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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#108 【王者対新鋭】

2009-05-04 | #05 海南 選抜編
準々決勝 第2試合

山王工業 × 延北商業



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【山王工業】青

PG…#4 深津 一成 180cm/3年
SG…#6 松本 稔 184cm/3年
SF…#14 柳葉 敏 179cm/1年
PF…#5 野辺 将弘 198cm/3年
 C…#15 河田美紀男 210cm/1年


【延北工業】白

PG…#7 三浦 公平 171cm/3年
SG…#8 東山 一郎 183cm/3年
SF…#9 島田 慎二 186cm/3年
PF…#13 鮎川 弘美 188cm/2年
 C…#4 真壁 香 200cm/3年

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210cm河田美紀男と200cm真壁香のジャンプボール。



『バチン!!』


勝ったのは、真壁。




「ほぅー。」

とベンチの河田が一言。

「美紀男が勝つと思っていたか?」

と堂本の問いかけ。

「飛べない美紀男であっても、10cmの身長差、そして20キロ体重を落とした今なら、互角と思っていたんですが、
真壁のやつは飛べるようですね。」

「4ヶ月で20キロとは、お前も厳しすぎたんじゃないか?」

「いえ。確かに厳しかったと思いますが、ほとんど美紀男の自主的でしたから。」

(美紀男なりに頑張ったんだよな。桜木に勝つために・・・。)

と微笑む河田。

「そうだったな。」

と堂本も微笑んだ。




ボールは、三浦がキャッチ、速攻をしかける。

深津が素早く対応、抜かせない。

(さすが、深津。速いな。)



だが、



『ダッダン!』


(!!)


ハーキーから一瞬で深津を抜き去る。




「深津さんの苦手とするタイプっすね。三浦は。」

「あぁ。スピードのある小柄な選手には、どうも苦手意識があるらしい。」

とベンチの沢北と河田。




深津を抜き去った三浦は、いち早く戻った松本の手前で急ストップ。

『シュパ!』

ジャンプシュートを決めた。




「延北が先制点!!」

「あいつ、速えーーぞ!!」




「あの天下の深津も公平のスピードには敵わないらしいな。」

「あぁ。ガンガンいくでーー!!」




山王のオフェンス。

延北はマンツーマンディフェンスを敷いた。

深津にはSG東山。松本にはSF島田。柳葉にはPG三浦。野辺にはPF鮎川。そして、美紀男には真壁がついた。

ミスマッチを極力減らす延北のマンツーマン。




「延北は考えてますね。」

「えぇ。これで身長差をある程度カバーできると同時に、深津君のポストプレーも封じた。」

「そうですね。宮城君とマッチアップしたときは、深津君のポストで得点を重ねていましたもんね。」




「・・・。」

冷静に選手の動きを見ている深津。


(この5人のなかでは、お前が点取り屋だワン。)


柳葉のVカットにあわせた矢のようなパスが、深津から供給される。


「1年のお前が、山王のエースか?天下の山王も地に落ちたな。」

「・・・。」

ワンフェイクからワンドリ、ジャンプシュートを狙う。



だが、



『バシ!』



柳葉がボールを両手で掴んだところで、三浦がスティール、ボールを奪った。



「いくぞ!!」



延北の3線。

中央を東山、左サイドを島田、右サイドにはドリブルを進める三浦が駆け上がる。




「延北の速攻だーー!!」

「速い!!」

「いや、山王も戻っている!!」




深津、松本が迎え撃つ。

「三浦には、要注意だワン。」

「あぁ。」


山王コート内、ボールは中央の島田に渡る。


『バン!』


再び、三浦にリターン。


レイアップの体勢。


2歩めのステップ。


松本が跳ぶ。


「かかったな。」

三浦は、ボールを降ろし、中央の島田へ。


すかさず深津が寄るが、ボールを左の東山に弾く。


『ザシュ!』


受け取った東山は、堅実にゴール下を決めた。

延北の綺麗な3線速攻。




「あの2人を鮮やかに抜くとはな。」

と堂本。

「河田さんや俺がいれば、最後のシュートは、打たせませんよね?」

「速攻で2回もパスを回してれば、俺たちなら追いつける。うはっ。」

河田がそういうと、柳葉に檄を飛ばした。


「敏!早く戻れ!自分のミスは、自分で何とかしろ!!」



『コクッ。』

柳葉は、小さくうなずいた。




だが、




「わーーー!!」

会場が一気に盛り上がる。




「河田弟をブロックしやがった!!」

「すげー、ブロック!」




ボールは、深津、松本を経て、ゴール下の美紀男へ。

3ヶ月の成長を伺わせる美紀男のフェイクからのシュートを、真壁が豪快にブロックした。

弾き返したボールは、三浦がキャッチ。

瞬く間に、ネットを揺らした。



山王 0
延北 6




開始1分。

三浦のスピード、真壁のパワーで、山王を翻弄し、3本のシュートを立て続けに決めた。

会場は、その光景に異様な盛り上がりをみせる。


だが、山王は至って冷静。

柳葉が深津へスクリーン。

深津と三浦のミスマッチを作り出し、ポストアップから、深津が2点を返す。




試合開始から5分が経過。

真壁の圧倒的なゴール下の支配力により、延北商業がリードを奪っていた。




山王 6
延北 15






続く。

#107 【日本の至宝】

2009-05-02 | #05 海南 選抜編
準々決勝 第1試合

愛和学院 102
浦安工業 73



【愛和学院】

諸星 大  43P 3R 9A 3S 


【浦安工業】

市原 朝日 26P 5R 3A  



実力伯仲とみられていた愛和学院と浦安工業の準々決勝 第1試合は、愛和学院が圧勝した。

29点差・・・。

予想外の得点差に会場にいた他校の選手、関係者、観客たちはただただ唖然としていた。




「愛和すげーぞ!」

「諸星がヤバすぎる!」




愛和の勝因は、何といっても愛知の星、諸星の活躍であった。

前半に奪った得点は、11点。

市原に抑えられる形であったが、後半に入るとギアチェンジ。

瞬く間に、試合の主導権を握り、試合終了までに積み重ねた得点は、43点となっていた。


かたや、浦安の敗因は、市原の犯した2つのオフェンスファウル。

勝負どころで勢いを失うこととなった痛恨のオフェンスファウルを演出したのは、愛知の虎と翼の2年生コンビであった。


チームの勝敗、個人スタッツ、試合における存在感、どれをとっても
『将来の日本No.1SG前哨戦』は、諸星に軍配があがる形となった。


だが、No.1SGの勝負は続く。

更なるライバルが現れ、大学バスケ界というステージに舞台を変えて、なお一層の混戦模様となっていく。




第1試合の興奮さめやらない東京体育館が、更にヒートアップする。

優勝候補の最右翼といわれる山王工業の登場である。




「1!2!3!連覇ーーー!!!」

「1!2!3!ノオーーー!!!」

「1!2!3!連覇ーーー!!!」

「1!2!3!ノオーーー!!!」


ベンチさえ座れない山王選手のユニークな応援が会場に響き渡る。




「山王待ってたぞーー!!」

「沢北!今日こそ、出て来い!!」

「今日も100点ゲームだ!!」


観客の声援は、9割以上が山王を応援する声である。




「どいつもこいつも山王、山王ってうるさいんじゃ!なぁ、公平?」

「あー全くじゃ!観客も山王も俺たちがだまらしたる!!」


先にコートに現れたのは、延北商業高校。

全国大会初出場の宮崎県の新鋭校であったが、九州大会では、九州の雄・博多商大附属と対等に渡り合ったとして、
また、3回戦で強豪校常誠を破ったとして、その評価は、鰻登りとなっていた。


先頭を歩くのは、#4をつけた200cmのC真壁香。

香という女性らしい名前とは違い、猿人系の顔をしている。




「どうして、センターの人って、あぁゴリラ系が多いんでしょうか?
河田君でしょ?赤木君でしょ?えーっと魚住君でしょ?洛安の瀧川君もそうでしたね?あと・・・。」

記者席の中村は、ゴリラ系のセンターを指折り数えている。

「類人猿最強センター決定戦ってゆうのは、どうや!姉ちゃん!!」

「却下よ。」

「ええーと思ったんやけどな・・・。」

少しだけしょんぼりする彦一の横で、弥生がノートに書き留める。

(類人猿最強センター・・・。使えそうやな。)




真壁の後ろを歩くのは、171cmのスピードガードことポイントガードの三浦公平。

茶色い髪を流し、大きな眼をしている。




「三浦君は女性ファンが多そうですね。」

「真壁君とは正反対やな。」




そして、なお一層の声援が沸いた。




「キターーー!!山王だ!!」

「沢北がすでにユニホームだ!」

「今日は沢北を見れるぞ!!」




会場にいる多くの人が見つめるその先には、背番号9の数字。

ジャージを履き、上はユニホーム姿の沢北栄治を見つめている。




「やっぱり、気に入らないワン。」

「あぁ。」

深津と河田は、声援を一身に受ける沢北に嫉妬している。


(仕方ないっすよ。山王のエースであり、日本のエースですから。)

にやける沢北にボールが飛んでくる。


「いてっ!」


「何が日本のエースだ。」

「うっそっ!俺は何もいってないっすよっ。」

「顔に書いてあるワン。」


(なんなんだ、この人たちは・・・。神通力にも磨きがかかっている。)

いやな汗を流す沢北であった。




両校がベンチで作戦の最終確認をしている。


「実力は未知数だが、博多と競った実績は評価できる。油断できない相手だ。」

堂本が選手に気合を入れる。

「スタメンは、昨夜のとおり。三浦と真壁には注意していけ。」

「はい!」




「さぁ、山王をぶっ倒すぞ!いくぞ!!」

「おう!!」




両校のスタメンが、コートに現れた。




「なんだよーー!やっぱり、沢北はいねぇーじゃねーか!!」

「おいおい、河田までいねぇぞーー!!」

「せっかく、山王三銃士を見にきたのにーー!!」




「ナメてんのか!?深津!」

真壁の機嫌は悪い。

「なめてないワン。」

「俺たちをなめてたら痛いめみるぞ!すぐに河田と沢北を引き吊り出してやる!!」



山王のスタメンは、深津、松本、野辺、そして1年生の柳葉と河田弟であった。



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<<回想>>

全国大会の始まる1週間前、山王工業体育館。


「9割9分治ったとはいえ、1分の不安があるのなら、監督として沢北に負担をかけるわけにはいかない。
選抜の全国大会における沢北の出場時間は、準決勝の10分と決勝の20分のみだ。」

「もう大丈夫っすよ!!練習を見ていて、監督もわかるでしょ!?」

「あぁ。わかっている。だが、日本の将来を背負うお前に、何らかのトラブルがあってはいけない。」


「お前がいなくても、俺たちは優勝する。」

「そっそんな河田さん・・・。」


「柳葉も成長した。もうお前の出番はないワン。」

「ふっ深津さんまで・・・。松本さん、何かいってくださいよ!」

「安心しろ。俺たちは、必ず決勝までいく。」


「勝負どころで、お前の力が必要になる。そのときに、爆発してくれればいい。」

「野辺さん・・・。嬉しっす。おい!柳葉!どこか痛くなったら、すぐ俺にいえよ!!」


『ドガァ!』


「後輩に当たるな!」

「俺、怪我人っすよ!蹴らないでくださいよ・・・。」

(大切にされているのか、されていないのか、わからないよ、まったく・・・。)

沢北の眼には、涙がたまっていた。




IH終了後、3ヶ月間のアメリカ短期留学をしていた沢北は、
屈強なアメリカ人高校プレイヤーを相手に果敢に1on1をしかけ、スキルを磨いていた。

スキル、スピードでは、地元の選手に勝ることもあったが、唯一どうしても勝てない部分があった。


それが、体格であった。


1年生より、河田を相手にプレーをしていたこともあり、体格差を克服できる自信はあったが、留学して改めて感じた。


(筋肉の張りが違う・・・。)


ドライブでディフェンダーを抜こうが、ゴール下では、幾度となく、吹っ飛ばされた。

負けず嫌いの沢北は、体格差を克服するために、ウェイトトレーニングにも力を入れた。

1on1同様に、がむしゃらに肉体改造を行った。


その結果が・・・、大腿部の肉離れであった。


幸い軽度ではあったが、過度のトレーニング、言葉の通じない、
コミュニケーション不足のなかで起こった予期せぬトラブルであった。

現地でも治療も行い、帰国後も治療に専念、12月上旬には、8割の回復を見せていた。


だが、堂本が選択した答えは・・・


選抜は30分間のみの出場であった。


日本の至宝を守るために。


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河田をスタメンから外した理由は、今後の山王工業を支えることになるであろう
1年生の柳葉と河田弟の試合の中でのみで生まれる連携プレーの経験値向上であった。

深津や松本らとともに出場すれば、多少のミスもカバーできる。

堂本はそう考えていた。




そして、第2試合のジャンプボールが、放たれた。



準々決勝 第2試合

山王工業 × 延北商業







続く。

#106 【星対朝日】

2009-05-01 | #05 海南 選抜編
会場には、早朝より多くの観客がつめかけ、ほとんどの席が埋まっていた。


「こんなこと初めてだわ。」

観客席を見渡し、弥生が驚いていた。


「ええ。そうですね。決勝戦でもないのに、こんなに多くの人が会場に来るなんて!しかも、第1試合からですよ!!」

中村のテンションも高い。


「それだけ、このベスト8の試合が注目されてるっちゅうことや!
わいもいつかこんな観客がぎょうさんおるところで試合をしてみたいで!!」

彦一のテンションは中村の上をいく。




「いけーー!!諸星!愛知の星の力をみせてやれーー!!」

「市原、負けるなよ!!愛和を倒せーー!!」

愛和学院、浦安工業を応援する声で会場は盛り上がっていた。




両校ともに、愛知の星・諸星、千葉の朝日・市原という絶対的なエーススコアラーを擁し、
派手なバスケを展開する。

そのおかげもあって、両校の人気は他のチームより厚かった。

また、あるバスケ関係者が同じプレースタイルの両エースを『将来の日本No.1SG前哨戦』と
雑誌で書きたてたことにより、この試合は一層の注目を浴びることとなっていた。




「この試合の盛り上がりによっては、特集の必要あるわね。うんうん。」

『将来の日本No.1SG前哨戦』と書きたてたあるバスケ関係者、弥生は一人にやけていた。




まもなく、第1試合が行われようとしている。




準々決勝 第1試合

愛和学院 × 浦安工業




「両校、前へ。」

主審が選手を呼びかけ、スターティングメンバーが整列する。


「因縁の対決だな。」

市原が諸星に話しかける。

「別に因縁でも何でもないぜ。」

「第1試合っていうのは、燃えるんだよな。朝日が昇るように、俺もテンションも上がるんだよ。」


「ふん。3勝0敗だ。」

「ん!?」

「全国での俺とお前の対戦結果だ。今日も俺が勝って、4連勝となる。」

「そうはいかないぜ。前回は2点差で惜敗。確か、2年のIHは、10点差くらいだっけ?
確実に点差は縮まってきている。今日こそ、お前を倒して、優勝まで昇りつめてやる!」

「あぁ。それはこっちも同じだ。浦安を叩き潰して、勢いに乗らせてもらうぜ!」

「望むところだ!」




ジャンプボール、主審の手からボールが放たれた。




「わーーーーー!!!」

「いけーーーーー!!!」

会場割れんばかりの声援が送られた。




東京体育館に向かって、外を歩く海南選手たち。


「おっ。騒がしいな。」

と清田。

「まもなく、愛和の試合も終わる頃でしょうね。」

と神がいう。


「牧は、どっちが勝つと思う?」

高砂が牧に問いかけた。

「諸星も市原も実力は変わらん、ムラがあるところもな。2人の力は互角。
だが、チーム力となると、やはり愛和のほうが一枚上手かな?
IHのときは、市原が絶好調であって、諸星にやや疲れが見えていた。
それでいて、愛和が勝っているなら、10点差で愛和の勝利か・・・。」

「妥当なところだ。私もそう思う。」

高頭が答えた。


「まぁ、いいっすよ!どっちが上がってこようが、諸星も市原も俺がぶっ倒す!かっかっか。」

「さぁ。早く行きましょう。」

高笑いをしている清田を置いて、歩み行く海南選手たち。




このあと、体育館では衝撃の光景を目の当たりにする。




会場入りをした海南メンバー。



清田が赤く光る電光掲示板を見て叫ぶ。

「なんじゃ、こりゃ!?」



試合残り時間 53秒。



「予想外・・・ですね。」

冷静な神も驚きをあらわにしていた。


「どういうことだ?」

「誰か怪我でもしたのか?」

海南選手が思っていることを口にする。


そして、最後に牧が口を開く。

「ふっ、あいつら。ますますパワーアップしてきたぜ。」




電光掲示板 浦安工業に2点が追加された。


まもなくして、試合終了のブザーが響き渡った。



『ビィーー!!』




「よし!!」

「今の俺たちに敵はなし!!」

勝利したチームの選手が、歓喜の声をあげている。

拳を握るもの、抱きつくもの、ベンチに腰を落とすものなど、全ての選手は笑顔で溢れていた。



対する敗北したチームのベンチは・・・。

涙するもの、下を向くもの、力が抜けているものなど、表情に明るさはない。




「やっぱ、負けるとああなりますよね。」

真田が口を開く。

「あぁ。勝つか負けるかだからな。だが、最後まで笑い続けられるチームもある。」

「そうですね。うちがそのチームになればいいんですよね。牧さん!今日も絶対勝ちましょうね!」

「あぁ。もちろんだ!最後まで笑うのは、俺たちさ!!」







続く。

#105 【大栄攻略作戦】

2009-04-30 | #05 海南 選抜編
海南の会議室に選手が集まり、彦一が作成した大栄学園の攻略ビデオを見ていた。


再び、ビデオテープが鈍い音をたてて回り始める。


モニターには、インサイドの2人が映っている。


<#5センター赤井秀樹、身長196cm、#7パワーフォワード青島慶二、身長194cm、大栄のインサイドを守る・・・。>


彦一のナレーションは続いた。



適当なところで、高頭がテープを止め、説明に入る。


「今、見てもらったらわかるように、この2人の特徴は・・・。」

「リバウンドとブロック!」

「その通り、C赤井は、その体格を生かし、大阪のリバウンド王にもなっている。
かたや、PF青島のほうは、持ち前の反射神経で、ブロック王になっている。」

「つまり、インサイドの守りは、鉄壁ということですか?」

「あぁ。青島がブロックでシュートの軌道をずらせ、赤井がリバウンドを奪い取る。
2人で1人を止めるディフェンスだ。そして・・・。」


再び、テープが回る。


『シュパ!』

『ザシュ!』


「軽い動きっすね・・・。」

「それだけじゃないぜ。清田。」

「ん!?」

声の主、武藤に眼をやる。

「こいつら、2人とも左だぜ。」

「左?」

モニターをよくみる。

「あっ!ホントだ!気がつかなかったけど、こいつら2人ともサウスポーじゃん!」

「タイミングが取りずらいな。」

と高砂。

「リバウンドもブロックも普段と違うタイミング、位置からやってくる。しかも、2人だ。
インサイドでは、いつも以上に注意が必要となる。」

「はい。」




ビデオが再生される。


『シュパ!』

『バシ!』


<#6シューティングガード小池哲也、身長180cm、ジャンプシュートを得意とする・・・。>



「これが、SG小池だ。ドライブよりも外角を得意とする選手だ。小池の売りは、何といってもディフェンス。
強気のディフェンスは、何よりも要注意だ。一瞬でも気を抜けば、ドリブルカットにくるから、気は抜けん。」

高頭がモニターを見ながら続ける。



「そして、この男が、2年生PGの桜井。桜井が加入したことにより、土屋がSFに転向した。」


<#10ポイントガード桜井丈、身長174cm、大栄のバランスオフェンスを支える冷静なPGや・・・。>



「試合勘や読みは、土屋と同等か・・・。」

「そう考えておいていいだろう。そして、ここからが、大栄の真骨頂だ。」



『ポチッ!』

高頭がビデオのリモコンを押す。


<大栄学園は、土屋淳を中心としたディフェンスのチーム。
まずは、ディフェンスを打ち破らんと、負けは決まったと同じや。・・・。>

彦一のナレーションとともに、大栄のディフェンス映像が流れている。



「このディフェンスはすげー。」

「オールコートのゾーンプレスは、山王のオールコートプレスにも匹敵する。」

「話には聞いていたけど、想像以上だな。」

「ディフェンスもすぐに変わっちまうしな。」

「対応だけで、体力は削られ、リズムが狂わされる。」

海南の選手が、大栄のディフェンスの凄さに焦りを感じていた。


(打ち破れるのか・・・。)

不安だけが脳裏をよぎっていた。


そんな中、神が言葉を放つ。

「マンツーは、得意じゃないみたいですね。」

「え!?」

誰の眼にもそんなふうには見えなかった。この2人を除いては・・・。


「ここだ!」

高頭が、ビデオを止める。


「一瞬だが、スイッチのタイミングで間が空いているな。」

と牧。


「あっ!ホントだ!!」

「神、この間ならいけるよな?」

「えぇ。問題はありません。」

と牧に向かって微笑んだ。

「よーし!マンツーになったら、神にスクリーンをかけ、シュートチャンスを作る。牧、清田、任せたぞ!!」

「了解っす!俺たちのスクリーンプレーは、完璧っすよね、牧さん?」

「あぁ。」

牧は微笑んだ。


「それともう一つ。やはり、大栄戦は、神に頑張ってもらわなければならんな。」

大栄対豊玉戦、南の3Pの模様が、モニターに映し出されている。


「なるほど。」

と武藤がうなずく。

「神なら、余裕だな。」

と牧もいった。


「見てわかるように、南の3Pは全ての桜井の前からだ。
セオリーだが、大栄のゾーンには、プレッシャーの少ない174cmの桜井の前で神に打たせて対抗する。
神、頼むぞ!」

「はい。」

「へへっ、大栄戦は、神さんゲームになりそうですね。」

「2回戦は牧さん、今日は信長、俺もそろそろ仕事をさせてもらわないとね。」

神が笑った。


「リバウンドには、牧も参加してくれ。
清田は、牧がリバウンドにいったら、セーフティーに戻り、相手の速攻を防いでくれ。」

「了解。」

「OKっす!」



「そして、大栄のオフェンスの特徴として挙げられるのが・・・。」

「バランスオフェンスですね。」

「あぁ。誰からも得点をとってくる。一瞬たりとも隙を見せてはいかんぞ。」

「はい。」

「それで、明日はマンツーで守り、勝負どころで、オールコートを繰り出す。」

高頭が続ける。

「牧は桜井。神は小池。武藤は青島。高砂は赤井。そして、土屋には・・・、清田。
大栄以上に足を動かせ!」


『ゴクッ!』


(土屋・・・。超一流といわれている土屋が俺の相手・・・。楽しみでしょうがねぇ。にかっ。)

こうして、海南の長い一日は過ぎていった。




「チュンチュン」

早朝、すずめが鳴く声が聞こえる。

ホテルの前の駐車場で、屈伸運動をしている清田。


「よっしゃー!今日も大活躍してやるぜ!!見てろよ!土屋ーー!!流川ーーー!!」

気合を入れて清田は叫んだ。



『ピクッ!』


「ん!?なんか目覚めの悪い朝やで・・・。」



そして、もう一人、バスケットボールを片手に、MDを聞きながら、自転車をこぐ男。



『ピクッ!』


(電池が切れた・・・。ついてねー。)


ふと、横を見るとナンバー10の車。

ふと、前を見るとナンバー10のバイク。

ふと、時計を見ると6時10分。

ふと、桜木と清田の顔が浮かんだ。

(ますます、ついてねー。)




全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会 ベスト4が決定する当日を迎えた。







続く。

#104 【PG土屋】

2009-04-28 | #05 海南 選抜編
意気揚々と宿泊先のホテルに戻る海南選手を愛和学院、諸星が出迎えた。


「よっ!」

「お前も好きだな。」

と呆れ顔の牧。

「なんだよ。こうして、出迎えてやったのに。」

少し脹れ顔の諸星。

「はいはい。ありがとな。」

「まずは、最初の難関突破だな。」

「あぁ。予想以上に手強い相手だった。そっちは、余裕だったな。」

「もちろん。優勝するまで俺たちは止まらないぜ。」


「俺たちもだ!」

清田が横から声を出す。


「おっ、清田、今日はいい動きだったな。今日の殊勲賞はお前だぜ。」

「あっ当たり前よ!」

諸星から思わぬ言葉をかけられた清田は、戸惑いと嬉しさが同居した。


(これで、俺も超一流の仲間入りってか。)

にやける清田。


「だが、まだまだ俺の敵じゃない。」にやっ。

「なっ!?」

「まぁ、せいぜい2流ってとこだな。」

「なっ!何をー!IHでは、牧さんに完敗したくせにーー!」

「なっ!何だとー!お前こそ、名朋に負けて泣いたくせにーー!」

にらみ合う両者をほっておいて、海南選手は歩を進めた。




ロビーのソファーには、土屋とSG小池が腰をかけていた。


海南に気付いた小池が土屋に話しかける。

「土屋。帰ってきたで。」

「んっ。」


「今度は、土屋か。ご苦労なことだな。」

「今日は、おつかれさん。明日に備えて、よう寝るんやで。ほな、またな。」

手を上げて立ち去ろうとする土屋。


「それだけか?」

「それだけや。」


「???土屋も今日の疲れをとっておけよ。」

「あぁ。わーってる。疲れ、残しといたら、勝てるもんも勝てなくなるからな。」

「それは、うちも同じだ。明日は、全力真っ向勝負だぞ。」

「望むところや。」

土屋と小池は去っていた。


「結局、何がいいたかったんだろう?」

と宮益は首をかしげた。

「最初で最後の真剣勝負。全力で勝負したい。そういいたかっただけでしょうね。」

神が冷静に答えた。

「牧が、白金にいくと信じてやまないんだな。土屋は。」

高砂が牧をみていった。


「・・・。」

牧は黙っていた。

(もう、俺の気持ちは固まっている・・・。)





数時間後、海南の会議室に選手が集まった。

「疲れているところすまないが、明日の作戦を伝える。まずは、このビデオを見てくれ。」


大阪府予選 大栄学園が出場した全ての試合を短く編集したビデオがモニターに映し出された。

『ザシュ!』

『シュパ!』

『ビュン!』

『ダムダム!』

3P、ミドルシュート、ゴール下、アシスト、ドライブ、リバウンドなど、
土屋のあらゆる動きのみが映し出された。

<もう、何もゆうことはないやろう。大栄学園#4キャプテンにして、オールラウンダー土屋淳や。>


「なっ、なんだこのビデオ?」

清田が眼を丸くする。

「ふっ、この声は彦一か?」

牧が笑う。

「あぁ。彦一君の作った大栄攻略ビデオだそうだ。ホントに面白いやつだな。彦一君は。
是非、海南のマネージャーにほしい人材だよ。」

と扇子を広げながら、高頭が笑った。


このビデオは、編集はもちろん、ナレーションまで、彦一一人が担当し、作成したビデオであった。


「IH以上だぜ。この資料は・・・。」

高砂もビックリしている。


高頭が口を開く。

「見ての通り、土屋はゴール下の1on1から、3P、アシスト、リバウンド、何でもできるスーパープレイヤーだ。
やつを止めることは容易でないだろう。」

「でも、大和だって、オールラウンダーって呼ばれていたし、今日、止めるてやりましたよ!」

「清田のいうとおりだ。だが、大和と土屋、秋月と大栄は、明らかに違う点がある。
それはまず・・・、土屋の身長だ。」

「確かに、大和に比べ6cmほど高い。しかも、191cmといったら、高砂さんと同じ・・・。
長身オールラウンダーってことか・・・。」

「そして、もう一つが、経験と判断力だ。」


(経験・・・。)

清田がいち早く反応する。



「土屋も牧同様、1年の夏から全国を経験している。1年次はPGとしてな・・・。」



(PG!!)

再び清田が反応した。


「ふっ、そうだったな。」

思い出したかのように、牧がいった。


「2年前、海南の牧、山王の深津、翔陽の藤真、そして大栄の土屋。
この4人は、NPGと呼ばれていた。」

高頭が説明する。


「NPG?」

「NEW PG。新しいPGという意味だ。」

「初耳だぜ。」

神や清田を初め、初耳の1,2年生は驚きを隠せない。


「牧が1年のとき、IHに衝撃的な出来事が起きた。
それは、ベスト8に進んだ8校のうち、4校のPGが1年生だったこと。深津は2番手だったが、そのときの4人が・・・。」

「牧さんを初めとするさっきの4人だったってことか。その中に、土屋も含まれていた。」

「そういうことだ。
だから、あの長身の土屋がアシストにも判断力にも優れていることがこれで納得できるだろう。」


『ゴクッ!』


「牧さんに並ぶPGだったって・・・。」

清田は、息を呑み、冷や汗を流しながら思った。

(でも、ゾクゾクしてきたぜ・・・。)



海南の作戦会議は続く。






続く。

#103 【背負う想い】

2009-04-25 | #05 海南 選抜編
「よっしゃー!ベスト8だーーー!!」

清田は、ヘアバンドを高く放り投げた。


「ふーー。」

と一息ついたのは、高砂。


宮益は、タオルを差し出し、武藤と神をベンチに迎えた。


「ご苦労。」

「骨のあるやつらでした。」

高頭と牧は、軽く握手をした。




「このオールコートプレス。相当、走りこんでるな。」

沈黙を保っていた山王・堂本が口を開いた。

「でも、うちのほうが、遥かに強いワン。」

「あぁ。そうだ。オールコートはうちの専売特許だからな。」


「海南だろうが、大栄だろうが、俺たちの3連覇に狂いなし。」

「ん!?俺たち!?最初の年、お前はいないだろう。」

「そうだワン。沢北は、昨年からだワン。」

「いいじゃないっすか?別に。チームが3連覇なら。」

「来年は、お前が勝って4連覇になるってか?」

「納得がいかないワン。」


『ガシ!』


「うぐっ!!」

河田に、フロントチョークを決められる沢北であった。

(ちくしょう。早く引退しやがれ・・・。)




「1枚、外が足りなかったな。ガード陣が手薄だった。」

と愛知の翼。

「俺が秋月のガードなら、大和さんも品川さんももっと上手く使えたのにな。もったいないですね。」

とPG織田。

「これで、大栄と海南か。海南も一難去ってまた一難だな。」

諸星がいった。


(大和さんは、もっと上を目指せる人だと思うんだけどな・・・。)

観客席から大和を見つめる織田。


近い将来、大和と織田は同じチームでバスケをすることになるのだが、それはまた別の話。

そして、品川も大学に進学し、あの男とともにバスケをすることになるのだが、それもまた別の話。




「・・・。」

(海南のオールコートプレス。IHより、破壊力が増しているやないかい。ちーとしんどそうやな。)

「どないした、土屋?」

「なんでもない。」

「秋月の敗因は、ガード陣。そして、スコアラーが大和と品川しかおらへんということや。」

「うちは、ちゃうで。誰からも点の取れるオフェンスや。」

「心配せんでええって。お前ばかりに負担はかけへんよ。」

「運びは、わいらに任せておけって。なっ?」

「あぁ。心配なんてしてへん。ただ・・・。」

「ただ?」

「いや・・・、なんでもない。」

(ただこの試合、牧の全てが見れたわけやない。
神や清田が、これだけの成長をみせとるっちゅうことは、牧やって・・・。)

翌日、土屋の不安は的中することになる。




一方、秋月ベンチでは・・・。

第4Q、3点差まで迫った残り6分。

流れ、勢いともに秋月が掴んでいたのだが、海南のオールコートプレスの破壊力により、
全てが飲み込まれていった。

シュートはおろか、思うようにボールを運べなかったPG渋谷、2年生SG西は、
自分の不甲斐なさ、自分への苛立ちで、大粒の涙を流していた。

SF大和は、責任を感じ、PF立川同様に沈黙を保っていた。

だが、無口なC品川が静かに口を開いた。


「みんな。よくやった。俺たちは、よくやった・・・。」

精一杯の気持ちを言葉に変えた。

眼は潤んでいた。


「渋谷、西、自分を責めなくていい。」

ようやく大和が口を開いた。

「俺に悔いはない。俺は、本当にみんなとバスケができてよかった。ありがとう。」

大和はそういって、結わいていた髪をほどき、牧の元へ歩みだした。




「牧!」

「ん!?大和。」

「今日はいい試合だった。ありがとう。」

固い握手を交わす2人。

「明日は大栄、そして、その次は山王か?茨の道だな。」

「あぁ。だが、今日の試合もしんどかったぜ。」

「ありがとう。ここは俺たちの地元だ。
最後まで、海南の勇姿見させてもらう。応援もさせてもらうよ。」

「頼もしい限りだな。」

「頑張れよ!」

「あぁ。」


(神奈川のやつら、そして秋月・・・。また、負けられなくなったな。)


手が離れたとき、再び大和が声をかける。


「神奈川の花形って国体のときのメガネのセンターか?」

「あぁ。神奈川県一の頭脳派センターだ。」

「よろしくいっておいてくれ。大和が楽しみにしているって。」

「ん!?そうか、大和は、拓緑か。わかった。必ず伝えておく。」

「じゃあな。」

「あぁ。またな。」




海南、秋月の選手がコートから姿を消し、まもなくして、関係者席、観客席の人々が席をたった。


担当者が、トーナメント表に、試合結果を赤字で記入した。


8試合の熱戦を繰り広げ、熱気に包まれていた会場には、静けさだけが残った。


そして、彦一のノートに記される。




第4試合

大栄学園 × 海南大附属
 



-----------------------------------------------

選抜優勝大会 3回戦

海南×秋月

海南 93
秋月 80


【海南】青 93

#4 牧  18P 6R 7A
#5 高砂 10P 8R 
#6 神 25P(3P6本)  
#8 小菅 2P 
#9 武藤 5P 
#10 清田 22P(3P3本) 
#15 宮益 11P(3P3本) 


【秋月】白 83

#4 大和 27P 11R 12A
#5 品川 29P 17R
#6 渋谷 5P 
#7 立川 11P
#9 三田 2P
#13 西 9P

-----------------------------------------------







続く。

#102 【ディフェンスの重要性】

2009-04-24 | #05 海南 選抜編
残り7分

海南 81
秋月 76




海南のオフェンス。




「また、品川だーー!!」

「ゴール下を支配してる!!」




品川がリバウンドを掴みとった。




「海南は流れが悪いで。神も2本連続で外しておる。」

「まだ、時間もある。もしかするともしかするかもしれへんで。」

と大栄選手も試合の行方を見守る。




掴めそうで掴めなかった流れを今、秋月が掴んだといっても過言ではない。

牧が一度断ち切った流れを再び呼び戻した。

それは、牧のような3点プレーでもなく、神のような3Pでもなく、清田のようなダンクでもない。


泥臭く奪い取ったリバウンドと5人で粘り強く守ったディフェンスから。


流れとは、得てして、ディフェンスなどの地味なプレーから持ってくるものなのである。

そのことを秋月の選手は十分理解していた。


そして、海南選手たちも・・・。



「気にするな。もう一度、流れはうちにくる。あいつが必ず引き寄せる。」

神の腰を叩く牧。

「ええ。そうですね。」

清田をちらっと見る神であった。



そして、清田は思い出していた。



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

神奈川混成チーム 対 海南
練習試合終了 体育館入口



「オフェンスから持ってくるものは、勢い。ディフェンスから持ってくるものは、流れだ。わかるか?」

「はい・・・。なんとなくっすけど・・・。」


「流れがあって勢いがある。勢いがあっても、流れが向いていないと、単発で終わることが多い。
逆に流れが向いていれば、何事も巧くいくものだ。」

「はい・・・?」


「そして、海南において、勢いをつけるのが、牧と神。流れを引き寄せるのは、お前だ、清田。」

「俺・・・?」


「わかるか?」

「ええ・・・。」

「その顔はわかってないな。
まぁ簡単にいえば、清田がディフェンスで頑張って、牧や神に回せってことだ。」

藤真は笑って話した。

「おお!そういうことなら、わかりました!初めから簡単にいってくれれば、すぐわかったんすけどね。」


清田も困惑の表情からようやく笑顔になったが、藤真はまた険しい表情へと戻った。

「そして、おそらく・・・、清田は全国の超一級をマークすることになるだろう。」


『ゴクッ!』

(超一級って・・・。市原や土屋、諸星や沢北・・・ってことか。)


藤真が続ける。

「だが、お前ならできるはずだ。守れるはずだ。俺は、そう信じている。
そして、お前自身のため、自分で流れを掴みとるんだ!その経験が今後、仙道や流川にも勝る糧となる。
わかったな?」

「はい・・・。」



(仙道や流川にも勝る部分・・・、経験か・・・。)



清田は流川に負けたと思っていないが、勝ったとも思っていない。

だが、流川に勝っている部分となると、確固たるものが見つからない。

その答えを導き出してくれた藤真。



(経験か・・・。

 経験ねぇ・・・。

 やっぱ、経験は必要だよな・・・。

 仙道や流川になくて、俺にあるもの・・・。

 全国の超一級とやる経験か・・・。

 それが、やつらに勝る糧になる・・・。

 これだけは、仙道にも流川にも負けねる気がしねぇな。)

清田は笑った。


「藤真さん!ありがとうございます!!なんか、わかった気がするっす。」

「清田。俺はお前を高く評価している。もしかすると、牧以上にかもしれない。」

「ふっ藤真さん・・・。」

「神奈川県代表として、頑張って来いよ!!」

「はい!!」


-----------------------------------------------------------------------



(見ててください!牧さん!!そして、藤真さん!!)



『キュ!』


「経験値をあげさせてもらうぜ!」


「ん!?」




「おう!大和さんに清田君がワンマークやでーー!」

「海南のディフェンスが動いた。」

「大和君へのボックスワンだわ。少し遅い気もするけど、これで流れが変わるかも。」




だが、


PG西からディフェンスが一枚減ったインサイド品川へパスが渡る。



『シュパ!』


高砂の上から、力強くゴール下を決めた。




「いいぞ!いいぞ!品川!」




秋月選手も今が逆転のチャンスとこの試合一番の集中力をみせている。



海南 81
秋月 78




「3点差やーー!!清田君を大和さんにマークさせた分、中が手薄になってしもうた。」

「やはり、大和君だけじゃなく、品川君も止めないといけませんね。」

「なんとか、品川君を4人だけで守らないと・・・。」




「いけるぞ!秋月!!」

「牧!頼むぞ!!」

「大和!逆転だ!!」

「負けるな!海南!!」




伏兵秋月が、IH第2位の海南を破るかもしれない。

海南は、3回戦で負けてはならないチーム。

会場は、両校を応援する声援で真っ二つに割れた。




高頭は、タイムアウトを取った。


浮かない顔をしている海南選手たちとは反対に、高頭は晴れやかな表情をみせている。


「さすがに、205cmの品川を守るのは、きついな。どうだ、高砂?」

「はい。でかいだけじゃない。スクリーンアウトやフェイク、パスやシュートとかなりレベルの高い選手です。」

「赤木や河田、森重よりも上か?」

「・・・。いや、それは・・・。あいつらが放っている威圧感は、特別なものですから。」

「なら、お前一人で守れるな?」


「!!!」


「俺一人?」


「そうだ。赤木や河田、森重を一人で守ってきたお前だ、やれるだろ?」


「・・・。」


「高砂さん、大丈夫っすよ!」

と笑顔の清田。

「高砂さん。」

神は微笑みかける。

「お前なら、大丈夫だ。俺がフォローに回る。」

武藤が腰を叩く。

「高砂、頼んだぜ。」

牧が肩に手を乗せた。


「・・・。そうだな。俺がやつを、品川を止める。」


(ここで品川を抑えられないようなら、河田にも勝てやしない。
何より、赤木たちに申し訳がない。)

高砂が拳を力強く握った。


「よし!そうと決まれば、やることは一つだ!牧、頼むぞ!」

「はい!」


「高砂の負担はでかい。神、清田、品川にボールをいれさせるな。ガード陣を叩くぞ!!」

「OKっす!大和は俺が止めます!!」

「ええ。」


「よーし!腰を落とせ!足を動かせ!一気に行くぞ!!」

「おう!!」



タイムアウト終了後、海南はオールコートプレスを繰り出した。

正直、プレスは大栄戦まで温存しておきたかった高頭であったが、指示せざるを得なかった。

それほど、秋月というチームは、海南を苦しめた実力あるチームであった。


試合残り時間 6分。

全力でコートを走り回る海南選手。

清田は、2つのファウルを奪われたものの大和に追加点を許さなかった。

サイズ、スキルで勝る牧、神は、ガード陣を完璧に抑え、品川へのパスコースを断った。

また、高砂も、品川をきっちりとマーク、武藤と連携をとり、タイムアウト以降、シュートを許すことはなかった。



そして・・・。



試合終了を告げるブザーがなった。







続く。

#101 【流れ】

2009-04-23 | #05 海南 選抜編
海南 79
秋月 68




第4Q開始のブザーがなる。

海南は、牧、神、清田、武藤、高砂のスタメンが出場する。




「海南は、出しますかね?」

「ん!?4アウトやろか?」

「うーん。この得点差なら、出さないんじゃないのかしら。みすみす大栄に手の内を見せる必要もないわ。」




「まだ10分ある。最後まであきらめたらダメだ。みんな、頑張ろう。」

秋月ベンチでは、大和が選手を集め円陣を組んでいる。

「おう。まだいける!」


残り10分に逆転の望みをかける。




この日最後の10分を迎え、観客席から大きな拍手が鳴り響いた。

それは、秋月、海南を応援するものだけでなく、本日出場した16校全てを称えるものだった。




海南のオフェンス。


開始早々の牧のペネトレイトが秋月のゾーンを切り裂く。




「鋭さが増している!!」

「さすが牧だーー!!」

「自分か、神か、それとも清田か!?」




(中には入れさせない。)


品川が間合いをつめた瞬間、ノーマークの武藤へパスが通る。


(!!)




「ノーマークでゴール下!!」

「巧い!!!」




だが、



『チィ!!』



「!!」



ボールは、武藤の手から弾けた。



「よし!」


後ろには、大和。

武藤の後ろからシュートブロックを鮮やかに、成功させた。

ボールは、PF立川が拾う。


「立川!」


『バシ!』


大和にボールが渡るが、前には清田が立ちはだかった。



(ここは通さないぜ!)


『チィン!』


大和の1歩目のドリブルをカット。

だが、ルーズボールは大和が拾った。

ボール際の粘り強さを見せる秋月。



(まだだ!)


再び、清田を抜きにかかる。


『ダム!』


「なっ!?」


清田の股の間を通すトリッキーなドリブルで清田を抜いた。




「清田の股を通した!!」

と宮益が叫び、

「ほうっ、やるな。」

と真田が感心した。




(勝負はこっからだ!)


スピードにのったドリブルは、一気に海南コート内へ。


(決めるんだ!この1本で流れを掴む!!)


『ダン!』



シュート体勢に入る大和を後ろから、牧が襲い掛かる。



『バチン!!』


「!!!」


『ピィーー!!』


笛が鳴る。



(この1本は、獲らせんよ。)


勝負どころの1本と判断した大和を、ファウルでもって阻止した牧。

大和は、2本のフリースローを確実に沈めた。


だが、


『シュパ!』


牧が、お返しとばかりにジャンプシュートを決める。


秋月は、牧のファウル+フリースローの2点。

海南は、流れの中の2点。


一見、大和の2点のほうが、価値が高い2点のように思えるのだが、流れの中で決めた得点ではない。



つまり・・・。




「流れは変わらないワン。」

「秋月に傾きかけていた流れを牧が断ち切った。」

「試合の流れを読んだ牧の静かなファインプレーですね。」

「さぁ、どっちが引き寄せるか・・・。」




だが、秋月も最も多くの高校が出場した東京都を勝ち抜いた強豪校。

このまま引き下がるチームではない。

SG西の外したジャンプシュートを大和が10個目のリバウンドでもぎ取り、ゴールにねじ込む。


続いて、海南のオフェンスを品川がブロックで凌いだ。




「まだわからないですね。スキを見せるようなら、秋月も一気に畳み掛けてくるはずです。」

「あぁ。大和もそう柔な男じゃない。牧、気をつけろよ。」

諸星が腕組みをしながらいった。




「わーーーー!!!」

会場の観客が沸く。




「絶妙のタイミングやーー!!土屋さんと変わらんスキル・・・。
全国には、ほんまにぎょうさんうまい人がおるんやな。」

「確かに、大和君は土屋君と並び称されるだけのことはあるわね。」




「しな、いいぞ!」

「おう。」


大和のループパスから、品川がゴール下を決めた。



更に、神の放った3Pは、リングに嫌われ、リバウンドは品川が奪った。




「いいぞ!いいぞ!品川!品川!」

秋月ベンチが盛り上がる。




『ザシュ!』




「いいぞ!いいぞ!大和!大和!」




渋谷、西、品川、大和と小さくパスをつなげ、最後は大和がミドルシュートを決めた。




「5点差!まだいけるぞ!!」

「ディフェンス!ディ!ディ!ディフェンス!!」

秋月ベンチの応援が、会場全体に響き渡る。




「さすがに、手強いっすね。」

汗を拭く清田。

「あぁ・・・。」

(果たして、清田に止められるか・・・。だが、やってもらわなきゃ困る。)

「清田。」

「ん!?」

「エース封じの信長。見せてもらおうか。」

微笑む牧に、静かに答える。

「待ってましたよ。にかっ。」

「任せたぞ。秋月の流れを・・・、止めろよ。」

「任せてください!!」




残り7分

海南 81
秋月 76






続く。

#100 【怒涛の展開】

2009-04-20 | #05 海南 選抜編
第1Q 5分

海南 13
秋月 12




「絶対、勝つ!!カップを神奈川に持ち帰るんだ!!」

「おう!!」

清田の言葉が、海南に気合を入れる。




『チィ!』


(ぬっ!?)

武藤が、品川のボールをゴール下でスティールした。


「武藤さん!」

清田は誰よりも早くスタートを切っている。


「武藤!」

牧が中継し、清田へのパスが通る。



『キュ!』


『ダムダム!』



(負けねぇぞーー!!誰にも!!流川にもだーー!!)



『ダン!』




「うそ!」

「届くのかーー??」

「まじかよ!?」




清田は、フリースローライン上から、ゴールに向かい、踏み込んだ。



(おいおい。)

牧が心配そうな顔をしている。



「うそでしょ!?」

敵である大和もつぶやく。



「信長!うしろにパス!」

珍しく、神が叫ぶ。



だが、清田はお構いなしに、叫んだ。



「俺が清田信長だーー!!」



ボールを片手に持ち替え、渾身の力を込めて、腕を振り下ろす。



『ガシィ!!!』



「!!!」



(!!!)



(えっ!?)



清田が振り下ろしたボールは、リング真正面に当たった。



(あっ!?)



その衝撃で清田が吹っ飛び、ボールが大きく弾けた。



(やっぱり!?)



『ドガッ!』



「いてっ!!」

背中から、落ちる清田。



跳ね返ったボールは、後ろを走っていた神がキャッチし、レイアップを決めた。



審判が時間をとめる。



「大丈夫か、信長?」

倒れている清田に声をかける神。

「無理でしたっ。」

笑う清田。

「怪我はないか?」

「心配ないっす。」


『ゴン!』


「いたっ!」

「無茶はするな!」

牧が一発鉄拳を食らわせたあと、手を貸し、清田を起こした。


「すいません・・・。」

「お前が怪我をしたら、全国制覇はできない!」

「牧さん・・・。」

「さぁ、ディフェンスだ!」




会場がざわついてる。

清田がダンクを外したからではない。

180cmにも満たない身長で、フリースローから跳んで、リングに届いた。

その賞賛と拍手であった。




「翼。お前、届くか?」

「いや、無理でしょう。」

と苦笑い。

「あの身長で、あそこから、届くやつなんているのか・・・。」

さすがの愛和トリオも驚いていた。

もちろん、各校の主力選手も清田の身体能力に驚きを隠せなかった。




「超えた・・・。ミラクルアンビリーバブルを超えた・・・。ウルトラアンビリーバブルや・・・。」

「信じられない・・・。清田君の身体能力は流川君以上なの・・・。」

弥生も彦一も瞳孔が開いている。

中村にいたっては、言葉にさえできなかった。

「@*+#%$&・・・。」




清田の失敗ダンクで、会場を味方につけた海南が流れにのり、5点のリードを奪い第1Qが終了した。



海南 26
秋月 21




続く、第2Q。


海南は、武藤に代え、宮益を投入し、清田とともに、外角のシュートを中心に攻めた。

また、牧らが、神にスクリーンをかけ、スペースをつくり、その気持ちに神も応え、
トリプルシューターを形成させた。


対する秋月は、第1Q同様、ミスタートリプルダブルSFの大和統を起点に海南ゴールを攻め、
オフェンス、ディフェンスリバウンドともに確実に奪う品川は、早くも2桁のリバウンドを記録し、
じわじわと海南を追い詰め、逆転に成功した。



海南 50 
秋月 51




第3Q。


「秋月は、ここまで大和君を起点としている。ここまで、エースに信頼を置くチームも珍しいわね。」

すでに、大和は得点とアシストでダブルダブルを達成し、リバウンドの攻防にも果敢に挑んでいた。

そして、第3Q終了時には、トリプルダブルに近い数字を残していた。


一方、牧のスタッツは、2回戦とはうって変わって、伸びていなかった。

「今日の牧は不調だ!」

という見解が多いなか、あの男たちは違った。




「ここまで、海南が強いとは・・・。」

「牧の調子が悪いんじゃない。神や清田たちが、牧の分までプレーしちまっている。」

「つまり、牧が全力じゃなくても、他の選手がそれを補うだけの能力を発揮しているってことか。」




何時でも、如何なる時でも、全力投球する牧において、手を抜くなど考えたことはない。

ましてや、全国という舞台で牧が燃えないはずがない。

だが、実際に牧がボールを保持している時間は、今までと比べ物にならないくらい減っていた。


「苦しいときは牧」が当然と考えられていた海南であったが、今は違う。


神が、清田が、海南の次の世代を担う彼らが、自らその苦境を受け入れ、乗り越えていた。


秋月が格下だったのではない。

事実、海南は最大7点差のリードを奪われることもあった。

その度に、神や清田が主体となり、チームを勝利に近づけた。


(ここまで、成長しているとは思わなかったぜ。)


牧は、嬉しそうに、神らの背中を見つめた。




『パタパタ・・・。』


「あの練習試合を境に清田も少しは大人になったな。藤真に感謝せねばな。」

高頭の顔がほころんだ。




(もう、牧さんだけに頼ってられない。)

(これからの常勝海南を支えるのは、俺たちなんだから!!)

神、清田の鬼気迫るプレーで、海南は一気にリードを奪った。



海南 79
秋月 68






続く。

#99 【努力と信長】

2009-04-18 | #05 海南 選抜編
海南 6
秋月 6




「清田、大和にはもっと強く当たっていい。大和からのパスを封じれば、品川もゴール下の仕事はできまい。」

「はい。」

牧が指示を出す。



海南のオフェンス。

先ほどと同じように、ペネトレイトをした牧から真後ろの清田へボールが渡る。


(2度も同じ手をくらうか!)


SG西が素早く清田のチェックをするが、清田は低い重心から、171cmの西の脇をドライブで抜いた。


『ザシュ!』


清田のジャンプシュートが決まる。




「この全国大会に入って、清田君の外の調子がいいみたいですね。」

「ええ、フォームが安定しているわ。」

「どことなくスナップが神君に似ていますね。」

「うーん。神君のフォームは、簡単に真似することができない。
それくらい洗練された完成したフォームよ。ただ・・・。」

「ただ?」

「清田君なりに、自分の弱点である外角を克服するために、
神君のフォームから学ぼうとした可能性は十分に考えられるわね。」

「清田君も努力しているんですね。」




「いいぞ、信長。」

「はい!」

神に清田は笑顔で答えた。



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<<回想>>

神は、いまもなお練習終了後には、500本の3P練習を続けている。

完成された高校生No.1シューターと呼ばれている神ではあるが、
更なる精度を積むために努力は怠らない。

その姿は、清田の心を大きく響かせていた。



IH全国大会終了後、3日間の部活休みが与えられた。

休みの間に、自分のロッカーを整理しようと、清田は体育館を訪れた。



「誰もいない体育館は静かだな。やっぱ、1人って好きにはなれねぇ。」


『ダム』

『ダン』


誰もいないはずの体育館から、ボールの弾む音が聞こえた。


「ん!?誰だ?今日は休みだぞ。」

そーっと、体育館を覗き込むと、そこには、2つの人影があった。


(神さん!宮さん!!)


2人は、真夏の体育館を締め切り、滝のような汗をかきながら、3Pの練習をしていた。

しばらく、2人の姿を眺めていると、神のリバウンドをとっていた宮益が、清田の姿に気がついた。


「清田じゃないか!どうしたの?」

「えっ、あっ、ロッカーの整理をしようと思いまして。」

「そうか。休みの日に偉いな。」

「宮さんと神さんは?」

「見てのとおり、3Pの練習さ。」

と宮益がメガネを掛け直す。

「今日は、休みっすよ。」

「休みの日だから、好きなだけ打てるんじゃないか。」

「そうすっけど・・・。」

ふと、神の横にあるホワイトボードに目を向けると、700の数字が書いてあった。


(700!?)

「もしかして?」

ホワイトボードを指差す清田。

「700本が終わったところだよ。」

神が汗を拭いながら答えた。


(700本って・・・。)

驚きを隠せない清田。


「部活が休みの日は、毎日こうやって2人で練習しているんすか?」

「いや、俺はこの3日間だけだ。神は、休みの日もかかさず500本はやっているようだ。」

スポーツドリンクを飲みながら、コクリとうなずく神。

「・・・。」

清田は言葉がでなかった。

(練習のあとの500本に加え、休みの日も練習しているのか、神さんは・・・。)



このとき、自分がいかに才能という力に甘えていたか、強く感じた。



神の話は知っている。

センター失格の烙印を押され、それからシューターに転向し、今の地位まで上り詰めた努力の人。



(俺は・・・?俺は・・・、何を努力したんだ?何を努力してるんだ?)



思い浮かべても、浮かんでこない。



中学時代、類まれなスピードとジャンプ力の身体能力だけで、流川には一切敵わずとも、
神奈川県代表として全国に出場。

そして、県最強の海南大附属高校に、推薦入学を果たした。


『努力』そんな言葉は、清田の頭の中になかった。


だが、いままさに、神と宮益の練習を見て、『努力』という言葉の素晴らしさを覚えた・・・。


(努力・・・。俺だって、今から努力をすれば、神さんや牧さん、流川にだって勝てるのかな・・・。)


そう思ったときには、声をあげていた。


「神さん!宮さん!俺も一緒に練習させてください!!お願いします!!!」

神と宮益は、目を合わし、答える。


「いいよ。」

「もちろん。」


それから、清田は、部活休みの日も、練習終了後も神とともに3Pの練習を続けた。


そして、芽生えるもう一つの感情。

神さんのためなら、我が身を犠牲にしてもいい・・・。

スクリーンをよりかかりやすくするため、牧とともに筋力トレーニングを行った。

その成果により、選抜予選では、清田のスクリーンは作戦の一つとなっていた。

だが、3Pの方はというと、もともと外角が不得意だったため、思った以上に成功確率は伸びなかった。



国体。

出場機会も少なく、3Pシュートを打つことさえなかった。



選抜予選。

練習の成果が伸びず、確率の低い外角は自粛していた。



そして、神奈川混成チームとの練習試合。

練習試合で見せたPG三井を食い入るように見つめた。



(俺の進むべき先はここにある!)


牧にいわれたPG転向。

自分で見つけた3P。

その答えが、三井であった。


(三井っていうのが悔しいが、俺はあれになる!!)



全国大会まであと2週間となったある日。

突然、その成果が現れる。


ゲーム形式の練習で5割を超える3P成功率。

自分でも信じがたい出来事だった。


清田の居残り練習をしっていた海南メンバーが祝福した。

高頭も計算できると太鼓判を押した。


牧は俺のハングリー精神が伝承されたと喜んだ。

神は冷やしたら感覚が狂うと大きな手袋をプレゼントした。

宮益のメガネは涙で曇っていた。


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清田の天性のスピードとジャンプ力。


神とともに歩み掴んだ努力と3P。


牧とともに鍛え上げた体。


藤真が気付かせたPGの心。


三井が導いた自分の進むべき道。



その全てが融合し、今、清田の、能力が、心が、爆発する。



海南 8
秋月 6






続く。