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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#219 【陵南5】

2009-11-04 | #09 湘北 県予選編
「17点差ですか・・・。」

「陵南は翔陽に25点差、海南は17点差、一概に計算できるものじゃないけど、
海南に2点差で勝った湘北と陵南を比較すると、数字の上では陵南のほうが上ね。」



第3位決定戦

翔陽 76
海南 93




2年前までは、神奈川県の2強と呼ばれ、優勝を争うこのカードも、
今年は第3位を争うカードとなっていた。

翔陽は、県内最高身長のC宮田を中心にインサイドで攻めるも、
海南C大泉も踏ん張りもあり、思うように得点をあげることは出来なかった。

対する海南は、神のシュートが面白いように決まり、3P8本を含む38得点を記録し、福田を抜き、
得点ランキング1位に躍り出た。



自身キャリア最高得点をあげた神は、この日を持って、高校バスケ界から引退。



牧のいる白金学院大学への進学も決まっており、名実ともに高校生最強シューターは、
来年4月から新しい門出を迎える。



「神。3年間お疲れ様。」

「壮太もな。」


神とともに1年間海南をまとめてきた真田は、プレーヤーから引退し、
スポーツトレーナーを目指して、進学する。



これからの海南をまとめることとなるPG清田も、この日、14アシストとパスワークが抜群に冴え、
宮城を抜いて、仙道に次ぐ、アシストランキング2位となった。

また、今大会、3Pも安定し、得点、アシストのダブルダブルを記録するパフォーマンスも見せた。

この部門のダブルダブルは、清田のほか、仙道しかいない。



「神さん。真田さん。3年間お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。」

ベンチでは、3年生らに清田が深々と頭を下げていた。


「あの横断幕のように頑張れよ。」

と真田。


そこには、『常勝』ではなく『挑戦』と書かれた横断幕があった。


「キャプテンとして、プレーだけじゃなく、精神的にも、強くならなくちゃな。」

笑う神。


「はい。」

いつまでも顔を上げない清田の足元は、涙で濡れていた。


(神さん・・・。真田さん・・・。ありがとうございました・・・。)




「清田のやつ、だいぶ成長したな。」

その光景を嬉しそうに眺める三井。

「あいつも知り合いか?」

「神奈川のやつらは、みんな知り合いみたいなもんだ。」

「いい仲間たちだな。」

やがて、清田は、導かれるように三井のいる横浜学芸大学に進学するのだが、それはまた別の話。




陵南と湘北の選手がコートに現れた。




「この好カードが、予選で見られるとは!!」

「なんとももったいない!!」

「どっちも全国に行ってほしい!!!」




一昨年まで、陵南と湘北で優勝を争うなど、予想をしたものがいたであろうか。

会場内に詰め掛けている大勢の観客の中に、予測できたものは数少ない。




「陵南!!冬も全国制覇だーーー!!」

「リョ!リョ!リョーナン!!リョ!リョ!リョーナン!!」




IHを制し、夏・冬完全制覇を目指す、陵南。

キャプテン越野に続き、夏の王者たちが、姿を現す。

その堂々とした振る舞いは、強さの表れでもあった。

最後尾に仙道。

会場のボルテージが一気に沸く。


『パシャ!』

記者席では、レンズ越しに、仙道の表情を奪う。




「仙道ーー!!この試合も任せたぞーー!!」

「高校生No.1プレーヤーの力を見せてやれ!!」




「さすが、仙道君ですね。流川君や桜木君を抑えての1番人気です。」

「いまや、沢北君以上といわれているし、パスして良し、点を獲って良しと、
スーパーオールラウンダーとして、東西20の大学から推薦の話が来ているという噂よ。」

「20の大学??凄すぎますね・・・。」

「まぁ、本人はあまり関心がないみたいだけどね。」

記者席の弥生は苦笑いをした。




(なぜ、仙道ばかり・・・。)

少し仙道に嫉妬している福田。

それに気付く仙道。

「うちの点取り屋は、お前だ。今日も頼むよ。」にこり。

「おう。」


(さすが、先輩たちや。この、全国の決勝並みに盛り上がった会場でも、
誰一人、緊張している方は、おらへん。)




そして、反対コートには、嫉妬するもう一人の男。


「センドーめ!偉そうに!!
VIPだが、MNPだが、なんだか知らねぇが、俺はリバウンド王とタップ王の2冠だぜ!!」

大腕を振って歩く桜木。


(MVPだ、どあほう・・・。)


(なんだよ、2冠って・・・。)

柳も呆れている。




「湘北だーー!!」

「負けるな!!湘北が全国だーー!!!」

「いけーーー!!今日も派手なの見せてくれーー!!」




IH第4位の実績を引っさげて、予選で全国覇者を相手にすることになった湘北。

県予選決勝で対戦するには、豪華すぎる組み合わせであったが、全国への切符は、1枚。

勝者と敗者しか存在しない。



(センドー、ぜってー倒す!)

流川の闘志は、すでに最高潮であった。



「陵南戦は、あくまでも通過点!!うちが勝って、全国制覇だ!!」

「おう!!!!」

「おうよ!!!」

湘北ベンチ前では、宮城が気合を入れる。




「勝つのはうちだ!!湘北に勝って、そのまま突き進むぞ!!」

「おう!!!」

陵南は、円を作り、越野が檄を飛ばした。




「心臓が止まりそうですね!!どっちが勝つんでしょう!!」

試合前から、興奮状態になっている中村。

「難しいわね。でも、勝ったほうが、全国大会の優勝候補になることは、確実よ。」

ペンを握る弥生の手には、じわーと汗が滲み出ていた。




「三井は、どっちを応援するんだ?やはり、母校の湘北か?大学入学の恩師がいる陵南か?」

「俺が応援するのは、ただ一人さ。」

笑う三井。

「ただ一人?桜木?宮城?流川?」

「いいや。あの人だけだよ・・・。」


(俺はぜってー諦めない。必ず、学生チャンピオンになります!だから、あいつらを全国制覇させてやってください。
・・・・・・安西先生。)




『ピィーーー!!』




ブザーとともに、両校のスターティングファイブが、アナウンスされる。


「青!陵南高校、スターティングファイブを紹介します!!」




「リョ!リョ!リョーナン!!リョ!リョ!リョーナン!!」

「リョ!リョ!リョーナン!!リョ!リョ!リョーナン!!」




「#4!越野宏明!」

「いけ!越野!湘北の勢いを止めるのは、お前だ。」

「はい!!」

とベンチの田岡が越野を送り出す。

(俺は俺の仕事をするまでだ!!)



「#6!福田吉兆!」

「福田ーー!!今日も粘り強いオフェンスを見せてくれーー!!」

「陵南の勝利はお前にかかっているぞーー!!」

自分を応援する声に、福田は震えていた。

(もっと褒めてくれ・・・。)ぷるぷるぷる。



「#7!」

会場が唸りをあげる。

「わぁぁぁぁーーーー!!!」

「せんどーーーー!!!!」

「仙道彰!」

アナウンスの声は、声援でかき消されていた。



(センドー・・・。)

「センドーめ。人気先行型のくせに!!」

睨みをきかす湘北2年生コンビに気付く仙道。



仙道は挑発するように、微笑む。

(2人まとめて相手しやるよ。)にこり。



「ジョートー!!」

桜木と流川の声が揃う。

顔を見合わせる2人。

『プイ!』

視線をそらした。



「#9!山岡拓真!」

「上杉ちゃんの分まで、頑張るよ。」

「春風のスピードは尋常じゃありません。気付いたら、前を走っています。
決して、見失わないように。」

「おっけ~。」

(ホントにわかっているのかな?この人は・・・。)



「#12!黒川大蔵!」

「白田。花道には、福田を当たらせる。あのセンターは、お前に任せたぞ。」

「はい!!」




続いて、湘北のスターティングファイブが紹介された。








続く。

#218 【宮城の進路】

2009-11-02 | #09 湘北 県予選編
壮絶な準決勝を繰り広げた翌日。

再び、あの男たちが体育館に集結していた。



選抜県予選 決勝会場

3位決定戦 翔陽 × 海南

決勝戦 陵南 × 湘北


会場にある大きな縦看板が、本日の試合の重要性を物語る。




「海南で決まりだな。」

と観客席で足を組む宮城。

「ひょろ男を止められるやつがいない。」

と腕を組む桜木。

湘北の選手らが、観客席で、第3位決定戦の翔陽対海南戦を観戦していた。



第1Q終了

翔陽 20
海南 27




「さぁ、そろそろ、俺たちも試合の準備をするか?」

そういいながら、宮城が席を立つと、観客席の上のほうから、聞き慣れた声が聞こえた。


「宮城!」


「あっ!」

「ん!?」

湘北の選手らが、声の方向へ眼をやる。



「ミッチー!」


桜木が最初に声をあげる。


「よ!桜木!特訓の成果は出ているか?」

「あたぼーよ!!この桜木の活躍により、余裕で決勝進出だ!ハッハッハ!!」

「花道の活躍だけじゃないけどな。へへっ、お久しぶりっす。三井サン。」

と笑う宮城。


(三井さん?)

『ドキドキ。』

「やっやっぱり、みっ三井さんだ・・・。写真よりも怖い感じだけど・・・。」

武石中の先輩である憧れの三井を前に、白田は興奮を抑えきれない。


(おっ先輩・・・。)

流川もチラっと三井に眼をやる。


「安田さん。三井さんって人も湘北カラー丸出しっすね?」

「少し、ぐれてたからな。あはっ。」

と柳の問いかけに、安田が笑って答えた。



「体育館でグラサンはやめましょうよ。
で、今日は何用?まさか、俺たちの応援にでも来てくれたんすか?」

「そうだ。そのまさかだ。大学のリーグ戦も一段落ついたんでな。
それと、お前に紹介しておきたいやつを連れて来たんだ。」


「紹介したい人?」

三井の後ろには、2m近い大きな男が立っていた。


「こっちは、神奈川体育大学1年の新庄だ。」

三井は、博多商大附属高校出身新庄雄銀を紹介した。


「よろしくな。」

と手を出す新庄。

「で、こっちのが俺の後輩であり、4月からお前とチームメイトになるPGの宮城リョータだ。」

「宮城リョータです。こちらこそ、宜しくお願いします。」


『ガシ。』

新庄と宮城は、軽く握手をした。



「えっ!!」

「なっ!!」

「どういうこと!?」

「リョータ??」

湘北の選手は、不思議がっていた。



「なんだ、宮城。言ってねぇのか?」

「この大会が終わってからと思っていたんで・・・。」

「そっか。悪いことしちまったかな?」

「いやっ。別にいいっすよ。」


「なにっ!リョーちんも大学に進学するのか?」

「まぁな。推薦がもらえたからな。」



「それが、神体大・・・。」

「宮城キャプテンは、神体大から推薦が来ていたのか!?」

「キャプテン、すげー・・・。」

ざわつく、湘北メンバー。



「三井さんは、新庄さんと仲いいんすね?」

「まーな。戦友とでもいっておこうか。」にや。


「同じ神奈川の大学ということで、交流戦も結構あってな。
こいつが、うちのSGのところに、よく遊びに来るんで、いつのまにかに。」

「ふーん。それで、ミッチーは、リョーちんのために、新庄君を連れてきてあげたのか?
元は、喧嘩相手だったのに、今は仲がいいんだな。ハッハッハ!」


「うるせーー!!!」

三井と宮城の声が揃った。



「なんだ、喧嘩相手って?」

「本当は仲が悪いのか?」

「喧嘩ってやっぱり、そういう人なのか?」

と湘北の1年生。



「説明すると長いから。」

と苦笑いしながら角田がいった。



「ジョウ!ミッチーとリョーちんを宜しく頼むぜ!!」

「ジョウ!?俺か?ははっ。あぁ、わかった。」


「お前がいうな!!!」

再び、三井と宮城の声が揃った。


「桜木花道か。噂以上の大物だな!これは!」

新庄は大きな声で笑った。



「先輩・・・。」

これまで、平然としていた流川が三井に声をかける。

「ん、なんだ?流川。また、1on1の勝負でもしたくなったか?」

「おめでとうっす。」

「んっ!?あぁー、ありがとうな。」

照れ笑いをする三井。

(なんで、流川が知ってんだ・・・。一番鈍くさそうなのに。)




横浜学芸大学

先週行われたリーグ戦入替戦において、見事勝利し、3部から2部へと昇格が決定した。

SG三井は、勝負どころのシックスマンとして、2部昇格への原動力となっていた。




「じゃ、三井サン。俺たちはアップがあるんで。失礼します。」

「おう。頑張れよ。」


「ミッチー、しっかり応援しろよ!」

「けっ、ちゃんと特訓の成果を見せろよ!」


「みっ三井さん。俺、武石中の白田です。三井さんに会えて、光栄です!!」

「おう。そうか。いい体だな。しっかり頑張れよ。」

「はい!!」

この試合、その白田の体に、不幸が起ころうとしていることは、まだ誰も知らない。



湘北の選手らが、観客席を離れると、再び三井が新庄に声をかけた。

「ほんと騒がしいやつらだぜ。」

「類は友を呼ぶからな。」

「なんだと!?」

笑いながら、三井は続ける。


『ピク。』

三井は、前方に眼をやると、思い出したかのように話し始めた。


「あっ!そうだ!!あいつだ。」

そういうと、三井は、反対の観客席に座っている一人の男を指差した。

「あそこに座っているやつは、うちにくるやつだ。
なんで、うちにくるのか全く検討がつかないが、あいつは、ホントにすげーぜ。」



そこには。



陵南の選手たちが座っていた。








続く。

#217 【記念日】

2009-10-31 | #09 湘北 県予選編
海南 84
湘北 86




桜木から柳へのスーパーパスにより、ブザービーターが決まった。

一瞬の出来事に、会場は水を打ったように静まり返っていた。




第一声は、観客席から。

「アンビリーバブルやーーーー!!!」




第二声は、記者席から。

「センセーーーーーーション!!!」




第三声は、コート上から。

「まさに、天才!!!ハッハッハ!!」




そして、体育館全体が燃え上がる。




「うぉぉぉーーー!!!」

「すげーーー!!」

「湘北の大逆転だーーーー!!!」

「ブザーーービーターーー!!!」

「わぁぁーーーー!!!」

「ありえねぇーーーー!!!」




「よっしゃーーー!!!」

「決勝進出だーーー!!!!」

「勝ったぞーーー!!」




「桜木先輩!!」

「おうよ!!」

桜木と白田は、ハイタッチを交わした。


「柳。ナイスラン!ナイッシュ!」

「美味しいところをいただきました。」にこり。




「やったーー!!」

「決勝進出だーーー!!」

観客席の湘北1年生も歓喜に沸く。




「桜木君!ナイスアシスト!」


『ピクッ!』

耳が巨大化する桜木。


『ダッダッダ・・・。』


『ガシ!』


桜木はすぐさま晴子の下に駆け寄り、手を繋ぎ、晴子を振り回した。


「さっ桜木君!!目が回っちゃうよ!!」

「ハッハッハッハ!!!」



「ふーーー。」

(コートにいるより、疲れたぜ・・・。)


「流川君。ベンチで試合を観るのも、相当の体力を消費します。
でも、同じ体力を消費するなら、コートのほうがいいですよね?決勝戦は期待していますよ。」

「うす。」




「桜木は、更にハチャメチャな動きになったな。あはっ。」

と仙道。

「宮城と柳のスピードに対応し、桜木と白田の高さに対応しなければならぬな。」

田岡が腕組みをする。

「流川は?」

「仙道がいる。問題はない。」

越野に答える田岡。

「まいったなー。」

(だが、夏からどのくらい成長しているのか、楽しみだな。)




「海南大附属高校82対湘北高校84!白!湘北!!」

「あーーしたーー!!!」



ベンチに戻る10名の選手。



センターライン上では、安西と高頭が固い握手をしていた。

「安西先生。勝負どころで、エースの流川を交代させ、勝ってしまうとは・・・。うちは完敗でした。」

「湘北には、流川君と同等の選手がもう一人いますから。」

「・・・。」

(安西先生は、桜木に絶対の自信を寄せている・・・。
それほどまでの選手か・・・、いや、今はまだ潜在能力に賭けている感じか。)




清田はいつもどおり大きな涙をこぼしていた。

「よくやった。」

神は牧がしていたように、清田の頭を掴んだ。

「俺たちの代では、全国に出場することができなかったけど、お前たちなら、いける。信じているよ。」

「ぶぁばい。」

清田は言葉が出ない。


「すいませんでした。」

上杉が大きく頭を下げた。

床には、涙が滴っていた。


「海斗も気にしなくていいよ。勝負には勝っていた。
ただ、少しだけ、運が足りなかっただけさ。」


(そうですよね、牧さん。)


神は、牧がよく口にしていた言葉を思い出した。


(「勝負には、少なからず運も必要なんだ・・・。」)




神が湘北ベンチに足を運ぶ。


「流川。」

「んっ。」

「沢北と対戦できたらいいな。」

「一番になるだけだ。」

「頑張れよ。」


「宮城。いい後輩たちを持ったな。」

「あぁ。お互いな。」にやっ。

「そうだな。俺たちは、結局、全国にも出場も出来ず、全国制覇も叶わなかった。
夢は湘北に託すよ。そして、俺は大学で全国制覇を目指す。」

「牧のいる白金だったな。こりゃまた、お前らを倒すのに、骨が折れるぜ。ははっ。」

「宮城も推薦もらってるんだろ?」

「あぁ。県内の大学にいく予定だ。」


桜木が割り込んできた。


「リョーちん!!」

「なっ!なんだよ、花道!!」

「何、ひょろ男とこそこそしてんだよ!!」

「真面目な話だ!バカやろー!!」


「桜木は相変わらずだな。」

「ぬっ。何がだ。」

「ふっ。何でもないよ。流川とお前に、マークされて、ホントに楽しかった。ありがとうな。」

「天才にマークされて、光栄に思え!ハッハッハ!」

「偉そうに!!」

「桜木。頑張れよ!」

「おうよ!」

「ひょろ男君もな。」

3人は固い握手をした。




高校生No.1シューターの呼び声高い海南のキャプテン神宗一郎は、県予選準決勝で敗退した。

翌年、牧のいる白金学院大学に入学し、海南コンビが復活。

牧、土屋らとともに一大旋風を巻き起こすのであるが、それはまた別の話。



安西先生をそっと見つめる宮城。

(流川が交代したとき、正直、ひやっとしたけど・・・・・・。
負けるとは思わなかった・・・。
不思議だぜ・・・。
先生の驚くような言葉や選択にも、絶対の信頼を寄せている俺がいる・・・。
先生・・・。
全国制覇まで、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。)

宮城は、安西に頭を深く下げ、更なる信頼をよせるのであった。




「さっ桜・・・。」

ロッカールームに向かう桜木に声をかけようとする晴子。


「晴子ちゃん。」

「んっ??」


スコアーシートを手に持っている晴子を、彩子が止めた。


「晴子ちゃん、内緒にしておきましょう。」

「えっ?」

「桜木君が、また有頂天になったら、困りますからね。ほっほっほ。」



安西、彩子、湘北の選手たち、そこにいた全ての人が知っていた。



知らないのは、桜木のみ。



この日、桜木は、初めて、流川よりも得点を奪っていた。



(今日は、記念日だね。桜木君!)にこ。



晴子は、その言葉を大切に心にしまうのであった。




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選抜優勝大会 県予選 準決勝 

海南大附属×湘北


海南 82
湘北 84


【海南】青 82

#4 神 25P(3P 4本)
#5 真田 2P
#6 小菅 8P
#8 大泉 14P 8R
#10 清田 17P 7A(3P 2本)
#11 上杉 16P


【湘北】白 84

#4 宮城 10P 12A
#6 潮崎 2P
#7 流川 14P
#8 角田 0P
#9 柳 18P
#10 桜木 24P 13R
#14 白田 16P 9R

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続く。

#216 【思い返す言葉】

2009-10-30 | #09 湘北 県予選編
海南 84
湘北 84




試合残り時間21秒。

海南ボールから始まる。


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PF…#6 小菅 直人 188cm/3年

SG…#11 上杉 海斗 185cm/1年

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「小菅に変えて、上杉を投入だ!!」

「外角の強化か!!」




高頭は、神の進言により、上杉を投入させた。


(ここで、海斗を入れてきたということは、外からか?)

と柳。


「今頃、海猿か・・・。何かあるな・・・。」

(天才の勘。)

と桜木。

「桜木さん。ちょっと・・・。」

「ん!?なんだ?」

柳が桜木に耳打ちをした。



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<<回想>>

タイムアウト中。

海南ベンチ。


「監督。海斗を入れてもらえませんか?」

(珍しいな。神がメンバー変更を希望してくるとは・・・。)

「よかろう。小菅、代わってくれ。」


「残り21秒。ボールを持っていないものは、スクリーンを掛け合おう。
パスを回して、フリーになったら、シュートを打つ。1本決めれば、俺たちの勝利。」

神が指示を伝える。

「はい!」


「信長!海斗!臆してはいけない。迷わず打つんだ!!」

「はい!!」

「試合は俺と神が作る。あとは、任せたよ。清田、海斗。」

「真田さん・・・。」


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上杉から清田にボールが渡る。


『ピィ!』


電光掲示板のタイマーが静かに動き始める。


湘北は、激しいディフェンスで、海南にプレッシャーを与えている。



だが。



『ガシ!』


『ドン!』


「桜木先輩!スクリーン!!」

「白田!そっちケア!」

「スイッチ!!」

「ぬっ!!」

「神だ!神に気をつけろ!!」



ボールマンの清田を含め、海南の5人は目まぐるしいスクリーンプレーの嵐。




「海南のスクリーンプレーが凄い!!」

「湘北のディフェンスが混乱しているぞ!!」




海南の速いスクリーンプレーにより、湘北のマンツーは崩壊していた。

ディナイディフェンスが、視覚を遮っていたのも大きな要因であった。



そのとき。



『ビュン!!』


清田がインサイドへ切れ込んだ。


「俺は、牧さんから海南PGを受け継いたんだ!!No.1ガードはこの俺だーー!!」




「清田のペネトレイトだーー!!」

「自らいったーーー!!!」




湘北ディフェンスの中央を切り裂く。



「いい気になるな!野猿ーー!!」


桜木が清田を囲みにかかる。



だが。



『ビュン!』




「パスだーー!!」

「牧張りのペネトレイトからのアウトパス!!」 




3Pライン1m手前、受け取ったのは、こういった場面で、幾度もなく決勝弾を決めてきた神。

このコート上において、神に勝る精神力の持ち主はいない。



「花道!!神だ!!」


「ぬおーー!!しまったーー!!」


宮城が桜木を呼ぶが、桜木は清田へのフォローにまわっていたため、届くはずもない。




「神の3Pーーーー!!」

「フリーだーーー!!」

「湘北、万事休す!!」




神が静かにシュート体勢に入る。

時間が止まったかのように、湘北の選手、ベンチが凍りついた。



だが。



「届けーーー!!」

白田が鬼の形相で神のチェックに飛んだ。

大きな体をめいっぱい伸ばし、大きな手をめいっぱいに広げていた。


「白田ーー!!」

「ハクタス!叩き落せーーー!」



「・・・。」にこり。

白田の表情とは反対に神は優しく微笑んだ。


頭の上にあったボールを静かに落とす。



『ダン!』


白田の足元をボールが通り過ぎた。


「パス!!!」




「神が打たない!!」

「中に入れてきたーーー!!」




『バス!!』


台形内、ボールを受け取ったのは真田。


「インサイドだ!!」

「真田をとめろ!!」


潮崎と柳が、決死のダブルチーム。




「湘北が速い!止めたーー!」

「残り時間がないぞ!!」




(よし!)


真田は、小さく首を振り、潮崎と柳の注意をそらすと、渾身の力を込め、サイドスローでパスアウトをした。

そこには、柳がダブルチームにいったために、フリーになった上杉が構えていた。



「打てーーー!!海斗ーーー!!」

真田が声をあげる。


「いけ!!」

清田も叫ぶ。


(頼んだよ。海斗。)

神が、若き世代に望みを託す。

牧が、神に託してきたように。




「上杉がフリーだーー!!」

「今度こそ、湘北やられるぞーー!!」




上杉は、先程ベンチで高頭に言った言葉を思い返していた。



(「俺も、神さんみたいになれますかね?」)



常盤中において、外角のシュートが最も優れていたのが、この上杉海斗。

高校生No.1シューターの神に憧れ、海南に入学を決めた。



(俺も神さんのようになる!絶対、決めてやる!!)



『シュ!』



高校1年生にして、洗練されたシュートフォームは、芸術の域に達していた。



『ゾクッ。』


神の背筋が凍った。


(入った。)


神が拳を握る。


上杉も同じ気持ちだった。


(決まった!!)




だが、その瞬間。



上杉の横から大きな影がボールを真下に叩き落した。




『バチィン!!!』




「!!!!!」



「なぁぁぁ!!!!」



「うわわぁ!!!!」



上杉のシュートを叩き落したその男は、赤い髪の湘北の救世主。




「桜木がシュートブロック!!!」

「あいつの身体能力はどうなってんだーーー!!!」

「ありえないぞーー!!」

「あのブロックはーーー!!!」




大きく弾んだボールを掴んだ桜木は、躊躇せず、海南コートにオーバーハンドで、投げつけた。

ワンバンドするそのボールにあわせる小さな影。



「決めろーーー!!!春風ーーーー!!」


(初めて、ちゃんと呼んでくれましたね。)にこっ。



上杉を打った瞬間、柳はスタートを切っていた。



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<<回想>>

「誰かがシュートを打ったら、俺は走ります。
シュートが外れること、そして、桜木さんがリバウンドを奪うことを信じています。
だから、ボールを奪ったら、すぐに前に投げてください!」

「ふっ!この天才にアシストを頼むとは・・・。生意気な。」

「桜木さんにしか、頼めませんから。」

「ふむ。そういうことなら、最高のパスをくれてやる!だが、外すことは許さんぞ!!」

「俺は、速攻をはずしたことはありませんから。あと、海斗にボールが渡ったら、あいつは必ず打ってきます。」

「なぜ、そう思うのだ!?」

「海斗は、今まで多くのクラッチシュートを決めてきました。その自信が、必ずシュートを打たせます。
それに、ここで投入されたのは、シュートを打つためです。
きっと、先輩たちからも、迷わず打てと声をかけられているはずです。
だから、ボールを受け取ったら、海斗は必ず打ってきます。
そして、俺たちの頭上を越えれば、必ず入れる。海斗は、そういう男です。」

「つまり?」

「桜木さんが叩き落せば、湘北が勝つ!ということですよ。」

「俺に勝るものはいない!
海猿だろうが、ひょろ男だろうが、シュートは断じて打たせん!!」

「お願いしますよ。」


-----------------------------------------------------------------------



「時間がなーーい!!」

「柳君ーーー!!」

湘北ベンチから声が飛ぶ。




2秒後・・・。




大歓声の中、電光掲示板の数字は変わっていた。




「柳君。期待通りでしたよ。ほっほっほ。」

「えっ!?」


(「勝つためには、柳君の力が必要です。」)


安西がいった言葉を流川が、彩子が、晴子が、湘北ベンチが思い返していた。



海南 84
湘北 86







続く。

#215 【感謝】

2009-10-29 | #09 湘北 県予選編
海南 84
湘北 82




試合時間も残り1分をきり、海南ボール。

湘北絶体絶命の大ピンチを迎えていた。

しかも、頼れる流川はベンチにいる。



清田がボールを運ぶ。

宮城が、オールコートで厳しいディフェンスを見せる。

清田のドリブルが止まった。


(神さんは、赤毛猿に抑えられている。やはり、真田さんと小菅さんに頼るしか・・・。)


『キュッキュ!』


潮崎は真田に凄まじいディナイディフェンス。


(ここで、真田に決められたら、俺は何のために出場したんだ・・・。)

と潮崎。


(小菅さん、悪いけど、あんたにはもうボールを持たせないよ!)

と柳。




「湘北のディフェンスが凄い!!」

「清田からのパスコースを全て塞いでいるぞーー!!」




「清田!俺を抜くしか道はないぜ!」

「望むところだ!!」


『ダムダム・・・。』


清田の鋭いドリブル。

宮城に並びかける。




「速い!!清田が抜いたーーー!!」

「湘北、まずいぞーー!!」




だが。




「いや、まだだ!!」

「完全に抜け切れていない!!」




宮城が清田と平行。

そして、再び、清田の前に立ちはだかった。


「!!」

「お前の初速の速さは認める。だが、2歩め以降は俺のほうが速いぜ!!」

「なにを!」

(真田さんは?神さんは?赤毛猿はどこにいやがる?)

『キョロキョロ。』


(誰もあいてねぇ!俺がいくしか!!)

「くそう!」

清田が一歩踏み込んだ瞬間、ブザーがなった。



『ピィーーー!!』



「バイオレーション!!」

「8秒オーバータイムだーー!!」

「海南のターンオーバー!!」

「まだわからない!!」




「あれこれ考えすぎだ。一瞬の迷いが命取りだぜ。」

「・・・。」

(ちきしょう・・・。)




(PGの経験の差か。)

と仙道。

「宮城さーーーん!!」

興奮状態の彦一。

「キャプテンとして、いい仕事をしたな。」

と越野。




「柳!」


サイドラインの宮城から、素早く柳にボールが渡る。


「いって来い!!」

「任せてください!!」




「湘北、スタートが速い!!」

「アウトナンバーだーーー!!」




高さに勝てない柳もスピードでは、断然小菅より上であった。



『キュン!』


小菅を抜き去る柳。




「まるで、宮城君を見ているようですね。」

「湘北がどういったプレーを見せるか・・・。大事よ、この1本は!」

と記者席の2人。




アウトナンバーにより、海南のディフェンスは崩れていた。


『キュ!』


桜木のハイポ。


「サル風!」

「桜木さん!!」




「桜木だーー!!神!真田!桜木を囲め!!」

高頭の大きな声が会場に響き渡る。




柳から桜木へのパス。


「ふん!!」



『バシ!!』



「あっ!!」

「なっ!!」

「花道!!」



ボールは、桜木の手には収まらなかった。



「シオ!男なら、決めやがれ!!」




「桜木さんがまた弾いた!!」

と彦一。

「まさか、この場で、再び冷静にパスを出すとは!」

と田岡。

「絶妙。」

仙道が微笑む。




「桜木君!」

目が見開く安西。

「桜木君!!」

晴子が声をあげる。




ボールは、激しい回転をしながら、フリーの潮崎の下へ弾かれた。




「シオ!打てーー!!」

「潮崎ーーー!!」

安田と角田が叫ぶ。


「シオ!・・・先輩。」

流川もベンチを立つ。




『バン!』


潮崎にボールが渡る。


(桜木!また、俺にチャンスをくれたこと感謝する!)


ボールは、静かに潮崎の手から離れていった。

伸びきる潮崎の右手。


(そして、桜木がバスケ部に入部してくれたことを何よりも感謝してるぞ!)



『ザシュ!!』




「キターーー!!」

「ナイッシュ!!潮崎先輩!!」

観客席の1年生から大きな声援が飛ぶ。


「シオーーー!!」

「潮崎先輩・・・。」

晴子の目にはうっすら涙が溜まっていた。


『グッ。』

安西が拳を握る。


「ふーーー。」

流川がベンチに腰をかけた。




「同点だーーーー!!」

「伏兵の#6が決めたーーー!!」

「残り21秒!!」




『ピィーーー!!』


海南は最後のタイムアウトを取った。



「男を見せたな!潮崎!!」

「あぁ。」

宮城に答える。


「シオ!天才桜木に感謝しろよ!!」

「あぁ。桜木には感謝しっぱなしだよ!!」

「ん!?そうか!!ハッハッハ!!」




「あの場面で、桜木がパスを出すとは、全く予想できなかった・・・。」

と肩を落とす高頭。

「くそう!俺のせいだ!!」

清田が声を荒げる。

「清田、落ち着こう。PGには、冷静さと自信が必要だ。」

「真田さん・・・。はい!」

そして。

「監督。・・・。」

神が監督に進言した。


神の作戦が、最後の攻防戦に終わりを告げる。




海南 84
湘北 84






続く。

#214 【本当のエース】

2009-10-27 | #09 湘北 県予選編
海南 84
湘北 82




桜木が清田から、オフェンスファウルを奪い取った。


「いくぜ!リョーちん!!」

「花道、ちょっと、耳かせ。・・・・・・・、わかったか?」

桜木に耳打ちをする宮城。


「なぜ、この天才が!?」

「わかってねぇな。天才にしか、できねぇから、お前に頼んだんだろ?」

「ふっ。そういうことか!?期待以上のものを見せてやるぜ!!」

「おっ。さすが天才だな。」にや。

(花道のやつ、ノったな。)



海南は、なおもゾーンでインサイドを守る。

刻一刻と時間の過ぎる中、湘北は冷静にパスを回していく。




「時間がないぞーー!!」

「早く攻めろーーー!!」




「花道!」

「おうよ!!」



『キュ!』


桜木が、ゴール下の絶妙の位置で、ポジションをとった。


海南ディフェンスに緊張が走る。



『ビュン!』


そこに宮城からの針の穴を通すような鋭いパスが放たれた。




「桜木だ!!」

「囲め!!」




海南のゾーンが一気に桜木になだれ込む。


「ふん!!」



『バチィーン!!!』



桜木は、宮城のパスを、キャッチすることなく、真横に叩いた。


「なにっ!!」


「ナイスだ!花道!!」


海南ゾーンを引き寄せ、パスアウト。

宮城の指示通り、桜木は最高のパスを出した。




「巧いわ!!」

「完璧に海南の裏をかきましたね!!」




弾かれたボールの先には、潮崎がいた。

他の4人に比べ、マークの甘かった潮崎に最高のパスが通る。


「潮崎!3年間の思いを込めろ!!」

宮城が叫ぶ。


「よし!!」



『シュ!』



ノーマーク、潮崎の目の前には、障害物はなかった。

静かにボールをリリースする。



(入れーーー!!)



緩い回転のシュートは、真っ直ぐに海南ゴールに向かう。




「入れ!!」

ベンチから安田が叫ぶ。

「入って!!」

彩子が叫ぶ。

両手を握り、祈る晴子。




アーチの低いシュートは・・・。



『ガコン!!』



(外した!!!)



心の中で叫ぶ潮崎の目の前には・・・。



『ドガァァァ!!!!』



『ギシギシ・・・。』



ワンハンドでリングを掴む桜木の姿が映った。



「シオが外すのはお見通しだ!!ハッハッハ!!」




「桜木のリバウンドダンクだーーー!!!!」

「ついに同点ーーー!!!」

「桜木一人で追いついちまったーーー!!!」




「桜木さん!!アンビリーバブルやーーー!!!」

「凄い迫力だな。ははっ。」




『ピィーー!!!』



「ノーカウントーーー!!!」



審判が腕を激しく交差させる。



「白#10!!オッフェーーンス!!!」



ゴール下には、神が倒れていた。

桜木がリバウンドに跳ぶ際に、神に接触していたのであった。




「ノーカウントーーー!!!」

「神がテイクチャージだーーー!!!」

「なっなんてやつだーーー!!!!」

「すげーーぞ!!神!!」

「桜木4つめだーー!!」




「なにーーーー!!この天才のダンクをーーー!!!」


「桜木が跳んでくるのもお見通しだよ。」

「なっ!!この天才の名言を!!!」

(しかも、4つめ・・・。)



(じ・・・神さん、マジですげーよ。あの状況で、オフェンスファウルを奪っちまうとは・・・。)


「信長、借りは返した。」

「あっありがとうございます。」

「さぁ、次は、点を獲るぞ!!」

「はっはい!!」




「神君の冷静さが、桜木君のリバウンド力の上をいったわね。」

「神君はどこまで冷静なんだーー!!」

「バスケットカウントをとられるかも知れないあの状況で、
テイクチャージを奪いにいった大胆さと勇気も忘れてはならない。
仙道君や流川君とは違った深みがあるわね。」




「あぁーー。幻のダンクになってしまった。」

「くそー。神のやつめ。」

湘北のベンチが意気消沈する。


「ふむ。さすが、神君ですね。点を獲るだけがエースではないことをよく理解している。」

「今度は、ディフェンスで、うちの勢いを止めた。」

「神君に出来て、流川君にできないことですよ。」


(ぬっ!)


一瞬不機嫌になる流川。

(俺だって・・・。)


「私は、流川君がチャージングを奪ったところを見たことがありません。」

「そういえば・・・。」

「私も・・・。」

「俺もだ・・・。」

(ぬっ。記憶にねぇ・・・。)


「桜木君でさえ、数々のチャージングを奪ってきました。
しかしながら、1年生より湘北のエースと呼ばれてきた流川君には1度もありません。
どういうことかわかりますか?」

「相手が強いから?」

「苦手だから?」

「難しいから?」

(奪う気がねぇから・・・。)


「奪う気がないからでしょう。」

(ビクっ。あたり・・・。)


「オフェンスでやり返せば、いいと思っているからでしょう。」

(ビクっ。あたり・・・。)


「ずば抜けたオフェンス力に頼りすぎている。私が、流川君をエースと認めないゆえんです。
仙道君や沢北君のように、オフェンスでもディフェンスでもチームを勝利に導いてこそ、
本当のエースであり、No.1高校生ですよ。流川君。」

「先生・・・。決勝で仙道を止めたら、認めてくれるっすか?」

「攻守でチームを引率し、日本一になったら、流川君を日本一のエースであり、日本一の高校生プレイヤーだと認めます。」


「・・・うす!!」


(先生、当たり前のこといってますよ。)

彩子は少し苦笑いした。



海南 84
湘北 82







続く。

#213 【桜木タイム】

2009-10-26 | #09 湘北 県予選編
試合残り時間1分56秒

海南 84
湘北 80




湘北のオフェンス。

海南は、2-3ゾーンに変更した。




「流川がいなければ、外角はまずない。ゾーンで、桜木と白田を潰せば、勝利はぐっと近づく。」

とベンチの高頭。




「潮崎、緊張するなよ。」

「あぁ。」

宮城から潮崎へボールが渡る。



『キュッキュ!』


真田が潮崎にプレッシャーをかける。


(凄いっ。今にも獲られそうだっ。)


潮崎は、たまらず柳にパスをした。


「サル風!こっちだ!!」

桜木がパスを要求する。


「任せましたよ!」

「おうよ!」



『バシ!』



高いパスが桜木に供給された。

小菅と大泉の2人が、桜木を囲む。


「ぬっ。チビ丸とコスギめ!」

「小菅さんだ!!」

清田も囲みにかかる。


「庶民どもが何人来ようが、天才は止められーーん!!」



『びよーーん!!』



高いジャンプを見せる桜木は、右手でボールを掴み、右腕をめいっぱい伸ばした。




「高いーーー!!」

「あれでは、届かない!!」




そして、ゴールに向かって、ボールを放った。


「天才フック!!」


『シュ!』




「おーー!!」

中村が声を出す。

「あれは、フックシュート!桜木君、いつのまに、あんな技を!!」




『バン!!』



「しまったーー!!」


白田のフックの見よう見真似で放った桜木のフックシュートは、
リングにさえ当たらず、ボードにあたり大きく跳ね返った。


「花道!何やってんだ!!」

「自らとーーーる!!」



『びよーーん!!』



ゴール下のリバウンド争い。

白田が、大泉の前を陣取り、スクリーンアウトをしている。

その後ろから、桜木が飛んだ。

小菅、清田も飛ぶ。


『パン!』


「ぬっ!!」

ボールにいち早く触れたのは、神。

ポジションが明暗を分ける。

神は、ボールを弾いた。

再び、舞い上がるボール。


「何度でも飛ぶーーーー!!」



『びよーーん!!』



着地と同時に、素早い反応を見せる桜木。

誰よりも高く、速く、空中に舞った。


(速い!レベルが違う!)

と神。



『バシ!!』


桜木はボールを掴み取った。


「嘘だろ!!」

清田が驚く。




「なんというジャンプ力!!」

「高く、そして速い!!」




「最高到達点はもちろん、そこまで持っていく速さが尋常ではない。」

と田岡。

「桜木・・・。リバウンドを掴む者は、勝利を掴む・・・。」

福田がつぶやく。

(天性の素質・・・。ふっ。本当にリバウンドの天才かもしれないな・・・。)

仙道が小さく笑う。




「リョーちん!」

桜木が宮城に視線を向ける。




「宮城ケア!!」

高頭が叫ぶ。




「と見せかけ、自らシュート!!」


『びよーーん!!』


4度目のジャンプを見せる桜木。

今度は、綺麗なジャンプシュートであった。



『シュパ!!』




「決まったーーーー!!!」

「赤頭のやつ、何回飛んでんだーー!!」

「粘り強い!!」




「ハッハッハ!まさに天才!!」


「花道!ナイッシューだ!!ここディフェンス、踏ん張るぞ!!」

「おうよ!!」




「なんてこなの・・・。4回連続、しかも誰よりも速く高い・・・。」

「桜木君、凄いよ。」

「まだまだです。」




「邪魔者がいねぇから、リバウンドも取りやすいぜ!!」




(あんにゃろ・・・。)




海南 84
湘北 82




湘北のオールコートマンツー。

ファウルギリギリに激しく当たる。


「獲られてたまるか!No.1ガードを受け継ぐのは、この清田信長だ!!」

「俺に勝ってから、言いやがれ!!」


清田と宮城の激しい1on1。

清田は大きく左右に振った。


(来いよ。)


『キュン!』


宮城に並びかける清田。



だが。



『ドン!!』



「っつう!!」

「甘いな!野猿!」

清田の目の前には、桜木が倒れていた。



『ピィーーー!!』



「チャージング!!」




「桜木のテイクチャージだ!!」

「桜木が清田から、オフェンスファウルを奪ったーー!!」

「一気に湘北ムードだ!!」




「くそ!!」

悔しがる清田の横で宮城。

「よくわかったな。花道。」

「野猿を捕まえることなど、動作に足らん。ハッハッハ!」


『パシッ。』


宮城と桜木が手のひらを当てた。




「宮城が冷静に清田を誘い、桜木がそれに応えたか。」

「この場面で、奇跡的ファインプレーをやってのけた。」

「流れは、湘北。」




桜木が湘北に追い上げムードを作り出す。



海南 84
湘北 82







続く。

#212 【return to the bench】

2009-10-24 | #09 湘北 県予選編
海南 82
湘北 78




試合残り時間2分強。

このQ初めて、流川に得点が記録される。




「ようやく流川の得点だーー!!」

「湘北、まだ追いつけるぞーー!!」





「エースとして真価が問われる時間帯だ。」

と田岡。

(湘北のエースは、お前しかいないよな。流川。)

仙道が思う。




「神さん。すいません。」

「問題ないよ。次、抑えていこう。」

「はい。」


(俺も得点が止まり、壮太も得点がない・・・。何としてでも、ここは1本入れておきたい・・・。)

と考える神が視線をあげると。



「えっ!?」

驚く神の目の前には、桜木が立っていた。


「リョーちん!当たるぞーー!!!」

桜木は、オールコートで神についた。

「けっ!それをいうのは俺の役目だ!!」

宮城も清田をマーク。

流川も白田も柳もオールコートでマークについた。

流川の体力は、限界に近い。




「湘北のオールコートだ!!」

「真っ向勝負!!」




宮城の闘志溢れるディフェンスに攻め倦む清田。

神と真田には、最後の力を振り絞るように流川と桜木が吸い付くようなディフェンス。


清田は、小菅にパスをした。


小菅対柳。

身長差17cm。

第4Q、海南はこのミスマッチを中心に攻め立てた。


ゴール下の白田のふんばりもあり、小菅に大量点を許すことはなかったが、
湘北最大のウィークポイントであった。


だが、安西は柳を交代することはなかった。




「勝つためには、柳君の力が必要です。」




小菅と柳は、海南コートで対峙する。

(やられてばかりではいけない。)

と柳。



『ダムダム・・・。』


小菅が柳を抜きにかかる。




「さすが、元SG!ドリブルも巧い!!」

「しかも、速い!!」




『ダムダム・・・。』


(あんたが、ドリブルが巧いのはわかっている。でも、俺や宮城さんに比べたら、まだまだ高いんだよ!!)

柳が低い位置に、手を出す。



『パス!』




「柳君のスティール!!巧いでーーー!!」

興奮状態の彦一。

「ミスマッチを反対に利用したか。」

と越野。




(ここだ!)


『キュ!』


その瞬間、誰よりも先に流川は、スタートを切った。


「しまった!!」

と真田。


ルーズボールを拾った柳に、小菅が後ろから回り込んだ。


「獲られたら、獲り返す!!」




「何としても守れーー!!戻るんだーー!!」

高頭がベンチから叫ぶ。




『シュ!』


フリースローライン手前、柳は、小菅のわずかな隙を見つけ、強引にランニングシュートを放った。


シュートは、リングを捉えるどころか、ボードを捉えるのが精一杯であった。



だが。



「!!!」


「なにっ!!」



『バン!』



リバウンドを狙っていた流川が、小さく跳ね返ってきたボールをキャッチした。


そして、そのままタップシュートを決めた。




『シュパ!!』




「うわーーー!!!」

「流川の連続得点!!!」

「2点差ーーーー!!!」




「初めからパス狙いか?」

「さぁ、どうでしょう。」

宮城に答える柳は軽く微笑んだ。


「ナイス。」

「はい。」



「目立ちがり屋の流川めーーー!!!」


流川と柳のプレーが桜木に火をつける。



海南 82
湘北 80




だが。



『ザシュ!』



(・・・!!)




「真田の初得点だーー!!」

「ナイッシュ!壮太!!」




「あぁ・・・。」

「真田が決めちまった・・・。」

「ということは・・・。」

意気消沈する湘北ベンチ。




疲労の溜まった流川を交わし、真田がシュートを決めた。

流川の連続シュートで、湘北に流れを引き込んだ直後の出来事であった。

今度は、参謀真田が、湘北の勢いを断ち切った。


タイムアウトを取る安西。

そして、交代が告げられる。


(交代なんて、まっぴらだ・・・。)


「流川君、約束ですよ。」

「・・・。」

「流川君。」

「ごめんだ。」

「自分のいった言葉に責任を持てないのか?あぁ?」

一瞬、白髪鬼の表情を見せる安西。


『ゾクッ。』


「・・・。」

(くそ・・・。)


流川はタオルを頭からかぶり、静かにベンチに座った。


(流川君・・・。)

心配そうに眺める晴子。


「ハッハッハ!これで思う存分、動ける!キツネめ!そこから、大人しく見てやがれ!!」


安西は口を開く。

「今後も、大事な局面で、流川君がベンチにいることも十分に考えられます。
そのときこそ、このチーム力の真価が問われます。
宮城君、みんなをしっかりまとめてください。勝つも負けるも宮城君次第です。
柳君、得点にアシスト期待しています。宮城君のフォローをしてください。
白田君、ゴール下は頼みましたよ。そして、いつでも得点を奪いにいってください。
潮崎君、君のディフェンス能力は高く評価しています。」

「オヤジ!おっ俺は!?」

「桜木君のプレーが勝利を引き込む。」

「おうよ!海南は俺が倒す!!」


「流川君がいないからといって、決して諦めてはいけません。」

「はい!!」

「あたりめーだぜ!!むしろ、勝利に近くなったぜ!ハッハッハ!」

(くそう。)




コートに足を運ぶ10名。

流川の代わりに潮崎が投入された。

「潮崎君、真田君のディフェンスをお願いしましたよ。」

「はい!!」

(1年間の成果を見せてやる!!)


-----------------------------------------------

SF…#7 流川 楓 191cm/2年

SF…#6 潮崎 哲士 172cm/3年

-----------------------------------------------



会場が驚きで揺れる。

「流川が交代だーーー!!!」

「体力の限界か!!!」

「何があったんだ!?湘北ーー!!」




「どうなってんだ!?湘北は?」

不思議そうな清田。

「理由がどうであれ、俺たちにとっては願ってもいないチャンスだ。」

「そうだね。」

真田と神が微笑んだ。




「この重要な場面で、流川君が交代やて?」

「安西先生は何を考えておられるのだ?」

(流川の体力を考えたら、妥当な交代かもしれない。ここで、真田に一気に攻められたら、湘北は終わる。
体力のある控え選手のほうが、真田を抑えられると判断しましたか・・・。)

と仙道。




ベンチの流川は、下をうつむき、震えていた。


「流川君。仲間を信じることも大切です。彼らを信じましょう。」

「・・・。」




湘北の命運はこの男に託された。

(流川がいない今が絶好のチャンス!!)にやっ。



残り2分を切っていた。


海南 84
湘北 80







続く。

#211 【エースとは】

2009-10-21 | #09 湘北 県予選編
海南 80
湘北 76




第4Qも7分が経過していた。

息もつけないゲーム展開の中、流川と桜木は、まだコートにいた。



第4Q。

真田 0得点

神 2本



湘北の2人はともにがけっぷち。

1本も許せない緊迫した状況であった。


「ぜぇぜぇぜぇ。」

清田の息は荒い。

「はぁはぁはぁ。」

流川の息も激しかった。


ここまで、第4Q無得点の流川。

清田のディフェンスが、流川の爆発力を封じ込めていた。




「流川君が真田君を抑え、清田君が流川君を抑えている。
両者ともに素晴らしいディフェンスだわ。」

「清田君のディフェンス能力は、昨年の選抜で開花していましたけど、
流川君まで、こんないいディフェンスをするとは、正直驚きました。」

「えぇ。私もよ。」

(ただ、ディフェンスに集中すると、オフェンス力が落ちるようね。)




「流川のディフェンス能力の高さは十分にわかった。だが、攻めと守りの併用ができないようでは、意味がない。
どちらも完璧にこなす仙道とは大きく違うな。」

(スタミナ不足・・・。いや、真田を眼で追いすぎるために、オフェンスへの切り替えが、若干遅れている。)

と仙道。




『イライラ・・・。』


「真田が、0得点とは、流川のやつ、いつのまにあんなにディフェンスがよくなったんだ!」

「監督。真田先輩の0得点と、流川さんの0得点で相殺ですよ。ここは、よしとしなければ。」

「ふむ・・・。だが、納得は出来ん。計算が大きくずれてしまった。」




「流川君は、ようやくわかってきたようですね。」

「えっ!?」

「得点を奪うことだけが、エースではないということですよ。」

「どういうことですか、先生?」

「仙道君、沢北君、土屋君、諸星君、超高校級のエースと呼ばれる選手は、みんなディフェンスに定評がありました。
オフェンスでもディフェンスでもチームを引っ張れる選手が、初めて本当のエースとして認められるわけです。
流川君は、前半はディフェンスで、第3Qはオフェンスで、
そして今再びディフェンスでチームを勝利に導こうとしています。
相手スコアラーを封じ、自分も得点を生み出し、チームを勝たせる。
それが出来て、初めて本当のチームのエースになれるのです。点を獲るだけでは、エースではありません。」

「私は、ずっと流川君のことを湘北のエースだと思っていました。」

「僕も。」

「俺もです。」

「間違いではありません。ただ、彼にはもっと高い次元のエースになってもらいたい。
これから、先のためにも・・・。
並居るライバルたちに負けないためにも・・・。
ここからが、流川君にとって、正念場ですよ。」

(流川が、真田さんを抑えながら、点を獲れれば、先生も認める湘北のエースってことなのかしら。)




『シュパ!』


「よっしゃーーー!!」

清田のドライブが決まった。




「海南がじりじり引き離しにかかっている!!」

「全国4位の湘北に勝ってしまうのかーー!!」




流川を抑える健闘を見せていた清田が点を奪った。




「ほー。清田君のほうが、海南のエースに近づいていますね。」

安西の言葉に、晴子が思う。

(流川君・・・。頑張って!!)



海南 82
湘北 76




第4Q序盤、海南は真田、神の指示により、ディフェンスを変更した。

ボックスワンからダイヤモンドワンへ。

これにより、トップの真田以外の3名が、リングを囲むように、三角形を形成し、スクリーンアウト。

桜木、白田のゴール下への進入を許さず、確実にディフェンスリバウンドを奪っていた。



(まずい!ここ3分、点が入ってねぇ。この1本を決めなければ、相当きつくなるぞ!!)


トップの宮城には、真田が対峙にしている。

桜木と白田のツインタワーには、神と大泉、小菅が体を張って、中には入れさせない。


「ひょろ男のくせに!!」


流川には、清田のディナイディフェンス。

(ぜってー、走り負けねぇぞ。)

(はぁはぁ、しつこいやろーだ。)



ドリブルをついている宮城。

刻一刻と時間が過ぎていく。


(早く攻めねぇと。)

中央突破を図ろうとする宮城。

(来い!)

真田は、宮城のドリブルスティールを狙っていた。




「リョータ!待って!!焦らず1本!!」




「ぬぅ!」

ベンチの安田の言葉に、ストップする宮城。

(そうだ。ここで焦ったら、IHの二の舞だ。さんきゅ!ヤス!!)


(ベンチの声に助けられたな。)

と真田。


一旦、ドリブルでバックする。

(ふーー。)

呼吸を整え、一言。


「まず1本だ!花道、面を獲れ!!」

「おうよ!!」


ダイヤモンドの真ん中、ちょうど空いているポジションに位置取りする桜木に、宮城からの高いパスが入った。


『キュ!』


ダイヤモンドが縮小する。

一斉に湘北オフェンスが動く。


「こっちだ!花道!!」

「下です!!」

「先輩!こっち!!」

左右、ゴール下で桜木を呼ぶ宮城と柳と白田。


「ぬっ?」

一瞬の迷いを見せる桜木の腕から、ボールが奪われた。



「しまったーー!!!」




「うぉぉぉーーー!!」

「流川にボールが渡ったーー!!!」

「桜木のハンドトス!!」




ボールを奪ったのは、流川であった。



「なにーー!!流川!!!」


(くそ!!)


清田は密集したフリースローゾーンに入ることが出来ずにいた。


流川の高い打点のジャンプシュート。



『バス!!』



バンクで決まった。



「いいぞ!!流川!!」

「うす!!」




「よっしゃーー!!」

「ナイッシュです!!流川先輩!!」

「久しぶりの得点だーーー!!!」




「くそーー!!流川め!天才のボールを!!ガルルル!!」

流川を睨む桜木。




「桜木君、ナイスパス!」

「ハッハルコさん!見ましたか?天才のパスを!!」

「ナイスアシスト!!」にこり。

「はい!!」

俄然やる気のでた桜木。

(流川君もナイッシュだよ。頑張って。)




(あと4点・・・。負けるのも交代も、ごめんだぜ。)

流川の闘志に火がつく。



海南 82
湘北 78







続く。

#210 【神の背中】

2009-10-20 | #09 湘北 県予選編
海南 73
湘北 72




桜木のボール・テンディングにより、神のバックシュートが認められ、海南が逆転をする。




「海南もディフェンスを変えてきたーー!!」

「同級生対決だーー!!」




海南は、清田が流川にマッチアップするボックスワンを形成した。


「流川!もう、いい格好はさせないぜ!」

「・・・。」

「どっちが、No.1ルーキーか決めようじゃねぇか!」

「・・・。ルーキーじゃねぇ。」

「ぬっ。そうだった!」

「どいつもこいつもどあほうばかり。」

「うるせ!」


清田の激しいフェイスガード。


(清田のやろー、流川相手にディフェンスも相当気合入れてやがるな。
となると、流川も簡単には点は奪えない・・・。
ここは、一先ずパスを繋いで、様子を見るか。)


宮城から、柳へ。



『シュ!』


「なっ!」

柳は、宮城の意表をつく3Pシュートを放った。


「リバウンドーー!!」

真田が叫ぶ。


「獲ってくださいよ。桜木さん。」

と柳。


ゴール下では、大泉と白田、桜木と真田が激しいポジション取りをしている。


(桜木相手では、さすがに分が悪い。下を狙うしかない。)

と真田。


(リバウンドからのゴール下勝負に持ち込む作戦か。)

宮城が微笑む。



そして。



『ガコン!』



『トン!』



『シュパ!』


この日、桜木の4本目となるタップシュートが決まった。


(作戦通りかな。)

Qの立ち上がり、ディフェンスの変更を突いた柳の作戦が、功を奏した。


「直接決める!正しく天才!!ハッハッハ!!」


(やはり、桜木を止めるのは、相当難しい・・・。どうすれば・・・。)

真田は、ボールを出しながら、考えていた。




「桜木君!凄いわ!!完璧よ!!」

耳の大きくなる桜木。




「ハルコさんとの半年間に及ぶ特訓のおかげです!!」

「速く戻れ。」

「流川め!俺とハルコさんの邪魔をするな!!」



海南 73
湘北 74




「海南は、どうしてもゴール下が空いてしまう。
ボックスでインサイドを強化しても、桜木君、白田君のツインタワーを抑えきれていないわ。」

「もはや、桜木君のリバウンドは、全国トップクラス。
森重君クラスではないと抑えることが不可能かもしれませんね。」




「神。」

真田が神を呼び、耳打ちをする。

「・・・。あぁ、俺もそう思うよ。」

神は味方に指示を出した。




海南の反撃。

真田にボールが渡る。




「流川!」

「流川君!」

流川を祈るように、見つめる湘北ベンチ。




小刻みなフェイントから、流川を抜く真田。


『ビシ!』


『ピィーーー!!』


審判が、流川のファウルを告げる。




「あぶなかったーー。」

そっと胸をなでおろす湘北ベンチ。




(あぶねぇ・・・。)




「流川のディフェンスは、随分良くなったようだが、あくまで、Aクラス。
うちの仙道みたいに、Sクラスじゃないと真田は止められん。」

仙道を見る田岡。

「・・・。まいったなー。」




再び、海南のオフェンス。

今度は、神にボールが渡る。




「桜木!!」

流川のとき同様に祈る湘北ベンチ。




『ガシ!』


真田のスクリーン。


「ぬっ!」

あっさり抜かれる桜木。


ヘルプの流川をあざ笑うかのように、神から真田へ、鮮やかなピック&ロール。

海南を支えてきた冷静な2人が、湘北ゴールを襲った。


真田のシュート。


(やべっ!!)

さすがの流川も焦りを感じる。




「真田のシュートだ!!」

「外れろーー!!」

湘北ベンチから今までにない声が飛ぶ。




『バシ!』




「!!!」

「桜木!!」


桜木が、真田のシュートに後ろから触れた。


(これにも触るか!!)




「桜木のブロックだーー!!」

「なんというジャンプ力なんだーー!!」




リング手前で落下したボールを白田がキャッチ。

すぐさま、前線へパスを放つ。




「いいぞーー!!桜木先輩ーー!!」

「桜木が流川を救ったーー!!」

「ナイスチェック!!」

盛り上がる湘北ベンチ。




「ぬっ。なっ。しっしまったーー!!!流川を追い出す絶好のチャンスをーーー!!」

桜木が真田のシュートをチェックしたことにより、流川の強制交代が免れた。


「サンキュ。」

嫌味っぽく、流川が桜木に感謝をする。

「ぬおーー!!」


前線では、柳が海南のネットを揺らしていた。



海南 73
湘北 76




「ここに来て、桜木の動きが目立っているな。早めに手を打たねば、命取りになる。」

高頭の眼鏡が光る。



だが。



『シュパ!』




「あっさり同点だーーー!!!」

「神の3Pーー!!」

「なんていうシュートだーー!!」




「しまったーーー!!!あと1本だーーー!!」

「桜木!大ピーーンチ!!」

「桜木花道!がけっぷちよ!!」

「桜木君・・・。」




「ふっ。あと1本・・・。」

キツネの流川。

「ぐぐぅ。おのれ。流川めーー!!」




「角田君。アップをお願いします。」




「おのれ、オヤジまで・・・。ひょろ男!今後、てめーには一切ボールを触らせん!!」

「ふっ。どうやら、俺があと1本決めると、桜木は交代らしいね。
なんだかよくわからないけど、うちにとって、願ってもないチャンスが巡ってきた。」

「うるさい!もう、てめーにはシュートは打たせん!!」




「ふむ。さすが神だ。あっさり、湘北の流れを切ってしまった。」

と高頭。

「俺も、神さんみたいになれますかね?」

「努力は、自分を裏切らん。期待しておるぞ。」

「はい。」

上杉は、いつまでも神の背中を追うのであった。



海南 76
湘北 76







続く。