goo blog サービス終了のお知らせ 

うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#118 【一進一退】

2009-05-19 | #05 海南 選抜編
大栄 2
海南 0



牧を抜いたPG桜井が、SG小池へアシスト、大栄が先制点を決めた。




「さて。大栄は、どうでてくるかな?」

ベンチの高頭が、コートを見守る。




小池のシュート後、素早く戻って、敷いたディフェンスは、2-3であった。




「血迷ったか?土屋め。神が空くぞ。」

と高頭。




「よし!」

牧がゆっくりとしたドリブルで大栄陣内に入る。

大栄は、桜井、小池が前列、センターを赤井、後列を土屋と青島が守った。


3Pライン手前、牧が神へ、パスを出す。

桜井が前へ詰め寄るが、身長差15cm。

何のためらいもなく、3Pを放った。



だが、



『チィ!!』


「!!」


「そりゃ、わかってるで。」

桜井の後方から、土屋がジャンプ。

土屋の指が、わずかにボールに触れた。


(げっ、神さんのシュートに触れやがった・・・。)

清田は、土屋の跳躍力に驚いている。


ボールは、リングにあたり、リバウンドは赤井が掴む。


「よし。ナイスリバウンドや。」

「桜井、任せたで。」

「はい。」


ボールを運ぶ桜井には牧がピッタリとマーク。

桜井は、ボールを体で隠すように、ドリブルをしている。


(さすが、えらい威圧感や。)


Vカットから、土屋がボールをもらいにいくが、清田がしっかりとマーク。


ボールは、小池へと渡った。

時間を使い、ゆったりとしたオフェンスを展開する大栄学園。

ボールは、PF青島を経由して、再び桜井の元に。



シュートクロック残り6秒。


時間が視界に入った牧。


(来る!)


桜井の腰が沈む。


『キュ!』


ワンフェイクから、再びバックロールで抜きにかかる桜井のドリブルに手を出す牧。


(あかん!)


ギリギリのところで、牧を抜き去るも、パスコースは、海南ディフェンスにより全て塞がれていた。


ならばと、桜井はジャンプシュートを放つ。



だが、



『バシ!』


背後から強烈なブロックが炸裂。

もちろん、犯人は牧。




「牧のブロックーー!!」

「容赦ない!!」




ボールは、武藤がキャッチし、すぐに走り始めている清田にパス。

手堅く、レイアップを決めた。



「相手は牧だ。気を落とさんとな。」

軽く土屋が桜井の肩を叩く。

「はい。」


(ますます、貴方を超えたくなったは!)



ハーフコートを広く使い、高い位置で、ドリブルをする桜井。


(パス主体に切り替えてきたか。)

牧は、一歩間合いを空けた。


インサイドでは、武藤と青島が、高砂と赤井がポジション争いをしている。


『クルッ!』


ハイポから、ローポへ移動した青島が、高砂を押さえ込む。

仕方なく、ディフェンスをスイッチし、武藤は赤井をマークした。

そこに、桜井からのパスが供給される。


『シュパ!』


C赤井のフックが決まった。



(桜井の視野は広いな。だが、あのセンター、武藤相手にフックか・・・。)

牧は、高砂になにやら耳打ちをした。

「OK!」




海南のオフェンス。

再び、2-3のゾーンを形成する大栄学園。


(神さんが怖くねぇのか?)

と清田。


アウトサイドのパスワークから、再び牧にボールが渡った。

と同時に、ハイポに上がった高砂へパス。

赤井が間合いをつめる。


桜井、小池も高砂を囲みにかかるが、それよりも早く、
高砂がシュートフェイクから、ワンステップで赤井を抜き、シュートを放つ。


『シュ!』



「!!」



『バチン!!』



「甘いで!」


高砂のシュートを叩き落したのは、大阪のブロック王ことPF青島慶二だった。



弾かれたボールは、清田が掴む。


「神さん!」


清田は、素早く神へパスを供給しようとする。


(ここやろ!)


これに反応した土屋が、パスカットを狙い飛び出した。


だが、ボールはまだ清田の手の中にあった。


(フェイクか!?)


そして、ボールは優しく清田の指から離れた。


主審は、3本の指をあげる。


大栄、海南、誰もが神へのパスと疑わなかった。

神でさえ、最高の間で待っていた。

しかし、清田の選択は、自らの3P。


(ふっ、清田め!)

牧がリバウンドを取りにいく。


清田は、すぐさまトップに戻り、大栄の速攻に備える。



ボールは・・・。



『ガン!』



小さくリングに跳ねた。



高砂は、赤井をしっかりスクリーンアウトで抑えていたため、飛び込みリバウンドの牧がキャッチ。

そのまま、押し込んだ。



「いい判断だったよ。」

と神。

「まだまだこれからっすよ。」

と清田は笑った。

「よし!ここ止めるぞ!!」

「はい!」


そして、高砂が牧に報告をする。

「やはり、赤井は、神奈川のセンターたちに比べたら、それほどじゃない。
あいつなら、俺一人で抑えられる。」

「うむ。彦一のやつ、同郷のよしみで、少し過大評価してたかな。」




「ハッハッハックション!誰かわいの噂をしておるな!!って、そんなことより、はよ戻らねば!
姉ちゃんにどつかれるーー!!」

トイレから駆け出す彦一であった。



大栄 4
海南 4






続く。

#117 【最後の椅子】

2009-05-18 | #05 海南 選抜編
「海南だーーー!!」

「大栄学園のおでましだーー!!」

「牧ーー!!」

「土屋ーー!!」



本日、最後の試合とあっても、観客の盛り上がりは、一向に静まらない。




「勝ったほうが、うちとやる。」

「自分のマークマンをしっかり見るワン。」

「はい。」




「同じ釜の飯対決ですね。」

「大さんは、どっちの応援?」

「どっちも関係ねぇよ。」

「意地張っちゃって。」

(牧、絶対に勝ち上がって来いよ!!)




「いよいよだな。赤木。海南は勝てるかな?」

「海南は負けん。神奈川の想いがあるからな。」

「あぁ。牧もいるしな。最後の椅子は、海南だ。」




『カチカチカチ・・・。』

「いよいよ、海南の登場やでーー!!なんか、わいまで緊張してきてもうた!!
トットイレ行って来る!!」

「のわー!彦一くーん!!そんなことしたら・・・。」

中村はそーっと弥生の顔色を伺う。


「なに考えてんのよ!!彦一はーー!!」

「やっやっぱり・・・。」

(彦一君、早く戻ってきてよ・・・。)




大栄ベンチ。

「相手は、海南や。一筋縄ではいかへん。
ハナから、自分らのペースをしっかり掴んで試合を有利に進めるで。」

「おう。いつものバスケやな。」

「大栄の強さ、見せたろ!」

「おう!!」




海南ベンチ。

高頭が、最後の指示を出す。

「作戦は昨夜のとおりだ。高砂、武藤。相手は、お前らよりもデカい。
だが、今までもそうであった。全国一の技巧派インサイドを見せてやれ。」

「はい。」


「清田。わかっていると思うが・・・。」

「はい。わかってますよ。俺が土屋を止めれば勝てる。でしょ、監督?」

「そうだ。しっかりな。」


『ポン。』

高頭は、持っている扇子で清田の尻を叩いた。


「清田がディフェンスなら、オフェンスの起点はお前だ。」

「えぇ。博多の牧瀬さんの3P見せられたら、俺も大人しくしていられないですよ。」

「そして、牧・・・。頼んだぞ!」

「任せておいてください!!よし、みんな行くぞ!!」

「おう!!!!」




センターラインへと歩む両校のスターティングファイブ。


-----------------------------------------------

【大栄】青

PG…#10 桜井 丈 174cm/2年
SG…#6 小池 哲也 180cm/3年
SF…#4 土屋 淳 191cm/3年
PF…#7 青島 慶二 194cm/2年
 C…#5 赤井 秀樹 196cm/3年


【海南】白

PG…#4 牧 紳一 184cm/3年
SG…#10 清田 信長 179cm/1年
SF…#6 神 宗一郎 189cm/2年
PF…#9 武藤 正 184cm/3年
 C…#5 高砂 一馬 191cm/3年

-----------------------------------------------


「海南は、マンツーですよね?きっと。」

「ええ。そうだと思うわ。でも、やっぱりインサイドが厳しいわね。」

(海南、頑張れ。)

心中で海南に声援を送る中村であった。




「始めます!!」



主審が声をあげるとともに、海南選手がマークマンをチェックする。



「土屋!!」

清田が威勢よく、土屋を指差す。

「おっ。わいの相手は清田か。」


「#10、チェック。」

と牧。

「#6、行きます。」

神も続ける。

「ジャンパー。」

「#7。」

高砂、武藤も声をあげた。



センターサークルに、高砂と赤井が足をいれる。



「みんな、いくで。」

「おう!」

最後に土屋が一喝をいれた。



『シュ!』


主審の手から、ボールが放たれる。


『トン!』


身長で勝る赤井が、後ろの小池に落とす。

すかさずPG桜井に、ボールを回した。




「高校の2大PGの一角、牧に挑戦を挑む2年生PG桜井か・・・。
どうだ、桜井は勝てそうか?1年からのライバルとしてのお前の意見は?」

「桜井じゃ無理でしょうね。牧さん、深津さんに勝てる2年生PGは、俺だけですよ。」

観客席の愛和PG織田が自信満々に答えた。



現在、3年生2大PGは、牧と深津。

そして、2年生2大PGは、愛和の織田と大栄の桜井とされていた。




(牧さん!まずは、貴方を超えさせてもらうで!)


『キュ!』


『ダムダム・・・。』


桜井は、バックロールから、牧を抜きにかかる。


(抜かせん!)

牧は進路方向を防ぎにかかるが、すかさずレッグスルーから方向転換に、一瞬の隙を見せる。




「#10が抜いた!!」

「牧を抜きやがったーー!!」




「速いワン。」

「また、速くなったな。」

「深津さんの苦手なタイプがまた一人~♪」

「沢北、うるさいワン!」

「うっ、すいません・・・。」




「小池さん!」

桜井からのパスを小池がクイックリリースでシュートを放つ。


『シュポ!』


先制点は、大栄があげた。


「桜井、牧相手だからとゆうて、熱くなったらあかんで。」

「はい。」

「じっくり攻める。それが、大栄のバスケや。」

「えぇ。わかってはります。」



(いいPGだな。土屋が転向するのもわかるぜ。)

スロースターター牧に早くも火が付きかけていた。



大栄 2
海南 0






続く。

#116 【第3試合終了】

2009-05-16 | #05 海南 選抜編
第3試合の真っ只中、観客席でも熱い展開を見せていた。


「深津と河田は、深沢らしいな。」

三井が切り出す。

「そのとおりだワン。」

「ぶはっ。神奈川にも情報が回っているのか。」

「噂は本当だったらしいな。こりゃ、深沢は、更にパワーアップだ。」

と苦笑いの三井。


「赤木は受験みたいだが、三井は、決まったのか?」

「・・・。大した大学じゃねぇよ。」

と間を空けて三井。


「ミッチーも、春から大学生なのか?」

「あぁ。お前にはいっていなかったな。」

「ほおー。ミッチーが受かって、ゴリは落ちたのか。ミッチーもやるね。」

と高笑いをしながら、にたーと赤木を見る桜木。


『ゴン!』


「ふん!落ちてなどおらんわ!!試験はこれからだ。たわけが!!」

「いたっ!!」


(あの拳、痛そうだなーー。)

と痛みのわかる男、沢北が桜木を同情した。


「ところで、松本なんかも決まっているのか?」

「あぁ。関東の大学でやらせてもらう。」

松本、野辺、一之倉の3年生がうなずいた。

「そうか、また対戦することなりそうだな。次も負けねぇからな。」

「あぁ。楽しみにしている。」


(山王はみんな関東の大学か・・・。味方になれば、頼もしい限りだが、敵になるとやっかいだな。)

と三井が静かに思った。




数十分後。


『ガバッ!』


洛安、博多戦が最終局面を迎える一方で、桜木がいきなり、席を立つ。


「時間だ!!帰る。」

「ぬぁ!?」

「なんだよ、海南戦見ていかねぇのかよ?」

「リハビリだ。そして、新必殺技の開発だ。」きらーん。

桜木は続ける。

「といことだ。ゴリ、ミッチー、先に帰る。」

「あぁ。」

「ふん。」


背中を見せる桜木に、美紀男が話しかける。

「桜木君!リハビリ、頑張ってください。」

「んっ。丸男も頑張れよ!根性見せろよ!」

「はい!!」


『スタスタスタ・・・』


桜木の姿は、見えなくなった。


「結局、あいつは何しに来たんだ!」

と納得のいかない赤木。

「あいつは、俺たちとあったときに、もうすでにリハビリの時間だったんじゃねぇか。
だって、湘北のジャージでウロウロしているのもおかしいだろ!?
それでも、俺たちと東京まで来たのは、リハビリの時間を遅らせてでも、バスケに触れたかったんじゃねぇかな。
きっと、そうだと思うぜ・・・。」

「ふん。どうだかな。」



数分後・・・。


『ダッダッダ・・・。』


「ふぅーー。」


「なっ何だよ、いきなり戻ってきやがって??」

と三井。

「試合を見る気になったか?」

と腕組の赤木。


「ゴッゴリ!!帰りの電車賃くれ!!!」

「なっ!?」

「たわけが!」

「相変わらずだな。」

と河田。

「バカ。」

と沢北。

「沢北と同じだワン。」


「わっはっは。」

「ははっ。」

桜木と沢北の周りは爆笑の渦が巻き起こった。


「ぬっ・・・。庶民どもめ。」


「桜木め・・・。」




その頃、コート上では、第3試合最後のプレーが行われていた。


洛安PG小関が、試合終了間際に3Pを放つ。


『シュ!』


『ガコン!!』


「リバウンド!!」

洛安SG林が叫ぶ。


「最後だ!新庄!!」

博多キャプテンのSF徳永が叫ぶ。


「OK!」

と博多PF新庄。


「譲らん!!」

洛安C瀧川もリバウンドを奪いにいく。


空中でぶつかり合う新庄と瀧川の体。

ボールは・・・。


「ぐっ!」


「よし!!」


新庄が奪い取った。


そして・・・。


『ビィーーー!!』


試合終了のブザーがなった。



準々決勝 第3試合

洛安 88
博多 108




前半、洛安のラン&ガンオフェンスを真っ向から受けてたった博多は、後半、作戦を変えた。

それは、自分たちの土俵へ誘うこと。

つまり、ハーフコートバスケ。

元来、博多商大附属は、ハーフコートオフェンスで、その能力を発揮する。

SG牧瀬の3P、SF徳永のパワードライブ、そしてPF新庄の高さ速さを併せ持つオフェンス能力は、
ハイペースな展開より、スローテンポな展開のほうが、より攻撃力を増すのである。

そして、ディフェンスでは、洛安司令塔の小関を高めからつぶし、攻撃の起点を奪った。

結果、両チームともに前半は50点を超えていたが、
後半は洛安が32点に押さえられたのに対し、博多は49点と圧倒した。

博多が得意のハーフコートオフェンスで、前半より得点が減少したのは、
スローテンポによるオフェンス機会が減少からだといえる。

全国ベスト8の洛安に対し、20点差をつけ圧勝した博多の強さばかりが目立つ試合であった。



【洛安】

小関 一志  23P 13A

瀧川 譲次  25P 12R 


【博多商大附属】

牧瀬 篤弘  32P(3P8本)

徳永 保  28P 6R 6A

新庄 雄銀  35P 13R 




メインアリーナに通じる廊下を歩く海南選手。


「さぁ。次は俺たちの番だ!いくぞ!!」

「おう!!」

「博多以上のパフォーマンスを見せてやりましょう。」にかっ。



反対側の廊下を歩く大栄の選手は落ち着いている。

「いくで。」

「4強最後の椅子はわいたちや。」



大栄学園と海南大附属の選手がコートに現れた。







続く。

#115 【同窓会】

2009-05-15 | #05 海南 選抜編
ハーフタイムを終え、サブアリーナに戻る海南の選手たちは、博多の勝利を予測している。


「博多で決まりっすね。」

「あぁ。ハイペースな試合を得意とする洛安に打ち勝っている。IHよりパワーアップしているな。」

「愛和も決勝前に大きな壁ですね。」

「ここまで来れば、1戦1戦が壁だ。俺たちも乗り越えなければな。」

「はい!!」




一方、観客席を歩いている湘北の3名は・・・。


「席が空いてねぇな。」

「準々決勝で、この観客の入りとは、凄いな。」

と赤木は驚いている。

「庶民たちのバスケに盛り上がりおって。」

と桜木。

「おっ、あったぞ!あそこ、1列空いてるぜ。」



観客席を悠々と歩く、サングラスの男と200cm近い大男と赤い頭の男。

観客たちが、見過ごすわけもない。



「あれ!?あれって、湘北じゃねぇ?」

「神奈川の湘北?」

「IHで山王に勝っちまったチームだよ。」

「ほら!サングラスのやつは、3Pのメチャクチャ入るやつだよ。」

「違うんじゃねぇ。こんなところにいるわけがないよ。」

「間違いないって。ほら、真ん中のは、絶対赤木だって。」

「あっ、そうだ!赤頭もいる!!絶対、湘北だ!!」



試合をそっちのけで、観客席の一部が盛り上がりを見せる。



「赤木だ!!」

「三井がいるぞ!」

「ほら、やっぱり湘北のジャージ着てるじゃねぇかよ!!」



「んっ!?なんだ?」

いつの間にかに、3人の周りには、人だかりになっている。



「なんだ?」

「桜木さんですよね?」

「そうだ。なんだ?」

「サインを下さい!!」

「ん!?サインだと!!」

「あっ!!すいません。お忙しいところ、すいませんでしたっ。」

「君、名前は?」

「山田太郎です。」

「山田君ね。山田君は、目の付け所が違うね。ハッハッハ。」

選抜パンフレットに、サインを書く桜木。



【天才 桜木】



汚い文字でこう書かれていた。




観客席、湘北の3人と反対の方向から、ある一団が歩いて来る。



「なんだ?あの人だかりは?」

「あれ!?桜木じゃないですか?」

「桜木だワン。」

「そうだな。それとでかいのは赤木だ。三井もいるな。」

「何しにきたんすかね?」

「海南の応援か?」




「赤木。」

「ん!?」


人だかりの上から声の方向に目を向けるとそこには、先ほど試合を終えた山王の選手らがいた。


「河田!」

「うはっ。元気そうだな。3人とも。」

「丸ゴリ!ぬっ、小坊主まで。ピョン吉、ポールに、丸男。えーと、えーと、坊主6号も・・・。」

どうやら、桜木は松本の名前は覚えてないらしい。


「赤木は引退したと聞いているワン。」

「あぁ。選抜には出ておらん。今は受験生だ。」


「桜木、わざわざ偵察とはご苦労だな。」

と沢北。

「お前らも秋田からはるばる偵察か?ご苦労様だ!」

「バカ!俺たちは、出場してんの。さっき、試合してただろうが!!」

「ぬっ!そうなのか!?ゴリ?」

「そんなことも知らんのか・・・。
ったく、今、準々決勝を勝って、大栄と海南の勝者と明日、試合をするんだ。」

「そうなのか。ふーん。ってことは、ヤマオーが勝つと、ヤマオーを倒したこの天才率いる湘北が一番強いってことになるな。うんうん。
よし!海南の次に小坊主たちを応援してやる。この天才が直々に応援してやるんだ。ありがたく思え。ハッハッハ。」

「バカだ、こいつ・・・。」

赤木、三井を初め、山王選手も呆れ顔である。


先ほどまで、集まっていた観客は、凄すぎる選手の集まりに、いつの間にかに、どこかへ散っていた。


「桜木。流川はいねぇのか?」

と沢北。

「流川?キツネは、この天才に勝つために、日々練習の毎日だ。今もきっと練習していることだろうよ。」

「そうか。試合ができないまでも、話くらいしておきたかったな・・・。」

少し寂しげな沢北であった。


「ところで、背中は治ったのか?」

と河田。

「ハッハッハ。この天才アイアンボディ桜木、怪我などとっくに治っておるは!!
この天才がいないおかげで、ヤマオーも全国に出場できたんだ。ありがたく思え。」

「バカ!県が違うだろ!!」

「ぬ。そうか、そうか。」

「本当に何も知らないワン。」

「こんなバカに負けたかと思うと、本当に悲しくなってくるぜ・・・。」

「それは聞き捨てならん!勝ったのはチーム力の差だ!!」

と赤木と三井。

「わっ!!」

眉間にしわを寄せる赤木とサングラス越しに睨む三井が、沢北に詰め寄る。

「前文、撤回・・・。」



盛り上がる第3試合と同じくらいに盛り上がる場外。


湘北-山王の同窓会は、まだまだ続く。







続く。

#114 【桜木登場】

2009-05-14 | #05 海南 選抜編
「野猿!!」



聞き慣れた声に、清田を初めとする海南選手が振り返ると、そこには赤頭のあの男が立っていた。



「赤毛猿!!」



紛れもなく、そこに立っていたのは、桜木と赤木、そして三井であった。


「牧、約束どおり、来てやったぜ。」

とピースサインの三井。

「まずは、ベスト8おめでとう。」

とジャケット姿の赤木。

「じぃ。元気そうだな。」

とジャージ姿の桜木。もちろん、背中にはSHOHOKUの文字。


海南選手と桜木は、IH2回戦の山王戦以来と再会となる。


「久しぶりだな。桜木。怪我の具合はどうなんだ?」

「ふっ。この天才に愚問を。アイアンボディ桜木は、怪我などには負けん。」

「4ヶ月もバスケから離れているくせに・・・。っていうか、赤毛猿、ここは関係者以外立入禁止だぞ!」



「清田。俺が呼んだんだ。」

と高頭。

「緊張して動けない野猿に喝を入れてくれとオタカに頼まれたんだ。」


『ゴン!』


「何が、オタカだ。高頭監督と呼べ。それに呼ばれたのは、俺と三井だけだ。
お前は、勝手について来ただけだろう。金も持たずに。」

「ふん!そういうことだ!」

「何が、そういうことだだ!!偉そうに!!」

と清田。


だが、桜木らの登場により、清田や宮益らの緊張は、いつのまにかに和らいでいた。

桜木がついてきたのは、予想外であったが、地元の仲間と顔を合わせる、
これも選手の緊張緩和のための智将高頭の作戦であった。



そして、もう一つ。

「清田。三井君に聞きたいことがあるんじゃないか?」

「俺に!?」

「ついに、野猿もこの天才に膝まづく気になったか?」

「お前じゃない!!三井、いや三井さん。3Pを打つとき、いつも何を考えているんすか?」

「俺よりも神に聞いたほうがいいんじゃないか?」

「三井さんにも聞きたいんす。」

(随分、丸くなったじゃねぇか。)

「んー。ボールがネットを揺らす音を想像している。あの音が俺を何度でも蘇らせるんだ。」

「ネットを揺らす音か・・・。ありがとうございます。」

「ん!?お前、随分大人になったじゃないか?」

「勝つためですから。」


「この天才桜木を見習いなさい!ハッハッハ!!」


『ゴン!!』


赤木の鉄拳が、桜木の頭に落ちたのはいうまでもない。

「おのれ・・・、ゴリ。引退してまで、キャプテン面しおって・・・。」


「優勝しろとはいわん、だが、誰にも負けるなよ。」

と真剣な表情の赤木。

「あぁ。耳にたこができるほど聞いている。というか、優勝しろといっているぞ。それ。」

牧が返す。

入念なストレッチの間に、こうして他愛もない会話がなされていた。

おかげで、海南選手からは、緊張感が消え、清田の心も晴れ渡っていた。




準々決勝 第3試合もまもなくハーフタイムを迎える。

「そろそろ、ハーフタイムだ。コートにいくぞ!」

「おう!」


「俺たちは、観客席から観戦させてもらう。」

「野猿。神奈川県の恥さらしになるなよ。」

「うるせぇ。せいぜい、俺たちが圧勝するのを悔しがりながら、観てやがれ!!」




第3試合 ハーフタイム中。


大栄学園、海南がアップを行っているなか、観客席では、愛和学院の選手が第3試合を振り返っている。

「ハイペースな勝負っすね。前半で3点差なら、どっちが勝つかわからない。」

と今村翼。

「いや。勝つのは博多だろうね。」

と冷静に織田虎丸。

「だろうな。」

と諸星も織田に同意する。

PF荻野、C杉本らも首を縦に振る。

「なんすか。みんな、虎に同意しちゃって。」

捻くる翼。


諸星がそっと口を開く。

「確かに得点だけを見れば、接戦といっていい試合展開だ。だが、試合内容は博多が押している。」



洛安 56
博多 59




第2Qを終え、3点差の接戦を繰り広げていた。

博多は、いつもどおりビッグ3が大活躍し、3人で51点をあげていた。

特に、SG牧瀬は、山王一之倉と並ぶディフェンスの名手、洛安SG林の執拗なディフェンスをかいくぐり、
4本の3Pを成功させ、神とのNo.1シューター決定戦に弾みをつけていた。

洛安にとっては誤算であり、博多にとっては嬉しい誤算であった。


洛安は3回戦まで封印していたベーススタイルのラン&ガンオフェンスを披露し、
得意とするハイペースな殴り合いの試合を展開していたが、
博多は、それを真っ向から受けて立ち、リードを奪っていた。




諸星が続ける。

「博多は、洛安の土俵で戦っている。それでいて、リードを保っている。
得点差以上に、博多の強さを感じるな。」

「えぇ。」

とうなずく織田。

「俺もそう思っていました。」

と翼も手のひらを返したように、諸星に同意した。








続く。

#113 【第2試合終了】

2009-05-12 | #05 海南 選抜編
山王 57
延北 45



179cmの山王SF柳葉がダンクを決めた。



会場のいたるところで、ざわついている。



そして、この男も・・・。



「あっあいつ・・・。」

柳葉を一直線に見つめるのは、観客席にいる清田。

興奮のあまり、椅子から立ち上がっている。

「俺と同じ身長でダンク決めるやつが他にもいるっていう話は聞いたことあったけど、
実際に見たのは初めてだぜ・・・。」

「さすが、山王だな。タレントが豊富だ。」

と苦笑いの牧。

「死角・・・、ありませんね。」

と神も苦笑いをしている。

「っていうか、俺がダンクしても観客は、こんなに沸かなかったぜ。なんか、悔しいな。
同じ1年で、同じ身長なのに・・・。
1年・・・?
柳葉・・・?
あっ!!!」

「なんだよ。いきなりデカい声だして!」

と武藤。

「思い出しました!あいつ・・・。沖縄の柳葉だ!そうだ!絶対、間違いない!!」

「ん!?知り合いか?」

「いや、知り合いじゃないんすけどね。全中のとき、見たことあるんですよ。
確か、当時は、170cmくらいだったと思ったんですけど、
沖縄の那覇海中のSGが軽くリング掴んでいたんですよ!」

「それが、柳葉か?」

「ええ。たぶん・・・。まさか、南の沖縄から、北の秋田へ行くとは、思っていなかったから、
ピンとこなかったけど、間違いないっすよ。」

「で、その那覇海中は?」

「3位でした。そして、柳葉は、優秀選手にも選ばれていました。」

「えらい新人が山王に入ったな。まったく。」

と扇子でポンと頭を叩く高頭。




コート上では・・・。


「ナイシュだワン。」

「ナイスカット。柳葉!」

深津が柳葉のプレーを称え、松本が優しく声をかけ、野辺が肩を叩いていた。

柳葉の顔は、珍しく笑顔になっていた。


「敏君。凄いね。」

声をかける美紀男。


「・・・・・・・・・。ミッキー。」


「!!!
柳葉がしゃべったピョン。ベシ・・。ワン。」

あまりの衝撃に、深津が接尾語を間違えた。


「さぁ。一気にいくワン。」

顔を赤くしながら、深津。

「おう!」


『コクッ!』

柳葉は恥ずかしながら、うなずいた。




深津のゲームメイクが冴え渡る。

松本はスクリーン、スティールと堅実なプレーを披露した。

野辺は美紀男のフォローに回ると同時に、確実にリバウンドをもぎ取った。

美紀男は、パスとシュートを使い分け、柳葉、松本に供給しながら、自ら得点を奪った。

そして、ノった柳葉は、3試合連続のチーム得点王となった。



一方、

真壁は、孤軍奮闘の働きで、美紀男、野辺の大型インサイドから、ゴールを奪うが、
その決定力は前半に比べ格段と落ちていた。

三浦は、得意の外角から得点をあげるが、ノった柳葉を抑えることはできなかった。




『ドガァァ!!』


この日、柳葉2本目のダンクが炸裂する。




「決まったな。」

と観客席の牧。


「ちっ、沢北に、柳葉かよ。」

と諸星。




「よし!明日につなげるいい勝利だ。」

と山王ベンチの堂本。


「ぶはっ。結局、俺の出番は2分かよ。物足りねぇな。」

「俺なんて、ハーフタイムだけでしたから・・・。」




(くそ!こんなに山王が強かったなんて・・・。)

(香。今日は、完敗だ。)




そして、試合を告げるブザーが会場全体に響き渡った。




準々決勝 第2試合

山王工業 99
延北商業 70



【山王工業】

深津 一成  13P 2R 12A 

柳葉 敏  33P 5R 4A 5S

河田美紀男  28P 11R 4A  


【延北商業】

真壁 香  29P 13R 2A  

三浦 公平  18P 7A  



3連覇を狙う王者が有り余る余力を残して、4強の椅子に座った。




まもなくして、京都府代表洛安高校、福岡県代表博多商大附属高校がコートに現れた。




「いけーーー!!博多!!!」

「走りぬけ!洛安!!」




山王-延北戦が終了し、一旦静まり返っていたコートに再び、視線が注がれる。




準々決勝 第3試合

洛安 × 博多商大附属




「さぁ、俺たちも準備を始めるか。」

と牧が観客席を立つ。

「はい!!」

気合が漲っている海南選手たち。

「何度もいうが、負けるなよ。」

「あぁ。大栄にも、山王にも、愛和にも負けないぜ。」

諸星らが、海南選手の背中を見送った。



同じ頃、反対観客席の大栄学園も席を立っていた。

「みんな、いくで。」

「おう!!」




東京体育館、サブアリーナでは、海南が入念なストレッチをしている。

「おっ!歓声が大きくなった。第3試合もだいぶ盛り上がっているな。わくわくするぜ。」

清田は強気な発言をするも、心臓の鼓動は強く、緊張で今にも胸が張り裂けそうであった。

そのとき、聞いたことのある声が聞こえた。



「野猿!!」



振り向くと、そこにはあの男の姿があった。







続く。

#112 【無口な男】

2009-05-11 | #05 海南 選抜編
山王 53
延北 43




延北ボールから、第3Qが開始される。


「このQも河田はベンチかよ!くそっ!!」

「香、そうカリカリするんじゃなか。山王の思う壺だ。ここは、確実に追いついて、第4Qで逆転すればよか。
河田がいようが、いまいが勝ったほうが強いんじゃ!」

「くそっ!」

「さぁ、いくぞ!!」



山王、延北ともにメンバーは第2Qと変わらない。



「ということは、俺のマークは変わらず、お前だな。」


三浦の前には、179cmの小さなSF柳葉が腰を落として、三浦の動きを注意深く見つめている。


「・・・。」

柳葉は、何も語らない。


「お前は口下手なのか?」


『コクッ。』


「うなずくな。アホが!」

柳葉がうなずいた瞬間、三浦がクロスオーバーで抜いた。


「!!!」


『シュ!』


三浦がドリブルからジャンプシュートを放つ。


だが、横から柳葉がブロックに飛んできた。



『バシ!!』



ボールは、エンドラインを割る。




「あの#14すげーぞ!!完璧に抜かれたと思ったけど、ブロックしやがった!!」

「今まで目立ってないけど、今のところ、松本の次に得点を決めているんだよな!」

「うそ!?やっぱ、すげー1年なんだよ!」




(完璧に抜き去ったはず。何や、こいつ・・・。)


徐々に、柳葉が実力を出し始める。



『ザシュ!』


SG東山からパスを供給された真壁が、美紀男の上から押し込んだ。




「オフェンスは互角でも、美紀男ではまだ真壁を1人で抑えることは難しいっすね。」

「野辺!できるだけ、美紀男のフォローにいってやれ。」

「はい。」




「公平!俺に集めろ!!この1年坊から、俺がガンガン決めたる!!」

「おし!みんな、香にボールを集めるんだ!」

「OK!!」




山王のオフェンス。

深津がトップでボールをキープしている。

『ダムダム・・・。』


(こいつは何を考えているのか、全くわからない。不気味だぜ。)


SG東山が警戒していると、


「不気味じゃないワン。」

「えっ!?」


(なんだ、こいつ。俺の思っていることがわかるのか!?)


珍しく深津が1on1を仕掛ける。

レッグスルーで東山を鮮やかに抜き去ると、松本にノールックパスを供給。

松本は、ワンフェイクから島田を抜き、ミドルシュートを決める。

確実に得点を奪う3年生のコンビプレーは、まさに王者の貫禄でもあった。




延北のオフェンス。


(香に集める。)

真壁の動きを注視しながら、三浦がゲームを組み立てる。


『キュ!』


真壁が美紀男の前でポジションをとった。


(ここだ!)


三浦が真壁にパスを供給。



だが、



『バチィン!!』



「なっ!?」



瞬時に反応した柳葉がそのパスをスティール。

弾かれたボールは松本から、再び柳葉へ。


「柳葉!」


『シュパ!』


柳葉のワンマン速攻が決まる。



(こいつ、巧いで・・・。)


「・・・。」




「いいぞ!柳葉!!」




『コクッ。』

静かにうなずく。




柳葉敏

アメリカ留学をしていたスーパーエース沢北の後釜として先発SFに抜擢される。

入学当時から1年生の中では、群を抜くバスケセンスを見せていたが、
他人との接触を好まない無口な性格から、コミュニケーション不足によるチームプレーの連携失敗が度々あった。

だが、それを解消したのが、同じ1年生の河田美紀男。

誰に対しても、人当たりのよい美紀男は、積極的に柳葉に話しかけ、信頼関係を築いていった。

そして、現在。

上級生からは、その実力を認められ、また柳葉の性格も理解してもらい、#14を背負う選手となった。

山王選手の中で、柳葉の肉声を聞いたことのあるものは、レギュラーメンバーと監督だけであるが、
会話は、ほとんどしたことがない。

唯一、心を許している美紀男に対しても、二言三言程度の会話しか交わさない。

特徴ある山王選手の中でも、異質を放った選手である。

ちなみに、相手選手にも人見知りをしてしまい、前半はあまり動けない後半勝負の男でもある。




(ちくしょう。1年なんか、負けるか!!)


『ダム!』


スピードで上をいく三浦が、柳葉を抜きにかかる。


『ダッダン!』


深津を一瞬で抜き去った三浦得意のハーキーを繰り出した。



『バシ!』



「えっ!?」


「公平!」

真壁が叫ぶ。



ボールは転がっている。




「うわーーー!!」

「柳葉が連続スティール!!」

「乗ってきたぞーーー!!」




『キュ!』


ルーズボールを奪いにいく柳葉と三浦。


ボールをキャッチしたのは、柳葉。

スピードでは、三浦が上だが、瞬発力、つまりスタートダッシュでは、柳葉が上だった。


「待てやーー!!」


柳葉がドリブルで、延北ゴールを目指す。

後ろを三浦が猛追。

ゴール手前、並びかけたその瞬間。

三浦の前には、思いがけない光景が・・・。



『ドガァァァ!』



(うそやろ・・・。)




「おぉぉぉぉーーー!!!」

「決めたーーー!!!」

「柳葉がダンクーーー!!」

「信じられねぇーーー!!」




179cmの柳葉が速攻から、ワンハンドダンクを決めた。




「やりやがった。」

と笑う沢北。

「試合でみせるとは、今日は乗っているな。」

と同じく笑う河田。

「沢北ぁ。明日も明後日もお前の出番はないかもしれん。」

と堂本。

「そりゃないっすよ。」




「えらいこっちゃー!なんなんや、これは!なんなんや!!もうわけわからんで・・・。」

「あっあの身長でダッダンクですか・・・?」

「179cm・・・。清田君と同じ身長ね。さぞかし、清田君も驚いているでしょうね。」




第3Q序盤から、ハーフタイムショー以上の盛り上がりを見せた。



山王 57
延北 45






続く。

#111 【ハーフタイムショー】

2009-05-09 | #05 海南 選抜編
コート場では、第3試合の洛安と博多商大附属の選手が淡々とアップをしている。



山王の3連覇を阻止する最右翼のチームとしてあげられているIHベスト4、九州の雄、博多商大附属高校。


かたや、3回戦まで、得意のラン&ガンオフェンスを封印し、不気味な存在として、
注目の集まっているIHベスト8の洛安高校。


両校とも全国の強豪校として、山王と遜色ない威圧感を放っていた。




山王-延北 第3Q開始5分前のブザーがなる。



「瀧川。最後に山王に挨拶だ。」

「おう!」

洛安のPG小関が、ゴール下にハイスピードなパスを放つ。


「うらぁ!!」


『ダン!』


『ドガァァ!!』


C瀧川が、豪快なアリウープを成功させた。




「洛安の#8!すげーアリウープ!!」

「河田級のパワーだぜ!!」




反対コートの博多商大では・・・。


「ふっ、面白い!新庄!」

「OK!」

PF新庄が、ボールをコートに強く叩きつけると、空中でそのままキャッチ。


「おーらよっと!!」


『キュ!』


『ドガァ!!!』


ダイレクトにリバースダンクを決めた。




「対抗している!!」

「博多も負けてない!!」

「さすが、ジュニアの新庄だ!!」

「やつは本物だぜ!!」




ハーフタイムであったが、観客は、試合並の盛り上がりを見せていた。




アップのため、ベンチからコートに現れる山王、延北の両校。


「どいつもこいつも、アホばっかだな。黙らしたる!!」

と真壁が言葉を放ちながら、右手でボールを掴み、ゴールに向かう。


「どうや!!」


『キュッ!!』


『ガシャン!!』


ワンハンドダンクをリングに叩き込む。




「今度は、延北の真壁のダンクだ!!」

「なんかすげーことになっているぞ!このハーフタイム!」

「ってことは、山王は???」




「王者として、だまっているわけにはいかないワン。どっちがいくワン?」

「河田さん、俺にいかせて下さいよ。」

「ぶはっ。見せてこい!」

河田の話を聞くことなく、沢北はスタートをきっている。



『ビュン!』



山王ベンチの深津から、大きなパスが沢北に向かって放たれる。



『バシ!』


『ダム!』


『ダンッ!』


ボールをキャッチした沢北は、ワンドリをかまし、大きくジャンプ。


「No.1ダーーンク!!」


ボールを股の下に通してから、リングに叩き込んだ。



『ドガァァァ!!!』




「ウォーーーー!!!」

「すげーーーー!!!」

「沢北ーーーー!!!」

「レッグスルーーー!!!」




言葉にならない言葉が、会場いっぱいに響き渡っている。




「アアアアア・・・。」

「アアアアア・・・。」

観客同様、彦一も中村も言葉にならない。

弥生も今目の前で起こったことを信じられないでいる。




「どうでしたか?」

と深津に問いかける沢北。

「No.1っていうは気に入らないワン。」

「だが、いいだろう。上出来だ。ぶはっはっ。」




ざわついている会場の中で、弥生はようやく冷静さを取り戻した。

「何なのよ、この子たちは・・・。ホントに高校生なの・・・?」

気絶寸前の中村。

「何だったんでしょうね・・・?」

「アッア・・・アンビリーバブルやー。クックックワトロアンビリーバブル・・・。
洛安のC瀧川さん、博多のPF新庄さん、延北のC真壁さん、
そして山王のスーパーエース沢北さんの4者4様の連続ダンク・・・。
なんちゅうことや・・・。なんちゅうハーフタイムなんや。」




観客席の海南と愛和の選手は、開いた口が塞がらない。

「・・・。」

「・・・。」

牧と諸星が目を点にして、見合わせていた。




反対観客席の大栄土屋は。

「相変わらず、派手なやつらやな。」

と笑い一言。

「せやけど、バスケは堅実が一番や。」




今大会、最高のハーフタイムショーを前に、観客はスタンディングオベーションで4者を称えた。

そして、鳴り止まない拍手のなか、山王対延北の第3Qが開始された。



山王 53
延北 43






続く。

#110 【兄の背中】

2009-05-08 | #05 海南 選抜編
山王 24
延北 25




第2Q開始。

再び、雅史に代わり、美紀男が出場。




「美紀男、わかったな?」

「はい。監督。」

「頑張れよ。」

「ごむぇん。兄ちゃん。」

「謝るな!!」




山王オフェンスから始まる。


『ザシュ!』


深津の3Pが決まった。




「逆転だーー!!」

「不意をつく深津の3P!!」




第1Q終盤から見せた山王の勢いはとまらない。




その頃、軽いストレッチを終えた海南選手が、観客席に座る。


「あれ!?いい勝負じゃないっすか?」

「河田が出てないな。沢北は今日も出ないみたいだな。」


「いや、河田は第1Q残り2分から出場した。どうやら、今日の試合は美紀男で押し切るようだぞ。」

と後ろから声が聞こえる。

振り返るとそこには、先ほどの試合を終えた愛知メンバーが座っていた。


「おっ!諸星。」


「うっす!」

手を上げる諸星の表情は、にこやかである。


「おめでとう。」

「あんがとよ。」

牧の差し出す手をパンと弾く。


「予想外の強さだった。」

と笑う牧。

「けっ、あんなもんじゃねぇぞ。俺らは。・・・。お前らも負けるなよ。」

「あぁ。応援よろしくな。」

「ゆっくり、海南の力を見させてもらうぜ。」




『シュパ!』


延北の三浦が柳葉を抜き、ジャンプシュートを決める。




「安定感のあるジャンプシュートね。」

「あのスピードについていける選手が山王にいますかね?」

「沢北君、あるいは一之倉君のスッポンディフェンスくらいかしら。」

弥生の考えとは裏腹に、後半、柳葉が素晴らしい身体能力を披露する。




山王のオフェンス。

小刻みなパスワークから、フリーの野辺へ。


(もらった。)


『バン!』


「甘いわ!顔なが!!」

「顔なが!?」

(俺??)


野辺のシュートを、真壁がブロック。


「どっから跳んできた!?」

驚いた野辺の顔はさらに長くなっている。


「いいジャンプ力だワン。」

弾けたボールを深津がキープ。


『ビュン!』


針の穴を通すようなパスが美紀男に供給される。


「お前は俺に通用せん!!」

真壁が美紀男をマーク。


(僕だって負けないよ。監督や兄ちゃんのいうとおりにすれば、負けないんだ!)



-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

第1Q 終盤

山王ベンチ


「見たか、美紀男?」

「はっはい。」

「河田はお前のために、敢えてああやって、周りにパスを出しているんだ。」

「僕のため?」

「お前の身長に敵うやつはそうはいない。パワーで勝るやつも少ない。
だが、スキルでは、お前以上のセンターなんてザラなんだ。」

「はい・・・。」

「そういうときは、今の河田のように、敵を引きつけて、味方にパスを出すんだ。わかるな?」

「はい。」



第1Q 終了

山王ベンチ


「ちゃんと見ていたか?」

「うん。監督に教わった。周りを活かすプレーだね。」

「そうだ。だが、逃げたパスなんか出すんじゃねぇぞ。シュートに結びつくパスを出すんだ。
まずは、柳葉を見ろ。これからあいつとは長い付き合いになるはず。
今のうちに、ゲームでの動きや癖を見極めるんだ。」

「うん。」

「次に松本、野辺。最後、どうしようもなくなったら、深津に戻せ。そして、これは、絶対忘れるな。」

「うん?」

「お前がシュートに行くという気持ちだ。必ずゴールに眼を向けろ。
シュートフェイクを入れてもかまわない。いいな?」

「うん。やってみる。」


-----------------------------------------------------------------------



『ダム!』


美紀男のパワードリブルを力で防ぐ真壁。


(馬鹿力だな。だが、こいつはこれしかねぇ。)


柳葉の位置を確認しながら、振り返る美紀男。


(ここでシュートだろ!)


真壁がシュートチェックの体勢に入る。



だが、



『シュ!』



「なっパスだと!?」



逆サイドから切れ込んでくる柳葉にノールックパス。




「よし!いいぞ。」

ベンチの河田が拳を握る。




パスを受け取った柳葉がゴールを狙う。


だが、真壁がすかさずチェックに向かう。


「チビが、引っ込んでおれ!」



『ヒョイ!』


『スポ!』



柳葉は、真壁のチェックをダブルクラッチで交わし、左手でループシュートを決めた。




「よし!!」

「ナイスパス!美紀男!!ナイッシュー!柳葉!!」

山王ベンチが盛り上がる。




会場割れんばかりの声援が若き山王コンビに注がれる。




「さすが、柳葉君や!!冷静に、しかもあの真壁さんを交わしてきたで!!」

「美紀男君のあんなパス初めて見ました。」

「第1Q終盤に見せた河田君と全く同じプレーね。今の美紀男君のプレーは・・・。」

(そっか。河田君が自ら得点を奪いにいかなかったのは、
美紀男君に敵を引きつけてのパスを教えるためだったんだわ。
堂本監督も河田君も恐ろしいわね。この選抜の準々決勝という舞台を練習試合にしてしまうとは・・・。)




河田、沢北という山王三銃士の2枚を温存するも、山王は延北をじわじわと引き離しにかかる。

その原動力となったのが、柳葉敏、河田美紀男の山王1年生コンビであった。



第2Q終了


山王 53
延北 43






続く。

#109 【雅史登場】

2009-05-07 | #05 海南 選抜編
山王 6
延北 15




『ドン!』


パワードリブルで、山王ゴールを襲う真壁。


(この人、凄い力・・・。)



『ザシュ!』


美紀男の上から、ゴールを決める。




「こらー!美紀男!もっと、腰を落とせ。力で負けるな!!」

「ごむぇん。兄ちゃん。」




「河田。はよ、出てこんかい。取り返しのつかないことになるぜ!」




「・・・。」

「焦るな。もっと美紀男に経験させてやろう。」

「はい。」

普段は余裕に構えている河田だが、美紀男のことになると、平常心を失うことが度々あった。

そのせいもあり、河田はイライラが募っていた。



だが、



『ザシュ!』


松本の鋭いパスを美紀男がゴールに押し込んだ。


「くそ!1年坊が!!」




「よし!いいぞ!美紀男!!」

「ごむぇん。兄ちゃん。」

「謝るな!さぁ、ディフェンスだ!!」

「うん。」




『バシ!』


SG東山から、C真壁にボールが渡る。




「また真壁さんや!」

「延北は、真壁君で押してきているわ。河田君を引きずりだすつもりね。」




(この人は、パワータイプ。腰を落として、構えれば、僕だって負けやしない。)


『グッ!』


(こっこいつ、力負けしなくなった。)




「いいぞ!美紀男!!」

河田が叫ぶ。

「毎日、お前を相手にしているんだ。そこらへんのやつに、負けてもらったら困るな。」

「えぇ。美紀男のパワーに勝てるやつもそうはいません。」




だが、



「だから、あめぇんだよ!1年坊は!!」


(えっ!?)


「何!?」




「巧い!!」

延北ベンチからも声が飛んだ。




『スポッ!』


C真壁の綺麗なフェイダウェイが決まった。




「あいつ、口だけじゃないっすね。」

「顔に似合わず、堅実なプレイヤーだな。」




「ナイッシュ!真壁!!真壁!!」




この真壁のフェイダウェイをきっかけに、延北が一気に勢いにのる。




「ダメだ!河田弟は、完全に真壁に押さえられている!!」

「河田を出せ!!」

「行けーーー!真壁!いいぞーー!!」

「沢北だ!沢北も出せ!」




「河田。準備はいいか?」

「えぇ。美紀男もよくやりましたが、真壁は、その上をいくセンターです。」

「よし。手本を見せてやれ!!」


『パン!』


河田の腰を叩き、堂本がコートに送り出す。


「ぶしっ!!!」




「キターー!!河田兄だーー!!」

「高校最強センター登場だ!!」




「きたで!きたで!猿人類最強センター河田さんのおでましや!!」

カチカチカチカチ、意味もなくシャーペンをいじる彦一のテンションは、最高点に達しようとしている。

「さぁ。真壁君にとって、ここからが本当の戦いね。」




「美紀男!」

「ごむぇん・・・。」

「よくやった。また出番があるから、試合から眼をそらすなよ。」

「うっうん。」




「けっ、ようやく出てきやがった。」



「ふー。」

少しだけほっとした表情を見せる深津。

「河田、ゴール下は任せたワン。」

「おう!さぁ、仕切りなおしだ。」



山王 11
延北 23




第1Qも残り2分をきったところで、堂本は河田を投入する。


「美紀男、兄のプレーをよく見てろよ。」

「はっはい。」




山王のオフェンス。

柳葉から、ローポストの河田にボールが渡る。


「来い!河田!!」

「・・・。」

真壁が河田にへばりつく。

PF鮎川も河田に詰め寄る。


『シュ!』


「なっ!?」


ボールは、ノールックでフリーの野辺に渡る。


『シュパ!』


「いいぞ!野辺。」

「ナイスパス。」


「こらぁー!河田、何逃げとんじゃー!勝負しろや!!」

「・・・。」

河田は、真壁を一瞥し、ディフェンスの位置につく。




延北のオフェンス。

SF島田がシュートを外した。

野辺がPF鮎川をしっかりスクリーンアウト。

河田は真壁とのリバウンド真っ向勝負を選んだ。


「とってやるぜ!!」

「ふん!!」


『ガシィ!!!』


ボールを奪ったのは、河田。


「ぶはっ!まだまだだ。」

「何だとーー!!」


ボールは、河田からオーバーハンドで前を走る柳葉へ。

『シュパ。』

レイアップを決めた。



続く、延北はターンオーバー。

河田の出場により、リズムが狂っていた。




山王のオフェンス。

再び、河田にボールが渡る。

真壁が構え、鮎川は河田と野辺両方をケアしている。


『キュ!』


河田は、真壁を背に高速スピンムーブを繰り出す。


(それは、研究済みだ!)


真壁が後ろからシュートブロックに跳ぶ。


『ビュン!』


河田は、松本とスクリーンプレーによってフリーとなっていた柳葉にパスを放つ。


『シュパ!』




「柳葉の3P!」

「河田が入って一気に7点取ったぞ!!」

「さすが、河田だーー!!」




結局、河田は自らが得点を奪うことなく、スクリーンや囮となって、
味方のオープンスペースを作り出し、試合を支配した。


第1Q 出場2分 0得点ではあったが、河田雅史の圧倒的な支配力に、
会場は河田の存在感の凄まじさを感じることとなった。



山王 24
延北 25






続く。