藤真のディフェンスを破ったーーー!!」

「牧のペネトレイトーーー!!」




(牧!!)


『ダムダム!!』


牧は、トップから果敢にリングを襲う。


並走する藤真。


神が、3Pライン外で構え、土屋が牧にあわせるような動きを見せる。


だが、牧は一人で突っ込んだ。


ゴール下の赤木を睨む牧。



(いくぞ!赤木!!)



(入れさせん!!)



『ダン!!』



フリースローライン、牧が跳んだ。


赤木は、牧のシュートを叩き落すべく、タイミングを計っている。


オーバーハンドレイアップの体勢。



『ダッ!』



牧と接触せぬように跳ぶ赤木。


牧のシュートコースに右腕を伸ばした。


完璧なブロックのタイミング。



(もらったぞ!!)



「!!」


「!!」



『グッ。』


牧は、再びボールを胸に持っていく。




「止められたーーー!!」

「赤木が止めたーー!!」



下降する牧は、跳んだ赤木の脇にわずかなスペースを見つけ、
無理な体勢からレイアップシュートを放った。



「なに!!」

(その体勢で打つか!!)


赤木は、牧のボディバランスに驚き、改めてその巧さを感じた。




「無謀だ。」

と宮城。


(いや、ぎりぎり。)

と仙道。




ボールは緩やかな回転をし、リングへ。




「打ちやがったーー!!!」

「すげーーー!!」

「さすが、牧!!!」




『コロ・・・。』


だが、ボールは、リングの根元を通り、逆サイドに流れた。




「おしい!!」

「外したーー!!!」




『バチン!!』


リバウンドは、野辺。


牧のシュートは、失敗に終わった。



『ダン。』


牧、赤木が同時に着地。


「そんなシュートは入らんぞ!」

「バスカンを狙ったつもりだったが、交わしてなおブロックにくるか。
かなり成長したようだな。赤木。」

「フン!昔の俺だと思うなよ。」


(その貪欲さ、変わらんな。牧。)


(ゴール下の威圧感は健在か。赤木。)



お互いに睨みをきかせる。


そのやりとりを後ろから見ていた藤真。



(牧のパワーとボディバランス。
やはり、この試合、あれをどこまで抑えられるかが、勝負の大きなポイントになる。
そして、準々決勝では見せなかった攻撃性。要注意だ。)



(今日は、随分と積極的やないか。)


(珍しいですね、スロースターターの牧さんが、試合早々飛ばしていくなんて。)


(「白金が勝つには、120%の牧さんが必要ですよ。前半からね。」 )

仙道の言葉を再び思い返す牧。


「土屋!神!ガンガン攻めるぞ!」

「おう!」

「はい。」



両校、最初のオフェンスで、得点をあげることはできなかった。


そして、ここから3分。


電光掲示板の0の数字は、変わることはなかった。








続く。

#378 【白金×慶徳】

2010-10-28 | #12 大学 新人戦編
準決勝

第2試合 白金学院大学対慶徳義塾大学の試合が、開始されようとしていた。


8人の選手がセンターサークルを囲むように、ポジションを取っている。

サークル内には、白金の荻野と慶徳の赤木。


放たれたボールに向かって、2つの巨体が舞い上がる。




「わぁぁーーーー!!!」

「おぉぉぉーー!!」

「始まったぞーー!!!!」




『バッチーン!!』


勢い良くボールを叩き落したのは、身長で優位に立つ赤木。


ボールは、SF真下から、藤真に渡る。



「さぁ、1本いくぞ!!」

「おう!!」



藤真は、ドリブルをする前に、一言叫んだ。



(藤真のやつ、気合はいってんな。)

と諸星。



その想いは、慶徳の選手、全てに届いていた。



準々決勝同様、慶徳のスタメンに変更はない。


最強のSGと呼ばれた諸星。

キングコングC赤木。

リバウンドマシーン野辺。

サポートに徹するSF真下。

そして、その選手たちを統率するPG藤真。

導かれた選手たちが、白金越えを目指す。




【慶徳義塾大学】

PG…#14 藤真 健司 179cm/2年/翔陽
SG…#15 諸星 大 186cm/2年/愛和学院
SF…#22 真下 裕也 186cm/2年/浦安工業
PF…#17 野辺 将広 198cm/2年/山王工業
 C…#20 赤木 剛憲 199cm/2年/湘北




かたや、ディフェンスから始まった白金。

C赤木には、C村松。

PF野辺には、PF荻野。

ともに、自分よりも身長の高い選手を抑えることとなる。

厳しい戦いになるのは、誰から見ても明らかであった。


SF土屋は、諸星をマークした。

「わいが相手や。」

「ふっ。土屋か。悪くねぇな。真下!予定変更だ。俺が土屋を抑える!」


『コク。』

神は、真下をマークした。

(この人は、目立たないけど、巧い選手。好きに動かせてはならない。)



藤真の目の前には、もちろんこの男。


普段より腰を低く構え、藤真を睨む牧の姿。




「牧君のあんな低いディフェンス初めて見ましたよ!!!」

開始早々、興奮もピークに達してしまった中村。

「マンツーマンか。果たして、それで慶徳のインサイドを抑えられるかしら。」




【白金学院大学】

PG…#13 牧 紳一 184cm/2年/海南大附属
SG…#36 神 宗一郎 189cm/1年/海南大附属
SF…#19 土屋 淳 191cm/2年/大栄学園
PF…#24 荻野 武士 193cm/2年/愛和学院
 C…#26 村松 忠文 195cm/2年/浜ノ森




(牧!!いくぞ!)


(来い!藤真!!)



魅せれるか藤真。


止められるか牧。



『ダム!』


藤真は、最初のドリブルをついた。


牧の威圧的なディフェンスを前に、ボールを隠すように、低くドリブルをつく。




「始まったばかりなのに、1点を争っているゲーム展開でのドリブルみたいですね。」

と観客席の織田。

「それだけ、この先制点が重要なことを両者ともに、よく理解しているということだろう。」

と花形は答えた。




先制点を獲ると獲られるでは、大きく心の持ちようが変わる。

両校、先制点は最高の形で獲りたいのである。



『ダムダム・・・。』


横学大戦では、見せなかった白金の攻めるようなディフェンス。

藤真でさえ、パスの供給先を見つけるのが難しい。



『キュッ!!』


『キュッキュキュ!』




「俺らとやったときよりも巧くなってないか?」

「技術うんぬんよりも、意識の問題のようだ。ほれ。」

三井に答えた新庄が、コートを見るように促す。




「しっかり守れ!藤真からのパスを簡単に通すんやないで!!」


『パン!パン!』


そこには、仲間を鼓舞する土屋の姿があった。

横学大では、見せることのなかった土屋の姿だった。




「珍しいな。」

と大和。

「プレーで引っ張るタイプだと思っていたが、わりと熱いやつだな。」

品川は答えた。




「白金の凄いディフェンスだ!!」

「時間がない!!!」

「慶徳!攻めろーーー!!!」




24秒残り5秒。


『バッ!!』


野辺が、ハイポで面を獲った。

背中には、荻野を背負う。

ボールは、真下を経由し、野辺に入った。



『キュ!』



その瞬間、ローポで赤木が構える。


野辺から赤木へ。

ハイ&ロー。



残り2秒。


赤木のゴール下。



『バン!!』



「!!!!」



ボールは、赤木の手から弾かれた。


村松のスティールであった。




「絶妙なスティールだ!!」

「巧いぞ!!あのセンター!!」




「いいぞ!村松!!」

「ナイスカット!!」



(「ゴール下で赤木に勝つのは、至難の業だ。下を狙え。」)

牧から村松への指示であった。



「赤木!緊張してんのか!かてーぞ!」

と諸星。

「うるさい!ディフェンスだ!!」

(あのセンター、さすが白金のスタメンを張ることだけのことはある・・・。)


「気にするな。白金相手に、簡単に点が入るとは思っていない。」

と声をかける藤真。

「フン、いうようになったな。」

「頼むぞ、赤木!」

「任せておけ。」



ボールは、村松から牧へ。

先制点のチャンスを逃した慶徳。



『ダムダム。』


(いくぞ!!慶徳!!)


牧の力強いドリブル。



白金のオフェンスが始まる。








続く。