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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#209 【1本目!】

2009-10-19 | #09 湘北 県予選編
海南 71
湘北 72




第4Qが開始される。

安西は、流川に真田を無得点に抑えるよう、桜木には神を3本以内に抑えるように指示をした。



出来なければ、即交代。



安西は、意図的に「がけっぷち」を作ることで、2人の精神力の向上を図った。

ありえない展開に、湘北ベンチは困惑する。

だが、当人たちに困惑の表情はなかった。


「キツネはまだしも、この桜木が交代することはない!
キツネが抑えられなかったひょろ男を完璧に抑えてやるぞ!!ハッハッハ!!」


「どあほうは黙ってろ。」

(交代なんて、まっぴらごめんだぜ。)


安西の意図通りに、この試合、今までにない集中力と気合を漲らせていた。


2人にとって、試練の10分間を迎える。




海南のメンバーチェンジ。


-----------------------------------------------

SG…#11 上杉 海斗 185cm/1年

SG…#5 真田 壮太 185cm/3年

-----------------------------------------------




「真田さんのおでましやーー!!」

「真田をどこまで抑えられるかが、この試合の鍵となる。」

と田岡。




記者席でも、弥生が同様のことを話している。

「今大会初出場ですね。」

「湘北が勝つためには、彼を抑えなければならない。」

「誰がマークにつきますかね?」

「三井君のいない湘北なら、流川君しかいないわね。」




海南ボールから開始。


清田がドリブルをする。

「!!」




「安西先生・・・。流川で真田が抑えられますかな。」

とベンチの高頭。




「ふっ。真田と流川の対決か。面白そうだな。」

と仙道が笑う。

「仙道さんも注目する対決やーーー!!要チェックやーー!!」

「いちいち叫ばんでいい!!」




「湘北のディフェンスが変わったーー!!」

「神には桜木だーー!!」

「止められるのか!!」

「真田に流川だーー!!」




湘北はハーフコートマンツー。

神に桜木、真田に流川がマークする。



「けっ。赤毛猿に神さんは止められねぇよ。」

「去年の決勝リーグでは、止めてたぜ。」

「神さんは去年と比べ物にならないくらい、巧くなってんだよ!!」


『キュ!!』


清田のドライブ、宮城が真っ向から、受け止める。


『フッ!』


上体を上げる清田。

宮城も一瞬、上がる。


『ダム!』


清田のチェンジオブペース。


(まずい!)




「巧くなったね。信長君。」

仙道が微笑む。




清田の牧ばりのオーバーハンドランニングシュート。



『チィ!』



「なにっ!!」


白田のシュートブロックが、かすかにボールに触れた。

(インサイドは、俺が守る!!)



『ガン!』


ボールはリングに当たり、小さく跳ねる。


「リバウンドだーー!!」

宮城が叫ぶ。


「おうよ!!」



『バチィン!!』




「たけーーー!!」

「さすが、リバウンド王!!」




だが。



「あめーよ。」

と清田。



『パン!』



「ぬっ。」

桜木が着地した瞬間、桜木の手から、ボールが弾けた。




「叩いた!!」

「神のスティール!!」

「抜け目ない!!」




神は、ボールを奪い、すぐさまワンドリでリングの下を通り抜けるとバックシュートを放った。



「ひょろ男めーー!!返せーー!!」



『びよーーん!!』



リングの反対から、凄まじい跳躍を見せる桜木。



『バチーーン!!』



「えっ!」

驚く神。

神のバックシュートは、豪快にブロックされた。




「今のブロック、あり得ないぞーー!!」

「高すぎる!!」

「リングの反対側から、ブロックだと!!」




『ピィーーー!!』

「バイオレーション!!カウントーー!!」



「なんだとーー!!審判ーー!!」


「バカ!よせ!花道!!」

「桜木先輩。ゴール・テンディングですよ。」

「ゴール・テンディング??なんだそれは?」

「落下してくるシュートをブロックしてはいけないんです。
触れた瞬間、相手の得点になってしまうんですよ。」

「ぬっ。そうだ!そうだった!!確か、前も同じようなことをいわれたことがあるぞ!」

「少しは、勉強してくださいよ・・・。」

「天才ゆえに、体が反応してしまう。ハッハッハ!」

(でも、リングの反対から、放たれたシュートをブロックするとは・・・。
なんとも恐ろしいジャンプ力だ。)


「どあほうゆえに、忘れてしまう・・・。」

「なんだとーー!!流川ーー!!」


(ははっ。まさか、今のシュートに反応し、しかもブロックするとは・・・。
なんかいやなこと思い出しちゃうな。)

苦笑いの神。


清田と宮城。

「確かに、神の成長は認めるぜ!だがよ、花道だって、成長しているんだぜ!!」

「ふん。確かにそのようだが、頭の中は全く成長してねぇ。」

「ふっ。そりゃ、俺も同感だ。」




「先生、今のは?」

彩子が安西に尋ねる。

湘北のベンチが安西の口元に集中する。


しばしの沈黙。


『ゴクッ!』


「・・・・・・・・・。1本です。」


「のわーー!!1本目だーー!!」

「残り2本!!」

「桜木君!今のも1本だって!!」




「なぬ!オヤジめ!やはり、根に持っておるな!!」


(なんだ、残り2本って?)

神は、意味がわからない。


桜木に許されたシュートは、残り2本・・・。



海南 73
湘北 72







続く。

#208 【試練】

2009-10-16 | #09 湘北 県予選編
海南 71
湘北 72




2分間のインターバル。

第4Qで、雌雄が決する。




海南ベンチ。

『そわそわ・・・。』

2本の扇子を真っ二つに折ってしまった高頭は、手持ち無沙汰な様子。

「桜木と流川め。私の大切な扇子を折るとは!」

高頭の鼻息は荒い。

(折ったのは、監督でしょ・・・。)

突っ込めない真田。


「手強いな・・・。まさか、2人揃って、あんなプレーができるとは・・・。」

と小菅。

桜木、流川のミラクルアリウープにより、飲まれてしまった海南ベンチ。


「点差がついているわけじゃない。1本は1本だ。気持ちを切り替えていこう。」

神の参謀役真田壮太が口を開いた。


「真田、いけるか?」

「もちろんです。この日のために、体調を整えてきましたから。
それに、この試合を引退試合にするつもりはありません。」

「よし!上杉、真田と代われ。」

「はい。真田先輩、お願いします。悔しいけど、俺にはまだ流川さんを止められる力はありませんでした。」

「清田だって、止められないんだ。悔やむことはないよ。」

と真田。

「えっ!?止められますって!!」

「やってみるか?」

と高頭。


『ギラ!』

清田の眼に力が入る。

「はい!!」


「よし!!最終確認だ。オフェンスは、清田、神、真田を中心に中、外、リズムよく攻めろ。
小菅、大泉は、強引にいってもかまわんぞ!
各々、スクリーンアウトだけは怠るな!絶対にオフェンスリバウンドだけは獲らせるな!!」

「はい!!」


「ディフェンスは、流川にボックスワン。任せたぞ。」

高頭は、清田の肩に手をやった。

「やってやりますよ!!!」にかっ。




湘北ベンチ。

「ハッハッハ!さすが、天才!!ハルコさん、見ていただけましたか?」

晴子の眼はハートになっている。

(ハッハルコさんが、この桜木を見て、眼がハートになっている・・・。)

涙を流す桜木。


実は、晴子は、桜木の後ろにいる流川を見ていた。

(流川君・・・。)


「いい状態だ!この勢いのまま、第4Qも飛ばすぞ!!」

「はい!!」

「おうよ!!」

「この勢いをもたらしたのは、花道。おめーだ!」

「天才が呼び起こした奇跡のファインプレー!!」

「そうだ。最後の10分も頼んだぞ!!」

「リョーちん。この天才に愚問だぜ!!ハッハッハ!」

(ハルコさん、しっかり見ていてください。
あなたにこの試合を捧ぐ!なんていってしまったりして。ナハハハハ!)


「では、後半の作戦です。」

安西が口を開く。

「まずは、先程のプレーは忘れましょう。海南も気持ちを切り替えてきます。
こちらも気持ちを切り替えて挑みます。」

「はい!」

「なぬ!」

(オヤジのやつ、まだ、根に持っているな。そして、天才のファインプレーを無きものにしようとしている。
ふん、こうなったら、オヤジを黙らせるもっと凄いプレーを!)きらーん。


『バシ!』


「アッアヤコさん!」

「よからぬことを考えないの!」

「ぬっ。よくわかったな。ゴリの手先め!」

「ゴリの手先!?あんたの考えそうなことくらい簡単よ。」

「ほっほっほ。攻守も切り替えが大切です。気持ちも同じですよ。」

安西が続ける。


「メンバーの変更はありませんが、神君には桜木君についてもらいます。」


「!!!」

「!!」


(WHY?)

流川が疑問がった。


「ハッハッハ!そうか、そういうことか!オヤジもよくわかっているじゃねぇか!!
流川じゃ、ひょろ男を抑えられないということを!!」

(んなことねーよ。)


「桜木君は、昨年のIHで見事神君をブロックしました。
彼の中で、桜木君に対する苦手意識があるかもしれません。シューターは少しの動揺が命取りとなります。
彼の場合、関係がないかもしれませんが。」

「よし!任せとけ!!攻守の要、この桜木が湘北を勝利に導く!!」


(誰が攻守の要だ、どあほう。)

(桜木先輩、酔いしれている・・・。)

(大丈夫かな・・・。この人・・・。)


「それと、もう一つ。このQ神君に、3本決められたら、桜木君は角田君と交代です。」

「なぬ!!」

「!!!」

「えーー!!!」

「安西先生!!本当ですか!?」

彩子が問いただす。

「本当です。だから、桜木君。油断することのないよう、しっかりディフェンスをして下さい。」

「任せとけ!!」

心配そうに桜木を見つめる湘北ベンチ陣と反対に、桜木は本日一番の気合を見せていた。


(条件は少し厳しいが、これで花道にも集中力が戻ったな。
さっきのプレーで、また天才モードに入りかけていたからな。さすが、安西先生。締めるところは、締めてきたぜ。
だが、この作戦・・・。吉と出るか、凶と出るか・・・。)

宮城が苦笑う。


「カクには悪いが、出番はないぜ!」

「桜木!頑張れよ!!」

角田が声をかける。

「しっかりね。桜木君!」

「はい!!今日の勝利をハルコさんに捧げます!!」

「えっえぇ。」

動揺する晴子。


「おめーの勝利じゃねぇよ。」

「どあほう・・・。」

「不安だ・・・。」


「ほっほっほ。さて、白田君は、大泉君のディフェンスとインサイドの守りをお願いしますよ。」

「はい!!」


(俺は・・・。)

自分に指をさす流川。

「流川君は、彼です。」

安西は、海南ベンチをちらっと見た。


(#5・・・。)


「昨年の選抜MVPの河田君は、準決勝で彼を4得点に抑えたそうです。流川君は、抑えられますか?」

「うす。」

「何点に?」

「・・・。0点。」

「わかりました。では、流川君には0点に抑えてもらいましょう。
流川君も桜木君同様、真田君に1本でも決められたら、即交代です。」


「!!!」


「えっ!!」


「安西先生!!」


驚愕する湘北ベンチ。


「先生、花道はともかく、流川は・・・。」

「なぬ!!リョーちん!!」

「0点に抑えると流川君がいいました。エースは、自分の言った言葉に責任を持たなければなりません。
いいですね?流川君。」

「・・・うす!」


まとまりを見せる海南に対し、湘北には不安がよぎる。


「ひょろ男め!天才の力を見せてやる!!」ギラ!


(ぜってー抑える!!)ギラ!


第3Qを盛り上げた2人は、試練の10分間を迎える。



海南 71
湘北 72







続く。

#207 【流川の一撃】

2009-10-15 | #09 湘北 県予選編
海南 69
湘北 70




第3Qも残り25秒。

時間を使い、攻める海南。

パスを回し、シュートクロック3秒。



『シュポ!』


柳の上から、上杉がミドルシュートを決めた。


「相変わらず、よく入るな。」

この試合6本目のミドルシュートであった。


「プレッシャーが少ないから。」

「いうなぁ。」

旧友が対戦を楽しんでいる。




残り時間4秒。


「もう1本だ!!」

海南のオールコート。


「白田!早く出せ!!」

宮城が呼ぶが、清田がパスコースを塞ぐ。


流川と柳は前線に走っていた。


「ハクタス!こっちだ!!」


『バシ!』


桜木にボールが渡る。


「花道!囲まれるぞ!前だ!柳に投げろ!!」

「むっ!」


前には、大泉。

横から、清田と小菅が、桜木を襲う。



「どりゃぁぁーーーー!!」



桜木がオーバーハンドで、海南ゴールめがけて、思いっきり投げた。



「バカ!どこ投げてんだー!!」

宮城が叫ぶ。


「ぬっ。つい・・・。」


「それは、無理っす。」

柳はボールを追うのをやめた。


「あぁぁ。」


湘北ベンチ、観客のほとんどの人間が、第3Q終了を告げるブザーを待った。




「いや、まだだ。」

仙道だけがコートを見つめている。




桜木の放ったボールの勢いは一向に落ちない。



そして。



一直線に海南ゴールを襲うボールに反応する男。



「どこ投げてんだ。どあほう!」





「おいおい!」

「流川がボールに反応している!!」

「あのボールを取る気かーー!!」




『ダン!!』



踏み込む流川の背中を見つめる神。


「まっまさかっ。」


先程、宮城が桜木に放ったパスと同じくらいの高さに飛んでくるボールに飛び込む流川。


「嘘だろ!!」

叫ぶ清田。



『バチーン!!』



流川は、両手でキャッチした。



「バカ力が。」



ボールの勢いに腕を持っていかれながらも、強引に両手で、リングに叩き込んだ。



『ドガァァ!!』



リングを両手で掴んでいる流川の体は、大きく揺れていた。

珍しい流川のボーズダンク。



『ダン!ダンダンダン・・・。』



会場には、ボールが弾む音だけが響いている。

そして、会場が揺れた。




「湘北の連続アリウープ!!!」

「流川がボーズダンクだってよ!!」

「信じられねぇーーー!!」

「マジかよ!!!」

「あんなのが2回も起こっていいのかよ!!」




「ハッハッハ!まさに天才によるスーパーロングパァースアーンドアシスト!!ハッハッハ!」



『ガシ。』


桜木の肩を叩く宮城。


「おめーも凄いが、これは流川のほうがすげーよ・・・。」

「なぬっ。天才のスーパーアシストを!!」

「バカ!流川が決めたから、おめーもアシストがついたんだ。」

「つまり・・・。天才アシストに変わりはない!!!ハッハッハ!!」

「はぁーー。まぁいいか。」




「アンビリーバブルや・・・。桜木さんという流川君といい、なんちゅうジャンプ力や・・・。」

「ははっ、これも凄いな。」

仙道が再び苦笑い。

「なんだあいつらは・・・。」

冷や汗を流す田岡。




『ボキッ!』

「#%&*@!!!」

高頭は、再び扇子を折っていた。

(せっかく新しく用意した扇子をまた折った・・・。)

と隣の真田。




『ジーーーン』

流川の手は、赤くなっていた。

(あんにゃろう・・・。)


「流川!お前も届くとはな。」

「届かねぇなんて、言ってねぇ。」

「あはっ。そうだったな・・・。」

(正しく全国のトップを争うジャンプ力だよ。こいつらは。)




「流川君・・・。」

晴子の眼はハートになっている。

「はぁーー。晴子ちゃん、完璧に乙女モードね。」


『ブルブル・・・。』

安西は両手を握り、震えていた。




興奮さめやらむ会場。

第3Q終了を告げるブザーがなった。



海南 71
湘北 72






続く。

#206 【奇策&奇襲 再び】

2009-10-14 | #09 湘北 県予選編
海南 69
湘北 68




まもなく第3Qが終了する。


湘北のオフェンス。


「花道。そろそろとびきりのやついくから、よーく俺をみとけ。」

「OK。リョーちん。」

小声で話す2人。


花道がエンドラインに立つと、海南が帯刀を抜いてきた。


「!!」

「!!!」


『キュッキュ!』

『キュッ!!』




「きた!海南のオールコートプレスー!」

「海南は何が何でもリードして終える気だ!!」




「宮城OK!」

「ぬっ!」

清田が宮城を指差す。


「ボールマン!」

「ガルルルルッ!」

大泉が、桜木を。

流川には神。

上杉は柳、小菅が白田についた。


「花道!こっちだ!!」

「おうよ!!」

エンドラインの花道から宮城にボールが渡る。


「お前ら!上がれーー!!」

宮城の指示で、湘北メンバーが一斉に海南コートに駆け上がる。

湘北コートには、宮城と清田だけが取り残された。

ハーフライン上では、上杉と神が、清田のカバーに入る姿勢を見せている。


「いくぜ!!」

「来い!!」



『キュ!』


『ダムダム!』


「ぐっ!!」

構える清田。



宮城は、清田目掛けて突っ込んだ。




「出るか!稲妻ステップ!!」

「いけーー!!キャプテン!!」




5月の紅白戦において、宮城が見せたバックステップドリブルは、湘北では稲妻ステップと呼ばれ、
現在では、宮城の必殺技として、神奈川ではメジャーになっていた。




「稲妻ステップや!!!」

「右か!左か!」

と越野。




(そのステップは、十分研究済みだ!)

とにやける清田。


(今までのステップと思うなよ!)


『キュ!!』


清田の前で急ストップ。


(右か!左か!・・・、右だ!!)


宮城は、左へバックステップ。

それは、清田から見て、右。


「ビンゴ!!」


だが、


『キュ!!』


宮城は更に一歩下がった。




「2歩めやて!!!」

「巧いな。」

仙道が微笑む。




(なに!!)

清田は、2歩めに対応することはできない。


『キュッ!』


今度は、一気に加速すると、清田は重心を崩す。


「じゃあな!」

「待て!宮城!」




「宮城が抜いたーーー!!」

「すげーー、ステップドリブルだ!!!」




その瞬間、宮城が桜木に合図を出した。


「いっ!!」

宮城がしかめっ面。


(よし来た!!)


「いっ!!」

桜木もやり返す。


宮城は上杉に捕まるか捕まらないかの絶妙な位置から、ゴール下に向かって大きなパスを放つ。




「でか過ぎるーー!!」

「宮城、焦ったーー!!」

「パスミス!!!」




「これは・・・。」

湘北ベンチの上級生が山王戦を思い出す。

1年生は、紅白戦の安田と桜木のコンビプレーを思い出す。


「いけーーー!!桜木ーー!!」

「ぶちかませーーー!!」

安田らが叫ぶ。


ボールは大泉を越え、リングよりも高い位置。



「ナーーイスパァーース!!イカすぜ!!リョーちん!!」



『びよーーん!』




「うぉぉぉーー!!」

「桜木、高すぎるーーー!!!」

「まさか、あのまま・・・。」




『バシ!』



空中でボールを両手でキャッチした桜木が、リングめがけて、振り下ろす。



『ドガァァァァ!!』



『ギシギシ・・・。』



リングが悲鳴を上げている。



会場が爆発した。




「うぉぉぉーーー!!!」

「わぁぁーーー!!!」

「なんだ今のプレーはーー!!」

「NBAみたいだぞーー!!」

「すげぇぇーーーー!!」





「ははっ、これは凄いな。」

苦笑う仙道。

「凄すぎるで・・・。」

「桜木のやつ・・・。」

「宮城のパスも狂いがない・・・。」

「本当に高校生か・・・。」

彦一、福田、田岡は驚愕していた。




湘北応援席では。

「キターーー!!!奇襲アリウープ!!」

「再びぎゃくてーーーん!!」

「キャプテン・・・。桜木先輩・・・。凄すぎるっす・・・。」

驚愕の1年生。




「ハッハッハ!さすが、リョーちん!!」

「おめーしか、獲れねーよ!!」


『ガシ!』

肩を組む2人。


「まさに天才!!!」

声が揃った。


「見たか!野猿!!」

「まいったか!清田!!」


「なにっ!」

(でも、正直、今のは凄すぎるぜ・・・。)




『ボキッ!』


「なんてやつらだ!!!」

高頭は扇子を折った。




「完璧なコンビプレーでしたね。ほっほっほ。」

「リョータ・・・。」

「桜木君・・・。」

彩子、晴子が2人を見つめる。




「流川もあれ届くか・・・?」

「やろーは頭が軽い・・・。」

(そうだよな。あんなメチャクチャなパスを受け取れる選手が同じチームに2人もいるわけないよな・・・。あははっ。)

神も苦笑うしかなかった。



海南 69
湘北 70







続く。

#205 【オフェンシブに】

2009-10-13 | #09 湘北 県予選編
海南 65
湘北 66




第3Qも8分が経過していた。




「なんか、後半は荒れてますね?」

「そうね。流川君と神君がオフェンスにシフトしているからね。」




ロースコアの前半とは一転、後半は点の獲り合いの様相になっていた。



海南のオフェンス。

湘北は、前半から今までずっとハーフマンツーディフェンスを敷いている。

変わらず、神には流川。


「ふっ。」

神が少し笑う。

(にゃろう・・・。なにがおかしい・・・。)


45°の清田がドライブを仕掛ける。

宮城が、小さい体とスピードを活かし、清田を止める。


(さすが、宮城。だが、これでどうだ!)

清田は宮城の上から、大泉にパスを通す。

自身は、ゴール下に駆け抜けた。


(ハイ&ロー。)

0°にいる神を守っていた流川が咄嗟にゴールによった。


(よし!)

大泉からその神への鋭いパス。


(またか。)



『キュ!』


読んでいた流川がサイドステップで方向転換。


「!!」


だが、神は、クイックリリースからの3Pと見せかけて、インサイドへカットイン。


逆をつかれた流川の横を、神が通り抜けた。


「流川め!ひょろ男相手に、簡単に抜かれおって!!」

ゴール下の桜木がフォローにいくが、ボールは再び、大泉の元へ。



『ザシュ!』


大泉がフリーでゴール下のシュートを決めた。




「シュート良し!パス良し!!神、いけるぞーー!!」

「いけーー!!海南!!」




「流川のせいで、チビ丸君に決められてしまったではないか!
しっかり、ディフェンスしろ!こらぁ!!」

「すぐにやり返すから、黙ってやがれ!」

「なんだとー!流川のくせに偉そうに!!」


「花道!ナイスカバーだ。今のはしょうがねぇ。」

「おっ。リョーちん。さすが、キャプテン。自分ばかり目立とうとするどこかのキツネとは違う!」

「うるせ。どあほう。」


(はぁー。こいつらがもうちょっと仲良くなってくれれば、やりやすいんだけどな・・・。
後半開始のあのパスはたまたまか・・・。)



海南 67
湘北 66




湘北のオフェンス。


(次こそ!止める!!)



だが。



『ピィーーー!!』


上杉が、2つ目のファウルをコールされた。




「うむ。上杉ではまだ流川は早かったか・・・。」

「いや、まだそうと決まったわけではありませんよ。」

高頭に笑いかけるベンチの真田。

抜かれても抜かれても流川に必死に食らいつく上杉の姿を真田は嬉しく思っていた。




『シュパ!』


流川に意識が集中していた海南の裏をかいた宮城が、白田のシュートを演出。




「リョータ!ナイスアシスト!!」

「白田君!ナイッシュ!!」




「ぬっ!ハルコさん!!」

「リョーちん。俺にもパスくれ!!」

「そんなに焦るな。ちゃんと合図を送るから、俺を見とけ!」

「おうよ!早くしてくれよ!」


「シュートに、アシストに、囮に、忙しいな。流川。」

「・・・。てめーもだろ。」

神と流川が静かな火花を散らしている。



海南は、アウトサイドでパスを回し、攻め込む隙を探している。

神にボールが渡ると、自然と湘北ディフェンスが神側によった。


(へっ。神さんに気を取られているな。)


清田にボールが戻ると、ナンバープレーの指示を出す。


そして、再び、神へリターンパス。

湘北のディフェンスが神による。

45°の清田と0°の上杉がポジションチェンジし、上杉は神側による。

C大泉は、神側のローポをとった。


結果、ボールサイドに8人の選手が密集した。


神が素早く逆サイドにパスを出し、大きく展開。


受け取ったのは、清田。

前には大きなスペースが空いていた。


清田と宮城の1on1。

「俺と勝負か!ナメんな!!」

「俺は、牧さんから海南のPGを任された男だぜ!!」

緩急のあるドリブルから、跳躍を生かした大きなステップで、宮城を振り切る。


(やろう!!)


清田は全身をバネのように縮め、大きく跳んだ。


「もらったぁーー!!」


「甘いわーー!!野猿ーー!!」

桜木がすぐさまカバーに跳ぶ。


だが、清田が関係ないと言わんばかりに、リングだけを見つめていた。


「野猿叩きーーー!!!」

桜木が清田のシュートコースを塞ぐ。


「あめーのはそっちだ。」



『スカッ!』



桜木のチェックが空を切る。



『シュパ!』



清田の華麗なるダブルクラッチが決まった。


「しまった!野猿ごときにーー!!」

「赤毛猿!そろそろ、しっかり認めろ!この俺や流川よりも格下であることを!!」

「のっ野猿ごときが!!1本決まっただけで、デカい顔をしおって!」


清田の一撃が、湘北コンビに火をつけるのであった。



海南 69
湘北 68






続く。

#204 【決定力勝負】

2009-10-10 | #09 湘北 県予選編
海南 38
湘北 35




第3Q、湘北ボールから開始される。

柳から宮城へ。

「おっ。」

(ディフェンスを変えてきたか。)

と宮城。


「ぬっ。」

(逃げやがったな・・・。)

と流川。




「ボックスワンや!流川君にボックスワンや!!」

「うるさい!見れば、わかる。」

彦一をたしなめる田岡。


「ジュニアの流川さんをマークか・・・。」

「海斗、頑張れ!」

観客席の空斗と大蔵が旧友の健闘を祈る。




(わざわざ、ボックスワンの流川さんで攻める必要もないでしょう。)

と柳は思ったが、宮城の選択は違った。

(安西先生にいわれた以上、お前が点を獲らなきゃな。湘北のエースとして。)にや。


『バシ!』


高い位置から、流川にボールが渡る。




「おぉぉーーー!!」

「敢えて流川だーー!!」

「流川で攻めるぞーーー!!」



「ふーー。」

流川の深呼吸。

海斗に睨みをきかす。


『ゾクッ。』


海斗は背中に寒気を感じた。



そして。


(速い!)


一瞬で置き去りにされる。

流川はボックスの真ん中めがけて、突っ込んだ。



「流川ーー!!勝負だーー!!」

前線の清田と神が囲みにかかる。



『キュ!』


2人の手前で、急ストップ。



『シュ!』


打点の高いジャンプシュートを放った。




「おっ。」

(また一つレベルを上げたな。)

と仙道。

「なんちゅう高さや!あれは、沢北さんと変わらんジャンプシュートやで!!」

(さわきた??)

仙道は未だ沢北を思い出せずにいる。




『シュパ!』




「きたーーー!!流川のジャンプシュート!!」

「湘北のエースがいよいよ始動だーー!!」




「ぬっ。エースは俺だ。」

桜木のイライラが募る。




「流川君・・・。」

晴子の眼がハートになっている。




「さすが、流川君!!」

弥生のテンションもなぜか上がる。




「いいぞ!流川。」

「うす。」



海南 38
湘北 37




「おい!海斗!何、つったてんだ!」

「あっ。すっすいません。」

上杉は、流川に抜かれたまま動けずにいた。


「相手は流川だ。そう簡単に止められるもんじゃねぇ。次、抑えていこうぜ。」

「はい!!」



海斗は笑っていた。

流川と相対したとき、感じた2つの寒気。

1つは、流川の凄さを肌身で感じたため。

もう1つは、流川と勝負できる喜びを感じたためであった。


(やってやりますよ!流川さん!!)




『シュパ!』



『クイクイ。』

ネットを揺らすとともに、神が手首を何度か曲げる。

(いい感じだ。)




「神がやり返したーー!!」

「流川の上から、平然と打った!!」




「どうやら、後半は俺たちの決定力勝負になりそうだね。」

「望むところだ・・・。」



海南 41
湘北 37




『キュッキュキュ!』




「すげーー!!上杉のディフェンスが激しい!!」

「あれでは、流川もボールをもらえない!!」




だが。



『ガシ!』


上杉の進路を大きな壁が遮る。


(白田!!)


『バシ!』


宮城から流川へ。


『キュ!』


流川が上杉を抜き、再びボックスに切れ込む。


「何度も打たせてたまるかよ!!」

清田が素早いカバー。

神が時間差でフォローに回る。



『ダム!』


(!!)


素早いフロントチェンジで清田の重心を崩すと、
清田と神の間のわずかな隙間に力強いバウンドパスを放った。


「てめーにしては、ナイスパスだ!!」

「つべこべ言わずに決めろ!!」


『キュ!』


『バス!!』


ワンステップから、桜木がジャンプシュートを決めた。




「赤頭のジャンパー!!」

「打点がたけーー!!」




「うむ。」

安西が微笑む。


「あのこたちが、仲良くなれば、もう少し湘北も強くなるんだけどね。」

彩子が苦笑い。

「きっと大丈夫ですよ。口では言い争っているけど、お互い認め合っているはずですよ。」

と晴子は言ったが。




「こらぁ、流川!これから、全てこの天才桜木に献上しろ!」

「うるせぇ。今ので終わりだ。どあほう。」


『ガツ!』

『ドカ!』

蹴りあう2人であった。




「やっぱり、思い過ごしかな・・・。」

晴子は苦笑した。



両校、オフェンス重視へと加速していく。



第3Q

海南 41
湘北 39






続く。

#203 【名将と智将】

2009-10-08 | #09 湘北 県予選編
第2Qの終了間際、第1試合を終え、ミーティング、着替えを終えた陵南バスケ部が、観客席に座った。

「なんや!随分とロースコアではないですか!!」

「本当だ!」

彦一に答える山岡。

「どうしたんやろか?」




「神が決めなきゃ勝てないぞーー!!」

「ガンガン打ってけーー!!」




「神の調子がよくないみたいだな。」

と植草。

「ジンジン・・・。」

神を心配そうに見つめる福田。




『バシ!』


神にボールが渡った。



『キュ!』


流川の激しいディフェンス。




「ほーー。海南の点が伸びないのは、流川のディフェンスのせいか。」

と田岡。

「珍しいな。ディフェンスに集中しているとは。」

「オフェンスだけじゃ、No.1にはなれないことを理解したかな。」

仙道が微笑んだ。




(体力的に、そろそろ息が上がってもいいんだけどな。)

と神。


『キュッキュ!』


神が清田にリターン。


(神さんが攻められないなんて、流川のやつ、相当走りこんできたってわけか。)


『パン!』


「やべ!!」


宮城は清田の一瞬の隙を見逃さなかった。


「よそ見している暇はねぇぜ!」


すばやくボールをスティールすると、柳にパス。

湘北の速攻、電光石火の2人が海南ゴールに駆け上がる。

追いかける上杉が柳のレイアップを襲う。




「止めろ!海斗!!」

観客席の上杉空斗が叫ぶ。




柳が大きくステップを踏んだ。


「止める!!」


『シュ!』


「!!」


柳が上杉の腕を交わす。

滞空時間の長い柳のステップは、ゴール下をそのまま通過。

そして、体を半回転させ、ボールを放る。



『シュルルル』



『スト。』



ボールはリングを回転し、吸い込まれるように、ネットを通過した。




「すげーー!!ジャンプ!!」

「あいつ、小さいのにさっきから、巧いんだよな!!」




「巧いな。」

仙道も褒める。

「春風が速攻を落としたところなんて、見たことないからな。海斗が止められないのも仕方ないか・・・。」

「いや、春風のくせを知っているからこそ、海斗は止められるはずなんだ。」

「でも、決められてしまった・・・。」

「春風の得点力には脱帽だぜ。」

陵南バスケ部所属、柳と海斗と同じ中学出身の上杉空斗と黒川大蔵が話をしていた。



ここで、第2Q終了のブザーがなった。



海南 38
湘北 35




田岡は、偵察を指示していた1年生に試合の流れを聞いていた。

「・・・・・・・・・。」

「うむ。そういうことか。」

ロースコアの展開は、両エースがともにディフェンスに集中し、潰しあっていることにあった。

その間、海南は、清田、上杉が得点を重ね、湘北は、桜木、柳がチームを引っ張っていた。


「桜木が、湘北の得点王とはね。湘北も終わりだぜ。」

越野がいう。

「いや、そうでもないんじゃないかな。」

仙道が続ける。

「コートの中で、1番デカいのは桜木、ジャンプ力も桜木に敵うやつはいない。
試合を支配していてもおかしくはない。」

「だが、得点王というのは、おかしいだろ?」

「キャプテン、これを観て下さい。」

偵察をしていた1年が、撮っていたビデオを見せた。

そこには、立て続けに、オフェンスリバウンドをタップシュートで決める桜木の姿が映っていた。


「うめー。」

山岡が声を出す。

「夏に比べ、安定した。」

と福田。

(死に物狂いでやってきたってことか。)にこり。

仙道はビデオを観ながら笑った。




「ハッハッハ!オヤジ!どうだ?反省して、すぐに結果を出すこの天才の活躍は!!」

「ほっほっほ。いいプレーでしたよ。柳君。」

「なっ!俺はどうなんだ!?」

「桜木君は、コートの中で1番大きい。試合を制して当たり前です。」

「くそっ。オヤジめ。指示に従がわなかったこと、根に持ってやがるな!」

「ほっほっほ。」

「桜木君が12点、柳君が9点、流川君が6点、宮城さんと白田君が4点ずつ。バランスよくオフェンスが機能していますね。」

「どうですか?ハルコさん?流川のやつより、点を獲っていますよ!ハッハッハ!」

「でも、流川君は神さんを抑えながらだから、得点以上の動きをしていると思うわ。」

「ハッハルコさんまで・・・。」ぐすん。

「3点ビハインドされていますが、作戦は成功ですね。あとは、流川君がどれだけ頑張れるかにかかっています。」

と安西。

「うす。」

「どっどういうことだ?オヤジ!!」

「神は、入りだすと止まらない。そして、ゾーンの持続率も長い。
つまり、前半から決められると後半も決められ続けるってこと。
だから、ゾーンの幅を抑えるために、前半は神には打たせないようにと、流川に指示したのよ。」

安西の代わりに彩子が答えた。


「流川にばかり、シークレットミッションをさずけおったな!!」

「ほっほっほ。後半からは、流川君にもオフェンスに参加してもらいますが、
どうやら、高頭君も私と同じ考えだったようですね。
後半は、打ち合いになると予想されます。そこで、必要となるのが、」

「リバウンドだろ!!」

「そうです。桜木君のいうとおりです。流川君は、神君をフリーにさえ打たせなければよろしい。
入れられたら、流川君が入れ返してください。」

「うす!」


「桜木君と白田君が全てのリバウンドを獲り、宮城君と柳君が走る。よろしいですね?」

「はい!」

「おう!!」

「簡単だぜ!!」

「よぉし!後半は、点の獲りあいだ!!」



一方、海南ベンチ。

『パタパタパタ・・・。』

「まさか、安西先生と同じ作戦だったとはな。はっはっは。」

高頭が続ける。

「おそらく、後半は流川が、今よりもオフェンスに参加してくるだろう。その分、神へのマークも薄くなる。
つまり、神と流川の決定力勝負になるわけだ!」

「そして、ここでガード陣のミスマッチが堪えてくるってことですね?」

「あぁ。清田のいうとおりだ。湘北は、身長を考えれば、流川がそのまま神をマークするしかないだろう。
流川は体力的に問題のあるプレイヤーだ。神を抑えながら、得点を奪うことは、そんなに簡単なことじゃない。
だが、うちは、流川に上杉をあたらせる。
これにより、流川の得点力と体力を奪いながら、神が得点を奪い逃げ切れる!」

「神さんのシュートにかかっているってことっすね?」

「いや、海斗が流川をどれくらい抑えられるかにかかっている。やれるよな?」

「もちろんです。あの流川さんと対戦できると思うと、嬉しくてたまりません。」

「うん。任せたよ。」

「はい!!」



後半、怒涛の展開を迎える。



海南 38
湘北 35







続く。

#202 【老いても名将】

2009-10-06 | #09 湘北 県予選編
海南 15
湘北 8




安西は、タイムアウトを取った。


「オヤジ、まだ早いんじゃねぇか?」

「ベストタイミングだ。」

と宮城。


安西がゆっくりと口を開く。

「7点差がつきましたね。このままだともっと点差がつきそうです。桜木君、誰の責任だと思いますか?」


(えっ!?普段、責任なんて問わない先生が・・・。)

少し驚く彩子。


「流川がひょろ男にやられたからだろう。」

と答える桜木。

(てめーのせいだ。どあほう・・・。)


「違いますね。ベンチにいた人はわかると思いますが、答えられる人いますか?」

桜木のせいだとはわかっていても、なかなか口に出せない選手たち。


「桜木が油断していたからです。」

「!!」

声を発するほうに、目を向ける選手たち。


「なぬ!!」

安田をにらみつける桜木。


「桜木が、自分より小さい相手に油断していたために、そこから攻め込まれていました。」

「こらぁー!ヤス、もういっぺんいってみろ!!」

「桜木君!!」

「ハッハルコさん!!」

「安田さんのいっていることは、正しいと思うよ。」

「そんなことは・・・。」

「その通りだ。花道が油断してたかは、俺たちにはわからねぇが、
花道のところから、攻め込まれていたのは確かだ。」


「桜木君。少しばかり、侮っていませんでしたか?」


『ギクッ!』


思い当たる節がたくさんある桜木は、安西の言葉に返す言葉が見つからなかった。


「やはり、ありましたね。試合前に、私が油断しないようにといっておいたにも関わらず。」

「ぬっ。」


(・・・。安西先生は、あえて桜木花道に責任追及することで、
ゴールを守る最後の関門としての自覚をさせようとしているのかも・・・。)


「桜木君!!」

晴子が声をかける。

「ハルコさん・・・。」

謝罪の言葉をいえずもがく桜木。



そのとき。



「悪いのは、花道だけじゃありません。
俺も少なからず油断をしていた部分もありましたし、キャプテンとして、花道に注意できなかった、俺の責任でもあります。
先生、みんな、申し訳なかった。」

宮城が頭を下げた。


「リョーちん!!」

驚く桜木。


「リョータ!!」

「キャプテン!!」

選手たちも同様に驚いた。


「そうですね。宮城君にも責任はあるかもしれません。桜木君、どう思いますか?」

「・・・。リョーちんは悪くねぇ。おっおっ俺が全て悪い。みんな、すまぬ。」

桜木は、赤い頭を深々と下げた。


「!!!」

更に驚く選手たち。


彩子と晴子はにこやかになっていた。


「ほっほっほ。では、これからやるべきことがわかりますね。宮城君、桜木君?」

「はい!試合だけじゃなく、選手一人ひとりの状況を把握する。」

「おっおうよ!!ゴール下は、俺が全力で守る!」

「よろしい。角田君、桜木君と代わってください。ここからが、本当の勝負です。」

「はい!!」


(リョータ。随分、大人になったわね。)

彩子は嬉しそうに笑った。

(桜木君。これでまたひとつ、大人になったかな。)

晴子も同様に笑った。


「いくぞ!!リョーちん!!湘北最強コンビの力をみせてやろうぜ!!」

「おう!!このQで逆転するぞ!!」

「足引っ張るなよ・・・。」

「てめーこそ、ひょろ男にやられるなよ。」


「ほっほっほ。」

(結果的に、桜木花道だけじゃなく、リョータにもキャプテンとしての自覚を再確認させた・・・。
先生は、計算済みだったのかしら・・・。)

彩子は、チラッと安西を見た。


「彩子君。彼らはもう大丈夫です。」

「はい。」


(愚問だったわね。)




「赤頭が出てきた!!」

「今度はしっかりディフェンスしろよーー!!」




『クルッ!』

突然、観客席に体を向けた桜木が叫んだ。



「ゴール下は、この桜木が全力で守る!!!!」




「おぉぉーー!!桜木君が叫んだ!!」

「どうやら、安西監督が桜木君の精神をコントロールしたようね。」




「なっ!?」

海南ベンチで驚く清田。

「ふっ。桜木らしいや。」

神は苦笑う。

「老いても名将は名将か。さすが、安西先生、このタイムアウトで桜木を支配したようですな。」

「単純だから、復活も早いってか。」

と清田。


『パタパタパタ・・・。』


「神、作戦変更だ。外から抜くぞ。」

「わかりました。」




その後、桜木は、声を出し、体を張り、懸命にゴール下を守った。

だが、海南はインサイドからアウトサイド主体にオフェンスを切り替え、
清田を中心に、ミドルシュートを確実に決めると点差は一向に縮まることはなかった。



第1Q終了。



「流川のやつ、大人しすぎるぜ。」

と清田。

「どうやら、ディフェンスに専念していたようだな。」

(お互い様だけどね。)にこり。



流川 4得点

神 3得点



両エースの刃は、いまだ鞘に入れられたままであった。



海南 23
湘北 18







続く。

#201 【落雷】

2009-10-05 | #09 湘北 県予選編
海南 9
湘北 8



大泉は、ボーナスローを手堅く沈めていた。




「先生・・・。」

「高頭君は、桜木君のファウルアウトを狙っているようですね。さすが海南、ウィークポイントをついてきます。
こちらも早く手を打たねばなりません。角田君、準備はいいですか?
白田君とともに、インサイドの守りをお願いします。」

「はい。」




負の連鎖が始まる。



『ガコン!』

焦りを感じた桜木がジャンプシュートを外す。


『ガシ!』

大泉の体を張ったスクリーンアウト。


普段なら入るシュート、普段なら交わせるスクリーンアウトも、
冷静さを欠いた桜木には難しいプレーとなっていた。

(おのれ!チビ丸君め!チョロチョロと。)



執拗なインサイド重視の海南のオフェンス。

ファウルを恐れる桜木は、試合開始直後に見せた勢いのあるプレーは見せることができない。

桜木の性格を冷静に分析し、試合開始わずか4分で桜木を封じた高頭の知略。

それに応えた海南選手。

チーム一丸となり、湘北の勢いを断つ。




「なにやってんだーー!!赤頭!!」

「しっかりデイフェンスしろ!!」




大泉が桜木を抜きにかかる。


(なにやってやがる!)


流川が咄嗟にカバー。

だが、読んでいた大泉は、冷静に神へパスアウト。


「ナイスパス。」

(やべっ。)

流川は懸命に戻るが、神の指先から放たれたボールは、寸分の狂いもなく、リングに吸い込まれた。



『パサ。』




「待ってました!!」

「神さーん!!」

「ナイッシュ!神!神!」




海南応援席が一気に盛り上がる。



海南 12
湘北 8




「しっかり守りやがれ。」

「なにっ!流川ーー!!」


(ダメだ。花道のやつ、試合に集中できてねぇ。)



『ビィーー!!』

「メンバーチェンジ 白!」


「桜木、交代だ!」

「なぬっ。ヤダ!!」

「花道!!頭を冷やして来い!!」


「桜木君、交代しよ。」

「ハッハルコさん・・・。ハルコさんがいうなら、仕方ない・・・。
カク、チビ丸に負けたら、ただじゃおかねぇからな!!」

「うっうん。」

(いや、俺よりデカいけど・・・。)



-----------------------------------------------

 C…#10 桜木 花道 195cm/2年

PF…#8 角田 悟 185cm/3年

-----------------------------------------------



「白田はセンターをやってくれ。花道が抜けて、点差が開いたら、何いわれるかわからねぇぞ。」

「はい!」




湘北のオフェンス。

(メンバーチェンジの後のこの1本は、是が非でも決めたいところだな。)

ちらっと流川を見る宮城。

(やられっ放しってわけにはいかねぇよな。)


(パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!)

(おいおい。そんな眼をしていたら、バレバレじゃねぇか。)にや。



『キュ!』



Vカットから、パスを受け取る流川。

神を抜きにかかる瞬間。



『バチン!』



審判の死角。

神がボールをはたいた。



(!!)


(にこり。)


(にゃろう。手・・・叩きやがったな。)


(流川相手じゃ、少しはズルしないとね。)




「神のスティール!!」

「流川がとめられた!!!」




「いいぞ!!ひょろ男!!」

湘北ベンチから桜木が神を応援する。



『バチン!』

彩子のハリセンを食らったのはいうまでもない。




「海南だって、速攻は得意なんだよ!!」

清田が一気にボールを運ぶ。


「まちやがれーー!!」

宮城、柳が清田を猛追。


「打たせるか!!」

宮城が追いつき、レイアップ体勢の清田のボールを叩こうと跳ぶ。


『クイ。』


清田は腕を回転させ、宮城に自分の腕を叩かせた。



『バチィン!!!』


「っつう!」

「やろー!わざと!」



「こっちは、牧さん直伝だね。」にこり。

笑う神。


「おりゃぁーー!!」

体を強引にリングにむけ、右手1本でシュートを放つ。



『ザシュ!』


激しくネットを揺らす。

バンクシュートが決まった。



「よっしゃーー!!」

清田が吼える。


「俺としたことが、花道と同じこと・・・。」

悶える宮城がベンチを見ると、桜木が笑っていた。


「リョーちんも人のこと言えないぞ!!ハッハッハ!!」

明るい表情の傍らで、安西は危機感を募らせていた。


(海南ペース。)


「やっぱり、桜木の悪い影響が、リョータにも・・・。」

「なぬ!ヤス!!」

「わぁ!!」




問題なく清田は、ボーナススローを沈めた。




弥生が気付く。

「ねぇ。海南の得点って全て3点じゃないかしら?」

「えーと、大泉君のバスカン2本、清田君、神君の3P、清田君のバスカン・・・。あっ、ホントだ・・・。」

「何この展開、ありえへん・・・。」





海南 15
湘北 8






続く。

#200 【暗雲】

2009-10-02 | #09 湘北 県予選編
海南 3
湘北 2




湘北の速攻、大泉のバスカンプレーで始まった海南×湘北の準決勝。

早くも湘北に暗雲が立ち込め始めていたのだが、気付いているものは少ない。




『パタパタパタ・・・。』


「計算どおりなら・・・。桜木は、このQでコートを去るはずだ。」




『シュパ!』


「お面返上!!」

「バカ!汚名返上だ!!」

「ぬっ。野猿!!」

桜木が1on1から、大泉を抜き去り、ゴール下を決めた。




「桜木君、本当に成長したわね。センターの動きになっているもの。」

「国体を沸かした3大センターの一人ですからね。」

「森重君、河田君と並ぶ3大センター・・・。はたして・・・、そうかしらね・・・。」

「えっ!?」




海南のオフェンス。

再び、広く外に開き、中の大泉にボールを入れる。


「君の仕事もこれで終わりだ!!ハッハッハ!!」

「バカ!花道!!」

「ぬっ!!」

大泉が桜木を抜き、ゴール下のシュートを放つ。


「終わりだっていっただろ!!」


『バシ!!』


後ろから、桜木のブロックが炸裂。


「天才!!!」




「うぉぉぉーー!!」

「すげーーブロック!!」




「ハッハッハ!!!!」



「ドンマイ。気にするな。」

「おう。」

「ガンガン、攻めろよ。」

清田が大泉を鼓舞する。




「角田君、アップをお願いします。」

「えっ!もうですか?」

「はい。」

安西が角田のアップを指示した。




「おっ!安西先生も気付きましたか?さすがですね。しかし、もう遅い!!
気に入らんが、桜木は天才モードに入っている。」

と海南ベンチの高頭。

数々の選手の技術、精神面を見てきたからこそ、判断できる高頭の眼力であった。



桜木の天才モードとは、自画自賛、自分が一番、有頂天、つまり天上天下唯我独尊の状態。



(この天才が、自分よりチビに負けるわけがない!!ハッハッハ!!)




「桜木君。油断してますね。」

と安西。

「あのこ、完全に自分に酔いしれている・・・。いつも以上に・・・。」

「国体で神奈川代表Cを務めたという自負が、他のCには負けないという油断と驕りを生んでいる。」

と安田。

「桜木君・・・。」

晴子は心配そうに見ている。


格下と決め付けている相手、準決勝という程よい緊張感が桜木の精神をあらぬほうに向かわせていた。




海南のスローイン。

再び、大泉へ。

「何度やっても同じだ!!」


『バチン!!』

大泉のシュートが外れ、桜木がリバウンドをむしり取る。


「天才リバウンドからリョーちんへ!!」


『シュパ!』


宮城、柳、流川の3線があっという間に、得点を奪う。



「ちっ。さっきよりも速ぇな。」

「えぇ。」

「桜木のパスアウトが速くなっているために、速攻の出も速い。
信長、海斗、速めのセーフティーを頼むよ。」

「OKです。」



「ナイスリバウンドだ!花道!!」

「任せておけ!!リョーちん!!」



海南 3
湘北 6




海南のオフェンス。

またもや、大泉と桜木の1on1。

「しつこいぞ!!チビ丸君!!」


詰め寄る桜木を抜く大泉。

「しまった!天才としたことが!」



『キュ!』


白田がカバーに入る。




「いいぞ!白田!!」

「ナイスカバーだ!!」




だが、



『シュ!』


ボールは横に流れる。

そこには清田。

宮城の上から、3Pを放つ。



『スポッ!』



3Pラインより50cm遠いところから、リングを射抜く。




「あっさり同点!!」

「清田も巧いが、大泉のパスも巧い!!」




「リョーちん!ドンマイ!!」

「油断しちまったぜ。清田にも3Pがあったんだよな。だが、次はねぇ。花道も大泉をしっかり抑えろよ。」

「ふん!この天才の相手ではない!!ハッハッハ!」


(バカ笑いも今のうちだ!赤毛猿!!)




「リョータも油断したわね・・・。あれほど、先生が油断するなっていっておいたのに・・・。」

「桜木の悪い波長が、リョータにも影響しているのかな。」

と宮城を心配する安田。



海南 6
湘北 6




『シュパ!』


桜木と白田のスクリーンプレー、白田のフックが決まる。


「いいぞ!ハクタス!!」

「桜木先輩、ナイススクリーン!」

「天才だからな!!」




夏よりも秋よりも、技術的な進歩がうかがえる桜木が、湘北のオフェンスを引っ張る。

すでに桜木の気分は、最高潮に達していた。


ディフェンスポジションにつく湘北。

「来い!!海南!!!」

大声で叫ぶ桜木。




「おぉぉーー、また赤頭が叫んだ!!!」

「凄い気合だーー!!」




だが。



清田から大泉へボールが入った。

大泉の巧みなステップからのゴール下のシュート。



『ピィーーー!』

審判の笛が響き渡った。


「へっ。」

清田が笑う。


「#10!ハッキング!!バスケットカウントーー!!」



油断という精神的な成長が見られない桜木は、第1Q序盤で、2つめのファウルをコールされた。


「天才としたことが!!!ぬぉぉぉーー!!!」


「おいおい、2つめのファウルとは、退場する気か!!」

「すまぬ、リョーちん。」

「・・・どあほう。」



湘北に立ち込めた暗雲が、落雷を呼び起こす。



海南 8
湘北 8







続く。