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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#301 【狂い始めた歯車】

2010-04-23 | #11 湘北 選抜編
酒田 66
湘北 68




湘北ベンチ。

「流川のやつ・・・。」

苦笑する彩子。

「えっ、なんですか?」

晴子が尋ねる。


「桜木花道をノらせたのよ。」

「ノらせた?」

「ええ。桜木花道にとって、一番テンションのあがるプレーは、流川からのパスを受け取り、シュートを決めること。
流川が今、演出したプレーよ。」

「っていうことは、流川君が桜木君をノらせるために、パスを出したってことですか?」

「そうね。はっきりいって、今のはパスしなくても、流川なら決められたはず。
仲がいいのか、悪いのか。」クスッ。

「流川君も桜木君を認めているってことですよね。なんか、嬉しいな。」

嬉しそうな晴子。


安西もまた嬉しそうな表情を見せていた。

(いい選択でしたよ。流川君。)




「ハッハッハ!流川ぁーー!もっとパスしてこい!!」

「・・・。」

(もうやらねぇよ。)



「オラァー!いくぞーー!!ディフェンスだーー!!!」



彩子の予想通り、桜木はノっていた。

ただのワンプレーであったが、流川からのパスを決めるということは、
桜木にとって、それほど大きいものであった。



『キュッキュ!!』


桜木は、パウエルに当たる。




「湘北は、オールコートマンツーだ!!」

「再び勝負に出たーー!!」

「いや、違うぞーー!!!」




他の4人は、自軍コートに戻り、ハーフマンツーの構え。




「桜木だけが、オールでパウエルについている!!」

「パウエルに仕事をさせないということか!!」




「なにもオールであたらなくても・・・。」

「体力勝負。どちらかが、倒れるまで走り抜く。湘北は、賭けに出たわね。」




青森酒田の反撃。

パウエルには、今まで以上に桜木がタイトにあたる。

パスをもらえる状態にはない。



(ぜってー、パスはいれさせん。そして、リバウンドは俺が全て奪う。)



『キュッキュ!!』


桜木は、腰をかがめ、パウエルの目線を追うフェイスガードで、完璧に抑える。



(ぐぞ。パウエルは使えねぇが。)

攻め倦む松山のドリブル。


(へっ、どうやら、花道のディフェンスが効いているようだな。)


そこへ、柳。


「松山!」

新山の声。

だが、松山の耳に入ったときには、すでに遅かった。



『パシ!』


「!!」

パウエルと宮城に気を取られていた松山のドリブルを、柳がスティールする。



「いいぞ!柳!!」


ルーズボールを拾い上げた柳は、そのまま酒田ゴールを目指す。

松山、新山は、決死の形相で、柳の背中を追うが、差は見る見る広がっていった。



『パサ。』


柳のワンマン速攻が決まる。




「はえーーー!!」

「湘北が底力を見せてきた!!」




「この時間帯で、あのスピードとは、やるな。あいつ。」

と山王烏山。

(春風・・・。)

今まで沈黙していた山王福原が柳の姿を嬉しそうに見つめている。

「第4Qで仕事をするやつほど、怖いものはない。
そういった意味で、湘北のメンバーは全員が怖い存在ダス。」




「ナイッシューだ!もう1本いくぞ!!」

「宮城さん、ぜってぇ勝ちましょうね。」

「へっ、当たり前だ!!」




酒田 66
湘北 70




「松山、気にせんと。」

「あぁ。」


桜木のパウエルへの捨て身のディフェンスにより、歯車がかみ合わなくなりつつ、青森酒田。



(勝負は、ここだ!!)

宮城の眼が光る。


「花道!ぜってー、そいつにボールを持たせるな!!」

「愚問だぜ!リョーちん!!」


「ディフェンス集中だ!!」

「はい!」

「うす。」



桜木を初め、湘北選手は、この試合最高の集中力を発揮していた。



『キュキュッ!』


「What a persistent defense it is!」(なんてしつこいディフェンスだ!)

パウエルも桜木のディフェンスに驚きを隠せない。

この時間帯で、桜木のより一層の激しい動きにパウエルの動きが止まる。


(へっ、オヤジのいうとおりだ。バイエルンは、明らかに動きが落ちている!)



さすがの松山も攻め倦む。

だが、その瞬間。


『クルッ!』


「マッサン!!」

桜木を背負い込み、裏のパスを要求するパウエル。


「しまった!」

(油断した!!)


「ぬお!」

「パウエル!!」



松山が、湘北ゴールに向かって、大きくパスを放り込む。



「!!!」


「!!」




「パウエルだーー!!!」

「桜木、抑えろーー!!!」

パウエルに向かって、跳び込むボール。




『パシ!』


「!!」


「!!!」



「るっ流川!!!」

叫ぶ桜木。



「やられてんじゃねぇよ!どあほう!」




「流川君!!!」

晴子が叫ぶ。




「流川がまたナイスカットだーー!!」

「何本目のスティールだ!!!」

歓喜に沸く湘北ベンチ。




流川は、ジャンプ一番、松山からパウエルへのパスを片手で防いだ。

ボールは、白田の下へ弾ける。




「湘北が、完璧に流れを持っていったわね。」

「運も湘北です!」

中村も笑顔ではしゃぐ。




「桜木花道的にいえば、今の流川は、スティール王ね。」

「流川君・・・。」

(ディフェンスも頑張ってる。)




流川のスティールが、湘北に更なる勢いをもたらす。




酒田 66
湘北 70







続く。

#300 【願ってもない展開】

2010-04-21 | #11 湘北 選抜編
酒田 66
湘北 66




第4Q開始のブザーを待つ10人が、コート上に立っている。



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<<回想>>

2分間のインターバル。

湘北ベンチ。


湘北の策が成功すると、青森酒田はすぐに湘北の策を凌ぐプレーを見せてくる。

その脅威の粘りと強さに、湘北選手たちは、驚きを隠せない。



「ホントにしつこいやつらだぜ。」

と宮城。

「こっちの流れになったかと思ったら、持って行かれたり、また持ってこれたり、忙しい試合ですね。」

汗を拭う白田。

「あっちも同じことを思っていると思いますよ。」

スポーツドリンクを飲む柳。


選手らの疲労は隠せない。

特に攻守に渡り、第3Qを引率してきた流川の疲労は、ピークに達していた。


タオルをかぶり、ベンチに座る流川。

「はぁはぁ。」

呼吸が激しい。


(流川君・・・。)

心配そうに見つめる晴子。



『カタ。』


安西が立つ。


「!!」

安西に視線を向ける選手たち。



第一声。



「次の作戦です。」

「はい。」



「エースを止めます。」



「えっ!?」

「エースを止めるって・・・。」

「止められないから、同点なんですが・・・。」

「どういうことだ、オヤジ!」


「パウエル君を止めるのは、桜木君の仕事です。しっかり頼みますよ。」

「おっおう。」


今まで、パウエルに散々やられていただけに、安西から思ってもない言葉を投げかけられ、桜木は若干戸惑った。



(それができてたら、今頃苦労してねぇっていうんだ!!)



「流川君同様、パウエル君も相当の体力を消費しているはずです。」


「ぬっ。」

(俺はそんなことはねぇ。)

眼を光らせる流川。


「ディフェンスは、ハーフマンツーでいきます。ただし、パウエル君へはオールであたります。
マークするのは、もちろん、桜木君です。」

「おう。」


(こりゃ、ある意味賭けだな。
失敗するようなら、パウエルに得点を奪われるうえに、花道のリバウンドも失う・・・。)

心配そうな宮城を見て、安西が再び口を開く。


「大丈夫ですよ、宮城君。桜木君を信じましょう。」


「そうだ!リョーちん!!俺を信じろ!!ハッハッハ!!」

(今までの借りを全て返してやるぜ!!)


「安西先生が仰るなら、俺は何も言いません。」

宮城を初め、他の部員も納得した。


「桜木君は、常にパウエル君にタイトに当たること。
例え、彼がどこにいようともです。」

「任せておけ!!」

「桜木君が、ゴール下から離れることになりますので、リバウンドは流川君、白田君、よろしく頼みますよ。」

「うす。」

「はい。」


「オヤジ!俺は、リバウンドも奪うぜ!!ゴール下を守るのは、俺だ!!」


「花道!!先生の言ったことがわからねぇーのか!?
おめーは、パウエルを抑えることだけに専念しろ!!」

と宮城。


だが、桜木は安西の眼を見つめたまま、視線をそらさない。


「ゴール下を守るのは、俺だ。」

「・・・。」

しばらく沈黙していた安西が話す。

「わかりました。ゴール下への参戦を許可しますが、パウエル君を抑えることを第一に考えてください。」


「わかったぜ!!」

誇らしげな表情を見せる桜木であった。


「やれやれだぜ。」

呆れ顔の宮城。



-----------------------------------------------------------------------



『ビィーーーー!!』


湘北ボールから、第4Qが開始された。




「いけーーーー!!ショーホク!!」

「酒田ーー!!負けるなよーーー!!!」

声援が跳び交う体育館。


「サ・カ・タ!サ・カ・タ!サ・カ・タ!サ・カ・タ!」

「ショーホク!ショーホク!ショーホク!」

応援団にも力が入る。




両チームの選手の交代はない。


「わりーが勝つのはうちだ!」

「その言葉、そのまま返すど。」

宮城と松山の想い。



「この天才に特命が出た。」

「トクメイ?ナンデスカ?」

「ジ・エンドということだ!!」にやっ。

「ソウハイカマセン!」にかっ。

桜木とパウエルは笑った。



「・・・。」

「・・・。」

流川と田中が無言で見つめあう。



(あと10分、走り抜いてやる。)

(この時間帯で、呼吸の乱れがね。ええ体力しでるでねーか。)

柳と新山。



『グッ。』

拳に力を込める白田。

(ゴール下を死守する!!)

赤木から桜木を経由して継承しつつある湘北の魂が、白田にも今宿ろうとしている。




酒田 66
湘北 66




「いくぜーー!!」

「おう!!」


『ダム!』

宮城が動いた。


(この1本は絶対だ。このQの主導権は俺が握る!!さぁ、こっからだ!!)



『ダム!』


強引に抜き去ろうとする宮城。




「リョータのやつ、焦っている!!」

「なにやっているのよ!リョータ!!」

湘北ベンチからの声。




(焦りは厳禁。勝てるものも勝てねくなるど。)

松山がすばやく対応。



『ダム!』


宮城の一直線のドリブル。

喰らい付く松山。




「リョータ!!!」

「囲まれる!!!」




宮城の進行方向には、田中と流川。

松山は、宮城を2人で囲もうと、田中のほうへ誘っていた。


『キュ!』


宮城へ一歩近づく田中。


『キュ!』


その瞬間、インサイドへ切れ込む流川。


『バン!!』


「!!」

「なっ!!」


「へへっ。」にやり。



『バス!』




「すげーーパス!!!」

「流川にボールが通った!!!」

「フリーだーーーー!!!」




宮城は、松山と田中の間に、絶妙なバウンドパスを放ち、流川へのパスを通した。



「ダァーー!!」


青森酒田の大黒柱パウエルがすかさずフォローにくる。



『シュ。』 


流川は、ステップインでゴールを狙う構えを見せたが、
冷静にバックビハインドパスから、45°で待ち構えるあの男にパスを送った。



「決めろ。」



「トーーーゼン!!」



膝を優しく曲げ、体全体をバネのように、縮ませ、高くジャンプする。


そして、優しく添えた左手と力強くスナップした右手から、ボールが宙に放たれる。


緩やかに回転したボールは、湘北の想いを乗せて。



ネットを通過した。



『パサ。』



「ぅおっしゃーー!!!」




「また、湘北が逆転だーー!!!」

「いけーー!!」




「いいぞ!花道!!」

「おうよ!!」

「ディフェンス、任せたぞ!!」

「任せなさーーい!!」


第4Q、宮城が切れ込み、流川のアシストで、桜木が決めるという湘北にとっても願ってもない展開で幕を開けた。




酒田 66
湘北 68







続く。

#299 【最強の敵】

2010-04-19 | #11 湘北 選抜編
第3Qも残り2分を過ぎていた。

パウエルの猛攻により、逆転を許してしまった湘北。

常に、湘北の展開するバスケの上をいく青森酒田の前に、湘北はなす術がないのか。




酒田 64
湘北 60




「安西先生、ここはタイムアウトを!」

眉間にシワを寄せた安西であったが、動こうとはしない。




『バス!』


流川のミドルレンジからのジャンプシュートが決まる。




「流川先輩!!」

「ナイッシュ!!」

「ディフェンス!ディフェンス!」

応援にも尚一層の力が入る。




「湘北は、流川でなんとか喰らいついている感じだが、パウエルを抑えないことには点差は縮まらねぇ。」

「どうでるダスか?湘北は。」




酒田 64
湘北 62




「いけるぞ!ショーホク!!」

「酒田ーー!!攻めろーー!!」

コート上の熱戦に、観客たちも声援を送る。




『キュ!』


『キュッ!』




「あっ!!!」

「まただ!!」

「パウエルのアイソレーションだ!!」




ストロングサイドに集まる8人。

ウィークサイドには、パウエルと桜木の2人。



「パウエルにパスを出させるな!!花道は、ぜってーパスを入れさせるな!!」

宮城が大きな声で指示を飛ばす。



「わかってらい!!」



だが。



『キュッキュ!』


『キュ!』


パウエルのクイックネスについていけない桜木。



『バス!』


柳の上から放った新山のパスがパウエルに渡る。




「身長差12cm、酒田はこのミスマッチを巧く使っている。」

と弥生。




「キターーー!!」

「パウエルだーー!!」

「いい加減に桜木も止めろーー!!」




桜木にとって、パウエルは初となる対戦相手であった。

これまで、赤木や魚住、河田、美紀男、森重などパワー型のセンターと対戦してきた桜木にとって、
スピード型のセンターパウエルとの対戦は、未経験といっていいものだった。

もちろん、神や仙道をディフェンスすることによって、スピードにも対応できることは証明済みだが、
彼らは桜木よりも身長が低かったため、ある程度の身長差でカバーできる部分もあった。

そういう意味においては、スピード、身長で桜木の上をいくパウエルは、間違いなく、
これまで桜木が対戦してきた選手の中で、最強の敵であった。



(くそう。どうすれば・・・。)


桜木を、湘北を、幾度となくピンチに追いやるパウエル、青森酒田のオフェンス。



『キュ!』


『ダム!!』


『キュッ!』


桜木の腹をえぐるようなパウエルの低いドライブ。




「また低くなりやがったーー!!」

「抜かれる!!」




『キュ!』


「もう打たせない!!」

(インサイドを任されているのは、桜木先輩だけじゃないんだ!!)


白田がパウエルに詰め寄せた。


「ニッ。」

パウエルの口から、白い歯が浮かび上がる。



『ビィ!』


その瞬間、ドリブルから素早いパスが、フリーとなったPF吉田へ放たれた。


「またか!!」




「巧いパスだ!!」

「わかっているが、湘北は止められない!!」




吉田もボールに向かって飛び込む。


「んっ!!」

「おっ!?」

「ナッ!!」



『バチン!!』


ボールは、吉田の手の中に収まらなかった。



「・・・。」

(白い歯が、眼障りだ。)




「流川君!!!」




「流川だーーー!!!」

「パスカット!!!」




「おおおおぉぉーー!!流川君!!!オフェンスに、ディフェンスに大車輪の働き!!」

「流川君の集中力がここにきて、かなり上がっている。やはり、湘北の大黒柱は流川君。」




「流川!」


ボールは、流川から宮城の元へ。

左サイドから、柳が駆け上がる。

もちろん、新山が並走。

速攻を許さない。



宮城のドリブル。

松山も追いかける。



(ドリブルのスピードだけは、負けるわけにはいかねーんだ!!)


『ダムダム!!』


(いい脚力だべ。)


だが、松山もそう簡単に宮城の突破を許さない。

柳は、ゴール下を通り、逆サイドへ。

そして、トップの位置で待ち構える。



(よし。)

宮城は、その柳に向かっていく。


「松山!スクリーンだ!」

声をあげる新山。


『ガシ!』


だが、すでに柳のスクリーンは、松山の動きを止めていた。


「宮城さん!」


柳と松山の掠めるように、抜いた宮城のスピードは増すばかり。

スイッチした新山は、宮城の背中を追いかけるしかなかった。



『シュパ。』


流川のスティール、宮城と柳のプレーが、再び同点に導く。


「ナイススクリーンだ!」

「はい。」


その後、両チームお互いに1本のシュートを成功させ、同点のまま、第4Qを迎えることとなる。

試合結果を予想するのは、難しい展開であった。




酒田 66
湘北 66







続く。

#298 【立ちはだかる壁】

2010-04-17 | #11 湘北 選抜編
酒田 44
湘北 45




青森酒田からオフェンスがスタートする。

湘北は、マンツーマンで対応。


「バイエルン。ここからが本当の勝負だ。眼に物を見せてくれよう!!」

「ベニイモ?イモスキデス!」

パウエルが答えた瞬間。


『キュ!』


『バシ!!』


PG松山からの鋭いパスが、フリーのパウエルに通った。



「バカ!花道しっかりディフェンスしろ!!」


「話の途中で汚ねぇやろうだ!」

「シアイハヂマッテマーース!!」



『クルッ!』


高速ターンからのジャンプシュート。


『シュ!』


パウエルの手からボールが離れる。



『チィ!』



「ヌカワ!!」


「しっかりディフェンスしやがれ。ド素人!」


「うるせ!邪魔をするな!」



「いいから!花道!リバウンドだーー!!」



松山のパスを読んでいた流川は、いち早くパウエルの動きに反応し、わずかにシュートに触れたのであった。




「流川せんぱーーい!!」

「いいぞ!流川!!」

「桜木!!リバウンドだ!!」




「おうよ!!」


『ガシ!!』


白田が、PF吉田をスクリーンアウト。

(吉田さんに仕事をさせない。それが俺の仕事。)



「おりゃ!!」


『バチィン!』


リバウンドを掴んだのは、桜木であった。


「ナイスリバウンド!」

「速攻ーー!!」


前線に走りこんでいる柳。


だが、今度はSG新山がしっかりと守っている。


(さっぎみでぇにはいがせねぇど。)

(対応は速いな・・・。)



「花道、こっちだ!」

桜木から宮城へ。

素早くボールを運ぶ。


『ダムダム!』


『キュッ!』



「やはりな。しつこいやろうだ。」

苦笑う宮城。

立ちふさがる松山。

だが、宮城の横を流川が通り過ぎる。


「へい。」

(任せたぜ、エース。)

ボールは、流川に渡った。




「いけーー!!!流川ーーー!!」

「湘北のアーリーオフェンスだ!!!」




SF田中が流川を追走するが、追いつけない。

流川を抑え込むほどのディフェンス能力を持ち、オフェンスにおいても勝負強さが光るSF田中。

だが、単純なスピードと高さにおいては、流川には及ばない。




「2on1ーー!!」

「守れ!酒田ーー!!」




流川が酒田リングを襲う。


183cmの新山が、鬼の形相で流川に駆け寄る。


(こごは、ファウルしてでもとめる!!)




「危ない!」

思わず晴子が叫ぶ。




すでに、新山の腕は、流川の腕を仕留めるかのように、動き出していた。


だが、新山の腕から逃げるような流川の動き。



『ヒョイ。』


流川は、素早くボールを持ち替え、新山の腕を交わし、アンダーパスを放つ。



(巧い!!)

その先には、ノーマークの柳。



『シュパ。』


ゴール下のシュートを決めた。




「ルカワ!ルカワ!」

「いいぞ!!湘北!!」

「さすが、流川先輩!!」

「ナイスパス!!!」




「得点以外のところで、流川君が目立ってきましたね。
このまま湘北がいってしまうのではないでしょうか!!」

「そうね。確かに、今の動きは素晴らしいわね。流川君のスティール、アシストは、青森酒田の意表をつく展開だわ。
でも、青森酒田だって、このままじゃ終わらないはずよ。」




酒田 44
湘北 47




弥生の予想は的中した。


第3Q8分が経過し、得点差は4点。


酒田が逆転していた。




酒田 64
湘北 60




「おのれーーー!!!」


『ブルブル・・・。』

桜木は、悔しさと屈辱で震えていた。


「いいから、気持ち切り替えろ!!いくぞ!花道!!」




「あっさり逆転されてしまった。しかも・・・。
桜木君にとっては、この上ない屈辱ですね。」

と桜木を心配する中村。

「第3Qが開始してから、青森酒田は常にパウエル君から攻めている。
しかも、アイソレーションをまじえてだからね。流川君や白田君がカバーにいけば、パスを通される。
彼を止める手立ては、ないものかしら。」

「やはり、ゾーンですか?」

「いえ、ゾーンだと、パウエル君がフリーでボールを受けることが多くなるわ・・・。
だけど、このままでは・・・。」

(早く動かないと致命傷になってしまいますよ・・・。安西先生。)


「正しく、湘北に立ちはだかる壁ですね・・・。」




心配そうにコートを見つめる湘北ベンチ。

控え選手たちは、安西の策を待っていた。








続く。

#297 【エースで攻めろ】

2010-04-16 | #11 湘北 選抜編
酒田 38
湘北 35




タイムアウト後、安西の言葉により、息を吹き返した湘北。

その勢いは、第2Qを飲み込んだ。



『ビィーーー!!』



第2Q終了を告げるブザーがなる。



酒田 44
湘北 45




最大7点差あった得点差をひっくり返し、1点差のリードで第2Qを終えた。



「よっしゃーー!!逆転だーー!!」

「ふーー。」

「へっ!この天才のおかげだぜ!!」

喜びを爆発させながら、ベンチに戻る湘北メンバー。

安西も微笑んで迎え入れる。

晴子、安田らの顔もみな笑顔になっている。


『バシ!』


『バシ!』


「よくやったわ!」

彩子は、5人の尻を叩く。

歓喜に沸く湘北ベンチ。


それは、もうすでに勝利したかのような光景であった。




対する青森酒田ベンチ。

「さずが湘北だ。陵南を倒したごどだけのこどはある。」

「あぁ。」

「第2Qで追い上げられだが、それまではリードを奪っでいだ。」

「今両チームの実力は、拮抗しでいる。」

「勝負の決め手どなるのは、チームの底力と爆発力。」

「後半、任せたど。」


『ポン。』


「OKデス!」にかっ。


キャプテン吉田は、パウエルの肩に、軽く触れた。




「いい追い上げだったな。」

「一人ひとりの目標が明確化されたようダス。」

「やはり、侮れねぇチームだぜ。」

烏山と加藤の会話。


「こうなってくると、勝負は、エースの力が大きく影響する。」


『コク。』

沢北にうなずく柳葉。


「流川さんとパウエルですね。」

「どっちが、勝利に近づけることができるか。そして、どっちが俺への挑戦者となるか。
楽しみな後半になりそうだぜ。なぁ?」


「・・・。」


「柳葉?」

「敏君?」

「・・・。」ごにょごにょ。

柳葉は、小さな声で、河田に耳打ちをする。


「うっうん。わかったよ。」

「柳葉はなんていっている?」


「エッエースは、俺だって・・・。」


「なっ!!」

驚く沢北を自信に満ち溢れた眼で見つめる柳葉。


「ふっ。確かに、今はそうかもな。深津さんたちや俺が去った山王を支えたのは、柳葉と美紀男だ。
感謝してるぜ。だが、山王の真のエースは俺だ!」


『プルプル。』

首を振る柳葉。


(こっこいつ・・・。)

「なら、この大会のMVPを取ったやつがエースだ!それでどうだ!!」


『コク。』


「ふん!おめーや流川には、ぜってーやらねぇぞ!!」


コート上で行われるであろう流川とパウエルのエース対決に加え、
山王工業のチーム内エース決定戦の開催も決まった。


(ホント、1つ下のやつらは、どいつもこいつも生意気なやつらだぜ。)


想いとは反対に嬉しそうな表情を見せる沢北であった。




「緊迫した試合になりましたね。なんか決勝戦のようですよ。」

「確かに、決勝戦で当たってもいい組み合わせかもしれないわ。けど・・・。」

「けど?」

「今のままでは、この2つのチームは、絶対に山王工業には勝てない。」

「なっなんでですか?」

「秘密よ。」

「また、秘密ですか・・・。」

(沢北君のように、チームに頼れる大エースがいるといないとでは、終盤を迎える心境が違う。
湘北、青森酒田、さぁどっちが本当のエースを抱えているチームなのかしら。)




再び、湘北ベンチ。

「オヤジ!後半の作戦は!?」

「エースで攻めます。」


「うっ。」

「ぬっ。」


(流川先輩ということか・・・。)

(確かに流川さんは、相手に抑えられている・・・。)

(チームが勝っても、エースが抑えられるわけにはいかねぇということか・・・。)


「る・・・」

宮城が声を出そうとした瞬間。


「ハッハッハ!わかったぞ!オヤジ!!あとは、俺に任せろ!!ハッハッハ!!」


「いや、おめーじゃねぇだろ。」

「桜木先輩・・・、なんて残念な人なんだ・・・。」

「さっきのプレーが、更なる自信に繋がってしまったか・・・。」

「どあほう。」

桜木の耳には届いてない。


「先生・・・。」

「ほっほっほ。」

「先生?」

「ほっほっほ。」


(もしかして・・・?)

何かを感じた彩子。


(「エースで攻めます。」)


安西の一言を「流川で攻める。」と感じ取った湘北選手たち。


だが・・・。


(桜木花道のことなの・・・?)

彩子の疑問に微笑んで答える安西。


まもなく、怒涛の第3Qが開始される。








続く。

#296 【復活の息吹】

2010-04-13 | #11 湘北 選抜編
酒田 38
湘北 31




タイムアウトが終了。


湘北のボールからリスタートする。


宮城がボールを受け取り一言。

「いくぜ!!」



『ダムダムダム!!』


これまでよりも速く、そして力強いドリブルで一気に駆け上がる。


迎え撃つPG松山。


『ダムダム!』



(「湘北の切り込み隊長は君です。」
わかってますぜ。先生!)



宮城のドリブルは、止まらない。



「!!」


『キュ!』


『ダムダム!』



トップスピードにのったかと思えば、一気にシフトダウンからバックステップ、そして、再びトップスピードへ。


宮城の稲妻ステップが、松山を振り切った。

そのまま、インサイドへ切れ込む宮城。




「宮城がいったーー!!!」

「捌くか!そのままか!」




インサイドの吉田が、パウエルが、カバーに詰め寄る。


(来るならきやがれ!)




「捕まる!!」

「囲まれた!!」




だが、宮城は、囲まれるギリギリのところで、バックビハインドパスを繰り出した。




「巧い!!」

「白田へのパスだ!!」




『バチン!』


白田はボールを受け取らず、再び中へ弾き跳ばす。


「じまった!!」



(「白田君もインサイド勝負、パスを捌くことも考えてください。」
こういうことですよね。先生!)



そのプレーに、吉田とパウエルの動きが、遅れを取る。


「ナイスパス!!」

受け取ったのは、素早くパウエルの前でポジションを取った桜木であった。


『クルッ!』


眼で追えないほどの速いパスワークに、一瞬の遅れが生じたパウエル。


そのパウエルの上から、桜木は力強いシュートを放った。



『バス!!』


ボールは、激しくボードに当たり、ネットを豪快に揺らす。



「よっしゃーーーー!!」

大きな声で叫ぶ桜木。




「湘北の眼にもとまらぬパスワーク!!!」

「タイムアウト後に、しっかり決めてきたーー!!!」

「桜木!いいぞーー!!!」




(「リバウンドだけではないところを証明してください。」
トーゼン!誰にも負けねぇ!)



「花道!ナイッシュだ!」

「おうよ!リョーちん!!ハクタスもこの天才によくついてきた!!」

「キャプテンのパスと桜木先輩のポジション取りが絶妙だったんですよ。」

誉め合う3人。

テンションが高まる。

「もう1本いくぜ!!」

「おう!!」

「はい!!」



流川と柳が、顔を見合わせる。

(乗り遅れた・・・。)




「押せ押せ!ショーホク!押せ押せ!ショーホク!」

「ディ!ディ!ディフェンス!ディ!ディ!ディフェンス!」

「押せ押せ!ショーホク!押せ押せ!ショーホク!」

「ディ!ディ!ディフェンス!ディ!ディ!ディフェンス!」




会場がヒートアップ寸前。

隣で行われている洛安、北陽高校の試合をも飲み込む勢いである。




酒田 38
湘北 33




『キュ!』


『キュッ!!』


『キュッキュ!!』


再び、湘北の激しいオールコートマンツー。




「厳しいディフェンス!!」

「酒田、運べるかーー!!」




だが。

先程のお返しとばかりに、松山が冷静に確実にボールを運んだ。


(ちっ。ホントに動じねぇやつだぜ。)




観客席の山王、PG加藤とSG烏山の会話。

「宮城一人では、松山を止められないダス。」

「確かにな。夏輝でさえ、てこずったんだからな。」

「だが、今回は完璧に止めるダス。」

「もう一度勝負してぇってことか。こりゃ、酒田を応援しなきゃならないな。」




『キュッ!』


『ダム!』


『キュッキュ!』


湘北コート内で、両チームの激しい攻防のなか。


『ビィ!』


松山のノールックジャンプパスが炸裂する。



(!!)


受け取ったのは、随所に素晴らしいプレーを見せているSF田中。

現時点で、酒田がリードを奪っていたのは、田中が流川を抑えている功績が大きい。

その影の功労者、ディフェンスの男田中が、流川を抜きにかかる。



(ジュニアのようだが、そんなん関係ねーど!)

(来るならきやがれ!)



『ダム!』


重心の引く姿勢からのレッグスルー。

鋭く方向転換。


(抜いたど!)


そのまま、ジャンプシュートを放った。



『シュ!』


『ピシィ。』



「なんだど!」


(かすった!)

流川の懸命のシュートチェック。



(打たれちまったが。
「オフェンスでもディフェンスでもチームを勝利に導いてこそ、本当のエース。」)



「リバン!」

珍しく流川が叫んだ。




「おっ!気合十分じゃねぇかよ!!」

と笑う沢北。




その瞬間、ゴール下でポジションを取り合う4人の大男たち。


『ガシ!』


『ガシ!』


「ハクタス!ゴール下は死守だ!!」

「はい!!」



『ダン!!』


そして、この男が力強くコートを蹴る。



『キュ!』


「!!」




「あっ、柳君が走った!!」

「速すぎるスタートだわ!!!」




(「仲間を信頼することです。」
俺は、前に走るのみ!!)



柳は、仲間がリバウンドを獲るという前提の元、酒田ゴールへ走った。


(柳のやつ。)

それを確認する宮城。



ゴール下。


体が体を抑え、心を心が抑える。


『ガコン!』


軌道のずれた田中のシュートは、リングにあたり、跳ね返る。




「桜木君!!」

晴子が叫ぶ。




ボールは、桜木とパウエルのほうへ、跳んだ。

「上出来!!」

「グッド!!」

「だりゃーーー!!!」

「トォーー!!!」


両腕でつかみに行くパウエルに対して、桜木は右手1本で、奪いにいく。




「あれでは!!」

「獲られる!!」

と湘北ベンチ。




「ぬおぉぉー!!」


空中で一伸びする桜木。


右手が伸びる。


そして。



『バン!』



「リョーちん!!」

桜木の選択は、ティップアウト。


「いいぞ!」


『バス。』


受け取った宮城は、回転をしながら、サイドスローで前方へ放り投げる。



「受け取れ!!」



誰よりも速くスタートを切っていた柳に追いつけるものなど、誰一人いない。




「もう走ってやがる!!!」

「湘北の速攻だーー!!!」




『バチィン!!』


宮城からの絶妙なパスを受け取った柳。

背後を確認することなく、綺麗なレイアップシュートを打った。



『パサ。』




「決まったーー!!!」

「湘北が息を吹き返したーー!!!」

「3点差!!」

「捉えたぞ!!!」




柳は、湘北コートの4人を見つめ、小さく微笑んだ。



『クル。』



そして、5人が一斉に湘北ベンチの安西を見る。



(先生・・・。)

(オヤジ・・・。)


安西は、立ち上がり、小さく拳を握って、微笑んだ。


(その調子ですよ。)



安西の言葉が、湘北に復活の息吹をもたらしたのであった。



酒田 38
湘北 35







続く。

#295 【簡単に負けるわけない】

2010-04-10 | #11 湘北 選抜編
酒田 38
湘北 31




パウエルにシュートを決められたところで、湘北安西はタイムアウトをとった。


選手を迎え入れる湘北ベンチ。


「・・・。」

声をかけるものはいない。

選手らも、言葉を発するものはいなかった。


それほど、今の失点は、選手たちにも湘北ベンチにも大きなものであった。


しばらくして、安西が静かに口を開く。

「さすが、山王工業を破っただけのチーム。強いですね。」

「目立たないが、パウエル以外の4人も各ポジションで全国クラスの実力を持っています。」

「宮城君のいうとおりです。スピードだけ、オフェンスだけ、リバウンドだけの選手とは違いますね。」


「ぬっ!」

「!!」

「なぬっ!」

不機嫌になる3人。


かまわず、安西は続ける。

「そして、青森酒田の4人は、パウエル君に対して、献身的に、そして絶対的な信頼を置いている。」


「献身的・・・。絶対的な信頼・・・。うちには、馴染みの薄い言葉ね。」

と彩子。


「個としても、チームとしても、現時点では、酒田のほうが上でしょう。
ならば、うちは持っているもの全てをコートで出し切った上で、プラスアルファが必要です。」

「聞き捨てならねぇ部分があるが、ようは今まで以上に全力でやればいいんだろう?全力で!」


「その通りです。桜木君はインサイドで勝負してください。
リバウンドだけではないところを証明してください。」

「ふん。見てやがれ!」


「白田君もインサイド勝負、パスを捌くことも考えてください。
吉田君に通用することは、第1Qで実証済みです。自信を持ってください。」

「はい!!」


「宮城君は、松山君に対して、後手に回っているようです。湘北の切り込み隊長は君です。忘れないこと。」

「俺が突破口を開きます。」


「一番劣勢のように見えますが、どうですか?柳君?」

「・・・。」

「仲間を信頼することです。」

「信頼・・・ですか。わかりました。」


「最後、流川君は、外、中と臨機応変に攻めること。そして、」

「オフェンスでもディフェンスでもチームを勝利に導いてこそ、本当のエース。」

「ほっほっほ。期待していますよ。」

「うす!」


「オヤジ!ディフェンスは!?」

「走り抜く。」

「ふん。簡単だな!!」

「よし!おめーら、第2Q中に追いつくぞ!」

「はい!」

「おうよ!」


「走るぞ!!!」

「おぉ!!!」

意気消沈していた湘北に再び活気が戻る。


ベンチに戻ったときとは、全く違う顔つきで戻る湘北選手たち。




「安西先生の言葉で、なんか復活したって感じですね?」

「気持ちはね。ただ、気持ちだけで勝てるほど、青森酒田は弱くないわよ。」




「ふっ。」

コートに足を踏み込む湘北選手を見て、笑う沢北。

(タフなところは、相変わらずだな。)




コートに入る10人。

「バイエルン。湘北のバスケを見せてやるぜ!」

「OKデス!タロシミニデス!」




酒田 38
湘北 31




その頃。

陵南高校体育館。


「今頃、湘北は、試合が始まったところかな?」

「もうハーフタイムくらいじゃないですか?」

山岡と上杉が会話をしている。


「あの山王工業を倒した青森酒田との試合。わいも見に行きたかったですわー!!!」

「彦一は、練習しなくてはいいからさ、今から行って来いよ。」

「そうだな。」にこり。

「拓真!せっ仙道さんまで!」

「選手としては終わっているし。」

「フッフクさん!それは、言ってはならへん言葉やで!!」

「彦一は、マネージャーだろ。」

「キャプテンまで・・・。」

「あはははは!」

体育館に笑いが起こった。



「でも、実際、湘北は勝てるだろうか。」

と植草がつぶやいた。

「彦一の情報だと、安定したチームに、パウエルという爆発力を秘めている青森酒田。」

「爆発力はあるが、ムラのある湘北。」

「うーん。少し分が悪いかもしれないですね。」


「だが、粘り強さとしぶとさが湘北にはある。」

と福田。


「大丈夫さ。俺たちに勝った湘北だ。負けることはない。自分たちに自信を持とう。」にこり。

「そうだな。仙道のいうとおりだ!」

「それに、湘北に勝ってもらわないと、IH覇者の俺たちが弱く見られちまうからな。」

「そうっすね。」

「さぁ、俺たちも湘北に負けないように、気合入れて練習するぞ!!」

「おう!!」

「はい!!」



(あの負けず嫌いコンビが、簡単に負けるわけがないさ。)

仙道は、体育館の窓から見える雲を見つめながら、思うのであった。




酒田 38
湘北 31







続く。

#294 【一筋縄】

2010-04-08 | #11 湘北 選抜編
酒田 36
湘北 31




「桜木が初得点だーーー!!」

「しかも、パウエルとの1on1から、決めやがったーー!!!」

「面白くなるぞ!!!」

会場が桜木のプレーに沸いた。




「桜木君!!ナイスプレー!!」

晴子は、スコアシートを記入するのを忘れ、はしゃいだ。

「まずは、1本ね。先生、どうしますか?」

と冷静な彩子。


「宮城君。ちょっと。」

安西が口を開く。



『コクッ。』


安西の一言で、その真意を理解した宮城は、微笑みながらうなずいた。


「ディフェンス、いくぞ!!花道は、パウエルにつけ!!オールコートマンツーだ!!!」

「おうよ!!」

「うす!」

「はい!」

「OK!」


(オールコートのほうが、走り甲斐がある。)

笑う柳。




「湘北のオールコートーー!!」

「早めに仕掛けた!!」




第2Qも残り4分を経過したところで、湘北はオールコートマンツーを繰り出した。


安西は、桜木にパウエルを託した。



エンドライン上の吉田。

白田がパスコースを塞ぐように、手足を動かす。

宮城が、柳が、スピードでカバー。

酒田並みのディフェンスを見せる。



「ヨッサン!」

パスの出せない吉田に、パウエルがボールを要求する。


「パウエル!」

吉田は、センターライン付近にいるパウエルに大きなパスを放つ。




「高すぎるぞ!!」

「いや、パウエルなら獲れる!!」




「ぬぉぉーーー!!」


『ダン!!』


そのパスに跳び掛る赤い頭。


「サムラギ!!」


『パシ!』


キャッチできないまでも、パスの軌道をずらすことに成功。


「そんなパスは、湘北には通用しねぇ!」



だが。



ボールは、SF田中の元へ。


「なぬ。」

「ゴクロサマ。」


言葉を残し、桜木より速く湘北ゴールに駆け上がるパウエル。


「こらぁ!待ちやがれーー!!!」



『ダムダム!』


田中がドリブルを進める。




「突破されたーー!!!」

「ピーーンチ!!」




だが、田中の前に立ちはだかるのは、流川。


(「オフェンスでもディフェンスでもチームを勝利に導いてこそ、本当のエースですよ。」)

安西の言葉が頭をよぎる。



『キュッ!』


(ここは、ぜってーとめる。)


『キュ!』


『ダム!』


田中は、小刻みなステップで流川を揺さぶる。


『キュッ!』


流川に並ぶ。


「!!」




「田中が抜いたーー!!!」

「地味に巧い!!!」




「流川ーー!!」

「流川せんぱーーい!!」




流川が必死に喰らいつく。


(おっ!)

(いかせるか。)


並走する流川に微笑んだ田中が、ボールを掴むと大きく湘北リングへとボールを放った。

(お前ど、勝負はしねぇ。)


「!!!」


「!!」




「パス!!」

「パウエルーー!!!」

「いけーーーー!!!」

その田中のパスに会場が大きな期待を寄せる。




「タッサン。ナイスパス!」

そのボールに跳び掛る大きな眼の黒い男。



「ヌォォォー!!」



『バシ!』


空中でボールを掴み、そしてそのまま・・・。



『スポッ!』



ダイレクトにシュートを決めた。




「ワンパスで返したーーー!!」

「青森酒田のコンビプレー!!!」

どよめく体育館。




その中で、流川と桜木は、パウエルの背中を静かに見つめている。




「酒田、強いぞーーー!!!」

「これは、このまま湘北を喰っちまうぞ!!!」

「酒田!酒田!酒田!酒田!」




「一筋縄ではいかないわね・・・。」

「先生・・・。」

「・・・。」




安西は、静かに立ち上がり、タイムアウトを要求した。


『ビィーー!!』


「チャージドタイムアウト!白!!」




「まずいわね・・・。」

「はい・・・。僕もそう思います・・・。」

「桜木君が、パウエル君との1on1を制して、いいムードを作りかけていた。
そして、勢いづけるように、オーツコートマンツーで勝負に出た途端の失点・・・。」

「しかも、流川君が田中君に抜かれて、パウエル君にあっさりを決められてしまった・・・。」

「反対に勢いづいたのは、青森酒田のほうかもしれないわね・・・。」

記者席の弥生と中村の額から、一粒の汗が流れた。




「こりゃ、酒田がいくな。」

「この1本は、かなり痛いダス。」

「・・・。」

柳葉と河田は無言。


(ここで終わる湘北じゃねーよ。なぁ、流川!桜木!)

沢北は、思うのであった。




酒田 38
湘北 31







続く。

#293 【ゴール下の勝負】

2010-04-06 | #11 湘北 選抜編
酒田 36
湘北 29




エンドラインの柳がすばやく宮城にボールを入れる。


一気に、酒田コートに攻め込むが。




「酒田のディフェンスが激しい!!」

「湘北を抑えている!!!」




(攻め手がねぇー!)

宮城は、攻め倦んだ。



そのとき。



『キュッ!』


「!!!」

「!!」




「桜木花道!!」

「桜木君!!」




腰を落とし、大きく足を広げ、どっしりと構えた桜木が、ゴール下にいた。


「どけ!花道!!」


「外で勝てねぇなら、中で倒すまでよ!」


右手の親指で、後ろにいるパウエルを指差す桜木。




「安西先生・・・。」

「ふむ。ここで負けるようなら、森重君や河田君にも敵わない。
まずは、オールラウンダーのパウエル君超えです。」

「でも、作戦は・・・。」

「桜木君にとって、この戦いはこの先も成長にもつながる。やらせてみましょう。」

「桜木君・・・。」




「バイエルン!勝負だ!!」

「OKデス。」


「ふっ。桜木先輩らしいですね。」

白田が、自発的に外に開く。


「いいじゃないっすか。」

と柳。


(やるからには勝ちやがれ。)

流川も外に開いた。



(最後だぞ!花道!!)



桜木の想いは、湘北選手に届いた。



「サムラギ、ショウム!」

「俺は湘北のセンターだ!!」



インサイドでは、桜木とパウエルが熾烈なポジション争い。

正真正銘の真っ向勝負が始まった。



『ガシ!』


『ガシ!』


簡単には、ボールを入れさせないパウエルと松山のディフェンス。


「へい。」

「キャプテン。」


流川、白田の声が、酒田のディフェンスを惑わせる。


『キュ。』


柳が、新山を連れて、宮城へ駆け寄った。


『パス。』


宮城からのハンドパスを受け取った柳が、宮城を壁にして、ワンフェイク。



SG新山を抜いた。




「おぉぉぉーー!!」

「このQ、柳が初めて抜いたーー!!」




その瞬間を待っていた桜木が。



『キュッ!』



台形内でポジションを取った。



『ビィ!』


柳の速いチェストパス。



『バチィン!』


パウエルを背負う桜木にボールが渡った。



紛れもない、桜木対パウエルのゴール下の1on1の勝負。




「桜木ーー!!いけーー!!!」

「抑えろーーー!!パウエルーーー!!」

会場が、2人の挙動に注目する。




(桜木君。)

晴子が祈る。

「桜木!」

(桜木なら、やれる!!)

安田らも叫ぶ。




『チラッ。』


後ろで構えるパウエルのポジションを確認する。


(よし!)


桜木の最初の選択は、左ターン。


『クルッ!』


素早くゴールを向く桜木に、パウエルが対応する。




「桜木が速い!!」

「いや、パウエルも負けてない!!」




『シュ!』


軽くシュートフェイントを繰り出し、左手でワンドリをつき、左サイドからステップインで抜きにかかる。




「あっあれは。」

と観客席の美紀男。

「赤木の得意とするポストプレーだ。」

沢北が答える。




「ウホッーー!!!」

「ヌォォォーー!!」



桜木が高く跳んだ。


動きについていくパウエルも、大きく宙を舞った。




「つかまったーー!!!」

「パウエルのほうが高い!!!」




『バス!』



無常にも桜木のシュートは、パウエルの長い腕によって、小さく弾かれた。



『ガン!』



リングに当たって、ボールは小さく跳ねる。



「!!!」


「!!!」




「いいど、パウエル!!」


「さっ桜木さん!!」



だが、ここから桜木が魅せる。



『ダン!』



両者同時に着地するも。



『ダン!』



再び、踏み込んだ桜木。



(ハヤイ!!)



『トン。』



パウエルも驚くその速さで、桜木はボールに触れた。



『パサ。』



タップシュート。



『ダン。』



着地する桜木が、電光掲示板を確認する。



29

30

31



湘北に2点が追加されると同時に、桜木この試合初得点を記録した。



「・・・。」

「・・・。」

しばしの沈黙。


「バイエルン!こっからが本当の勝負だ。」

そして、ほっとした表情を見せ、拳を突き出す桜木。


「ヤッパリ、サムラギ、オモロシイヒト。」



『ゴン!』



パウエルは、桜木の拳に、自分の左手の拳を当てた。




酒田 36
湘北 31







続く。

#292 【湘北のセンター】

2010-04-02 | #11 湘北 選抜編
酒田 34
湘北 29




(・・・。)

無言の桜木。


「花道!早く戻れーー!!!」

宮城が叫ぶが、桜木は酒田ゴールから動こうとしない。




「桜木くーーん!!」

ベンチの晴子の声にも反応しない桜木。




酒田のアリーオフェンスが、湘北ゴールを襲った。


『キュ!』


『ガン!!』


ワンスッテプから、真下に叩きつけるようなパウエルのワンハンドダンクに会場が唸りをあげる。




「湘北を圧倒している!!」

「豪快すぎる!!ダーーンク!!!」

「酒田が強い!!!!」

「パーウエル!パーウエル!」




この試合、最大の7点差が開く。




酒田 36
湘北 29




佇む桜木。

今までに経験したことのない屈辱感・敗北感が、今桜木を奮い立たせようとしていた。


(・・・・・・・。

 俺は湘北のセンターだ・・・。

 センターの俺がゴール下にいないでどうするんだ・・・。

 俺が湘北のゴール下を守るんだ・・・。

 俺が相手のゴール下を攻めるんだ・・・。

 そうだよな・・・。

 なぁ・・・。

 ゴリ・・・。)



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<<回想>>

昨年、2月上旬。

湘北高校体育館。


「なんだ、ゴリ。この天才を朝っぱらから呼び出して。
さては、今までの無礼の謝罪か!?または、俺にキャプテンを・・・。」


『ゴン!』


「たわけが!」


「ぬっ。いきなり、殴るとは!引退した分際で、早く大学に行きやがれ!」

「ふん!言われなくても、午後から大学の入部試験だ。」

「ははぁー、そうか、わかったぞ。この天才に練習相手をさせようというのだな。」

「まぁ、そういうことだ。」

「やけに素直だな。いっちょ、相手してやるぜ!」


少し考えて、赤木が口を開く。


「桜木。」

「ん!?」

「4月になれば、新入部員も入ってくる。センターもいるだろう。その全てが、貴様よりも遥かに巧い。」

「なぬっ!何をいきなり!」

「お前は、センターとしては、素人以下だ。」

「なぬぬっ!しかも、このリバウンド王桜木に向かって、なんたる暴言!」

「あぁ、確かに、リバウンドだけは全国クラスだ。
だがな、センターとしてのディフェンス、オフェンス、ポジション取り、役割、存在、どれをとっても素人以下だ。」

「なぬぬぬっ!天才をコケにしおって、一体何がいいたいんだ!」

「ふん。」


少し笑って答える。

「お前は、これからセンターの動きを覚えろ。
そして、湘北のゴール下を守るんだ。相手のゴール下を攻めるんだ。」

「ぬっ?俺にセンターをやれと?」

「あぁ。安西先生も同意の上だ。素晴らしい新入部員が入ってきても、
センターは桜木君に任せる、彼しか湘北のセンターを任せられる選手はいないと。」

「へっ、オヤジもようやくわかったか。この桜木の実力を!ハッハッハ!」


『ゴン!』


「図に乗るな!!」

「うぐっ。」

「桜木・・・、先生や俺の期待を裏切るなよ!!」


少し間が空いて、桜木が口を開く。


「当たり前だ!!俺は湘北の救世主、天才バスケットマン桜木だぜ!!ハッハッハ!!」



桜木は、今、心底から喜びを感じていた。

それは、赤木から初めて期待という想いを直球で受けたためであった。

バスケットボールという球技を通じて、他人から期待というものをかけられるようになった。


初めは、赤木晴子。


それは、親友たちに波及し、チームメイトにも少しずつ、浸透していった。

期待を一身に受け、全国クラスのリバウンドマンにもなった。

だが、湘北の大黒柱であり、キャプテンである赤木からは、期待の言葉はおろか、想いを感じることはなかった。


それがいま、「期待を裏切るな!」と一直線の言葉を投げかけられた。



「・・・。」にやっ。



桜木は、今までになく胸が熱くなったのを感じた。



「桜木!なにがあっても、ゴール下から逃げるな!ゴール下を離れるな!
それが湘北のセンターだ!!」

「ふっ。ゴリもたわけたことを!この天才桜木が逃げるだと!!
そんなことは断じてありえん!!たとえ、ゴリが相手でもな!」

「ふっ。お前こそたわけたことを!
この俺を相手にきっと逃げたくなるわ!!勝負だ!!桜木!!!」




1時間後・・・。



「はぁはぁ。」


「ぜぇぜぇ。」


ひたすら、ゴール下の1on1を繰り返していた2人は、滝のような汗をかいて座っている。


時計を見る赤木。

(もうこんな時間か・・・。)


2人は時間が経つのを忘れていた。


「そろそろ、俺はいかなくてはならない。」

といって、更衣室に向かう赤木。



「ゴリ。」

「ん?なんだ?」

「俺は、丸男も倒して、デカ坊主を倒して、ぜってー全国制覇してやる。だから、ゴリも負けるんじゃねぇぞ!」

「誰にいっている。愚問だ!俺の夢は全国制覇!ただひとつ!!それは、大学に行っても変わらん!!」

「へっ、そうだったな。あと2年のうちに全国制覇しておけよ。
俺が、大学に入ったら、できなくなるからな!」

「貴様が、進学できるとは到底思えん!」

「ハッハッハ!」

「ウホッウホッ!」

笑う2人。


そして、最後。



「ありがとな。」



無意識の中で、2人が同じ言葉を同時に口にしていた。

全ての想いを5文字に込めて・・・。



「なっ!」

「ぬっ!」



恥ずかしがる2人。

その後、言葉を交わすことなく、赤木は体育館を後にした。



(まずは、今日の入部試験に合格せねば・・・。)



(ゴリ。待ってろよ。)



-----------------------------------------------------------------------



(ゴリ。俺は湘北のセンターだ!!そして、全国制覇を成し遂げるセンターだ!!
いまから、それを証明してやる!!)


桜木の顔つきが見る見る変わっていった。




酒田 36
湘北 29







続く。