goo blog サービス終了のお知らせ 

うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#281 【コンタクト】

2010-03-08 | #11 湘北 選抜編
湘北高校が宿泊する『めんたいこ荘』のロビーでは、
安西、宮城、彩子、晴子の4人で、翌日に行われる3回戦の作戦会議を行っていた。


「パウエルは花道、吉田は白田、インサイドは酒田のほうが有利か・・・。
どっちにしても、花道のリバウンドが重要だな。」

「そのためにも、みんながしっかりスクリーンアウトをしなければならないわ。」

「SF田中武義さんの身長は、183cmと流川君と8cmも違います。
このミスマッチを利用する手はありません。」

「うん。流川にも、リバウンドに入ってもらったほうがよさそうね。」

「それがいい。」


「その田中さんですが、東北大会でも県予選でも、目立った数字は残していません。
やはり、酒田戦は、今まで以上に流川君をオフェンスのメインとして攻めたほうがよろしいですね。」

「どうですか、先生?」

「うむ。いいでしょう。流川君には、攻守にわたり、エースとして湘北を引っ張っていく役目がありますから。
ただ、田中君は要注意人物と考えられます。」


「そっそうですか。」

(数字ではわからないけど・・・、安西先生にはなにか引っかかる部分があるのかしら・・・。)



「SGの新山千秋さんは、183cmです。毎回といっていいですが、柳君とミスマッチが生じます。」

「約12cmか・・・。」

「俺のところもそうだけど、どうしてもアウトサイドで、身長差が出やがる。」

「それは、今に始まったことではないですから、柳君なら大丈夫です。そして、宮城君も。
湘北には、10cmの身長差もカバーできるスピードスターが2人もいます。
ですが、田中君同様、新山君も要注意人物なことに変わりはありません。」


「!!」

(まただわ。安西先生は、なにかに気付かれている。)



「最後は、PGの松山健二さん、173cm。宮城さんと変わらない身長です。
スピードを考えると、ここは宮城さんの優勢かと思います!」

「晴子ちゃん、ありがとう。」

「本当のことですから。えへ。」

「油断は禁物ですよ。松山君も相当な実力者だと思います。
山王の加藤君に勝てるPGは、全国探しても、5人も見当たらないでしょう。
その中の一人ということは、もしかすると、宮城君より上かもしれません。」


「!!」

(!!)


「・・・。そうですね。安西先生の仰るとおりです。
もしそうならば、松山も倒して、加藤も倒して、No.1ガードになります!」にこり。


「リョータ。」

「宮城さん。」

「うむ。宮城君。明日は任せましたよ。」

「はい!!」



「数字的に見ると、パウエルさん以外に目立っていい成績を残している人はいないんですけどね。
強いていえば、PFの吉田さんくらいかな・・・。」

腑に落ちない表情を見せる晴子。

「全国初出場でいきなりのA評価。実力は未知数だけど、過大評価ってこともありえるわね。」

「でも、あの山王を倒したことには変わらねぇ。Aでも、AAでも、俺たちは目の前の敵を倒すだけだ。」

「それもそうね。今更、そんなことを考えていてもしかたないもんね。」


3人の話が終わった頃、安西が静かに口を開いた。


「一概に言えませんが、山王を倒したことのあるチームのPGは、みなトップレベルの選手ばかりでした。」

「今年だけに限っていうと、加藤に勝ったのは、IHの仙道と国体の愛和織田、そして東北大会の松山しかいない。」


「やはり、松山君は相当の実力者と考えるほうが正しい。」


「数字に現れない部分というと、ゲームメイクですか・・・。」

「そうなるでしょう。まずは、宮城君がゲームの主導権を握る。
これが、湘北が勝つための最低条件です。」

「主導権・・・。わかりました。必ず、主導権を握ります。」

「リョータも山王を倒したチームのPG!きっと勝てるわよ!!」

「おう!!」


「次に、SGの新山君とSFの田中君。彼らはきっとディフェンスの選手でしょう。
山王のピュアシューター烏山君の3P、そして昨年の選抜得点王柳葉君を
抑えられるほどのディフェンダーだと私は思っています。
柳君、流川君も思うように得点を奪えるかわかりません。
そのときこそ、宮城君のゲームメイクで、打破してください。」

「はい!」


「そして、パウエル君。彼の身体能力は、河田君を超えています。」

「河田って弟のほうですか?」

「いや、雅史君のほうです。」


「!!!」

「!!!」


「ですが、バスケットボール選手としてのスキルは、河田君よりは落ちる。」

「つまり、森重くらいですか?」

「もしくは、それ以上。」


「!!!」

「!!」


「どえらい留学生だな。こりゃ。」

「サイズの山王河田君、パワーの名朋森重君、そしてリバウンドの桜木君。
高校3大センターといわれている3人の上をいくかもしれないセンターパウエル君・・・。」

「桜木花道にとっても、湘北にとっても、明日の試合は正念場ね。」

「違いねぇ。」




その頃、柳と白田は、風呂にいた。

「スタメンでも先輩たちのあとだもんな。」

ちょっと不満そうな柳。

「仕方ないさ。コート上では実力主義でも、コート外はやっぱり年功序列なんだよ。
たぶん、桜木先輩だって、偉そうだけど、いつも偉そうにしているわけじゃないと思うよ。
バスケに関係ないところでは、きっと先輩を立てているはずだよ。」

「そうか?」

「そうさ・・・。」

「本当にそう思うか?」

「たぶん・・・。」

(いや、違うな。)

苦笑いをする白田であった。




桜木の部屋では。


『もみもみ・・・。』


「もっと右だ。いや、もっと右!」


『もみもみ・・・。』


「こっここですか?」


『もみもみ・・・。』


「うむ。いいぞ。」


桜木の背中をマッサージする安田。


と石井。


と桑田。



(なんで、僕たちまで・・・。だから、桜木君と相部屋はいやだったんだ・・・。)

(流川君と一緒の部屋の佐々岡は、ラッキーだったな・・・。)


石井たちは、安田の巻添えをくらっていた。


「うむ。3人とも巧いぞ!優勝するまで、頼むぞ!」

「えぇぇーー!!!」

大きな声を揃える3人。

「ハッハッハ!!」


桜木の辞書に、年功序列という文字はなかった。




流川は、小川道を、イヤホンで音楽を聴きながら走っている。


『タッタッタ・・・。』


『♪♪♪#%♪♪&#$♪』


「ん?」


前方から、音楽を聞きながら、走ってくる浅黒い男。


『タッタッタ・・・。』


『♪♪♪#%♪♪&#$♪』


「ん?」


『タッタッタ・・・。』


目線が合う。


『♪♪♪#%♪♪&#$♪』


保つ平常心。


『タッタッタ・・・。』


すれ違う2人。


『♪♪♪#%♪♪&#$♪』


振り返ることはない。


『タッタッタ・・・。』


浅黒い男は、流川の気配がなくなったところで、小さくつぶやいた。


「ふっ、流川のやつ。先輩に挨拶くらいしろ。」

小さく笑った。


一方、流川も、浅黒い男の気配が完全になくなったところで、静かにつぶやいた。


(沢北・・・。)


今大会、2人にとって、初コンタクトは、実に静かなものであった。








続く。

#280 【青森酒田作戦会議】

2010-03-05 | #11 湘北 選抜編
湘北高校が宿泊している旅館『めんたいこ荘』


ロビーのソファーに座っているのは、監督安西、キャプテン宮城、マネージャー彩子。

他の選手らは、自由時間を過ごしていた。

ロビーの3人は、本日行われた宇都宮第三高校とのスコアシートを手に取り、話し合っている。



-----------------------------------------------------------------------

【スコアシート】

選抜優勝大会 2回戦 第1試合

湘北 × 宇都宮第三


湘北 36 23 17 30 106
宇三 12 24 30 16 82


第1Q 宮城・柳・流川・白田・桜木

第2Q 宮城・柳・緑川・角田・白田

第3Q 安田・潮崎・緑川・角田・白田

第4Q 柳・緑川・流川・白田・桜木


#4 宮城 8P 9A
#5 安田 0P 3A
#6 潮崎 4P 
#7 流川 28P 6R 8A
#8 角田 6P 
#9 柳 12P 4A
#10 桜木 18P 11R
#14 白田 17P 14R
#15 緑川 13P


-----------------------------------------------------------------------



「やっぱり、ヤっちゃんたちが出場すると、極端にオフェンス力が落ちるわね。」

「ディフェンスもだぜ・・・。」

「全国の代表校相手には、実力不足も否めないわ・・・。」

「この先は、やっぱ俺たちで勝ち進んでいくしかないか・・・。」

「最後の大会だし、みんなで勝ち進んで行きたいけど、最後の大会だからこそ、優勝もしたい・・・。」

宮城と彩子の会話を静かに聞いていた安西が口を開く。


「安田君たちは、3年間必死に頑張ってきた。
彼らが、もし他の代表校の選手たちに劣っていると思うなら、それは私の責任です。」

「先生・・・。」

「安西先生。」


「試合に出場していなくても、彼らはみんなと一緒に戦っています。
みんなで勝ち進んでいきましょう。」


「!!」

(そっそうだったわ。試合に出ていないから、一緒に戦っていないってわけじゃないもの・・・。
私ったら、なんていうことを・・・。)

「ヤスがベンチから、声をかけてくるから、俺は冷静になれる。
例え、試合に出場していなくても、一緒に戦っているんだよな・・・。」

「湘北は、選手もベンチも応援団もみんなで戦っているんです。だから、ここまでこれた。そして、これからも。
次の青森酒田戦もみんなで勝利を掴み取りましょう。」

「はい!」



(リョータ・・・。)

柱の影から、こっそりと3人の話し合いを聞いていた安田。

(先生もマネージャーも・・・ありがとう。)

安田は、考え事をしながら、部屋に戻っていった。




ソファーに座っている3人は、明日の対応について、話をしている。

彩子は、晴子を呼び、青森酒田のデータを安西に提出させた。

「青森酒田の要注意人物はなんといっても、このパウエルさんです。
東北大会の得点王、リバウンド王、そしてMVPであり、全国的に見ても、トップクラスのCかと思います。」

「先生、ここはゾーンで・・・。」

「いや、そんなことをしたら、花道が暴れるぜ。」

と宮城は苦笑い。


「ふむ。パウエル君は、桜木君に任せましょう。
彼に勝てないようなら、森重君や河田君には勝てません。」

「河田さんやお兄ちゃんたちとやってきた桜木君だし、大丈夫ですよ。きっと・・・。」

「そうね。相手が強いほど、燃えるタイプだし。」

「ただ、早めに手は打っていきます。」




「ヘッヘッヘックション!!誰だ、天才の噂をしておるのは!」

部屋でストレッチをしている桜木は、そわそわしている。


(まだか、まだか!)


『コンコン!』

ドアを叩くノックの音が聞こえた。


(キターーー!!石井どもは風呂!最高のタイミングーー!!!)



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

2回戦終了後の桜木と晴子の会話。


「桜木君!背中は、どう?」

「全然問題ないっすよ!アハハハハ!!」

「なら、よかった!全国大会は、毎日が激戦だし、その分、体力の消耗も激しいから、しっかりケアしていかないとね。
旅館に帰って、お風呂入ったら、マッサージしてあげるから、部屋で待ってってね。」

「はっはい!!!!」


(ハルコさんが、部屋でマッサージ・・・。しかも、風呂上り・・・。)

桜木は、浴衣に着替えたハルコを想像していた。


(天国にいってしまいそうです・・・。)


-----------------------------------------------------------------------



「今、開けまーーす!!」

満面の笑みを浮かべて、勢い良くドアを開ける桜木。


『ガチャ!』


桜木の眼の前に立っていたのは。



「なぜに、ヤス!!!」



「なぜにって??」


『キョロキョロ。』

ドアを全開に開けて、外を見回す桜木。


「ハルコさんは?」

「晴子ちゃんは、下で会議中だよ。」

「ぬわんとーーー!!どういうことだー!!俺のマッサージタイムがーーー!!!」

「僕が、マッサージしにきたのわかったの?」

「なぜに、ヤスにされなきゃならんのだ!!!俺は、浴衣のハルコさんがよいのだ!!!」

怒鳴る桜木を無視するかのように、安田が話し始める。


「やっぱり、僕たちじゃ、他のチームの選手に敵わない・・・。試合に出場しても、足を引っ張ってしまう。
今日つくづく感じたよ。陵南との合同練習で少しは自信がついていたんだけどね。あは。」


「ん?」

大人しく安田の話を聞き始めた桜木。


「だから、少しでも違うところで、チームに貢献できればいいなって。
それで、明日、パウエルとやる桜木のことを思い出して、背中のマッサージをしてあげようって・・・。」

「うむ・・・。」

考える桜木。

「そうか。ヤスは、いいやつだな。」


『キョロキョロ。』

再び、外を見回す桜木。


(部屋にヤスが来たことをほかのやつらに知れたら、何いわれるかわからないからな。)

「よし、ヤスの思いを受け取ってやる。入れ。」


(うっ。凄く偉そう・・・。やっぱ、止めときゃよかったかな・・・。)

少しだけ後悔する安田であった。




一方、ロビーでは、まだ作戦会議が行われている。


「キャプテンのPF吉田幾三さんは、パウエルさん加入前までは、チームの得点王でした。
吉田さんを抑えることも勝利のポイントだと思います。」

「陵南の黒川のようなパワータイプのようね。」

「2週間、黒川や福田と練習してきた白田なら、問題はないだろう。」

「ここにきて、あの練習の重要性がわかりますね。」

「さすが、安西先生です。」

「私は、場を提供したまでです。みんなが頑張ったからこそ、私たちは今ここにいるのです。
さぁ、次は・・・。」

作戦会議は、まだまだ続いている。




その頃、桜木の部屋では。


『ガチャ!』

ドアを開ける風呂上りの石井たち。


部屋の中で、安田が桜木にマッサージをしている光景を見て、驚愕した。


「安田さん!桜木君!!」


(部屋で2人きりで・・・。)

(浴衣でマッサージ・・・。)

(そっそういう仲だったのか・・・。)


「ちっ違うぞ、これは!こらぁ!ヤスも何か言え!!」

「そういうこと。」

「違ーーう!!」

焦る桜木の行動が、更に疑いを持たせるのであった。








続く。

#279 【精神的な成長】

2010-03-04 | #11 湘北 選抜編
第4Qも終盤になっていた。

10点差あった得点差は、21点に開いている。


湘北  95
宇都宮 74




「バカモーーン!!」


『バチィン!!』


宇都宮第三のリング下で、声を荒げる桜木。


「そんなくだらんシュートは打つな!気持ちを込めろ!」

「はっはい。」


緑川の外したシュート、桜木がオフェンスリバウンドを掴み獲る。

ここに来て、緑川のメッキは剥がれかけていた。


全国大会初出場。

桜木、流川と初めて一緒のチーム。

無理やりに自信を植えつけているが、本心は大人しい目立たないタイプ。

プレッシャーが緑川を襲う。


(はっ入らない・・・。どっどうすれば・・・。)


3本連続のミドルシュートを外し、焦る緑川に跳ぶ桜木の怒声。

緑川は今、自信の全くなかった自分に戻ろうとしていた。


(やっやっぱり、僕は・・・。)


独りよがりなシュートが、更に自分を追い込んでいた。




「緑川の調子が悪くなってきましたね。」

「桜木花道と相性が悪いのかもしれないわね。」

「大丈夫ですよ。」

「そっそうですか・・・。」

「先生がいうなら・・・。」

心配そうな顔をしているのは、宮城と彩子。




(ちぃ、緑川のやつ、思いっきりシュートが打ててない。ったく。)

「緑川、大丈夫だ。もっと、自信を持って、打っていけ!!」

「でも・・・。」

「でもじゃない。外したって、ゴール下にはリバウンド王の桜木さんがいるんだ。
安心して打っていけ!な!!」

「うっうん。」


『ピクッ。』


大きな耳で、柳と緑川のやりとりを聞いていた桜木。


「春風君。今、なんと?」

「リバウンド王の桜木さん・・・。」

「うむ。よくわかっているな。キャプテンとして嬉しいぞ!」

(キャプテンじゃないし。
つうか、緑川に自信をつけようとしているのに、なんで桜木さんのほうが過敏に反応する・・・。)

苦笑いの柳。


(まぁ、結果オーライか。)


桜木が奪ったボールは、白田に渡り、流川へ。

流川から、白田への鮮やかなリターンパスが通り、シュートを決めていた。




「早く、戻れ。」

「うるさいぞ、キツネ。」

「サル風、キツネにはパスを出すな。」

「・・・。」

(仲がいいのか、悪いのか、ホントにわからない・・・。)



宇都宮第三のオフェンス。

「流川!抜かれていいぞ!」

「うるせー。」

「サル風とグリは、もう少し高めで当たれ!ハクタスは、後ろのカバーを頼む。」

ゴール下から、的確な指示を出す桜木。


5人のディフェンスの動きがよくなっていた。




「なんか、俺がいないほうが、ディフェンスよくないか・・・。」

「リョータというフロアリーダーが抜けたことで、みんなが声を出し、カバーしあっている。
それに、眼の上のたんこぶが抜けたことにより、桜木花道が生き生きと指示を出しているところが大きいわね。
三井先輩が抜けた後のリョータと同じだわ。うふふ。」

笑う彩子に答える宮城。


「なっ。俺はたんこぶだっていうのかよ、アヤちゃん。」

「さぁ、どうかしらね。おほほほ。」

「そりゃねぇぜ。」




『バシ!』


この日10本目のリバウンドを獲る桜木。


「サル風。」

「ほい。」


すかさず、パスアウト。


「へい。」

中央を切れてくる流川にパスが渡る。


「あぁ!また流川に!!」




「湘北の速攻ーー!!!」

「流川がいったーー!!!」




『ダムダム!!』


中央突破を図る流川。

左サイドから、緑川が並走する。




「2on2ーーー!!!」

「湘北!いけーー!!」

「守れ!宇都宮ーー!!!」




『ダムダム!』


ドリブルをする流川から、緑川にスピードを緩めろの合図。


(んっ。なんだ?)


流川が一気に加速し、リングに向かって突っ込む。

同様に宇都宮第三のPG、SGが、流川のシュートコースを塞いだ。



『クルッ。』


流川は、反転し、緑川にパスを送る。



『バス。』


流川は、2人のディフェンダーを背中で抑え、一言。



「打て。」

「あっはい。」

(流川さんは、俺のために、作ってくれたシュートチャンス。これは、絶対に決めなければならない。)


緑川は、背筋を伸ばし、綺麗なフォームのジャンプシュートを放つ。

そこには、先程までの逃げるようなシュートを放っていた緑川の姿はない。

自信と気合に満ちた力強いジャンプシュート。



『ザシュ!』



第4Qも終盤を迎え、緑川は、このQ初めてのシュートが決まった。


「よっしゃ!流川さん、ありがとうございます!」


『コク。』

軽くうなずく流川は、すぐにディフェンスに戻る。




「ふー。ようやく入ったな。」

と安心した表情を見せる宮城。

「やはり、メンタルな部分は弱いのかもしれないわね。変な自信はあるみたいだけど。」

「でも、今のシュートは、今までのシュートとは違った雰囲気だったような。
堂々としていて、しかも気合を感じたぜ。」


「宮城君のいうとおりです。」


「ん?」

「そういいますと?」

「シューターにとって、大切なもの、それは自信とパスを託してくれた仲間の気持ちに応える強い心です。
緑川君は、流川君が作ってくれたこのシチュエーションで、そのことに少し気がついたかもしれませんね。」

「流川君が気付かせた?」

「まさかねぇ。」

「ありえねぇだろ。」


「宮城君というフロアリーダーを欠いて、変わったのは桜木君だけじゃないのかもしれませんね。」


(流川のやつ、可愛いところもあるじゃない。)

一連の話を聞いていた晴子。


流川だけをハートになった眼で見つめていた。

(流川君・・・。ぽっ。)


(花道も流川も随分頼もしくなったじゃぇねかよ。)にこり。

宮城は、この日一番の笑顔を見せた。








続く。

#278 【大吉】

2010-03-02 | #11 湘北 選抜編
「はぁはぁ、ようやく辿り着いた。明日は、タクシー使いましょうね。はぁはぁ。」

「ダメよ。社は今、不景気と経費削減で大変なのよ。
使ってもいいけど、タクシー代は、中村君の給与から引いてもらうからね。」

「そっそんなー。」


『ガタ。』

記者席に座る弥生ら。


まずは、得点を確かめる。

(76対66・・・。思ってたよりも点差が開いてないわね・・・。
湘北に何かあったのかしら・・・。)


そーっと隣の記者のメモを覗き込む弥生。


(へーー、そういうことか。全国大会の雰囲気にのまれないようにするため、
まずは控えメンバーも試合に出場させたというわけね。さすが、安西先生というところだわ。
ただ、控え選手たちはその気持ちに応えられなかったようね。)

苦笑いをする弥生。


「Aランクの湘北が、Cランクの宇都宮第三に10点差って、何かあったのかな?ねぇ、相田さん。」

「さぁどうかしらね。」

「僕が思うに、たぶん、しょ」



『ビィーーー!!』



「第4Qが始まるわよ。」

「話の途中だったのに・・・。」




「押せ!押せ!宇都宮!宇都宮!」

「押せ!押せ!宇都宮!宇都宮!」

「押せ!押せ!宇都宮!宇都宮!」

「押せ!押せ!宇都宮!宇都宮!」

第3Qの勢いそのままに、宇都宮応援団は活気付いていた。




「凄い応援だ。」

「ふん、すぐに黙らしてやる!」

と白田に答える桜木。

「そうですね。それに、こっちのほうが、燃えそうですし。」

「ほう。ハクタスもだいぶ成長したんじゃないか。」

「桜木先輩と一緒なら、怖いもんはないですよ。」

「なぬ!なんという成長だ!!師として、俺は嬉しいぞ。」

「あはっ。」

(だって、桜木先輩がある意味一番怖いからな・・・。)


(このメンバーを選んだ安西先生の意図は、間違いなく、来年このチームでやっていくうえで、
一番足りないと思われるチームプレーの基礎がしっかりできるかどうかの確認だ。
ここは、1on1ではなく、組織で得点を獲らなければならない。
ただ、この人たちがそれをちゃんと理解しているか・・・。凄く不安だ・・・。)

柳の鋭い読み。


(・・・。)

流川は何も考えていない様子。


(もしかして、桜木先輩と流川先輩と一緒のチームでやるのは初めてかも・・・。
ちゃんとできるかな・・・、いやダメだ!そんな弱気じゃ!
彼らは、僕についてこれるかな!ハッハッハ!だな、桜木先輩的にいえば。)

緑川は、変な自信を自らに植え付けていた。


(はっきりいって、このメンバーでやっても、スタメンとそんなに劣りはしないはず。
あとは、チームワークの問題だ。柳、俺たちでうまく回すぞ!)

柳を見つめる白田。


『コク。』

(おっ、さすが、白田は理解しているようだな。桜木さんは、どうかな・・・。)

柳がちらっと桜木を見た。


(・・・・・・。ダメだ・・・。)


桜木の顔は、たるんでいた。

(リョーちんがいなければ、この桜木がキャプテンといってもいい!
ついに、キャプテン桜木の時代到来だ!!ハッハッハ!!)


「お前ら!!俺の足を引っ張るなよ!次期キャプテンの俺についてこい!ハッハッハ!」


(やっぱり、桜木先輩は、ダメか・・・。)

白田も肩を落とすのであった。




宇都宮第三ボールから最終Qが開始される。

マンツーマンでディフェンスをする湘北。


「こら!サル風!もっと腰を落とせ!!」

「グリは、声を出せ!!」

「ハクタス、そっちいったぞ!!」

「ぬっ!」

「!!!」




「ほうー。花道のやつ、しっかり声が出ているじゃねぇかよ。キャプテン気取りか。」にこり。

「なんか、赤木先輩みたいね。」

「彼なりに、宮城君がいないこの状況をどうすればいいか考えているのでしょう。」




(ゴリもいつも声を出していた!俺もキャプテンとして、庶民どもを従がえなければならん!)

多少の意味の食い違いはあったものの、桜木はチームを良い方向に導こうとしているのは、確かだった。


(いい声、出してますね。桜木さん。)

(桜木先輩が、しっかり指示している。これはいい方向に向いているのかも・・・。)

柳、白田も桜木の言葉を素直に受け入れる。


(だけど、問題はオフェンス。チームプレーで得点をちゃんと奪えるか・・・。やはり、不安だ。)

と柳。



『パシ。』


「流川さん!」


『バシ。』


流川がパスカット、柳にボールが渡る。


(よし!ここからだ!)


「ここ1本、慌てずにチームで点を獲りに行きましょう!」

と柳が声をかける。

「サル風が、天才に指示を出すとは、生意気な。」




「あら、柳もわかってるわね。リョータもうかうかしてられないわよ。」

「ふん、あいつは俺の背中を見てきたんだ。あぁでなくちゃ、困る!
だが、まだまだ俺の足元にも及ばねぇよ。」

自信満々で答える宮城。




『ダムダム!』


(さて、どうするか?)

柳は、ドリブルをつきながら、9人の動きを視野に捉える。


チラッと流川を見る。

(パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!パスくれ!)


チラッと緑川を見る。

(僕が決める!僕が決める!僕が決める!僕が決める!)


チラッと桜木を見る。

(俺に任せろ!俺に任せろ!俺に任せろ!俺に任せろ!)


(結局、1on1勝負になりそうだな・・・。チェッ!なら、こっちからだ。)

柳の選択は、流川。



『バス!』


「なぬっ!キツネに渡すな!サル風!!」


「ったく。」

呆れ顔を柳。


「ド素人は引っ込んでろ!」

流川が、高速ドライブを繰り出す。


宇都宮第三に流川のドライブを止められる選手はいない。

相手ディフェンダーを抜き去り、インサイドへ切れ込む。



『キュ!!』


宇都宮第三Cが、流川の進路を塞ぐ。




「ファウルでもかまわん!」

「とめるんだ!!」




ステップを踏む流川。




「上から叩き込むつもりだ!!」

「さすが、流川!!」

「いけーーー!!流川ーー!!」




『バス!』


「!!!」

「!!」


「んっ。」


「なっ!!」


「キツネ!いい選択だ!!!」

ボールは、桜木に渡っていた。




「うぉぉーーーーー!!!」

「流川が、あの場面で花道にパスかよ・・・。」

「自分でもいけたと思うけど・・・。」

「安全策をとったということかしら・・・。」

「いや、安全策なら流川が突っ込んだほうが、より確実。」

「どういうことかしら・・・。」

「流川君の選択は、チームプレーということでしょう。ほっほっほ。」


「チームプレー!!」

湘北の控え選手の声が揃う。


「あのチームで・・・、ありえない・・・。」

「なにかが起こりそう・・・。」




だが、驚きはこれだけではなかった。

流川が突っ込み、インサイドディフェンダーを引き寄せ、そして桜木にパスをした。

その桜木にカバーディフェンスが入る。

身長、跳躍、タイミング、どれをとっても桜木に分があった。



だが。



『ヒョイ。』


「!!!」

「!!!」


「ハクタス。くれてやる。」

桜木からアンダーパスが白田に渡った。



『ザシュ!』


ノーマークの白田がゴール下のシュートを決めた。


「桜木先輩、ナイスパスです。」

「フン、トーゼン!」




「花道までパス!!」

「今のも、普通に打てただろう!」

「流川君も桜木君も、ちゃんとノーマークを見つけて、パスを出しましたね。」

嬉しそうな晴子。

「あの子たち、ちゃんとチームプレーができているじゃないの。」

「問題はなさそうですね。ほっほっほ。」




(・・・。予想外の展開。)

少しほっとする柳。


流川の思考。

(センドーと同等のパスセンスを磨く。)


桜木の思考。

(得点もリバウンドも、アシストも流川より上をいく!!)




「一応、大吉と出たかな。」

宮城は軽く微笑んだ。








続く。

#277 【ギャンブル】

2010-03-01 | #11 湘北 選抜編
「ったく、中村君!早く早く!!」

「相田さん、ちょっと待ってくださいよー!はぁはぁ。体力が・・・。
僕もバスケしようかな・・・。はぁはぁ。」

駅から体育館に走っている弥生ら。

「もう、試合は終わってるかもしれないわよ!」

「そんなー。」



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

第3Q

湘北は、再び選手の交代をした。


「安田君、潮崎君、緑川君、角田君、白田君の5人でいきます。」


(ちょっと、厳しいメンバーかもしれないわ・・・。)

と思う彩子。


ふっと察知した宮城が彩子に一言。

「問題ないぜ。ヤスたちも、3年間、必死に頑張ってきたんだ。」

「リョータ・・・。それもそうね!」

「うん。」

「やっちゃん、カクちゃん、シオ、しっかりやってきなさい!!」

「おう!!」



「なぜに、また俺の出番がない!!!」

「ほっほっほ。」


『タプタプタプ・・・。』


(俺も。)

ベンチで自分を指差す流川。


「ったく、花道。少しは落ち着け。」

「そうですよ。」

汗を拭う宮城と柳。

「試合に出たからっていい気になりおって!!」


「実力だから。」

声が揃う宮城と柳であった。



第3Q序盤。

安田の指示により、スローなバスケットボールを展開する。

的確にパスを回し、緑川、白田を中心にフリーシュートを沈めた。


(この2人、ホントにシュートレンジが広くて、パスが出しやすい。)




「さすが、やっちゃん。冷静に周りを見て、パスを回している。」

「だろ。ヤスたちも陵南と一緒に練習してきたんだ。実力も上がっているぜ。」

「それに、みんなをうまくまとめている。心配ご無用だったわ。」




だが、湘北のスローオフェンスに対応してきた宇都宮第三は、
安田、潮崎のミスマッチを利用し、じりじりと得点差を縮めると、第3Q中盤、
勝負どころと見るや否や、オールコートマンツーマンプレスを繰り出した。




「ヤス!!ボールだ!!」

「シオ!カバー!!」

「冷静に周りを見ろ!!」

「声を出せ!!」




叩みかけるように襲い掛かる宇都宮第三のオールコートマンツー。



『シュパ!』


「くそう!!」


『バシ!』


「しまった!」




「いけーー!!宇都宮!!」

「おせーー!!宇都宮!!」

盛り上がる宇都宮第三ベンチと応援団。




『イライラ・・・。』


「オヤジ!!」

「先生!」

「大丈夫です。」


「まずい状況だ・・・。」

「ええ、コートもベンチも・・・。」




『ビィーーー!!』



「・・・。」

「・・・。」

意気消沈して、ベンチに戻る安田たち。


「せっかくの圧勝ムードを壊してしまって、すいません・・・。」

「俺がもっとヤスをフォローできていれば・・・。」

ガード陣を一気に叩かれ、奪われたボールは、湘北ネットをことごとく揺らしていた。

第2Q終了時に、23点差あった得点差は、一気に10点差まで縮められてしまっている。


「さすが、県の代表校ですね。簡単には勝てません。
さて、次もメンバーを変えていきます。」


「よし!次は、俺だな!」

そういって、席を立つ桜木。

流川も一緒に立つ。

「キツネはベンチだ!」

「てめーがベンチだ。」


『ドガ!』

『バコ!』


「柳君、PGをお願いします。」

「おっ!了解です。」

宮城を見てにやける柳。

「ふん、好きにやって来い!」

「はい。」


「緑川君、白田君、まだいけますか?」

「僕が出ないと勝てません!!」

と桜木のような自信。

「もちろんです!」

(緑川のやつ、ホントに性格変わったな。)


安西の口元を見つめる流川と桜木。

「桜木君、流川君、仲良くしてくださいね。」

「ムリだ。」

「ヤダ。」


「なら、出しません。」


「ぬっ!」

「!!」


「・・・する。」

「・・・うす。」

嫌々返事をする2人。


「よろしい。では、みなさん仲良くバスケットボールをしてください。」

「はい。」

「おうよ。」


「先生、ギャンブルに出たわね。」

「吉と出るか、凶と出るかですね。」

「晴子ちゃん、それは違うぜ。大吉と出るか、大凶と出るかだぜ。」

苦笑しながら、宮城が答えた。




第4Q、湘北は、PGに柳を置き、SG緑川、SF流川、PF白田、C桜木を出場させた。

これは、宮城ら3年生引退後に安西が考えているスターティングメンバーであった。

湘北の絶対的なリーダーの宮城を欠き、内部崩壊という不安材料を残しながら、
安西は、追い上げられているこの状況で、仲間意識を持ち、チーム一丸となって、
勝利に向かえるかどうかを確認しようと考えていたのであった。


だが、安西は確信していた。


(彼らなら、大丈夫。)


-----------------------------------------------------------------------








続く。

#276 【湘北初陣】

2010-02-25 | #11 湘北 選抜編
「相田さん、早く早く!湘北の試合、始まっちゃいますよ!」

焦る中村。

「誰のせいだと思ってるのよ!もう間に合わないわよ!!ったく!!」

怒鳴る弥生。

「あんたが、時間間違えるからじゃないの!」

「すっすいません・・・。」


いつもの2人は、今必死に福岡総合体育館に向かって、ホテルから駅への道を走っていた。




その頃、体育館では。


「まずい状況だ・・・。」

「ええ、コートもベンチも・・・。」

ベンチの宮城と柳が話す。


『イライライラ・・・。』


「オヤジ!!なんで、俺の出場が第1Qだけなんだよ!!」


『タプタプタプ・・・。』


『バシ!』

「やめなさい!桜木花道!!
安西先生は、あんたの背中を心配して、出場を控えさせているのよ!わかってるの!」

「アヤコさん!心配ないですよ!!それに、なんでハクタスはフルで出てるんですか?
怪我したのは、ハクタスのほうだぜ!!」

「そっそれは・・・。」


「桜木君は、秘密兵器ですから。ほっほっほ。」


「もう騙されるか!!」


『タプタプタプ。』


「こらーー!やめなさい!晴子ちゃんも手伝って!!」

「はっはい。」




2回戦、本日の第1試合。

福岡総合体育館では、栃木県代表宇都宮第三高校×神奈川県代表湘北高校の試合が行われていた。

昨年のIHで、当時最強と謳われていた山王工業を撃破。

この夏IHでは、山王、名朋と接戦を繰り広げ、僅差のベスト4。

今大会は、IH覇者の陵南を県予選で破り、名実ともにトップクラスの実力を証明しての全国大会出場。

観客もその湘北を一目見ようと、早朝より多くの観客が体育館を訪れ、
注目度は今大会トップレベルのチームであった。



現在、試合は第3Q終了間近、湘北が10点の差をつけて、リードしている。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

第1Q


湘北は、宮城、柳、流川、白田、桜木のベストメンバーで初陣に挑む。

序盤から、宮城と柳のスピードが、流川と白田のテクニッが、桜木のパワーが一気に宇都宮第三を畳み掛けた。



『シュパ!』




「速い!!あの2人の速攻は、速すぎる!!」

「眼にとまらぬスピードだ!!」




宮城と柳のツーメンが、宇都宮第三ディフェンスを切り裂いた。


「まだまだだぜ。なぁ、柳。」

「これからですよ。」

2人のスピード、テンションは8割にも満たない。



『ザシュ!』


『バス!!』


白田の左右どちらからでも打ってくるフックシュートが面白いように決まる。




「あの高さで、あのフックシュート・・・。」

「簡単にとめられるものじゃない!!」




(右肩を負傷し、左手だけで練習していたことで、左の精度が前よりも増した。
雨降って地固まるだね。)

と白田は、今日のデキに微笑んだ。



『ザシュ!』


『シュパ!』


流川が中から、外から、リングを射抜く。




「また、流川だーーー!!!」

「まるで、沢北を見ているようだぜ!!」

「いや、沢北以上かも!!」




(沢北、沢北ってうるせー。)

流川の機嫌は良くない。



『バチィン!!』


「簡単にゴールを奪えると思うなよ!!」

桜木が早くも3つめのブロックを成功させていた。

「デカ坊主!見てるか!!いつでもかかってきなさい!!ハッハッハ!!」




「ZZZ。」

森重は、ホテルで寝ていた。




第1Q終わってみれば、


湘北 36
宇都宮 12


圧勝ムードであった。



2分間のインターバル。

「上出来だな。リョーちん。」

「まだまだ、油断はしちゃいけねぇ。全力で相手を叩くんだ!」

「おうよ!」

「いい気合ですよ。宮城君。」

「はい。先生。」

「では、角田君、緑川君、次、流川君と桜木君に代わって、出場してください。」


「なぬっ!」

「!!!」


「なぜだ!オヤジ!!」

「ほっほっほ。」

「なぜ。オヤ、先生。」

「ほっほっほ。」


「大丈夫だ、おめーらがいなくても、負けることはない。
それに、この大舞台での経験は、緑川には丁度いい。」

「リョーちん。」

「ちぃっ。」



安西の意図。

桜木の背中の負担を考え、ベンチに座らせる。

一方的な試合ほど、オーバーワークになりがちになることを安西はよく理解している。


(白田君は、ちゃんと自分を理解している。オーバーワークになることはないでしょう。)

自分をセーブできる白田は出場させた。


そして、流川交代緑川出場。

これは、昨年、山王堂本監督が延北商業戦で見せた、
河田を下げ、柳葉と河田弟を出場させた作戦と同様のものであった。

試合の中で生まれる連携と経験を1年生であり、来年主力メンバーとなる柳と緑川、白田にさせるためであった。


安西の意図を理解していた彩子は。


(でも、それなら、リョータとカクちゃんを外して、桜木と流川をいれたほうが・・・。)


そんなことも思ったが、冷静に考えてみれば、答えはすぐに出た。


(あはっ。あの5人だとチームとしてなりたたないわね・・・。)


その通り、現段階において、フロアリーダーの宮城を欠いた湘北にチームワークが
見られるかどうかは疑問だった。

特に、圧勝ムード漂う現時点では、個人プレーに走りやすい。


湘北の不安要素。

それは、宮城を欠くと、チームが内部崩壊する可能性があるということであった。




第2Q


角田のポジションより、攻め込まれるが、白田が巧くカバーする。

緑川においては、全国大会初出場に関わらず、素晴らしい動きを見せていた。


(僕は、天才だ!シュートは外さない!!)


湘北・陵南合同練習において、山岡より「シューターは自信が必要」と諭された緑川は、
一番身近にいたあの男を観察した。


そう、最上級の自信家桜木花道である。


持ち前の洞察力で、桜木の言葉、動きをコピーする。


1週間後。

「ハッハッハ!」

桜木の笑い方をマスターしていた。


2週間後。

「僕は、天才だ!」

桜木の口癖をマスターしていた。


1ヵ月後。

『ドガドガ!』

桜木の歩き方をマスターしていた。


そして、全国大会がスタートし、本日。

「流川さん、あとは僕に任せて、ゆっくり休んでください!
なぜなら、僕は天才ですから!ハッハッハ!」

緑川は、全国大会初出場に関わらず、臆することのない自信を得ていた。


(桜木みたいになっちゃった。)

(自信がありすぎるのも問題だ・・・。)

(おのれ!グリ!なんて生意気なんだ!!)


時折、無理矢理感も見られたが、桜木に近い自信を持つと同時に、
シュートフォームは、真っ直ぐとした姿勢となり、シュート成功確率は跳躍的にあがっていた。


「柳君、緑川君は、だいぶ自信をつけたようです。」

「はい・・・。」

(でも、明らかによからぬほうに・・・。)


-----------------------------------------------------------------------








続く。

#275 【神海と名朋】

2010-02-23 | #11 湘北 選抜編
山王が東園寺学園をねじ伏せていた頃、隣のコートでは、沖縄県代表神海が、高知県代表土佐南高校と対戦していた。

平均身長190cmの神海のスターティングメンバー。

あいまみえるだけで、威圧的に感じる沖縄の大波。



『バチィン!』


「いただき!!」


『ダムダム!』


「ボールは、こっちだぜ。」

「へへっ、こっちだって。」


『バス!』



リバウンドは、根こそぎ奪い獲り、高いパスを回しながら、的確に得点を奪う。

第3Qも終盤になったころ、相手の戦意はほとんど失われていた。



『ビィーーー!!』



「つまらん試合だったな。」

「もっと手強いやつらはいねぇのかよ!」

「焦るな、ジュニア。次勝てば、山王だ。そうしたら、今よりもずっと楽しめるぜ。」

「山王?」

「知らねーのか!選抜、3連覇中の山王だ。」

「その山王と俺たちがやるのか?」

「あぁ、次勝てばな。」

「へっ、そりゃ楽しみだ!なぁ、ケビン?」

「俺たちは、海の神だぜ!山のサルどもに負けるはずはない!!」

「それもそうだな!!」

「はっはっは!!」




更衣室で着替えを行っている山王工業。

「ヘックション!」

「どうした、沢北、体が冷えたか?ちゃんと汗拭いておけよ。」


「そうじゃないけど・・・。」

(なんか、今すげぇ気分が悪い・・・。)


沢北は、桜木並に自分たちのことに敏感であった。




土佐南 55
神海  121




大会3日目の午後、注目の強豪校がその姿を現す。



「でたーーー!!!」

「愛知の怪物!!!」

「最強センター!!!!」

「森重だーーー!!」

「山王を倒せるのは、お前たちしかいない!!」



愛知県代表名朋工業の登場である。



「庶民どもが、デカ坊主ごときで騒ぎおって。」

少し機嫌の悪い桜木。

「同感だ!名朋ごときで騒ぎやがって。」

同様に宮城。



コート上には、一際目立つ、背番号15。



「デカ坊主のやろー、また背番号が変わってねぇじゃねぇか!実力不足ってことか!ハッハッハ!」

「花道も一緒だろ!」

「ふん!俺の10番は、意味が違う!実力的には1番だが、敢えての10番なんだ!ハッハッハ!」

「はいはい。」




「ヒロシ!今日は、肩慣らしでいいぞ。」

「わかったよ。おっちゃん。」




「森重ーーー!!」

「豪快なダンクを見せてくれーー!!」

「期待しているぞ!!!」




愛知県代表名朋工業×広島県代表栗原高校の試合が開始された。



『バシ!!』


ジャンプボールを思いっきり叩き落す森重。




「高い!!」

「跳べている!!!」


「フン!俺のほうが2倍は高い!!」

観客の声に過敏に反応する桜木。




ボールを受けるPG中嶋。


『キュ!』


『ダム!!』


『キュ!!』




「!!」

「宮城さん。」

「あぁ、わかっている。」

(中嶋のやろー、速くなってんじゃねぇかよ!)




『ビュン!』


ボールは、一瞬にして前線に渡る。



『ザシュ!』


SF大石のレイアップが決まった。


ジャンプボールから、瞬く間に名朋が先取点をあげる。




「さぁ、こっからだ。名朋の真骨頂は。」にや。

名朋監督冨名腰の怪しい一言から、発動する名朋のディフェンス。




「2-1-2!!」

「名朋がゾーンだ!!」




「ゾーンか・・・。名朋のゾーンは、初めて見たな。」

「しかも、広い。これでは、インサイドを守る2-1-2ゾーンの意味が、あまりないように思えますけど・・・。」


白田の心配をよそに、パスカットをするSF大石。


素早く、森重にパスをする。


その森重が、大きく振りかぶり前線に放り投げる。

コートの左右から、栗原ゴールを狙うPG中嶋とSG森。



『シュパ!』


名朋の速攻が決まった。



2-1-2ゾーンディフェンスは、3Pエリア内にディフェンダーを集中させるため、
インサイド、リバウンド勝負には強いが、反対にアウトサイドのシュートには弱い一面がある。

名朋は、広め高めにポジショニングすることにより、そのウィークポイントを解消したが、
それでは、2-1-2ゾーンの意味をなさない。


その全てを解消したのが、愛知の怪物こと森重寛の存在であった。



『バチーン!!』




「出たーーー!!!」

「森重のブロック!!」

「森重がいる限り、ゴール下からのシュートは決められない!!!」




森重が、ゴール下で守備するインサイドは、実に強固なものであった。




ルーズボールを拾うPF泉山。


「森重。」

「ん。」


泉山から森重にボールが渡ると、再びオーバーハンドの剛速球が栗原ゴールを襲った。



『スト。』


2回連続の速攻が決まった。

4人がアウトサイドで守り、森重がインサイドを死守する。


広いポジショニングをとったこの名朋の2-1-2は、ゴール下の鉄壁なディフェンス能力を誇る森重がいて、
初めて成功といえるディフェンスだった。


そして、もう一つ。




「速攻主体に切り替えてきやがった。」

宮城の判断。

「前列の高めのポジショニングは、少しでも速攻のスタートを速くするためですね。」

と柳。




ボールを奪うと、前列の中嶋、森は相手ゴールに向かって走る。

ボールは、森重に渡され、剛速球パスから、速攻を決めるという、単純なワンパス速攻であった。

ワンパス速攻が封じられると、後方からSF大石がドリブルで、ボールを運ぶ。

そして、森重を待って、ハーフコートで攻める。

正しく、森重を中心としたチーム作りといえるものだった。




「格下相手だから、評価は出せねぇが、まずは合格点だな。」

と冨名腰。




観客席の湘北。

「願ってもねぇディフェンスだ!」

「ん!?」

「ゴール下に邪魔者はいねぇ!俺がデカ坊主をぶっ倒すには、ちょうどいい!」

「ふっ、そうだな。花道。名朋が決勝に上がってきたら、思う存分、森重とやりあえ。」

「任せておけ!リョーちん!!最強&天才Cは、この桜木だ!!ハッハッハ!」




名朋は、この試合、全得点の1/4に渡る12の速攻を成功させた。




名朋 96
栗原 59




翌日、いよいよ、湘北が始動する。








続く。

#274 【沢北現る】

2010-02-22 | #11 湘北 選抜編
大会3日目に突入した。

本日から、各ブロックのシード校が、コートに現れる。



「初戦が一番重要なことは、今まで何度となく言ってきた。
決して、油断はするな。全力で戦え。」

「はい!!」

「加藤、柳葉、福原、河田、そして、沢北、行って来い。」

「はい!!」


「よぉしっ!いっちょ揉んでやるか!」

「エージ、油断大敵ダス。」

「わかってるよ。ったく、そんなところまで、深津さんに似なくていいのに・・・。」

「なんか、いったダスか?」

「いや、なーにも。」


この日、沢北が年始の天皇杯ぶりに、日本のコートに足を踏み入れた。


「さわきたーーー!!」

「エージ!エージ!エージ!」

「沢北見せてくれーー!!」

「待ってたぞーー!!!」



2回戦第1試合。

観客は異様な盛り上がりを見せる。


それは、3連覇中の山王が登場したというよりも、沢北がコートに帰ってきたためであった。


観客席のいたるところで、代表校の選手が、その沢北に注目していた。



「あれが、沢北か・・・。まるで、別人のようやで・・・。」

大阪府代表の大栄学園キャプテン桜井は、その沢北の容姿を見て感じた。



「イメージ変わったな。」

「あんなだったっけ?」

ほとんどの選手が、沢北の容姿の変化に、戸惑っていた。



「アイツモ、オモロシイネ!」

テンションのあがる選手もいた。



「うぜーよ。」

態度の悪い選手もいた。



「ZZZ。」

寝ている選手もいた。



「なんだよ、沢北のやつ、いるじゃねぇかよ!!」

「よかったな、流川!」

「・・・。っうす。」

湘北は、歓迎ムードだった。


「おっ。小坊主のやつ、少しは逞しくなったか。」

と少しだけ嬉しそうに桜木。


「沢北のやろー、坊主にラインいれてやがる。」

と宮城。


「どうやら、3本入ってますね。3連覇中ってことですかね?」

「小坊主のくせに、生意気だぜ!」

柳に答える桜木。


「いや、もっと変わったところあるでしょ。」

呆れているのは、安田。



1年前まで白い肌をしていた沢北であったが、
今、眼の前にいるのは、日焼けで浅黒くなった沢北であった。


そして、更に変化をしていたのは、その体格。

身長が伸びたようには見えなかったが、ユニホームの外に見える腕や脚の筋肉は、
遠目で見ても、隆起しているのが確認できた。



(あんにゃろー。)

流川は、沢北のその変化を進化と捉えた。


そして、それは、試合ですぐに証明された。



『シュパ!』



『バス!』



『ザシュ!』



沢北は、PG加藤から的確に供給されるアシストを確実にリングに沈めていく。

派手なプレーは抑えていたようだが、フリーシュートを打っているかのように決めていた。

ジャンプ力、ダッシュ力、ハンドリング力、どれをとっても昨年よりも向上していたことは明らかであった。




(ちぃっ。)

と睨む流川。




「エージ!エージ!エージ!」

「いいぞ!沢北ーーー!!」

「さすがだぜ!!」

「俺は、お前のその姿を見に来たんだーー!!」

その光景に、酔いしれる観客。



「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

その光景に、無言になる各校の選手たち。



(あれが沢北・・・。)

(想像以上だぜ・・・。)




コート上では、山王工業の対戦相手 奈良県代表東園寺学園高校の選手たちが、
山王のオフェンスを必死に止めようと懸命に走り回っている。


「走れーーー!!」

「沢北を囲むんだ!!!」



『スト。』


相手の健闘むなしく、沢北のレイアップがあっさり決まる。




「5本連続!!!」

「初戦から沢北が全開だーー!!」

再び、騒ぐ観客。


まもなくハーフタイムを迎えようとしていたころ、観客は最高の盛り上がりを見せていた。



「なぁ、流川、どう思う?」

おもむろに、宮城は流川に尋ねた。

「・・・。」

流川は席を立った。

「どこいく?」

「トイレっす。」

ジャージに手を突っ込み、トイレに向かった。


(あんにゃろー、ディフェンダーは眼中にねぇか。)



「負けキツネめ。」

「花道だって、沢北の凄さがわかるだろ?
もう素人じゃねぇんだし。流川じゃなくても、眼を覆いたくなるぜ。」

「だから、負けキツネだっていうんだよ。そして、リョーちんも。」

「なぬ。」


「間違いねぇ。小坊主は、センドーより上だ!!」


「!!!」

(ん!理解してんじゃねぇかよ。)


「センドーと比べて、プレーに関しては、さほど差はねぇ。
だが、小坊主のほうが力強くて、貪欲にゴールを狙っている。
だからといって、俺たちがとめられねぇわけじゃねぇ。
1ヶ月もセンドーとやってきたんだ。小坊主よりも、力強く守り、貪欲にゴールを狙えば勝てる。
ようは気持ちの問題だ!」


「!!」

(花道のやろー。見えるようになったじゃねぇか・・・。
それに比べ、また俺は、悪いところが出ちまったな。)

「ふん、花道の言うとおりだ。俺と同じことを思っていたようだな。へへっ!」

「そうだ、リョーちん。その意気だ!ハッハッハ!!」




その頃、トイレの流川は。


(センドーより、やや上。ジョートーだ。)にや。

笑っていた。


『ピチャ。』


(・・・。)




沢北1年ぶりの高校バスケ界での試合は、間違いなく沢北栄治ショーとなっていた。

前半3P2本を含む27得点をたたき出す。

それは、柳葉が前半奪った17点を霞めるほどの衝撃的なものだった。

第3Q、東園寺は、苦肉の策として、沢北へダブルチームを仕掛ける。

だが、全く相手にはならない。

むしろ、沢北の勢いは、尻上がりによくなり、確実にゴールを奪った。


(わりーな、お前たちじゃ何人こようが関係ねぇよ。)


そして。



『ドガァァァァ!!!』


この試合、初めてのダンクを決めた。

リングに腕が入りそうなほどの跳躍力を見せて。


(これで、週バスの表紙はもらったぜ。)にや。



「監督、今日のエージさんは、凄すぎますね。」

「そう思うか。あれほど、油断するなっていったのに、沢北のやつは。」


(やつらがいないこのコートで、本気を出す気にはならねぇぜ。)


山王は、衝撃的な勝利で初陣を飾った。


やつらとは、誰のことか。


底を見せなかった沢北。


勝負が出来ると感じた桜木・流川。


悪夢はまだ始まったばかりであった。




山王工業  158
東園寺学園 39



【山王工業】

沢北 栄治  59P 4R 3A 7S

柳葉 敏  37P 2R 3A 6S

河田 美紀男 22P 17R 4A 8B 








続く。

#273 【選抜開幕】

2010-02-19 | #11 湘北 選抜編
湘北高校は、選抜優勝大会の会場となる福岡総合体育館から、5キロほど離れた小さな旅館にいた。

こじんまりとしたその旅館は、近くに小川が流れ、看板には温泉の文字が、掲げられている。

部屋は、6部屋ほどで、湘北バスケ部25名が宿泊すると、めいっぱいな状態。

湘北高校の貸切温泉旅館となっていた。

古びたソファーに腰をかける湘北選手たち。

午前中に行われた開幕式について、話をしていた。



「結局、沢北はいなかったじゃねぇか。」

「どうなってるんだろう?」

「彦一さんの情報だと、全国大会から出場という話でしたが、
今日の開幕式には、その姿はなかった。」

「寂しいだろうな、流川さんは。」


流川は一人、外を走っている。


「俺は、やっぱりあの加藤の唇が気に入らねぇ。」

と宮城。

加藤に対して、異常な反応を見せる。



昨年優勝した山王工業。

キャプテン加藤が、優勝カップを返還し、選手宣誓を行っていた。



「そういえば、あいつら、態度悪かったですね。」

と白田が、開幕式を思い出しながらいった。

「あーあ、あいつらか。」

「バスケットマンにあるまじき行為だ!」

「お前がいうな!」

宮城に突っ込まれる桜木。


「だが、バイエルンはいいやつだった。」

桜木がしみじみいった。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

第39回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会

開幕式。


各都道府県47校の代表校プラス開催地福岡の北九州第一高校が、綺麗に整列している。


「うまいじゃねぇか。夏輝。」

「緊張したダス。」

声をかけたのは、SG烏山彰隆。

山王のピュアシューターであり、ムードメーカーである。


「来年は、敏君があれをやるのかな?」

『ブルブル。』

美紀男が、柳葉に尋ねると、柳葉は激しく首を左右に振った。



整列している一番端の列。

沖縄県代表。


『クチャクチャ。』

列の後ろのほうで、ガムを噛んでいる3人の男がいた。

容姿からいって、ハーフ、またはクォーターにみえた。


「だりーな。」

「早く、バスケさせろや!」

「なんで、こんなのでなくちゃいけねぇんだよ!」

「だから、日本人はバカまじめなんていわれるんだよ!」


彼らは、沖縄県代表神海のインサイド陣。

自由奔放な生活をし、ストリートバスケで、腕を鳴らしてきた彼らにとって、開幕式など、なんの価値もない。


「早くおわんねぇかな。」

「俺らはバスケをしにきたんだ!!」


『クチャクチャ。』



整列する選手の中でも、頭一つ分以上跳び出ている河田は、その光景をよく見ることができた。


「なんか、柄の悪い人がいるね。」

柳葉に話しかけるも、180cmの柳葉は神海を見ることはできない。

「・・・。」


「ソウダネ!」


「!!」


右後方から、英語訛りのある声が聞こえた。

河田が振り向くと、褐色で、眼のギョロっとし、口の大きな、男が笑っていた。


「カマタ!」


「やぁ、パウエル。」


秋田県代表山王工業の隣は、青森県代表青森酒田高校。

この陽気な青年は、セネガルからの留学生バリス・パウエルであった。


「オヒスブリ。」

「お久しぶり。」


「アノヒトタチ、ワルイ。ノースポーツマン。」

「うん。」


河田とパウエルは、東北大会で対戦、マッチアップしたのを機に、またお互いが人懐こい性格もあり、
すぐに打ち解け、親友となっていた。


「コンカイモ、ヴィクトリー!」

「僕たちも負けないから。」


「カマタ。」

(河田だけど・・・。まぁいいか。)

「アソコニ、レッドヘア。」

「あっ、あれは桜木君だよ。凄く巧いの。」

「オッオー。クレイジーヘア。オモロシイネ。」

「面白いだよ・・・。」



そんな光景に気付いた桜木。


「む!丸男の隣にいるのは、バイエルンか。」

「違いますよ。パウエルです。」

小声で訂正する白田。


「どっちでもいい。うむ、面白そうなやつだな。あとで挨拶にでもいってやるか!」

「なんか、いやな予感が・・・。」



「以上、第39回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会、開幕式を閉幕します。
これより、第1回戦、第1試合を行いますので、速やかな移動をお願いします。」 



「さぁ、少し観戦していくか!ぬっ、白田。花道は?」

白田がだまって指を差す。

その方向に、湘北選手らが眼をやると。


「ぬあ!」

「なぁ!」


そこには、桜木、河田、パウエルが楽しそうに笑っている光景が映った。



3分前。

開幕式がもうすぐで終わりそうな状況。



『ブス!』


「ブヒィィィ!!」

「ハッハッハ!丸男、久しぶりだな。」

「さっ桜木君、なんでここに!しかも、いきなりカンチョーって・・・。いっいたいよ・・・。」


桜木は、こっそり山王の列に並んでいた。

河田の後ろ、柳葉の前に陣取った。


「ダメだよ。桜木君、怒られちゃうよ。」

「かまわん。」

「カマタ。オモロシイヒト、キタネ。」

「ぬっ。貴様が、バイエルンか!」

「ボクハ、パウエル。コレガ、カマタ。」

「俺は、天才桜木。こいつが、丸男。」

「僕は、河田。こっちが桜木君。こっちがパウエル。」

「サムラギとカマタ。」

「バイエルンと丸男。」

「桜木君とパウエル。」


正しいことをいっていたのは、河田だけだった。


「サムラギ。クレイジーヘア。」

「ぬっ。この天才を侮辱しおったな。」

「ダメだよ。桜木君。」

「丸男はだまっておけ。バイエルン!」

「パウエルデス。」

「俺は、天才バスケットマン桜木だ!よーくおぼておけよ!」

「テンサイバスケットマン、サムラギ。オボエマスタ!」

「俺は誰だ?」

「テンサイバスケットマン、サムラギ。」

「おっ、覚えが早いな。」

「テンサイ、サムラギ。」

「そうだ、うむ、いいスジしているぞ。」

「スジ?スシスキ。」

「寿司好きか!よし、今度スシくわせてやる!丸男のおごりで。ハッハッハ!」

「なんで、僕が・・・。」

「ハッハッハ!」

「ハッハッハ!」


その光景が湘北選手たちの眼に映ったのであった。



-----------------------------------------------------------------------








続く。