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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#341 【流川×沢北】

2010-08-05 | #11 湘北 選抜編
山王 75
湘北 73




「流川さんのところから、攻め込まれましたね。」

「快もいい動きだ。もしかすると、流川さんを・・・。」

「流川は、そんな柔じゃない。」

「福田さん!」

「あいつは、仙道が認めた男だ。」

「・・・。」にこり。

(福田のやつ。)




攻守が変わって、湘北のオフェンス。


すぐに沢北が流川を抑える。


「お前のオフェンスの怖さは、十分に理解している。」

「・・・。」


「そして、お前を止めれば、湘北のオフェンスが止まることもな。」

「止まらない。」


「ん!?」



『ダン!!』


『グッ!!』


渾身の力を込めた流川のサイドステップ。


一瞬の切れ味だけは、今も鋭い。


45°


「頼むぞ!流川!!」


ボールは流川に渡った。



「まだいけるか。来いよ。」

「・・・。」


『バン!』


「なっ中か!!」


流川の選択は、沢北の意表をつくインサイドへのバウンドパスであった。

この状況、この時間帯での流川のパス。

流川の性格を知っているものは、みな驚愕していた。

しかも、受け取った相手は・・・。




「桜木だーーー!!」

「インサイド勝負!!」




驚きを隠せない湘北ベンチ。

「この局面で桜木先輩にパス!!」

「流川が桜木花道に・・・。」




「再び、このコンビ!!」

「流川は勝負を避けたのか!!」

「それほどまでに足が!!」




『キュ。』


流川が動く。


『キュッ!!』


沢北を抜く。


『クイ。』


桜木が首を振る。


『ザッ。』


河田の重心が揺れる。



その瞬間、桜木からの手の中から、流川がボールを受け取った。




「あっあの2人がハンドトス!!」

「今までにない展開!!!」

驚く弥生。




桜木によって、河田の重心を動かし、流川のコースが作られた。


誰もが想像を絶する動き。




「うっそ!!!!」

「あの2人が!!!」

「今度はハンドトス!!!沢北栄治を倒すために、惜しみなく協力しているわ!!」

「ナイスパス!桜木君!いけーーーー!!流川君!!」

「いける。」




「あっありえへん!」

「流川と桜木のコンビプレー・・・。」

「いけ!」

仙道の言葉にも力が入る。




『ダムッ!』  


流川はワンドリから、ステップインで、山王ゴールを襲う。



『ダーン!』


「打たせるかーー!!」


遅れて、沢北のブロック。



『バッ!』


『スカッ。』



「!!!」



『シュパ!!』



流川はダブルクラッチを成功させた。



山王 75
湘北 75




「流川が凄すぎるーー!!!」

「オフェンスの鬼!!」

「ダッダブルクラッチーー!!!」

「また同点だーーー!!!」

「桜木!ナイスパス!!!」

「ルカワ!ルカワ!ルカワ!ルカワ!」




(認めてやるぜ!流川!!お前を無二のライバルだと認めたうえで、ぶっ潰す!!)


「ナ・・・ス。」ボソ。

「・・・。」

流川は桜木に聞こえないほどの声で、何かをいった。

それに桜木は無言で答えた。



『キュ!』 


素早く桜木が沢北に張り付く。


「てめーには、一切ボールは触れさせん!」

「あめーよ。」



『ガシ!!』


フェイスガードにより、周りの把握が難しい桜木に、山王の壁が立ちふさがった。



「おのれ、丸男!邪魔をするな!!」


(そっちが2人なら、こっちも2人だ!)



『パス。』


沢北にボールが渡った。



「俺がいきます!」


咄嗟に河田をマークしていた白田が、沢北のコースに入る。



だが。



かまわず突っ込む沢北。



白田の長い腕が、シュートコースを塞ぐ。



沢北は表情を変えない。



『タン!』



(眼には眼を!歯に歯を!)



長い滞空時間。



「クラッチにはクラッチを!」



自分の腕を胸に引き付ける。



『バッ!』



白田のブロックを交わす。



『サッ。』



『スポッ!!』



お返しとばかりに、沢北のダブルクラッチが炸裂した。




「わっ!沢北がやり返したーー!!!」

「なっなんだ!この試合は!!」

「もうどっちが勝つかわからない!!」




『ドン。』


堂本は、右手の拳を床に叩きつける。


(いいぞ!沢北!!!)

興奮が体を震わす。




「沢北栄治・・・。なんていう選手なの・・・。本当に止まらない・・・。」

「彼が、日本一の高校生プレイヤーなんです。それを今、流川君が、桜木君が越えようとしている。」

「流川君!桜木君も頑張って!!優勝まであと少しだよ!!」




試合終了まで、残り1分38秒。

山王、湘北にとって、長く熱い98秒を迎える。



山王 77
湘北 75







続く。

#340 【機転?奇策?】

2010-07-30 | #11 湘北 選抜編
山王 73
湘北 71




桜木のブロックで、山王のオフェンスを凌いだ湘北。


優勝に向け、想いが加速する。



『パシ!』


こぼれ玉を拾ったのは、柳であった。


(ルーズボールは、全て俺が奪う!!そして、もう一つ!!!)



「宮城さん!」

「おう!」


柳は、宮城にボールを渡し、駆け上がった。




「湘北の速攻ーー!!!!」

「速い!!!」




「この時間帯であの2人、何て速さだーー!!」

「柳君は、第3Qを休んだために、体力、脚力に問題はない。宮城君は・・・。」

(気力、想い・・・かしら・・・。)




湘北のスピードコンビが、山王コートを切り裂く。



『パシ!』


柳葉を交わす。



『パシ!!』


加藤を交わす。



瞬く間に、山王ゴール前。



そして。



『パサ。』



静かなレイアップシュートが決まった。


電光掲示板が、左右同じ数字を表示。




会場が一気に爆発する。


「どわぁぁーー!!」

「のぉぉぉーーー!!!」

「どっどっ同点ーーー!!!!」

「ついに湘北が追いついたーー!!!」

「怒涛の展開ーーーー!!!!」

「奇跡ーーーー!!!」




同点弾を決めたのは、ここまでチームをまとめ上げてきた湘北のキャプテン宮城であった。




「リョータ!!柳!!」

「キャプテーーン!!」

「宮城ーーー!!!」


「くっぐしゅん。」

晴子の涙は止まらない。

「リョーター!!」

彩子は、大きく跳び上がった。

安西は立ち上がり、2本の腕を高らかに挙げていた。




「もしかすると、もしかするで・・・。」

「こっこんな展開ありですか?」

と苦笑う上杉。

「漫画の世界ですね・・・。」

と汗が垂れる黒川。

「ほわっちゃー。」

と意味不明の福田。

「ここからが、本当の始まりだ。」

と仙道。

(奇跡のチーム・・・。)

田岡に言葉は出ない。




「どっ同点ですよ!相田さん!!すっすごい!湘北凄い!!」

「観てるから、わかってるって!!」

(まさか、あの奇跡が再び・・・。)




湘北は、試合開始以来の同点とした。



山王 73
湘北 73




「オラァ!当たるぞ!!」

「はい!!」

一気に攻勢をかける湘北は、そのままオールコートで当たる。



『キュ!』


『キュッ!』


『キュッ!』 




「オラオラオラーー!!」

宮城が威圧的に加藤を守る。


柳葉の足に追い討ちをかける柳。


白田は高さで福原の動きを封じた。


流川は、沢北の背中を追うが、明らかにその運動量は落ちている。


(流川は限界に近い。)



そのとき。


『バッ。』


『グッ!』


「ぬ!!」

「おっ。」


流川のユニホームが何者かによって、後ろから引っ張られた。

後ろへ仰け反る流川。



「役立たず。てめーは、大福につけ。小坊主に比べりゃ、てめーの足でも何とかなるだろ。
ハクタスは、丸男につけ。役立たずのせいで、マークマン交代だ。」



「!!」


「なっ!!」


「!!」



「てめー勝手な・・・。」 



流川の言葉に重なるように桜木が叫ぶ。



「小坊主!てめーの相手は俺だ!本当の湘北のバスケを教えてやるぜ!」


「・・・。今の流川よりは、桜木のほうが動けるかもな。」


「にゃろう!」


「さっきの借りもあるし・・・。桜木、相手になってやるぜ!!」


「ふん、小坊主ごときが、この天才の相手になるかな。キツネは、オフェンスにだけ集中しやがれ!!」



この言葉。


言い換えれば、ディフェンスは俺がやる、オフェンスは流川に任せたともとれる。


湘北ベンチは自分の耳を疑った。



残り2分20秒余り。


土壇場で同点に追いついた湘北。

まさに神がかり的な追い上げであった。


勢いに乗り、宮城らが前線でオールコートマンツーを繰り出している間に、
湘北コートでは、桜木の機転?奇策?により、マッチアップを変更していたのであった。

白田は河田に、流川は福原に、桜木は沢北につく。

疲労の蓄積した流川をかばうためか、沢北を倒すためか、桜木の真意はわからない。




「なにーー!!」

「湘北がマークマン変更だーー!!!」

「桜木が沢北についたーー!!!」




「桜木・・・君?」

「桜木・・・。」

「桜木花道・・・。」




「なっなんやて!!」

「元気だけなら、桜木がNo.1だ。」にこり。

微笑む仙道。




(花道のやろー、何考えてやがる!)


(流川先輩の体力を考えれば、妥当かもしれない。)


(何はともあれ、まずはこいつらだ!!)


「柳、柳葉の足は限界に近いが、気をつけろ!」

「はい!」



『ダムッ!』


宮城を抜きにかかる加藤。


「よそ見している暇はないはずだ!!」

「余裕だぜ!」



一方、桜木。


『キュッキュキュ!』


沢北を徹底マークしている。


(この時間帯でこの動き・・・、バケモノか。)

と焦りを感じている沢北。


「天才を相手にビビったか?俺をどこかの庶民と一緒にするなよ!!」


「・・・。」

(にゃろう。)

流川は、大人しく福原についていた。



全ての体力をオフェンスの注ぎ込むために。



流川は認めたくはなかったが、それほどまでに沢北との差、特に体力面での差を痛感していた。


(いくら流川さんとはいえ、疲労はピークに達している。これはチャンスととっていい。)

と福原。



重量級河田を守る白田。


『ドシ。』


「ぐっ、重い!」

(すっ凄い圧力だ。)

(桜木君に比べたら、白田君の力は劣っている。いける!)



加藤のパスの行方。


『ビィ!!』


ハイポにポジションを取っていた福原だった。



『キュ!』


大きな体を機敏に動かし、ローポで白田を背負うのは、河田。



『キュッ!』


福原の左右の動きが、流川の足に襲い掛かる。



(見えた!)


福原と河田のホットライン。

ローポにバウンドパスを放った。

河田のポストプレー。



「ふぁーーー!!」



『バス!!』



河田は、力と高さで白田をねじ伏せた。



「よし!!!」



桜木の作戦が裏目に出た結果であった。


「ハクタス!貴様は、毎日誰を相手にしてきたんだ!丸男ごときに負けるわけはない!!」

(桜木先輩・・・。)



果たして、湘北に勝機はあるのか。


桜木は、沢北を止めることができるのか。


流川は、沢北を超えることができるのか。



山王 75
湘北 73







続く。

#339 【桜木の作戦】

2010-07-29 | #11 湘北 選抜編
山王 73
湘北 69




残り試合時間、3分12秒。


乱打戦のスピード感ある試合に、観客の興奮は留まることを知らない。



「ハクタス。」

桜木が白田を呼ぶ。

何やら耳打ちを始めた。

「・・・・・・・。」

「らしくないですね。」

と苦笑する白田。


「うるさい!」

「ですが、いい作戦ですよ。」にこ。



「リョーちん。」

続けて、宮城を呼びつけた。

「・・・・・・・。」


「自分で言え!」

「ヤダ!」

「素直じゃねぇな。」



一息入れる湘北。


宮城が流川に話す。

「・・・・・・・。」

「うす。」

(ったく、花道も自分で伝えればいいじゃねぇかよ。ホント、仲がいいんだか、悪いんだか。)



宮城は桜木の作戦を流川に伝えた。




宮城がドリブルを開始する。


左右のローポに位置取る桜木と白田。


白田が、桜木側へ動いた瞬間、流川も白田を目掛けてインサイドへ切れ込んだ。


スピードの乗らない流川。


沢北は余裕で追走。



だが。



『ドス。』


沢北の目の前に大きな壁が2枚立ちはだかった。


(しまった!)



桜木と白田のダブルスクリーン。



その間に、ボールは宮城から柳、柳から流川への流れるようなパス。

フリーとなった流川。


「何が何でも決めろ!!」

「ったりめーだ!」


気合のこもった流川の言葉。
 


『ダン!』



流川が跳ぶ。



それは、今までと何ら変わらぬ、高さのある綺麗なジャンプシュートであった。



『シュパ!!』




「また1本差だーー!!!」

「最後まで本当にわからんぞ!!」




『グッ。』

再び、両手で拳を握る安西。

(あと2点。あのこたちに勝たせてあげたい!)




「流川君!桜木君!!」

叫ぶ晴子の眼は赤い。




(花道が、流川のために自分から壁役になるとは。こりゃ、ダンナが聞いたら、涙を流して喜ぶぜ。)


「言っておくが、てめーのためじゃねぇからな!!」

「頼んじゃねぇ。」

「なっ何をーー!!」

「来るぞ!ド素人!」

「うるせ!キツネ!」



山王 73
湘北 71




「まだ勝っている。焦ることはないダス!」

加藤のドリブル。

時折見せる深津並の冷静さ。


試合残り時間は、3分を過ぎていた。

山王は、沢北にボールを集める。

わかっていても湘北は、流川は止めることができない。


37分を経過した今もなお、機敏なパスワーク。

そして、常にリングを狙う姿勢を崩さない山王。

最後は、やはりこの男の下へ。



『パス。』




「沢北!!」

「やり返せ!!!」




「随分、足に来ているようだな。それじゃ、俺には勝てねぇよ。」

「・・・。」

「終わりだ。」



『キュン!!』 


沢北の筋肉が弾けた。



『ダムッ!』


流川を抜きにかかる沢北のドリブル。

最後の力を振り絞るように粘り吸い付く流川。



だが。



(そんな動きじゃ、俺のドライブは止められない!!!)



『ダン!』


沢北が跳ねる。



『ダン!!!』


流川が跳ぶ。



「!!!」


「!!!」にっ。



跳躍力の差か、疲労の差か。

沢北の手が、流川の手のひらを超えた。


『グッ。』

懸命に腕を伸ばす流川。


だが、ボールは更にその上。



そのとき。



『バッ!!』



「!!!」



流川の手のひらの上から、更にもう一つの手のひらが現れた。



「なに!!」



流川の後ろに見える赤い頭。



(桜木!!)



「小坊主の動きは、もう読めたぜ!!」



「!!!」



「くらえ!!ゴリ直伝ハエタタキーー!!!!」



流川の後方より、突如現れた桜木。

沢北は咄嗟にボールの軌道を変えるように、手首を返して、スクープシュートを放った。



だが。



「無駄だーー!!ウッホッホッ!!」



桜木は、沢北の動きに超人的な反応を見せる。



『バチッ!!』



指先でボールの弾き返した。




「うっ!!すげーー!!」

「桜木が、あの沢北のシュートをブロックした!!!」

「なんてやつだーーーー!!!」




「あっ!」

「うっそ!」

「アッアンビリーバブル!!!!」

さすがの陵南選手たちも言葉が出ない。




「あっあれは!!」

叫ぶ安田。


その光景は、正しくIH夏の山王戦。

赤木と桜木が2人がかりで、沢北をブロックしたその瞬間と同じ光景だった。



『ダン。』


3者が着地する。



「はぁはぁ。」

と流川。



(ちぃっ。これに触るか・・・。嫌なもの思い出しちまった。)

と沢北。



「流川が抜かれるのも!小坊主のシュートも!全て天才には計算済みだ!」



幾度となく、湘北のピンチを救った赤木のハエタタキ。

それを髣髴させる動きが、ここにあった。



赤木イズムの伝承。

赤木を知るものは、桜木の姿に赤木剛憲の姿をダブらせるのであった。



山王 73
湘北 71







続く。

#338 【変わらない4点差】

2010-07-26 | #11 湘北 選抜編
山王 67
湘北 65



タイムアウトがあけた。

泣いても笑っても残り時間は5分とない。


山王のオフェンス。




「このタイムアウト後の1本は重要よ。両チームにとってね!」

「はっはい!!」




流川は、沢北への執拗なマーク。

だが、呼吸は乱れ、動きは機敏さを失われつつあった。


「はぁはぁ。」


(タイムアウト後だというのに、この呼吸。だいぶ、疲れているようだな。)

ここだと判断した沢北。


サイドからサイドへ。


コートを走った。


流川の追走が遅れた瞬間。


『パシ!』


矢のような加藤からのパスが渡った。



「4点差!」


沢北は叫びながら、ジャンプシュートを放つ。



『スパッ!』


「!!」




「やっぱり、沢北だーー!!!」

「やつを止めることはできないのかーー!!」



山王 69
湘北 65




「おい、相当疲れてんじゃねぇか!」

「・・・。」

「だが、手加減はしねぇぞ。」

「・・・。」



『キュ!!』


「!!!」


鋭いVカット。

流川は力を振り絞る。

一瞬にして、沢北のマークを外す。


『パシ!!』




「今度は流川君!!」

「そうこなくっちゃな。」

と仙道。




「打ちやがれ!流川!リバウンドは全て獲ってやる!!」


(外すか!)


『クイ!』


流川の強引なスナップシュート。


『ザッシュ!』


ボードにバンクし、ネットを揺らす。




「流川も負けてねぇーー!!」

「なんていう戦いだーー!!」

「凄すぎる!!」




「沢北さんに比べ、流川さんは少し強引ですね。」

と上杉。

「桜木の存在。」

と福田。

「桜木のリバウンドに信頼を寄せているんだろう。」

と田岡。

「あの2人が信頼ですか・・・。ないような・・・。」

と黒川。

(本当は認め合っているんだよな。お前らは。)

仙道は、密かに思うのであった。



山王 69
湘北 67




「今度はインサイドだーー!!」




加藤から直接河田に供給した。



『ドン!』


パワードリブル。


「ぐっ。丸男め。」

桜木を押し込む。


「ぐぐぐっ。」 

耐える桜木。



『クルッ。』


河田は回転、ゴールを向いた。

その瞬間、桜木の体勢が崩れた。




「巧い!!!」

「打てー!美紀男!!」




『バス!』


河田のゴール下が決まる。 




「また4点差!!」

「なんだ、このラン&ガンの展開は!!!」



山王 71
湘北 67




息もつけぬ乱打戦。

観客は、ヒートアップ。

冬だというのに、体育館は、燃えるような暑さになっていた。



『キュッキュ!』


流川への沢北の容赦ないディフェンス。

マークは外れない。



(流川へのマークが厳しい。いや、流川の運動量が落ちたか・・・。
となればここは・・・。負けっぱなしというわけにはいかねぇよな!花道!!)


山王同様に、宮城から1本のパスで桜木へと渡った。


「花道!仕返しだ!」

「おうよ!!」


「来い!桜木さん!!」

「良い度胸だ!丸男!!」



『キュ!』



「合宿シュート!!」



「!!」



「と見せかけて、庶民シュート!」



「!!」



「と見せかけて、クラッチシュート!!」



河田の腕を交わす、桜木のダブルクラッチが炸裂。



『スポ。』 



「ハッハッハ!丸男ごときにこの天才は止められんぞ!!」

「まぐれ。」

「うるせー!」




「桜木のダブルクラッチ!」

「明らかに巧くなっている!!」




「うぉーー!!桜木さん、ダブルクラッチを完成させておる!」

「やるな。」にこ。

笑う仙道。




山王 71
湘北 69




残り3分30秒で2点差。

漂う緊張感は、観客にも伝わっている。


『ゴク。』

唾を飲むもの。

言葉が出ないもの。

食い入るように見つめているもの。

様々であったが、全ての人の視線が、コートに注がれていた。



山王のオフェンス。




「・・・。流川は、まもなく限界を迎える。」

堂本がいった。




同じく。


「ここまで、よく沢北と渡り合ってきたが、もう限界だ。」

田岡がいった。




『グッ。』

安西が拳を握る。

(流川君、あと少しです。踏ん張りなさい。)




容赦ない沢北のオフェンスが流川を襲う。



『ズバッ!!』


流川は思うように動かない足を懸命に前に出し、沢北に追走する。

だが、沢北は、カバーに来る白田とともに、あざ笑うかのようなスクープシュートを放った。



「決まった!」にや。


「!!」


「!!」



『ガン!!』



外れた。



「あちゃ!!」



『トン。』



こぼれたボールにしなやかな手が触れた。



「!!」



『ストッ。』



リバウンドをティップで追い込んだのは、跳び込んできた福原であった。



「しまったぁーー!!!オフェンスリバウンドを許してしまったーー!!」

憤慨する桜木。



「さっきのミスは、これで帳消しですね。」
 
「ふっ、生意気な。」

微笑む沢北。



山王 73
湘北 69




笑顔がこぼれる沢北。

疲労の表情を隠せない流川。

2人を見つめている桜木。



『スタスタ・・・。』


流川に詰め寄る桜木。


『ドガッ!』


流川を蹴り跳ばす桜木。




「さっ桜木君!!」




『バコッ!』


仕返す流川。




「流川君!!」




(また始まった。)

呆れ顔の宮城。



「元気あるじゃねぇかよ。」

「ったりめーだ。てめーこそ、リバウンド取られてるじゃねぇか。」

「なぬ!元はといえば、てめーが小坊主にシュートを打たれるからだろ!!」

いつもと変わらぬいい争い。

だが、桜木の不器用な激励が、再び流川に力を与える。

そして、桜木はある選択をする。




変わらない4点差。


山王 73
湘北 69







続く。

#337 【溢れる想い】

2010-07-24 | #11 湘北 選抜編
山王 67
湘北 63




流川の速攻からの3Pジャンプシュートが決まった。




「4点差だーーー!!」

「5点の壁を流川が打ち崩したーー!!!」




沢北が思い出す。



----------------------------------------------


「全て決めてやる。」


-----------------------------------------------



流川が沢北に言い放ち、かき消された言葉。


「どうやら、口だけじゃないようだな。」

「ったりめーだ。」




第4Qも5分が経過している。

試合終了まであと5分。


山王にとって、4連覇がかかった試合。

湘北にとって、夢にまでみた全国制覇がかかった試合。




「流川君・・・。」

ベンチの晴子はタオルを握り締め、涙を浮かべている。




「1番。」

加藤が不意にナンバープレーを指示した。



(1番!)

福原が一気に外に開く。


白田が一瞬遅れた。

そこにボール。


(ここで負けたら、俺は何のために秋田に来たんだ!)

福原と白田の1on1。


高さでは白田。

横では圧倒的に福原。



『キュッキュッキュ!』 



左右に揺さぶる。



『ダム!』


白田を交わす。


(いれさせるか!!!!!)


だが、白田も負けじと後ろから強いプレッシャーを与えた。



『シュ!』


福原のシュート。

体が流れる。



『ガッガン!』


わずかにリングに嫌われた。



「!!」



『ガシ!』


『ガシ!』


ゴール下の攻防。


桜木と河田のスクリーンアウト。

そこに、沢北も参戦する。


3つの体に滴る大粒の汗が、体育館のライトで眩く光っている。



『ダン!』


『タン。』


汗が弾け跳ぶ。

桜木、河田、沢北がボールに跳びかかった。



「ふぁーーー!!」


「とぉーー!!!」


「おらーーーー!!」



『バッチーーン!!』



ボールを奪ったのは。




「さっ桜木君!!」
  
晴子の瞳から涙がこぼれる。




「俺のボールだ!誰にも渡さねぇ!!」



顔を上げる桜木。

跳び込んできた光景。

そこには、河田と沢北の隙間から、走っている流川の姿が見えた。



『ビュン!』



「外したら、只じゃすまねぇぞ!!」


オーバーハンドで勢い良く投げる桜木。


その先には、もちろん流川がいた。


「しまった!!」

「流川!!!」


流川のワンマン速攻。


『パシ!!』


最後の力を振り絞るような流川の走り。



『ダムダム!!』


セーフティーの加藤を物ともしない力強いドリブル。



「外すか。」



『タン!』



「どあほう!」



『ドガァ!!』



流川のダンクシュートが静かに炸裂した。 




「流川が決めたーー!!!」

「ついに2点差だーー!!!」

「湘北がついに!ついに!!!」

「すげーー展開だ!!!」




「限界に近いんやったら、ダンクなんてせんでええのに・・・。」

「湘北にも、自分にも、勢いつける2点をたたき出したんだ。
俺でもそうしたさ。」

と仙道。




「・・・。」にっ。

桜木が笑う。


「・・・。」ふっ。

流川が笑う。


目線があう2人。



『プイ。』


即座に顔を横に振った。



「小坊主!丸男!どうだ、てめーらをぶっ倒す、天才桜木のリバウンド&アシストだーー!!!
ハッハッハ!!」




山王 67
湘北 65




「あと2点。」

「ナイスランだ。流川。」

「うす。」

「柳、白田、花道!最後の力、搾り出せや!」

「おう!」

「はい!」



最大13点差。

2点差まで詰め寄った湘北。

再び、キセキが起こるのか。



『ビィーーー!!』




「おぉぉーー!!」

「リードしている山王がタイムアウトを取ったーー!!!」

「山王が追い詰められている!!」

「また見られるかもしれないぞ!」

「湘北の奇跡の逆転劇を!!!」

会場は、山王の4連覇よりも、湘北の逆転優勝への期待のほうが大きくなっていた。 




山王ベンチに向かう沢北と福原。


「沢北さん、すいません。」

「過ぎたことは仕方がない。ミスは自分でカバーしろ。それが山王のバスケだ。」

「はい。」


(シュートは完璧だった・・・。)


『ゾクッ。』


(白田の気迫を背筋に感じたんだ・・・。)




「いいぞ!」

「OK!OK!」

「ナイッシュ!流川君!!」

「いいぞ!桜木!!」

湘北ベンチは歓喜に沸いていた。


「あと1本だ!あと1本で・・・。」

「ん!?どうした、リョーちん!?」

「なっなんでもねぇよ!」

今にも溢れそうな想い。

宮城は、眼をこすった。

その光景を見ていた選手たち。

心の奥のほうで微笑むのであった。


「オヤジ!一言ねぇのか?」

「ここまできたら、何もいうことはありませんが・・・。」

安西の口に意識を集中させる。


「自分たちを信じなさい。そして・・・。」


「俺たちは強い!!!!」


湘北ベンチの全員が口を揃えて叫んだ。


「ほっほっほ。」




一方、山王ベンチ。


「悪いが、1度切らせてもらった。」

「ええ、いいタイミングです。」

「それにしても、本当にしぶといチームだな。さすがの私も胃が痛むぞ。ははははっ。」

堂本の高らかな笑い声に、選手たちは、少しだけ和んだ。

そして、堂本が口を開く。


「加藤、ボールは沢北に回せ。柳葉は柳を走らせるな。走り出す瞬間を封じろ。
福原は、白田のディフェンスに集中。桜木は何をするかわからん。河田、眼を離すなよ。
そして、沢北・・・。置き土産を残していくなよ。」

「負ける気はありません。」


指示を聞いた5名の選手。


各々が、吹っ切れた表情をしていた。




山王 67
湘北 65







続く。

#336 【全て】

2010-07-22 | #11 湘北 選抜編
山王 65
湘北 58




湘北のオフェンス。



ボールは流川に渡っていた。




「ル・カ・ワ!ル・カ・ワ!ル・カ・ワ!ル・カ・ワ!」

「サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!サーワキタ!」

会場は、真っ二つに分かれている。




大声援に、コートの言葉が一瞬かき消されていた。


それは、流川、沢北の声も同様であった。



「来・よ。」



「・・・めて・る。」



「!!!」



『キュ!』



『ダムッ!』



真横へワンドリ。

沢北を交わす。

流川は上体を上げた。



(ジャンパー!)



沢北の腰が上がる。



「!!」



(フェイク!!)



『ズバッ!!』



流川は、沢北の横をえぐる様に抜き去る。

そして、一気にゴール下へ。



『シュパ!』



リングに届くほどの高いレイアップシュート。




「流川が沢北を抜いたーー!!!」

「来た!来た!来たーーー!!!」




「おい、聞こえたぜ。」

「・・・。」

無言で答える流川。


「やれるもんなら、やってみろ。」

「覚悟しやがれ。」




山王 65
湘北 60




山王のオフェンス。


「回してくれ!」

「わかった。」

沢北は加藤にいった。


やはり、宮城は、加藤のドライブを警戒。

一歩引いてディフェンス。



『パス。』


ボールは、沢北へ。




「うぉぉぉーー!!!!」

「わぁぁー!!!!」

先程と変わらぬ大声援。




「俺のドライブをとめられるやつは、日本にはいない。」

「止める。」



『キュッ!』


沢北発動。


流川猛追。



『ダムッ!』


『ダッダン!』


レッグスルー。

流川のタイミングをずらす。


『ダン!』


沢北のジャンプシュート。

それは、先程の柳葉よりも高く鮮やかなものであった。

ボールは、流川の手を超える。



(やろー!)



『ザシュ!』




「今度は沢北だーーー!!!」

「止められねー!!!」

「眼にも止まらぬジャンプシュート!!」




「一瞬でも交わせれば、俺は打つぜ。」

「・・・。」



怒涛の展開の第4Q。

ベンチの選手はもちろん、観客たちも息をのむ展開であった。




山王 67
湘北 60




湘北のオフェンス。



『パシ!』


柳のシュートに、柳葉がわずかに触れた。




「さすが、柳葉!!」

「ミスマッチが堪えている!!!」

「このブロックはデカイ!!!」




「この大舞台。終盤になればなるほど、選手にかかるプレッシャーは大きい。
特に大舞台を経験したことのない1年にとって、そのプレッシャーは計り知れない。
柳葉は経験の差で柳を圧倒している。柳のところから、崩されるかもしれないぞ。」

と田岡が解説している。




『パン。』




「かっ監督!今度は、柳君が柳葉さんのドリブルをスティールしましたで!」

「なにっ!」

(あいつは、プレッシャーを感じんのか!
桜木といい、流川といい、湘北はずぶといやつらの集まりか。)




(ブロックはされたけど、柳葉さんの運動量が落ちているのは明らかだ。)

と柳。




「やはり、前半の体力の消耗とつった足が影響しているか・・・。
柳のやつ、1年ながら侮れねぇぜ!」

と山王ベンチの烏山。




「宮城さん!」


ボールは柳から宮城へ。



「速攻だーー!!!」



宮城と加藤。

柳に柳葉。

後ろから流川と沢北が追いかける。




「3対3!!」

「攻めも戻りも速い!!」




『パシ!』


『パシ!』


宮城から柳、そして流川へ流れるような湘北のパスワーク。


(任せましたよ。流川さん。)

(流川!頼んだぜ!)



『ダムダムッ!』



流川のドリブルに沢北が回りこんだ。

そのとき。



『キュッ!!!』



急ストップ。



「なっ!!」 



速攻3on3からのジャンプシュートの体勢。


流川の足は、3Pラインよりも外。


流川とボールが宙に舞う。


会場にいる全ての人が、その軌道を眼で追った。


時間が止まったかのように静まり返り、コート上に乾いた音を鳴らす。



『スパ!!』



ボールは、優しくネットに包まれたのであった。



そして、沢北が思い出す。



声援によって、かき消された流川の言葉を。



----------------------------------------------


「全て決めてやる。」


-----------------------------------------------



山王 67
湘北 63







続く。

#335 【エースと呼ばれる選手】

2010-07-20 | #11 湘北 選抜編
山王 61
湘北 53




30秒間に3本のシュートが決まる怒涛の展開で始まった第4Q。

試合は、更に熾烈な展開へと発展していく。



「くそう。タラ男とカラスやろー!」

悔しがる宮城。



「勝負は決まったな。あとは、俺とお前の勝負だけだ。」

「・・・。」にや。

(笑った?)

「ここから逆転させたらどう思う?」

「・・・。」

「俺が日本一だと認めろ。」

「ふっ、優勝も勝負も捨ててねぇか。最後まで付き合うぜ!流川!!」




ボールは、宮城から柳へ。


(休んでいた分、暴れますよ!)



『キュ!』


『ダッダン!』


柳は、烏山を抜き去り、再びインサイドへ切れ込んだ。



『ビィ!!』



インサイド陣の動き、全体の動きを確認し、ノールックパスを放つ。



『パシ!』




「流川だーー!!!」

「流川が来る!!!」




『キュッ!』


ジャンプシュートを放つ流川。


『チィ!』


「!!」


白田のスクリーンに若干の遅れを見せていた沢北であったが、流川のシュートにわずかに触れた。



「美紀男!」


「花道!!」



『ガシ!』


『ガツ!』



「はっ速い!」


「流川のシュートミスは計算済みだ。」


(にゃろう。)


桜木は、河田よりも速くベストポジションを奪う。



『バチン!』




「オフェンスリバウンド!!」

「5本目よ!!!」




『サッ!』


すかさずシュート体勢の桜木。


(まずは丸男からだ!)



「!!!」


ポンプフェイク。


桜木の眼に映る跳び上がった河田の大きな体。



「もらったぁーー!!!」



落ちてくる河田の腕を掠るようにゴール下のシュートを放つ。



『バス!!!』




「決まったーー!!!」

「さっ桜木君!!」

「こっこれは!!」




『ピィーーー!!』


「バスケットカウントーーー!!!」



審判が2本指を激しく振り下ろした。




「バスカンだーー!!!」

「桜木が起死回生の3点プレー!!!」




「ハッハッハ!天才だから成せる技!!」


遅咲きのC桜木が、生粋のC河田のバスケを越えつつあった。



「美紀男。」

「ごむぇんなさい。」

「大丈夫だ。まだ勝っている。」

「ふぁい。」

「跳ぶな。お前の高さは、立っているだけで脅威だ。河田さんとの練習を思い出せ。」

(兄ちゃんの・・・。)

「ふぁい。」

優しく語りかけた沢北に、河田は兄の背中を見るのであった。




『ピィーー!!』


----------------------------------------------

SG…#5 烏山 彰隆 182cm/3年

SG…#9 柳葉 敏 180cm/2年

-----------------------------------------------


堂本は、ここで烏山を下げた。


「夏輝、あとは任せたぜ。」

「あぁ。」

「いいシュートだったぞ。」


『ガシ。』

堂本は、握手で烏山を迎えた。




「出てきましたか。最後の勝負です。」

柳と柳葉の対決も最終決戦を迎えようとしていた。




『シュパ。』


奇跡的にボーナススローも沈めた桜木。

今まさに、絶好調の時を迎えていた。




「また5点差だ。湘北も粘る!!」

「いや、この5点差がなかなか超えさせてくれないのよ。」

と弥生。




山王 61
湘北 56




山王のオフェンス。


加藤のドライブに備えて、宮城が一歩引くディフェンス。


(後手に回っちまった。)

(これでパスが回しやすくなったぜ。)


『ビィ!』


ボールは、投入されたばかりの柳葉の下へ渡った。



柳と柳葉。

波が打ったように静かな2人。

冷たい空気が流れた。


「・・・・・・・・・。イク。」


「おっ!!」



『キュ!』


ワンフェイク。



『ダム!』


ワンドリ。



『キュッ!』


沢北も絶賛するほどの柳葉のジャンプシュート。



『ザシュ!!』




山王 63
湘北 56




「速ぇーー!!」

「柳葉!完全復活!!」




(しゃべった・・・。)

と驚く柳。


(だが、1度攣ってしまった足は、そう簡単に治るもんじゃない。
このまま俺が走りまわれば、終盤必ずもう一度足にくるはずだ!)


柳は、縦横無尽にコートを走りぬく。



『パシ!』


その柳にボールが渡った。

すぐにハイポの白田へ入れる。


『キュ!』


パス&ラン。


『ダン!』


ボールは、再び柳の下へ。


『キュ!』


白田は、一気にハイポからローポに下りた。

そこへ、柳からのリターンパス。


1年生コンビが繰り出す機動力を生かしたオフェンス。


インサイドの白田。



『パサ。』



福原の上から、振り返りながら、得意のフックシュートを決める。 



「よし!!」

拳を握る白田。




山王 63
湘北 58




続く、山王のオフェンス。


「僕だって!!」

「おっ!!」

河田の鬼気迫る強引なゴール下のプレー。

先程のリベンジといわんばかりに桜木の上から、シュートを決めた。



「いいぞ!いいぞ!ミキオ!ミキオ!」


「丸男め。」




山王 65
湘北 58




「全く点差が縮まらへん。」

「だが、開いてもいない。」

「こういうときに仕事をやってのけるのが、エースと呼ばれる選手だ。なぁ、仙道?」

田岡が声をかける。


「そうですね。沢北か、流川か?」

(桜木か・・・。)



そのとき。



ボールは、流川に渡った。









続く。

#334 【山王ガードコンビ】

2010-07-16 | #11 湘北 選抜編
山王 56
湘北 51



いよいよ、全国高校バスケットボール部の頂点に立つ唯一の高校を決める最後の10分間が開始された。


安西は、緑川を下げ、柳を投入。


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SG…#15 緑川 航 184cm/1年

SG…#9 柳 春風 171cm/1年

-----------------------------------------------


「烏山君相手によく頑張りました。」

「はい。」


(ふー。疲れた・・・。)




『ダムダム・・・。』


加藤が静かにドリブルをつく。


(さぁ、どっから攻めてくる?沢北か?烏山か?それともインサイドでくるか?)


『キュ!』


『ダムッ!』


『ズバッ!』



「!!」


「なに!!」


加藤は、一瞬にして宮城の脇から切れ込み、オーバーハンドレイアップを打った。

それは、この試合、いや今大会にない加藤のスタンドプレーであった。



『ザシュ!』


ネットを揺らす。




山王 58
湘北 51




「加藤がいきなり攻めた!!」

「なんか、さっきまでと雰囲気が違うぞーー!!」




「いいぞ!夏輝!」

「ナイッシュ!キャプテン!!」




「加藤さんがドライブやて!資料にもあらへん!わいのチェック不足や!」

「IHでも攻めていましたよ。決勝戦の終盤。」

「ホンマか!?」

「ただ、仙道さんが全て止めていましたけどね。」

「さすが仙道さんや。わいらの知らんところで仕事をきっちりこなしておるとは!」

「ふっ。」

「知らないのは彦一だけだ。」

と福田。

「そっそうなんか!!」




(ちっ、加藤のやろー。不意をつきやがったな。) 



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<<回想>>

2分間インターバル。

山王ベンチ。


「監督。」

加藤が堂本に声をかけた。

「ん!?」

「俺に点を取らせて下さい。追いつかれたのは、俺のせいです。
名誉挽回のチャンスを下さい!お願いします!!」

「・・・。それは許さない。
お前が攻めたら、誰がゲームを組み立てる?セーフティーは誰が入る?」

「俺がやるっす。セーフティーくらいはできますから。」

「烏山・・・。」

加藤は烏山の顔を見た。


「お前は、柳葉と交代だ。
どうやら、湘北は柳を戻してくるようだし、お前は柳のスピードについていけない。」

「ですが・・・。」

「監督、要領のいい烏山なら柳相手でも大丈夫ですよ。
それに、夏輝の得点能力は、監督も知っているでしょ?
現状を考えれば、夏輝のところが1番得点を獲りやすい。」

沢北が話に加わった。

「エージ・・・。」


「失敗はありません。なぜなら、俺がこのチームにいますから・・・。
山王に敗北の2文字はない。」


(沢北・・・。)

堂本は眼をつぶり、少し考える。


(湘北が固定概念に捉われているなら、これも妙策かもしれんな。)

「うむ。わかった。だが、タイミングをみて、烏山は交代させる。それまでは、お前らに預けるぞ。」

「はい!!!」

「ありがとうございます!!」

加藤の眼が光った。




PG加藤夏輝

同学年においては、沢北に次ぐスコアラーであったが、2年次から深津の練習相手を任されていた。

それは、加藤のプレースタイルが、ドライブから捌く、
ドライブから直接決めるという牧のオフェンススタイルに似た部分があったからであった。

深津の牧対策、陰の功労者は、この加藤であった。

その後、柳葉の新加入やPGの資質を買われ、そのままPGに定着。

深津卒業後、キャプテンとなり、偉大な先輩に少しでも近づこうと語尾をつけるようになった。

厚い唇をいじられると冷静さを失うところがいつも冷静な深津とは違う。



-----------------------------------------------------------------------



「リョーちん!」

桜木が声をかける。


「すまねぇ。油断しちまった。まさか、加藤が突っ込んでくるとは思わなかったぜ。」

(俺としたことが・・・。)


「頼むぜ!」

「あぁ。」


(やられたら、やり返す!いくぜ!山王!!)




湘北の反撃。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

2分間インターバル。

湘北ベンチ。


「烏山君は柳葉君ほどのスピードはありません。柳君で攻めます。」

「了解です。」

と宮城が答える。


「湘北No.1スピードを見せてやりますよ。」

と柳。

「ぬっ。」

(No.1は俺だ!)

宮城は少し脹れた。



-----------------------------------------------------------------------



(序盤は柳。No.2のスピードを見せてやれ!)

トップの宮城から柳にボールが渡った。



『パシ!』


『キュ!!』


ノーフェイント。

一気にインサイドへ切れ込んだ。


「速い!!」


烏山を一瞬にして、置き去りにする。


インサイド、福原と河田が待ち受ける。




「捕まる!!」

「無謀だーー!!!」




『シュン!』



『ダム!』



「何!!」


「うわ!」


福原と河田の間に生じたわずかな隙間をすり抜けた。



『シュパ!』



桜木、白田に脇目も振らず、レイアップシュートを決めた。

(休んだおかげで、体のキレも復活した。)




「速い!!」

「宮城並のスピードだ!!」




「ぬっ。」

「ん。」

顔を見合わせた宮城と柳。

同時に思う。

(俺のほうが速い!)




(よろしいですよ。柳君。)

安西の眼鏡が光る。




山王 58
湘北 53




山王のオフェンス。


(さっきは油断したが、今度はそうはいかねぇ。)

「ん!!」



『ダムッ!』


『キュッ!!』


「またかよ!!」


再び加藤自ら、宮城を抜きにかかった。


宮城に並ぶ。


『キュ!』


「やろー!」


『ダムッ!』



だが。



『キュ!』



「柳!」


「宮城さん!気を引き締めて!」


「助かったぜ!!」


加藤のドライブを柳が止めた。



だが。



(甘いぜ!)


『ビィ!』


加藤は真後ろに振り返り、パスを投げた。

そこには、セーフティーのためにトップの位置にいた烏山。


「さすが、夏輝!完璧なパスだぜ!!」


「しまったぁーー!!」

「やべっ!」




「烏山がフリー!!」

「打たれる!!」




『シュ!』


烏山から放たれたボールは、綺麗な回転をしながら、リングに触れることなくネットに吸い込まれた。



『パサ!』




「うわぁぁーー!!でかすぎる!!!」

「この3Pは、湘北痛いぞーー!!」




『バチィン!』


ハイタッチを交わす加藤と烏山。 



山王3年生のガードコンビが、大仕事をやってのけた。

再び広がる点差。

湘北は追いつけるのか。




山王 61
湘北 53







続く。

#333 【あの技】

2010-07-15 | #11 湘北 選抜編
山王 54
湘北 49




桜木のダンクをブロックした沢北。


だが、舞い上がったボールを流川がそのままダンクで押し込んだ。




「うわぁーーーー!!!」

「流川ぁぁーー!!!」

「なんだこりゃ!」




「おのれ!小坊主!!いや、流川ぁ!!」


(おっお前ら、仲間だろ。)


流川は、桜木を無視するかのように、一言放つ。


「5点差だ。」


「・・・。」

(こいつ・・・。マジで面白いぜ!)


「てめーは、俺のマークをはずすな。」

「ふっ、すまなかった。これからは、マークをはずさねぇよ。そして、1本もいれさせねぇ。」にや。


『バチバチ。』


睨みあう流川と沢北。



「ガルルル・・・。」


その間の桜木は無視されていた。


(庶民どもを黙らせる一発を見せてやる!!)



「ぶっ倒す。」

と流川。


「何度も聞いているぜ。思いっきりぶつかってこいよ。」



「てめーらは、この天才桜木が。あっ!」


沢北、流川が湘北コートへ向かった。


「コラァ、無視すんな!」


去り際に沢北が一言。


「桜木もついでに相手してやる。いつでもかかってこいよ。」

「なぬ!!この天才をついで扱いしおって!!」

(こうなったら、未完成だがあの技を!!見てろよ、キツネと小坊主!!)



「おい!!!花道、速く戻れ!!!バカ!!」


「のわーー!!!」



『バス!』


沢北に集中していたために、河田をフリーにしてしまった。



結果。

河田が、白田の上から、ゴール下のシュートを決めていた。




山王 56
湘北 49




「誰かさんのせいで、7点差に開いちまったぜ。流川。」

桜木に聞こえるように、沢北はいった。


「ぬっ!」

「計算済みだ。問題ねぇ。」


「ぬっ!!おっおのれ・・・。」



『チラっ。』


(残り13秒。何が何でも決めるぜ。)


エンドラインの白田から宮城へ。



『キュッ!』


『キュッキュ!』


「!!!!」




「ここに来て・・・。」

「山王のオールコートプレスだ!!」

「伝家の宝刀を抜いてきた!!」




「あわよくば、烏山君の3Pで10点差で終われるわね。」

と弥生。




宮城を加藤と烏山が囲む。




「うわーー!!厳しい!!」

「激しいディフェンス!!」




(くそう。隙がねぇ!)




彩子の脳裏にIHの光景が浮かんだ。

(あのときも、あの2人にやらてしまったのよね・・・。)


「リョータ!しっかり!!」




『キュ!』


『キュッ!!』


プレスを掻い潜ろうと、宮城はピボッドを繰り出すが、なかなか隙は生じない。


(抜かせるか!)

(夏輝の仇は、取らせてもらうぜ。)



『パシ!』


「あっ!!」


「!!!」



「リョーちん!!」




「リョータ!!」

「キャプテン!!」




烏山の手が、わずかにボールに触れ、宮城の手の中からボールが零れ落ちた。



だが。



『パシ。』 


ボールを拾ったのは、緑川。




「ふーー。」

少しだけ、胸をなでおろす湘北陣営。




「首の皮一枚繋がった。」

と中村。

「いや、まだよ!」




『キュ!』


再び、2人が緑川に襲い掛かる。


「わぁ!」


その迫力に、緑川は苦し紛れにボールを前方へ投げた。


「バカ!こっちだ!!」


宮城の声が、虚しく響く。



『パシ!』


「・・・。」にっ。



「沢北!!!」


「小坊主!!」



沢北が、ボールをスティールした。



「これで9点差、決定だ。」


(にゃろう!)



『ダムッ!』


ドリブルを開始。


『ダムダム!』


並走していた流川が回り込む。


「いかせるか。」


「!!」

(ふっ。これで止めたと思うな。)



対峙する流川と沢北。


エース対決。


だが。



「!!」


「よこせ!」


「ん!!」



『ビシ。』


「あ!!」


「!!」


振り返る沢北。



「桜木!!」


桜木は後ろから沢北のドリブルをカットした。


「なぜ、お前がいる!!」

「ふん!天才だからな!!」



ボールは、流川が拾い上げる。



『キュッ!』


桜木は、山王ゴールに向かってスタートをきっていた。



「しまった!!」


「よこしやがれ!!」


沢北、流川を置き去りに駆け上がる桜木。



(なら・・・、とってみろ。)



『ビィ!!!』


流川は、思いっきり前方にボールを投げつけた。



「どこ投げてんだ!!」


「取れんだろ!てめーなら!」


ボールは、明らかに山王リングを目指して、飛んでいる。




『ガタッ!!』


「桜木君!!!」

「桜木!!」

総立ちの湘北ベンチ。




山王コート台形内、桜木は跳んだ。



『ダン!』



『バチィン!』



空中で流川からのパスをキャッチ。



「叩き込め!花道!!」

と宮城。



「ぶち込め。」

と流川。



(天才のスーパーダンクを!!)



「くらえぇ!ヤマオーーー!!!」



ここで桜木は驚愕の動きを見せる。



『ブンッ!』



桜木は、ボールを持った腕を回した。




「あっあれは!!」

「何する気なの!!」

「なんやてーー!!」

「ウィンドミル!!!」




そして。



「マッマジで!」

「あんにゃろう!」



『ガッーーーシャン!!!』



桜木はアリウープからのウィンドミルダンクシュートを炸裂させた。




「はっ初めて見た・・・。」

「ウィンドミルダンク・・・。」

「あっありえねぇーー!!」

「すげーーー破壊力!!!」

「強烈すぎる!!!」

「なんだよ・・・、あれ。」

「規格外!!」

体育館が揺れるほどの大声援。




「なんてこなの!!」

と彩子。

「桜木君!!すっ凄すぎるわ!!」

と晴子。

「いいぞ!!桜木!!」

「桜木先輩ーー!!!」

涙を流すほどに喜ぶ石井たち。


「素晴らしい。」

と安西。




「小坊主!流川!どうだ!ハッハッハ!!」


「・・・。」

(ウィンドミルかよ・・・。面白いの見せてくれるじゃねぇか!!)


「・・・。」

(いつのまに、あんなのを・・・。)


「ハッハッハ!天才ダンクの威力は!ハッハッハ!」



桜木のウィンドミルダンクシュートが決まった。


会場騒然のまま、しばらくして第3Q終了のブザーがなった。




山王 56
湘北 51







続く。

#332 【迫る影】

2010-07-12 | #11 湘北 選抜編
山王 54
湘北 47




沢北のブロックで宮城のシュートを防いだ。

だが、再び湘北ボール。

追い上げムードは変わらない。




「ショーホク!ショーホク!ショーホク!」




「リョーちん、ドンマイだ。仇は俺が撃つ!」


「・・・。」

(沢北のやろー。俺の完璧なシュートを・・・。)


宮城は沢北を睨む。




湘北ボールで再開される。


宮城のドリブル。


『ダムダム。』


第3Qも残り42秒を迎える。



(2本は、奪いたいところだな。)


『キュッキュキュ!』



「お!」

加藤の足が、宮城の動きを止めた。


「俺は、加藤夏輝。山王のキャプテン加藤夏輝だ。」


(そんなことはわかっている。なんだ、いきなり!)



『キュッキュ!』


激しいディフェンス。

それは、第1Qと変わらぬ動き。



『ダムッ!ダム!』


(沢北の言葉に冷静さを取り戻したか。ちぃ、あのやろー余計なことを!)




「おぉぉーー!!」

「加藤が仕返しとばかりに、凄いディフェンスだ!!」

「いや、宮城も負けていないぞ!!!」

「このPG対決、まだまだ見逃せない!!」




『キュッ!』


『キュ!』


加藤の動きに呼応するように、他の4人も足を動かす。


沢北は、流川への執拗なマーク。

一切のパスも許さない。


河田は、自分の体を巧く使い、桜木の行動範囲を狭めている。


福原は、白田にフェイスガード。


烏山は、格下緑川を抑えながら、宮城のドライブに備えていた。



結果。


宮城は、パスを供給するところがない。

時間だけが刻一刻と過ぎていく。



24秒タイム、残り8秒。


『キュッ!』


『ダムッ!』


『キュッキュ!』



攻め倦む宮城がドライブを発動した。




「時間がなーーい!!」

「自らいったーー!!」




だが。


宮城のドライブを警戒していた烏山がすぐに間合いをつめた。



「!!」


「!!!」にや。




「捕まった!!」

「ダブルチーム!!」




「リョータ!!」

「キャプテン!!」




(くそう!)

加藤と烏山に囲まれた宮城。




「リョータ!時間がない!!」

「パス!パス!」

湘北ベンチからの声。




(・・・。くそう!負けてられるかよーー!!)



残り5秒。



(No.1ガード宮城リョータを!!)



「ナメるなーーー!!」



『ダムッ!!!』



加藤と烏山との間に生じたわずかな隙間に小さな体をねじ込んだ。



「!!」


「宮城!!」



『ダムダム!』




「切り抜けたーー!!!」

「さすが、キャプテン!!」




今度は、インサイドにいた河田が宮城の進行方向を塞ぎにいく。




「河田!出るな!!」

ベンチから堂本が叫ぶが、すでに遅かった。




「!!」

「ん!」

沢北は、流川を残し、インサイドへ足を向ける。



「花道!」

「おうよ!きやがれ!リョーちん!!」


宮城は詰め寄る河田をあざ笑うかのように、ゴール下へワンバンドパスを送った。



残り3秒。



『バシ。』 



ゴール下で掴んだ。



『ダン!』



ボールを両手で掴んだ桜木は、大きく飛んだ。



『ザッ!』



そして、凄まじい速さで、振り落とす。



「ウホッ!!ゴリラダーーンク!!」



だが。



再び、あの男が襲い掛かる。



「花道!」

「後ろ!!」



桜木のダンクに跳び掛る大きな影。



「打たせるかーーー!!」



目一杯に広げた手のひらは、ボールだけに触れた。



『バッチィーーン!!!』



「!!!!」




「アンビリーバブル・・・。」




「!!!!」




「センセーション・・・。」




「!!!!」




「もう1点もやるか!!」



「小坊主ぅぅーーーー!!」



桜木のダンクを豪快にブロックしたのは沢北であった。

ボールは、鋭い回転をしながら、真上に弾き上がった。



「美紀男!リバウンド!!」


「白田!!」


リバウンドを奪いにインサイド陣が動く。



だが。



『バス!』


『ドガァ!!』



「えっ!?」

「なっ!?」


ボールは、すぐにリングを通過した。



沢北が桜木のダンクを叩き上げた直後のことであった。



「・・・。」


「!!!」


桜木と沢北が同時に言葉を発する。



「るっ流川ーーー!!!!」




「うぉぉぉーー!」

「うわわわーー!!」

「流川が決めたーー!!」

「直接叩き込みやがった!!」

「リバウンドダーーーンク!!」



「おのれーーーー!また天才の技を使いやがって!!」



沢北を追走した流川は、舞い上がったルーズボールを掴み、そのまま素早くリングに叩き込んだのであった。



『トン。』


静かに着地した流川。

電光掲示板を指差し、一言。



「5点差だ。」




山王 54
湘北 49







続く。