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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#291 【敗北感】

2010-03-31 | #11 湘北 選抜編
酒田 31
湘北 27




湘北のオフェンス。

SG新山、SF田中は、柳、流川のディフェンスを一向に緩めない。

むしろ、その動きは、第1Qを超えるほど、激しいものとなっていた。



『キュッ!』


『キュッキュ!!』


(地味な顔して、なんてしつこいディフェンスしてんだ!)

第2Q、柳は仕事らしい仕事をしていない。




「いくらスピードがあっても、身長、リーチの差をカバーするのは、困難・・・。」

「全国Aクラスのディフェンダーを前に、柳君もだいぶ苦労しているようですね。」

「試練・・・というところかな。」

心配する彩子ら。




コート上では、田中のタイトなディフェンスをくぐり抜け、流川がドライブからのレイアップを決めていた。




「ここにきて、流川君の動きがよくなってきましたね。」

「彼がノッている今、湘北が是が非でも追いつきたいところね。」




酒田 31
湘北 29




酒田の反撃。


PG松山のパスは、パウエルを囮に使った頭脳プレー。

SG新山が、フリーで受け取る。


柳の前から放つ3P。



『シュ!』


(やっべ!)


思いがけないところから、放たれたシュートは、青森酒田のテンションを高める。



『スポ!』




「うぉぉぉーー!!!」

「酒田の3P!!」

「地味に巧い!!」




「痛い!」

と湘北ベンチ。




「いいど!!」

と酒田ベンチ。




酒田 34
湘北 29




第2Qもまもなく5分を迎えようとしている。


この試合、未だ0得点の桜木。

「サムラギハゼロ。」

「ぬっ!」

「カマタヨリシタ。」

「なぬっ!」

パウエルは、桜木に言葉を発すると、ゴール下にポジションを取った。


オフェンス能力の低い桜木をディフェンスするよりも、インサイドで得点をあげる流川のカバーに回る。

これが、パウエルの作戦であった。


この上ない屈辱を味わう桜木。


(おのれ!バイエルン!この桜木をフリーにするとは!!)



「リョーちん!パス!パス!」



3Pライン上、ノーマークの桜木が、パスを要求する。


(花道がそこにいたって、何もできないだろ!!)


だが、他の3人には激しいディフェンスにより、パスが出せない。


(くそう。一か八かだ!)



『ダム!』

宮城のバウンドパスは桜木の元へ。


(へへっ。いいぞ、リョーちん!)

「この天才を甘く見ていたことを後悔させてやる!!いくぞ!バイエルン!!」



『ダム!』


ドリブルで間合いをつめる桜木。


「オッ!」

パウエルが機敏に詰め寄る。



「だりゃーー!!合宿シューーート!!」

パウエルの前から放つ桜木のジャンプシュート。



『ダン!』



『バチィン!!』



「!!!!」

「花道!!」




「高い!!」

「あの桜木をブロックした!!」




パウエルに完璧と言っていいほどのブロックをされた桜木。

ボールは、バウンドすることなく、コートの外へ大きく弾かれていった。

195cmの桜木がブロックされたことで、ざわつく会場。




「すげーー!!ブロックーー!!」

「バレーのアタックかよ!!」




「ミーカラノトクテンナシネ。」

笑うパウエルの白い歯が光る。


「・・・。」


「バカ!てめーより巧いやつに真っ向勝負するやつがあるか!」

と宮城。


(・・・。)

無言の桜木。


(さすがの桜木さんも今のは、ちょっと堪えたかもしれないな。)


サイドラインから桜木を心配する柳がボールをノールックパスで放る。


受け取ったのは、ミドルでポジション取りをしていた白田であった。


『クルッ。』


白田は、受け取るや否や、第1Qで幾度となく成功させていたフックシュートを放った。



だが。



「もうそれは、わがっでる!!」

吉田のファウルギリギリのパワープレーがシュートの軌道をずらす。




「ファール!!」

思わずベンチから声を出す彩子。




審判は首を横に振る。


(ぐっ。)

「リバウンドー!!」

叫ぶ白田。




「オフェンスリバウンドだ!桜木さん!!」


「獲られるでねー!!」


声を出す両ベンチ。



『ガシ!』


『ガン!』


(にゃろー!)


(ヌオッ!)


戦場と化すゴール下で、流川とパウエルが激しいポジション争い。

桜木は、後方から跳び込みリバウンドを狙う。



『ガコン!!』



「花道!!」

宮城が叫ぶ。

「おうよ!」

助走をつけ、ハイジャンプを見せる桜木。



「リバウンドだけは、誰にも譲らーーん!!」



ボールに近づく3本の腕。



『バシ!』



掴んだのは、褐色の腕だった。




「うぉぉぉーーー!!!」

「あぁぁーーーーーー!!!」




「ナイスリバウンドだ!パウエル!!」

「いいど!!」




着地する桜木と流川。


「サムラギ、ムカワ。ポイント、リバウンド、アゲナイ。」


「バイエルン!!!」


(にゃろーー!!)



不利の状況で、リバウンドを奪ったパウエル。


シュートブロックに続き、リバウンドを奪われた桜木は、
今までに感じたことのない屈辱感・敗北感を感じていたのであった。



(やろー、どうすれば勝てる・・・。)




酒田 34
湘北 29







続く。

#290 【てめーに任せた】

2010-03-29 | #11 湘北 選抜編
酒田 29
湘北 24




第2Qも2分が経過していた。



湘北ボール。


(この1本は、確実に決めたいところだ。)

宮城の冷静な判断。



だが。



『キュ!』


PG松山の激しいプレッシャーが、宮城に襲い掛かる。


(ったく。少しは大人しくしてろっつうの!)



『キュッキュ!』


ボールを守るような宮城のドリブル。

柳は、SG新山を振り切ろうと、走りまくる。

白田は、インサイドでPF吉田と激しいポジション争い。

桜木は、パウエルを連れて、外で構える。


「へい。」




「流川だーー!!!」

「いいポジション!!」




Lカットから、ハイポでボールを呼ぶ流川。

吸盤のようにSF田中がぴったりマークしていた。


ここで宮城が動く。


『ダムダム!』


レッグスルーから松山を抜きにかかると、流川のほうへ突っ込んだ。




「宮城がいったーー!!」

「スクリーンプレーか!!」




『ガシ!』


松山の進行方向を遮る流川のスクリーンプレー。


「へい。」


そして、素早く開き、ボールを呼んだ。


『バス!』


宮城は、ドリブルからバウンドパスを放つ。


『バシ!』


流川にボールが渡った。


観客を魅了する鮮やかなピック&ロールが、松山、田中を抑え込む。




「ノーマーク!!」

「流川いけーー!!」




「簡単にはいがせねぇど!!」

吉田のヘルプ。

かまわず突っ込む流川。



(流れを変える!!)



『ドン!』


吉田の胸と流川の腕が激しくぶつかる。


倒れる吉田。


放たれたボール。



『バン!』


吉田がコートに倒れこむと同時に、ボールはリングを通過した。



『ピィーーー!!』



「カウントーーー!!」

審判の判断は、吉田のブロッキング。

わずかにコースに入るのが遅れていた。




「おしぃーーーー!!!」

「バスカンだーー!!」

「流川、力強いーー!!!」




「ナイッシュ!」

「うす。」




「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」

「流川君!素敵ーー!!」




「キャー!流川君!!」

観客に負けじと叫ぶ晴子。

「あーぁ。こりゃダメだ。」

諦めた安田。




「吉田。ほしがっだな。」

「申し訳ねぇ。バスカン許してしまっだ。」

「ええって。」

田中が、吉田を起き上がらせる。

(さすが、流川。吉田の体に臆するごどねく、突っ込んできだ。精神的にもタフなやづだ。)




『シュパ!』


ボーナススローもあっさり決めた流川。


(あと1本。)




「吉田相手にバスカンを奪ったか。やっぱり、流川はやる男だな。」

「さぁ、それはどうかな。」

烏山に答える沢北。


(俺だったら、一切に体に触れさせないで、決める。)にや。




酒田 29
湘北 27




酒田のオフェンス。

再び敷く湘北の2-3。


「リョーちん!サル風!もっと前で当たっていいぞ!!後ろは俺に任せろ!!」

桜木の指示。

「あのやろーに中やられるぞ。どあほう。」

「うるせー!てめーは点を獲ることだけ考えてろ!!」


(!!)


桜木の放った言葉に、湘北選手が驚く。




「あのこ、今・・・。」

「えぇ、聞こえました・・・。」

「意味としては、流川にオフェンスを任せたといわんばかりだった。」

と安田。

「ほっほっほ。自分がするべきことがわかったということですね。
でも、それだけではいけません。」


(オフェンス、ディフェンス、両方をこなしてこそ、安西先生が認めるエースプレイヤー・・・。だもんね。
桜木君、流川君、頑張って!!)




「あっちいったぞ!」

「ハクタス、そっちだ!」

「ハイポきた!!」

桜木の的確な指示が、ゾーンをより強固なものにする。



だが。



この男は、その上をいく。



『シュパ!』




「パウエルーー!!」

「すげーー!!」

「とめられない!!」




パウエルのワンハンドジャンパーが、リングを射止める。



「すっすまん。」

「気にするな。花道のせいじゃねぇよ。」

と声をかける宮城。

「桜木先輩。声、助かります。」

「おっおう!」

白田が励ます。

「オフェンスで取り返しましょ。」

「おうよ!」

柳が続く。


最後に流川が一言。


「リバウンドだけは、全て奪え。」


「ふん。頼みの綱は、この天才の力か!思う存分、発揮させてくれよう!!ハッハッハ!」


「どあほう。」



セネガルからの最強の刺客を前に一つとなった桜木と流川。

東北王者に挑む。




酒田 31
湘北 27







続く。

#289 【桜木始動】

2010-03-26 | #11 湘北 選抜編
酒田 27
湘北 24




センターパウエルの鋭いジャンプシュートで、2点を追加した青森酒田。


「ここがらいぐど!」

「おう!!」


訛りの入ったキャプテン吉田の一声が、青森酒田に勢いをもたらす。




湘北のオフェンス。


(!!)

「さっぎは、ふいうぢだったが、今度は簡単にはいがせねぇど。」

SF田中の流川に対するディナイディフェンス。


(ちぃ!対応がはえーな。なら、いっちょやらせてみるか!)

宮城、柳と渡ったボールは、再び宮城の元へ。


そして、外に大きく開く桜木へ渡った。



『バチ。』


「よくも俺の作戦を横獲りしやがったな!」

「ヨコドリ?ワカリマセン・・・。」


「くらえ!天才ドライブ!!」


「テンサイドライブ!?」



桜木とパウエルの1on1。



『ダム!』


一つめのドリブル。

瞬時に桜木がパウエルに並ぶ。



そして、桜木の一歩目の右足がボールを蹴り上げる。



『バコ!』



「!!!!」


「!!!」


「??」




「わぁーーーー!!!!」

「桜木ーーー!!!」




「??」


「・・・。」


前方へ大きく蹴り跳ばす。




「あちゃー。あのこ、またやった・・・。」

「さっ桜木君!!」

と湘北ベンチ。




「キックボーーール!!」

審判の高らかな声。



「・・・。花道。わかったから、お前はリバウンドに専念しろ。」

「ぬ・・・。」



「またやった。」

と柳。

「どあほう。」

と流川。


「おのれーー!!サルとキツネめ!!」


「ヨコドリハキックネ!」


「ぬっ。バイエルンまで!!」




「桜木のやつ、パウエルのドライブの真似しようとして、蹴り跳ばしやがった!はははっ。」

笑う烏山。

「・・・。笑ってばかりはいられないダス。」

「あぁ。恐ろしく速い一歩目だ。」

『コク。』

沢北にうなずく柳葉。


(桜木のやつ。1年前とは比べ物にならないくらい成長してるな。)にこり。


笑う沢北に気付く河田美紀男。

「沢北さん。桜木君は、僕の相手ですからね。」にこ。

「あぁ、そうだったな。俺の相手はあいつだった。」

沢北の眼に流川が映っていた。




『ザシュ!』


パウエルのジャンプシュートが、再び火を噴く。




「いいど!いいど!パウエル!」

「いけーー!!青森酒田!!」




酒田 29
湘北 24




記者席。

「どうやら、パウエル君は、本領発揮のようね。」

「彼をどう止めるか・・・。湘北頑張って!!」




「リョーちん!このままだと、バイエルン一人にやられるぞ!!」

「あぁ。」


(マンツーだとインサイドでやられ、ゾーンだと外からくる。どうすれば・・・。)

安西を見る宮城。


安西は微動だにしない。


(まだ、我慢ってことっすね。)


「よし!このままゾーンで守る。パウエルの動きに注意しろ。中だろうと外だろうとボールを持たすな!」

「おう!」

「はい!」




湘北のオフェンス。


(パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!)

流川が、田中を背にして、インサイドでポジションを取る。




「流川だーー!!」

「田中さん!!!!」




酒田ベンチの声に、白田をマークしていたPF吉田が反応する。


その一瞬を宮城は見逃さない。



『バシ!』


吉田のマークが甘くなった白田にボールが渡る。

そして、素早くジャンプシュートを放つ。



「よし!」



『ダン!』


『パシ。』



「なっ!」


白田の横から、伸びる黒い腕がわずかにボールに触れた。




「パウエルのシュートチェック!!」

「どっから跳んできやがった!!」

「リバウンド勝負!!」




『ガコン!』



ボールはリング手前に当たり、小さく跳ねる。


戦場と化すゴール下。


吉田が、白田が、パウエルが、流川がボールを奪いにいく。



『ダン!』


『キュッ!』


『バン!』


(もらっだぁ!)


ボールは、吉田の前に落下し始める。



だが。



『パン!』


吉田がボールを掴む寸前に、ボールが逃げた。


「!!!」



「おりゃーー!!リョーちん!!」

桜木のティップアウト。



宮城がボールを掴む。

「ナイスだ!花道!!」



「バイエルン!!!」

「オッ!」


「流川!!!」

「ん。」


「リバウンドだけは、誰にも譲らんぞ!!」


最高ランクせめぎ合いの中で、自分が今何をしなければならないかを悟った桜木。

余計な考えは、全て払拭した。


(勝つために俺がやらなければならないこと。
それは、バイエルンよりもリバウンドを獲ることだ!そして・・・流川よりも。)


(花道のやつ、少しはわかるようになったきたようだな。
しっかり俺の言葉を受け止めたか。)にや。



本領発揮のパウエル。


リバウンド1本に集中した桜木。


再び、火花を散らす両者。


そして、もう一人。


(もっと点を獲りにいってやる。)




(そろそろだろ?なぁ流川。)

コートを見つめる沢北が微笑んだ。




酒田 29
湘北 24







続く。

#288 【パウエル始動】

2010-03-25 | #11 湘北 選抜編
酒田 25
湘北 24




第2Q開始まもなく。


湘北の速攻。


流川のワンハンドダンクで、1点差に詰め寄った。




会場割れんばかりの声援。

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!ルカワ!」

「流川さーーん!!」

「キャー!流川くーーん!!」

ここに来て、流川に対して、黄色い声援が跳ぶ。




「むっ。なによ。」

にわかファンに不機嫌になる晴子。

「まぁまぁ。晴子ちゃん。」

なだめる安田。




「よし!その調子だ!」

「うす。」

「さぁ!もう1本奪うぞ!!」

「はい!!」

柳、白田にも気合がはいる。




酒田のオフェンス。


『キュッキュ!』


『キュキュ!』


桜木、流川、白田の3人が、代わる代わるパウエルと吉田を守る。

外でボールを回す青森酒田。




「あの山王を破った青森酒田が攻められない。」

「アウトサイドシューターがいない青森酒田にとって、この湘北の2-3は鬼門。
どう攻める、青森酒田?」

(だけど、ここで点が止まるようなチームじゃない。必ず何かが起こるはずだわ・・・。)

と中村と弥生。




インサイドでは、厳しいと判断したパウエルは、大きく外に開く。


「マッサン!」


3Pラインを少し入ったところ。


『バシ。』


そのパウエルに託された酒田ボール。


(そこで何ができる?この桜木ではあるまいしな!)

と桜木。

(苦し紛れのシュートか?)

と白田の判断。




観客席の山王烏山。


「あーぁ、持たせちゃった。」

「来るダス!」

と加藤。

『コク。』

柳葉と河田がうなずいた。

「??」

東北大会未出場の沢北には言葉の意味がわからない。




(GO!)


パウエルの眼が光った。


(!!)


『キュ!』


『ダム!』


全身の筋肉に力を込め、インサイドへドライブをしかけるパウエル。




「なぁにーー!!」

「センターがカットイン!!」




『キュッ!』


褐色の体が、湘北ゾーンに突っ込む。


(速いし、力強い!)

振り切られる柳。


『キュッキュ!』


『ダムダム!』


流川が止めにかかる。


(センターがなにやってやがる!!)


『キュ!』


止まるパウエル。

流川との間に生じるわずかな距離。


『シュ!』


202cmの黒い体が、流川の眼の前で、舞う。



『シュパ!』



センターらしからぬ、鮮やかなジャンプシュートが決まった。




「すげーーー!!センターの動きじゃない!!」

「なんて高いジャンプシュートなんだ!!」

「パウエル!パウエル!」




『パシ!』

仲間とタッチするパウエル。

「マッサン!パスクレサイ!」

「おう。」



酒田 27
湘北 24




「おいおい。なんだよ、あの動きは・・・。」

「フン。この天才の作戦を横獲りしやがって!!」

「天才の作戦?」

「聞いておどろけ!」

「・・・。」

「センターのこの俺が、外からドライブを仕掛けて、ジャンプシュートを決める。
つまり、俺が考えていた作戦をバイエルンがやりやがったんだ。」



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<<回想>>

桜木の作戦。

第1Q終了後のインターバルで、外に開くように指示を受けた桜木は、考えた。

いや、思い出した。


(いや、待て。・・・・・・、これって・・・・・・。)にや。


何か名案が浮かんだ桜木は、一人笑った。


(そういえば、丸ゴリもセンターのくせに、外から攻めていたな。
ふん、丸ゴリに出来て、この天才にできぬことなどない。
よし!俺も外から攻めてやるぜ!!キツネに、オヤジ、見てろよ!!
天才に不可能などないことを証明してやる!!ハッハッハ!!)


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「というわけだ!リョーちん!んっ?リョーちん??」


宮城は、流川、白田と話している。

「あれは、センターの動きじゃないな。」

「うす。」

「やつには、外でも簡単にボールを持たせちゃならねぇ。」

「はい。」

「全力で止めにいくぞ!」




(彼の実力はまだまだこんなもんではないでしょう。)

彩子は、安西の言葉を思い出す。

(どうやら、安西先生の悪い予感は的中したようね・・・。
いや、初めからわかっていらっしゃったのかしら。)

『チラッ。』

安西を見る彩子。

「・・・。」

安西の眼鏡が、怪しく光っていた。




「青森酒田にセンターがいないから、あいつがやっているだけで、元来あいつは、センターじゃねぇ。」

と烏山。

「ポジション不問の生粋のポイントゲッターダス。」

「だから、美紀男もやられたんだよな。」

「インサイドは止められても、外は止められなかった・・・。」

パウエルについて話す、山王選手たち。




「やっぱり・・・。」

「やっぱりというと?」

「おかしいと思ったのよ。山王の河田君相手に、
10cmも低いパウエル君が、ゴール下でそう簡単に得点が奪えるわけじゃない。
だとしたら、ほかに何かあるんじゃないかって。
そうでもないと、柳葉君を抑えて、東北の得点王なんか無理だわ。」

「そっか。インでもアウトでも点が獲れるからこそ、得点王にもなった。」

「パウエル君の本気。要チェックだわ。」




第2Q序盤。


ついに東北のMVPが、その実力を発揮する。



酒田 27
湘北 24







続く。

#287 【湘北の逆襲】

2010-03-24 | #11 湘北 選抜編
酒田 25
湘北 20




安西の作戦、そして桜木の思惑が交差するなか、第2Qが開始された。



湘北のオフェンス。

宮城が機敏な動きを見せる。



『キュッキュ!』


『ダムダム!』


隙あらば、リングを狙う攻撃的なドリブル。


『チラッ。』

桜木を一瞥する宮城。


(何やってやがる!早く、開け!!)



桜木は、ミドルポジションにて、位置取っている。


(焦るな、リョーちん。)

少しにやけると、外に開いた。


「オッ!」

つられて、外に開くパウエル。



『キュ!』


「へい。」

その瞬間、桜木と入れ替わるように、流川がミドルに入り、ボールを要求した。




「流川がインサイド!!」

「ミスマッチを利用し、中で攻める気だ!!」




(そうぐるが!)

一瞬、困惑したSF田中であったが、重心を低く保ち、流川の背後で粘りのディフェンス。



『バス!』

流川にボールが渡った。




「いけーーー!!流川!!!」

「守れ!青森ーー!!」




『クルッ!』


流川はボールをもらうや否や、スピンムーブを繰り出す。


『ダム!』



『シュパ!』


ワンドリからのレイアップを決めた。




「流川が決めた!!!」

「さすが流川ーー!!」

「速い!そして華麗だーー!!」




「いいぞ!流川!」

「うす。」


安西の作戦通り、流川が幸先良く、インサイドから決めた。




「キャ!流川君!!」

「いい1本でしたね。」

「今のは、相手の意表をつきましたから。次からが勝負ですよ。」

湘北ベンチもほっとするが、一切油断はない。




観客席の山王。

「桜木を外して、ミスマッチの流川でインサイド勝負を選んできたダス。」

「妥当だな。」

「遅い。俺なら、しょっぱなから、インサイドで勝負したぜ!」

「・・・。」


誰も沢北に答えない。

(無視か・・・。エースに冷たいのは、山王の伝統か・・・。)




一方、インサイドを外された桜木。


(流川め、いまのうちに喜んでろ!このQを支配するのは、この桜木だ!ハッハッハ!)

眼はぎらついていた。




酒田 25
湘北 22




青森酒田のオフェンス。


PG松山がボールを運ぶ。


(!!)


湘北は、作戦通り2-3のゾーンを敷いた。


「ミナサーン!ゾーンデスヨ!!」

パウエルが、声をあげる。




「そして、パウエル封じとして、2-3のゾーンできたダス。」

「妥当だな。」

「遅い。俺なら、しょっぱなから、ゾーンを指示する。」

「・・・。」

先程同様、誰も沢北に答えない。


「こらぁ!美紀男!柳葉!!答えろ!」

「・・・。ふぁい。」

『コク。』

しぶしぶ相槌を打つのであった。

「最近の若いやつは、先輩の話も聞けないのか。
俺なんて、返事しないだけで、河田さんに、グイとかグギとかな・・・。」ぶつぶつ。




「マンツーマンを十八番とする湘北が、パウエル君を抑えるために、2-3か・・・。
取ってつけたような2-3が、果たして青森酒田に通用するかしら・・・。」

不安そうな弥生。




松山、新山、田中のアウトサイド陣は、すばやくパスを回し、ゾーンの隙を作ろうとするが、
湘北のゾーンは、なかなか崩れない。

それもそのはずである。



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<<回想>>


陵南との合同練習。


安西と田岡の会話。

「安西先生、だいぶ湘北の2-3も板についてきましたね。」

「はい。陵南選手たちのおかげです。」

「いやいや。こちらも湘北選手のおかげで、2-3の攻め方、
そして、湘北2-3の攻略をさせていただいているのですから。」にやり。

安西は、陵南との合同練習において、すでに2-3ゾーンの練習をさせていた。


(成長してるとはいえ、桜木君には、まだ赤木君のようなディフェンスの威圧感は備わってない。
しかし、彼ら3人でなら、守れるはず。)


170台の前列は、アウトサイドシュートに極端に弱くなっていたが、そこはスピードでカバーし、
190台の並ぶ後列は、高さと守備範囲の広さが安定したディフェンスを見せていた。


(これなら、全国でも通用するはずです。Bクラスまでなら・・・。)



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シュートクロック 3秒


攻め倦む酒田。




「時間がないぞーー!!」

「シュートを打つんだ!!!」




SF田中が、柳の上から苦し紛れのシュートを放つ。




「リバウンドーー!!」

「スクリーンアウトだーー!!」




『ガシ!』


『ガシ!』


「む!!」

「サムラギ!」


ボールに跳びつく影はひとつだけ。

流川がPF吉田を、桜木がCパウエルを抑え込んでいた。


「よし!」

余裕を持って、リバウンドを獲る白田。


「宮城先輩!」

ボールは、すぐにパスアウト。



『キュ!』


同時に、柳がサイドラインを駆け上がる。


「おらーー!いくぞーー!!」


『キュッ!!』


『ダムダムダム!!』


白田を残し、桜木、流川も競うように、酒田ゴールに向かう。




「速い!!!」

「でたーー!!湘北の速攻!!」



『バス!』


『ダム!』


宮城と柳のツーメンに、流川がなだれ込む。


「決めて来い!」

「うす。」


流川は、第1Qまでのうっぷんを晴らすように、大きな跳躍を見せ、ワンハンドでボールを掴んだ。



「なぜに流川にパス!!!」


桜木は叫ぶが、流川はお構いなしに、ボールをリングに叩き付ける。



『ガシャァァァ!!!』




「流川のダーーーーンク!!!」

「流川がのってきたーー!!!」

「さすが、湘北だーーー!!!」




「流川君!!」

「ナイッシュ!流川先輩!!」

観客が、湘北ベンチが、騒ぐ。




「相田さん!!」

「言わなくてもよろしい。」

(このゾーン、とってつけたものではないわ。しっかり、役割分担され、付け入る隙もない・・・。
しっかりと仕上げてきている。やるわね、安西先生。)



安西の選んだ作戦が、功を奏して、1点差に詰め寄らせた。



酒田 25
湘北 24







続く。

#286 【安西の作戦】

2010-03-19 | #11 湘北 選抜編
酒田 25
湘北 20




第1Qが終了した。




「あの湘北がリードを許すなんて!!」

「湘北は調子が悪いのか!!」

「酒田凄いぞ!!」

「湘北は陵南を倒したんだろ??」

観客は予想外の結果に、戸惑っている。




「ちゃんと週刊バスケットボールを読みなさいよ。私は、青森酒田をA評価と書いたはずよ。」

観客に対して、不機嫌になる弥生。

「まぁまぁ、ここにいる全ての人が、週バス読んでいるわけじゃありませんからね。」

苦笑う中村。

「でも、この強さは・・・。」

(AA評価でもよかったかもしれないわ・・・。)




「湘北はだらしないな。」

と沢北。

「なんとか、盛り返したように見えましたが、やっぱり流川さんと春風が抑えられていますね。
あっ、桜木さんもだけど・・・。」

と福原。

『コク。』

柳葉がうなずく。


「今は、白田でもっているというところダス。」

と加藤。

「新山も田中も地味な顔のくせに、ディフェンスがうめーからな!」

「烏山も十分地味だぜ。」

「うるせー。だから、俺だって、おしゃれ坊主にしてんだろ!」

「なぬ。そうなのか、俺はてっきり怪我の痕だと思っていたぜ。」

「こら、エージ!!」

烏山と沢北のやり取り。




第1Q序盤、酒田にペースを握られかけた湘北だったが、スピードガード宮城を中心に、速い展開でゲーム進めた。

宮城が、柳が、流川が、酒田コートを切り裂き、ゴールを奪う。

だが、青森酒田のPG松山は、このアーリーペースな展開を嫌い、冷静にハーフコートで、オフェンス展開をすると、
速さ、高さを兼ね備えたパウエルが、桜木を圧倒、早くも10得点3リバウンドを記録。

宮城は、中盤から終盤にかけて、比較的マークの甘かった白田を多用すると、
白田はその想いに応え、パウエルに次ぐ8得点を奪った。



自分のマークマンのパウエルが活躍していることに苛立つ桜木。


『イライライラ・・・。』


執拗なディフェンスにあい、第1Q序盤のようなプレーが出来ない流川と柳。


『メラメラメラ・・・。』


『ギラギラギラ・・・。』


ともに、フラストレーションを溜めていた。


そして、宮城も。

(くそう。結局、主導権を握ることはできなかった・・・。
勝つための最低条件と言われていたのに・・・。)


「宮城君がゲームの主導権を握る。これが、湘北が勝つための最低条件です。」


この言葉を聞いているのは、コート上では宮城一人。

第1Qの内容について、人一倍の責任を感じている。



「うむ。仕方ないですね。手は早く打ったほうがいい。」

安西が席を立つ。

「パウエル君の調子がいいようですが、彼の実力はまだまだこんなもんではないでしょう。
そこで、第2Qは、彼を早めに封じます。」

「どうやってでしょうか?」


「みんなで守る。これだけです。」


「あれを出すんですね。」

「なぬ。それでは、この天才が負けたみたいではないか!」


「いや、実際負けているし。」

「初めから、勝てると思ってないし。」

「期待0。」

宮城、柳、流川の順で答える。


「おのれ!!サル風もキツネも点が獲れてないくせに!!」


「いや、花道0点だし。」

「俺4点。」

「6点。」

宮城、柳、流川の順で答えた。


「おのれーー!!天才を侮辱しおってー!!」


『バシ!』

彩子のハリセン。

「最後まで、先生の話を聞きなさい。」


「ディフェンスは問題ありませんね?」

「はい。」

「うす。」

「意義あり。」


「では、オフェンスです。」

「こらぁ!オヤジ、無視するな!!」

「現状、柳君と流川君は抑えられています。」


「ぬっ。」

「・・・。」

「ははぁー。やっぱり、オヤジもそう思うだろ。負けサルと負けキツネめ。」


『バシ!』

「彩子さん・・・。」


「白田君が当たっている以上、インサイドで攻めていきます。」

「俺とハクタスで点を獲れということだな。わかったぞ!!」

「桜木君は、パウエル君を連れて、大きく外で広がってください。もちろん、リバウンドは獲りにいく。
シュートレンジで、ボールをもらったら、狙ってもかまいません。」

「ん!?」

「どういうことだ!?」


「インサイドで勝負するのは、流川君です。いくら、ディフェンスの名手といえども、8cmのミスマッチ、
しかも流川君をインサイドで抑えることは簡単ではありません。」

「なっなぬーー!!流川がインサイドだとー!!断じてありえん!!」


『バシ!』

「いちいち騒がないでいいから!!」

「ぬ・・・。」


「わかりましたね?流川君。」

「うす。」


(なぜに流川。)ぶつぶつ。

納得のいかない桜木。




対する青森酒田ベンチ。


「マッサン、イイデスネ!」

「パウエルもええ。」

「新山、田中もよぐ抑えてる。この調子でいぐんだ。」

「んだ。」

方言訛りと片言の日本語が跳び交う酒田ベンチ。




湘北は、パウエルをゾーンで抑え、流川がインサイドで得点を奪う作戦に変更した。


(いや、待てよ。・・・・・・、これって・・・・・・。)にや。

何か名案が浮かんだ桜木は、一人、笑っていた。


注目の第2Qが開始される。








続く。

#285 【主導権を取り返せ】

2010-03-18 | #11 湘北 選抜編
酒田 6
湘北 0




ドリブルスティール、そして、パスカットされた宮城。

湘北は、スタートダッシュで躓いた。




「先生・・・。主導権を握ることが最低条件だったはず。このままでは・・・。」

「大丈夫よ。晴子ちゃん、まだ始まったばかりだもの・・・。」

「・・・。」

相変わらずの無言を決めている安西。




(あのやろー。まじでうめーぞ。深津に近いものを感じる。
いや、深津以上に表情がわかりにくい分、厄介だ。)

だが、睨みをきかす宮城に、松山がこの日、初めて応えた。

「・・・。」にこ。

「!!何、笑ってやがる!!」

「おめーさ。さわがしいやつなんだべさ。」

「!!」

(訛り丸出しじゃねーかよ!)


「マッサン、ウマイネ!!」

騒ぐパウエル。

「うるさいぞ!バイエルン!!」

「サムラギ、ソーリー。」



(「まずは、宮城君がゲームの主導権を握る。これが、湘北が勝つための最低条件です。」)

宮城の脳裏に、安西の言葉が掠める。


(ちきしょう。訛りやろう相手に、俺は何をやってやがる!!)



そのとき。



『ブス!』


「ぐわーーー!!!」




「えっ!!」

「なっ!!」

「あっあれは!!」




「へへっ、リョーちん。なにぼーっとしてやがる!!」




「やぁだ!!」

と晴子。

「あのバカ。」

と彩子。

「ほっ。」

試合が始まり、初めて安西が口を開く。




「バカ!何しやがる!!」

「気合を入れてやったんだ!」

「試合中にカンチョーするやつがあるか!!」

「昔、ゴリにも同じことしてやったぜ!!」

「ぐっ。いてーよ、バカやろーー!!」

「あれこれ考えたって仕方ねぇんだ。リョーちんは、いつものリョーちんでいいんだ。
神奈川を制したPGだろ!気合をいれろ!!」



『バシ!』


宮城の蹴りが、桜木の尻に炸裂する。


「ぐふっ!」

「これでおあいこだからな!!」

(いつもの俺って何だよ!ちくしょう!)

「さぁ、いくぞ!」



「サムラギ!サシタ!!」

喜ぶパウエル。




「あれ、痛いんです。」

と尻を押さえるのは、観客席に座ったばかりの山王河田美紀男。

「俺もそう思うぜ。」

痛みのわかる男沢北もうなずいた。




エンドラインの宮城から、柳へ。


「へい。」

宮城が、柳のボールを呼んだ。


『ダムダム・・・。』


「柳!」

「宮城さんは、少し見ていてください。」

「なっ!」

柳は、そういうと一気に酒田コートへドリブルを進める。




「#9が、ボールを運んでいる!!」

「ポジション替えか!!」




「ちょっと、柳は何考えてんだよ!!」

「キャプテンにボールを戻せ!!」

湘北ベンチの言葉に耳を傾けることなく、柳は、ゴールに向かう。




「!!!」

「!!」

一瞬にして、最高速に持っていった柳に新山は遅れをとった。


瞬時に抜く。




「柳がいったーー!!!」

「新山を抜きやがったーー!!」




インサイドへ切れ込む柳の前に立ちはだかるセネガルの刺客パウエル。


「OK!」


最高速度から、凄まじい跳躍を見せる柳。

パウエルも続けて跳ぶ。




「高すぎるーー!!!」

「大人と子供だ!!」




四肢の長いパウエルは、シュート、パスコースを全て塞いた。



『ヒョイ。』


すると、柳は、アンダーパスで後方へ。

受け取ったのは、白田のスクリーンを利用し、フリーとなった流川。



『ザシュ!』


この試合、湘北初のシュートは、流川の鮮やかなミドルジャンパーであった。


ゴールを狙い続けた宮城&桜木ペアではなく、ワンチャンスをものにした柳&流川ペアが、あっさり2点を奪った。




「いいぞ!流川!!」

「よし!こっからだ!!」




酒田 6
湘北 2




ディフェンスに戻る湘北メンバーが宮城に一言ずつ放つ。


「宮城さんの持ち味は、スピードでしょ。ゆっくり攻めてたら、相手のいいカモですよ。」

「なっ!!柳!」


「速いオフェンスのほうが、湘北のペースに持っていけます。」

「なっ!!白田!」


「頭で考えず、体を動かす。」

「なっ!!流川!」


「ディフェンス、しっかりだぞ!リョーちん!!」

「なっ!!花道まで!」


(くそう、どいつもこいつも・・・。)


だが、宮城が苦笑う。


(ようやく、わかったぜ。主導権を握る。確実に1本じゃねぇってことだ。
俺らしく、湘北らしく、跳ばしていけという意味だったんだ。
俺としたことが、冷静という言葉に引っかかりすぎたようだぜ。)



「おい!てめーら!!このスピードキング宮城リョータについてきやがれ!!」

叫ぶ宮城。


「おうよ!」

「遅いつうの。」

「はい。」

「うす。」




「リョータのやつ、なんか顔つきが変わったわね。」

「柳君と流川君のオフェンスが、何かを気付かせた感じですね。」

「どんなに優れたPGが相手でも、宮城君が確実に勝てる部分がある。それがスピードです。
スローなオフェンスは、宮城君にも、湘北にも似合いません。
宮城君が、切り込むことができれば、ディフェンスは後手に回り、
流川君たちも攻めることができるでしょう。」

「では、ここからは湘北ペースですね。」

「一気に逆転よ!」

「ただ、そうはうまくいかないでしょうね。
宮城君がスピードにのれて、初めて互角。青森酒田はそれほどのチームです。」

「・・・。」

彩子、晴子の口から言葉は出なかった。



そして、その後も湘北は厳しい試合展開を強いられたのであった。



酒田 6
湘北 2







続く。

#284 【PG松山の実力】

2010-03-15 | #11 湘北 選抜編
酒田 2
湘北 0




青森酒田×湘北の試合が始まった。


先制点は、酒田のPF吉田。

桜木は初めて、ジャンプボールで負けるという屈辱つきであった。



「さぁ、1本。いくぞ!」

人差し指を立てる宮城。

「はい。」

『コク。』


「おうよ!」

(ジャンプボールの仕返しをしてやるぞ。)



宮城がゆっくりとドリブルをつきながら、酒田コート内へ入る。



『キュ!』


『キュ!』


「!!」


「!!!」


と同時に素早く動く2つの体。




「青森酒田の2人がすげーーディフェンスだ!!」

「湘北の得点源を抑える気だーー!!」




柳にはSG新山が、流川にはSF田中が、張り付くようなディフェンスを見せる。




「ここまでは予想通り。あとは、リョータが冷静にゲームを運べるか。」

と彩子。

「・・・。」

安西は沈黙を続ける。




「出たわね。」

「んっ?何がですか?」

「ったく。見ればわかるでしょ?青森酒田名物の吸盤ディフェンス。
あの2人が、山王のSG烏山君とSF柳葉君の得点を封じたのよ。」

「そっそうなんですか!?」

「何を今更・・・。」

「すっすいません・・・。東北のほうまで、取材が追いつかなかったので・・・。
流川君たちは、大丈夫でしょうか?」

「湘北にとって、ディフェンスの鍵がインサイドであると同時に、オフェンスの鍵は、流川君と柳君といっていい。
どちらにしても、湘北全員が、100%の力の出さなければ、勝てないわ。
青森酒田は、それほどのチームよ。」

(あとは、どう宮城君が存在感を見せるかね。)




(きやがったな。だが、あの2人を封じたからといって、湘北の得点が落ちるわけじゃねぇぜ!)にやっ。

桜木にアイコンタクトを送る宮城。


(へへっ。さっそくかよ、リョーちん!)


(俺と花道で、この試合の主導権を握る!!いくぜ!花道!!)



『キュッキュ!』


『ダム!』


『キュ!』


『ダム!!』


宮城の素早いフロントチェンジ。




「宮城のやつ、また速くなっている!!」

「しかも、低い!!」




だが。



『パシ!』


「ん!!」


「!!!!」

「リョーちん!!」

「宮城さん!!」


宮城が松山を抜き去ろうとした瞬間、PG松山が的確にコースに手を出し、ドリブルをカットした。



(うそだろ!!)


『キュ!』


転がるボールを拾い上げる松山。




「宮城さんが!!」

「スティールされた!!」

「リョータ!いいから、ディフェンス!!」

「速攻封じてください!!!」

湘北ベンチから、声が上がる。




(なんだ、こいつ。どっから、手を出してきやがった!!)



『ダムダムダムッ!!』


一気に駆け上がる松山。



「やろー!待ちやがれ!!!」

宮城が後ろから、猛追する。



松山のワンマン速攻。


先程同様に宮城が松山のドリブルを後ろから奪いにかかる。



『ダム!』


再び、フロントチェンジ。


(またかよ!!)


そして、宮城のコースを巧く抑えながら、レイアップを放つ。



『シュパ!』




「うわぁーーーー!!」

「上手いぞ!あのPG!!」

「湘北のターンオーバー!!」

「青森酒田が序盤からのっているぞ!!」




「マッサン、ナイッシュ!」


「ちっ!!」

(なんだ、こいつ。)

悔しい表情をする宮城。

「宮城さん。」

声をかける柳。

「あぁ、大丈夫だ。少し油断しただけだ。」

「相手は、相当な実力を持っています。気を引き締めていきましょう。」




「松山君は、地味で目立たないけど、優秀なPGよ。
彼の雰囲気に油断していると、一気に持っていかれるわ。」

「宮城さん・・・。」




酒田 4
湘北 0




宮城が再び、ゆっくりとドリブルを始めた。



『ダムダム・・・。』


(田舎くせー顔してるくせに、機敏に動きやがるぜ。)

松山を睨む宮城。


「・・・。」

無言の松山。



『キュッキュ!』


『キュッ!』


先程同様に、柳、流川は激しいディフェンスで、抑え込まれている。


(スタートから仕掛ける。相手も同じ考えってことかよ。なら、俺たちだって。)


「にぃ!!」

宮城のサインが桜木に送られる。


(OK!リョーちん!!)

「にぃ!」



『キュ!』


『クル!』


ゴール下の桜木は、回転を交え、一瞬にして、パウエルの背後を取る。

そして、パウエルを抑えた。


「ヌッ!」

「もらったぜ!」



『キュ!』


『ダム!』


『ビィ!!』



「くらいやがれ!!」


宮城が、ゴール下の桜木めがけて、弾丸パスを放つ。

ボールは、リングと同等の高さで、一直線に桜木へと向かう。




「高い!!!」

「いや、桜木なら獲れる!!」

「アリウープか!!」




「ナイスパァース!!」



『びよーーん!』


桜木がボールに跳びついた。



『バシ!』


「ん!!」


「!!!!」

「!!!」



「カットシマシタ!」


「おっおのれ!バイエルン!!一度ならず二度までも!!」




「おぉぉぉーー!!!」

「わぁぁぁーーー!!!」

「パスカットだ!!」

「パウエルのやつも尋常じゃない高さ!!」




「なぁーにー!!」

(あの高さのパスを意図も簡単にカットしやがった!!)



『ダン!』



「マッサン!」

パウエルから、すかさず松山へ。



(今度こそ!)


松山のドリブルを止めに入る宮城。



『キュ!』


『クルッ!』



『ダムダム・・・。』



「!!!!」

(速い!!)




「ぬわーー。何やってる!リョーちん!!」


宮城は、松山のバックロールであっさり抜かれた。




「リョータがあんなにあっさりと・・・。」

「キャプテン・・・。」

意気消沈の湘北ベンチ。



再び、松山のワンマン速攻。



『パサ。』


静かにネットを揺らした。


(こっこいつ。予想以上にうめーぞ・・・。)



試合開始直後、まさかの3本連続の失点。

主砲パウエル沈黙のまま、湘北は津軽の荒波に飲み込まれた。




酒田 6
湘北 0







続く。

#283 【青森酒田×湘北】

2010-03-12 | #11 湘北 選抜編
選抜優勝大会 3回戦 第6試合

青森酒田 × 湘北


過去に山王工業を倒したことのある同士のベスト8をかけた熱い試合が今始まろうとしている。



センターラインを境に整列する10名の選手。


『ウキウキ。』

微笑ましい笑顔を振りまく青森酒田のCパウエル。


「笑っていられるのも今のうちだぞ。バイエルン!!」

「サムラギトシアイ!タロシミ!!」

「エッエンジョイ、バスケットボール!!」

「OK!!」

笑うパウエル。


驚く宮城。

「花道が英語を使いやがった・・・。」

「ENJOYくらい・・・。」

「いや、花道にとっては奇跡だぜ。」

小声で話す宮城と柳。



「始めます!!」

審判が開始をコールする。


「お願いしやす!!!」



-----------------------------------------------

【青森酒田】青

PG…#7 松山 健二 173cm/3年
SG…#5 新山 千秋 183cm/3年
SF…#9 田中 武義 183cm/3年
PF…#4 吉田 幾三 197cm/3年
 C…#13 バリス・パウエル 202cm/3年


【湘北】白

PG…#4 宮城リョータ 170cm/3年
SG…#9 柳 春風 171cm/1年
SF…#7 流川 楓 191cm/2年
PF…#14 白田 豊 194cm/1年
 C…#10 桜木 花道 195cm/2年

-----------------------------------------------



センターサークル内に入る桜木とパウエル。

「かかってきなさい!」

「ハイ!」



『シュ!』

審判がボールを放る。

と同時に、会場が一気に爆発する。




「ショーホク!!ショーホク!!」

「酒田!酒田!酒田!酒田!」

「跳べ跳べ!桜木!!」

「行け行け!パウエル!」




『ダン!』


大歓声に後押しされるように、桜木とパウエルが跳ぶ。


『バシ!』


ボールに触れる両者の指先。



『キュ!』


『キュッキュ!』


ジャンプボールからの速攻を狙い、宮城と柳がスタートをきる。


「ふんぬーー!!」

「ハイヤー!!」


『バチ!!』



「なっ!!」

「えっ!!」


『キュ!』


足を止める宮城と柳。


ボールは、パウエルが粘り勝つ。

PG松山の手に収まるボール。


「やべっ!」

一気に方向転換し、戻る宮城と柳。




「桜木花道がジャンプボールで負けるなんて・・・。」

「初めて見ました・・・。」

驚く彩子と晴子。


「・・・。」

無言の安西。




「カチマシタ!!」

「おのれ!今のは勝ったうちに入らん!!」

(くそう!)

「ハイ!ソーリー。」



『ダムダム!!』


酒田のPG松山が、素早くボールを運ぶ。


(簡単に運ばせるかよ!)

必死に戻ってきた宮城が、後ろから松山のドリブルを止めにかかる。




「もう戻った!!」

「宮城、はえーー!!」




『ダム!』


「!!」

冷静にフロントトチェンジで交わす松山。


『バン!』


同じく、柳の跳び出しにより、フリーとなっているSG新山にバウンドパスが渡る。


『ダム!』


ワンドリから、SF田中を経由して、中のPF吉田に渡った。


「とめろ!白田!」

「ハクタス!!」


(当たり前でしょ!!)

気合を込める白田。



『ダム!』


吉田の力強いドリブル。

そして、体重を前にかけるように、跳ぶ。




「パワープレー!!!」

「力任せにいったーー!!」




「ぐっ!!」

吉田の体重を受け止める白田。


(強い!)



『バス!』


白田は、なす術なく、ゴール下のシュートを決められた。




「ふーーー。朝から観戦しているから、今日は最初から湘北の試合が観れますね。」

「フリーに近いアウトサイド陣ではなく、インサイド勝負を選択した。
やはり、酒田のオフェンスは、インサイドが起点。桜木君と白田君のディフェンスが重要になってくるわね。」

中村の言葉を無視するかのように、冷静な分析をする弥生。




「いいぞ!いいぞ!吉田!吉田!」

吉田のパワープレーに沸く青森酒田応援団。




「ヨッサン!ナイッシュ!!」




「こらぁー!ハクタス!!」

「よせ、花道!切り替えていくぞ!後輩の失点は、俺たちで獲り返す!」

「そうだったな。いくぞ!リョーちん!!」


白田は、一人考える。

(・・・。)


「んっ。なんだよ!珍しいなお前がにやけるなんて!」

柳が話しかける。

「んっ、そうか。にやけてたか。あは。」

「おかしなやつだ。桜木さんの菌が移ったか。」


再び、考える白田。

(山王を破った青森酒田のキャプテン吉田さん・・・。
俺の全てをぶつけるこれ以上ない相手だ!)


この後、白田が今までにない気合を見せるのであった。




酒田 2
湘北 0







続く。

#282 【評価A】

2010-03-11 | #11 湘北 選抜編
翌日、選抜優勝大会も3回戦を迎え、より一層の白熱した試合が行われていた。

勝利すれば、選抜ベスト8。

選手はもちろん、各校の応援団にも力が入っていた。




「1!2!3!ノオーーー!!!」

「1!2!3!ノオーーー!!!」



「押せ押せ!星川!!」

「押せ押せ!星川!!」




ベスト8一番乗りを果たしたのは、第1シードの山王工業。


PG加藤の危なげない試合運びで、全国の常連校石川県代表星川実業を相手に、
序盤から有利に試合を進め、3回戦とは思えないほどの圧勝劇で駒を進めた。

後半からは、来年主力となる2年生に大きな経験をさせるため、
堂本は、ベンチ入りする全ての選手に出場機会を与えた。


「上出来。」

髭をさする堂本。


そんな中、一人フル出場を果たした沢北は、余力を残しながらも、全得点の4割をあげる。



【沢北 栄治】 43P



現在、ダントツの得点王であった。


(まだまだだぜ。)にこ。




隣のコートでは、英語交じりの歓声が沸いている。




「デビット!!FIGHT!!!」

「GO!GO!ケビーーン!!」




沖縄県代表神海高校対香川県代表さぬき高校。


一方的に攻めるスタメン平均身長190cmを越える神海高校。

中心は、ハーフ&クォーターのデビット・平良、ケビン・比嘉、知念裕樹ジュニアの3人。


ゴール下で圧倒した神海が、王者山王工業への挑戦権を手にした。


「明日は、山サルとか。」

「海の怖さを教えてやるぜ!!」

「そりゃいいぜ!!」

「はっはっは!!」




観客席に座る湘北高校。

「予想通り、準々決勝第1試合は、山王と神海か。加藤は嫌いだけど、山王を応援したくなるぜ。
なぁ、流川?おまえも沢北とやりてぇーだろ?」


『コク。』

流川は、宮城の問いかけにうなずいた。


(素直にうなずくとは、こりゃ相当やる気だぞ。)にや。



『ガタ!』


「ヤマオーだろうが、沖縄3兄弟であろうが、関係ねぇ!
この桜木花道が全てぶっ倒す!!ハッハッハ!!」

観客席を立ち、腰に手を回し、高笑いをする花道。


「なぁ、リョーちん?」


『キョロ。』


「・・・。」

花道の周りには誰もいなかった。

宮城たちは、青森酒田戦に備え、アップのために、第2体育館へと向かっていたのであった。


「なぬ!!この俺をおいてけぼりにしおって!!」




体育館の廊下。

「いいんですか?桜木さん、怒りますよ?」

「いいんだ。ほっとけば。」

(とはいえ、今日の試合は花道が準主役だ。しっかり、動いてもらわなければならねぇ。
主役の俺のためにもな。)にや。

怪しい笑顔となる宮城。



湘北がアップをしているなか、体育館では、第3試合と第4試合が行われていた。




第3試合会場では、一際大きな歓声が沸いている。

地元福岡県代表博多商大附属高校の試合である。


昨年選抜2位、IHベスト8の無念を晴らすため、屈辱に燃える博多商大は、
25年連続全国大会出場の偉業を成し遂げ、この地元開催の福岡県大会に挑んでいた。

高校と地元の一体感もあり、博多商大と対戦するチームは、会場の雰囲気にのまれ、
本来の力を出すことが難しくなっている。




「博多!博多!博多!博多!」

「博多!博多!博多!博多!」

「博多!博多!博多!博多!」




(やりずれぇ・・・。)

(くそう!うるせーな!!)


だが、それだけではない。

博多のビッグ3と呼ばれた徳永、新庄、牧瀬を失ったにも関わらず、
チームは九州大会を4連覇し、その実力は昨年に勝るとも劣らない。

むしろ、基本に忠実で、組織だったプレーをしているため、
組織力という意味では、昨年以上であった。


2試合連続の100点ゲームで、ベスト8進出を果たす。


「俺の力で、博多を優勝に導く。兄貴、報告を楽しみに待ってろよ。」


にこりと笑うのは、背番号14、ジャージにはSHINJOの文字。

九州の誇る偉大な兄、新庄雄銀の3つ下の弟、新庄雄健であった。




第4試合の会場では、県の強豪校堀高校を破ったIHベスト8の福井県代表喜多島高校が、
縦横無尽にコートを駆け回っていた。



「走れーーー!!!」

「囲むんだーー!!!」



常にオールコートディフェンスを敷くその無尽蔵の体力は、相手の戦意を喪失させる。

また、身長の低い同校は、スピードとシュート力が特徴。

全ての選手が走れ、そして、全ての選手が外角を得意としていた。


「おっ。隣では、博多が勝ったようだね。」

「そうだな。相手にとって、不足はない。」

「今から、楽しみだね。」


IHベスト8同士の対戦が決まった。


ここまで、準々決勝は、第4試合までが終了し、ベスト8の残り4つの椅子をかけ、8校が熾烈な戦いを繰り広げる。




第5試合の会場では、京都府代表洛安高校と北海道代表札幌北陽高校がコート上に現れた。


「冬でも九州は暑いなー。」

と北陽高校は、九州の温暖な気候に体力を奪われている。

IHで湘北に敗れた洛安高校は、隣のコートを熱い視線で見つめている。


(勝ち上がって来いよ!湘北!!)

(必ずリベンジを果たす!!)


洛安選手たちにとって、眼の前の北陽高校は、眼中にない。

あるのは、打倒湘北の熱き思いだけだった。




第6試合の会場では、異質な雰囲気を放つ2つのチームがあいまみえる。


「サムラギ、シアイネー!」

褐色の肌にはえる緑のユニホームと白い歯。

選手たちの一番後ろを歩くのは、セネガルからの留学生バリス・パウエルであった。

前を行くキャプテン吉田、田中、新山、松山ら、東北を制した選手たちはみな冷静な表情を浮かべ、
無言で歩みを進める。




反対の出入口。


「バイエルン!悪いが、倒させてもらうぞ!」

神奈川県代表湘北高校の登場である。




「ショーホク!!待ってたぞーー!!!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!」

「桜木ーーー!!ぶちかませーーー!!」

「宮城!!お前を見に来たんだぞ!!」




盛り上がる体育館。

第6試合の観客席に座る多くの観客は、湘北に声援を送る。


「以前では考えられねぇな。」

「ふん。ようやく、庶民どもも俺の凄さをわかったか。ハッハッハ!」

「違うって。」

柳の鋭い突っ込み。


「先生。凄い声援ですね。」

「うむ。ありがたいですが・・・。うちには、マイナスかもしれません。」

「というと・・・?」

「調子に乗るのがいるからね。」

と苦笑う彩子。


(今日の主役は俺!!俺のゲームメイクが勝利に導く!!)

調子に乗る宮城。


(今日の主役は俺!!俺がバイエルンを倒して、勝利に導く!!)

調子に乗る桜木。


「宮城君、桜木君、ちょっと。」

『クイクイ。』


ベンチに宮城と桜木を呼び寄せる安西。



「なんだよ!オヤジ!俺はいま忙しいんだ。」

「今の心境はどうですか?」

「ふん。悪くねー!」

「最高です。」


「油断はしていないですね?」

「ったりめーだ!」

「もちろんです。」


「調子にのっていませんね?」

「・・・。ったりめーだ・・・。」

「・・・。もちろんです・・・。」

少しだけ言葉の詰まる2人。


「なら、よろしいです。今日の試合は、2人にかかっています。
宮城君は冷静に主導権を、桜木君は確実に制空権を奪ってください。よろしく頼みますよ。」

「おうよ!!」

「はい!!」


(ふー。あぶねぇ。少しだけ、調子に乗っていたかもしれねぇ。)


「よう、花道!」

「ん?」

「試合中に調子に乗るのは悪くねぇ。だが、試合前から、のっちまうのは、問題だ。
相手は、山王を倒したことのあるチーム。しかも、G、F陣には、いいディフェンダーが揃っていると聞く。つまり・・・。」


「つまり、序盤は冷静になって、俺たちが試合を有利に運ぶってことだろ?リョーちん。」


「ぬっ!わかってんじゃねぇか!!」

「少しあぶねぇところだったが、オヤジの言葉で思い出したぜ。
試合前に調子にのっても、ろくなことはねぇからな。」

(花道のやつ、海南戦の教訓をちゃんと理解してやがる。
ホント、こいつの精神的な成長には驚きだぜ。)


「さぁ、俺とリョーちんで酒田を倒すぜ!」

「あぁ!いくぞ!」

「おうよ!!」


安西の一言で、平常心を獲り戻した宮城と桜木。


だが、2人の前には、暗雲が立ち込める。

まもなく、評価A同士の注目の試合が、行われる。








続く。