goo blog サービス終了のお知らせ 

うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#128 【最終決戦】

2009-06-04 | #05 海南 選抜編
大栄 60
海南 62




土屋は、飛び込みリバウンドから、ティップで海南ゴールを狙った。



そして、試合終了のブザーがなった。



土屋によって、再び舞い上がったボールは優しく回転している。



選手らにとって、今までで一番長い2秒間であった。



(外れろ!!)

祈る海南選手たち。



(入れ!!!)

祈る大栄選手たち。



ボールの行方を見守る会場は、静寂に包まれている。



ボールが落下し始めた。




そして・・・。




『ガン!!』




『ガコン!』




『パサ。』




リングに2回当たったボールは、静かにネットを通過した。




大栄 62
海南 62




「うおぉぉぉーーー!!!」

「だぁーーーー!!」

「入ったーーー!!!」

「起死回生の2点ーーー!!」

「同点だーー!!!」

「延長戦ーーー!!!」




会場は、割れんばかりの歓声で一気にボルテージが上がった。




「ふーー。」

と一息つく土屋の顔は、笑顔になっている。


「土屋ーー!!」

「土屋さん!!!」

会場と同様に、大栄選手らのテンションも一気にあがる。

赤井は土屋を抱え、ベンチの選手がコートになだれ込む。



対する海南。

その光景をただただ見つめていた。


(土屋・・・。)

牧は土屋の喜ぶ姿を一瞥し、ベンチに下がる。


「しんどいな。」

と迎えいれる高頭。

「はい。だが、まだ負けたわけじゃないですから。」

「そうだな。」




「準々決勝第4試合 大栄学園高校対海南大附属高校は、2分間のインターバルのあと、5分間の延長戦を行います。」

会場にアナウンスが流れる。




「延長戦か。予想外だな。」

「あぁ。だが、今の土屋のプレーで牧も火がついたはず。
いや、更に火力が増したのほうがあっているか。」

と湘北の2人。




「延長戦とはね。」

「大さんの心臓にも悪いですね。」

「ふん。俺はいいんだよ。どっちが勝とうが。」

(牧、何やってるんだよ!お前ともあろうものが、最後のシュートを許すなんて!!)




「今大会初の延長戦だワン。」

「長い試合っすね。」

「やっているほうは、もっと長い。」

「明日まで、疲れが残りますね。これは。」




海南ベンチ。

「みんな、すまん。」

牧が高砂らに頭を下げる。

「まっ牧さん!!」

「牧!?」

予想外の牧の行動に、選手らが焦った。


土屋の最後のシュートが外れた瞬間、牧は緊張の糸を解いてしまっていた。

その一瞬の気の緩みが、土屋の同点弾を許してしまったである。


だが、実際は牧だけじゃない。

コートに立っていた5人が、一瞬の気の緩みを見せていた。


牧だけを攻められない。


「牧さん、勝ちましょう。勝って、笑いましょう。」にこり

神が重苦しい雰囲気を払拭する。


(神・・・。)


「よし!!!」


『バン!!』


牧は、両膝を叩き、ベンチから立ち上がった。


「さぁ、最後の勝負だ!!」

「おう!!」

牧を先頭に、清田、神、武藤、高砂がコートに向かう。


(土屋、負けんぞ!!)

牧の闘志が燃え盛る。




大栄ベンチ。

「5分で、決着つけたろう!」

と小池が気合をいれる。

「ここまできたら、あとは気持ちの問題や。なぁ、土屋?」

「大栄のバスケ、見せたろ!!」

「おう!!」


ここまで、40分を戦い抜いてきた大栄の5人に残された体力はあとわずかとなっていたが、
誰一人弱音をはくものはいなかった。

土屋を先頭に、小池と赤井、青島、そして最後に桜井がコートに足を踏み入れる。


(牧、最後の勝負や!!)




準々決勝第4試合、大栄学園対海南大附属、最終決戦を迎える。



大栄 62
海南 62






続く。

#127 【エースたる集中力と精神力】

2009-06-02 | #05 海南 選抜編
残り試合時間 15秒

大栄 60
海南 62




神の超長距離3Pが決まり、海南が2点のリードを奪った。

残り15秒で、選抜の4強が決定する。



大栄のオフェンス。


『バシ!』

桜井にボールが渡る。


『ピィ。』

電光掲示板の時間が動き始める。



再び、土屋に対する牧の泥臭いディフェンスが始まる。



「15秒ある。焦らんでええで。確実に決めるんや!」

「はい!」

「おう!!」

牧に執拗にマークされながらも、土屋は的確な指示を出す。




大栄のオフェンス。

全ての観客の視線がコートに向けられた。


『キュッキュ!』


(あと、13秒。守れば、勝ちだ!)

腰を落とし、両手を広げながら、必死に桜井を守る清田。


インサイドの4人も、体を接触させながら、激しいポジション取りをしている。

小池は、牧へのスクリーンを試みるが、神がコースに体を入れて阻止をする。



一瞬の隙も見せない海南のディフェンス。


一瞬の隙を探す大栄のオフェンス。



時間が徐々に過ぎていく。




『ゴクッ。』

彦一がつばを飲み込む。

「見ているこっちが緊張しますね。」

「うるさい。黙ってみていなさい。」

「はい・・・。」

弥生にたしなめられる中村。




残り9秒。


攻略の糸口を見出せないまま、時間だけが過ぎていく。




「絶対に決めなくてならないこの1本。」

「だが、なかなか決められるもんじゃない。集中力、精神力、通常の数倍も必要とする。」

「こういった場面で仕事をするのが、真のエースだワン。」

「俺のように・・・ですね。」にこり

「図に乗るな!」

「お前には、期待していないワン。」

「・・・。」




反対側の観客席。

愛和メンバーも山王メンバーと同様のことを話している。

「この最終局面、あの4人だけで決めることは難しい。
確かに、大栄はオフェンス、ディフェンスともに、素晴らしいチームだ。
だが、試合を決める最後の1本となると、あの4人にはできない。」

「なぜですか?」

「経験とプレッシャーだ。全国大会の勝敗を決定する1本を打ったことのある経験、そして、打てる精神力。
両方を持っているのは、土屋以外にいない。」

「でも、土屋さんは牧さんに抑えられていますよ。」

「あぁ。だが・・・。まだ、わからない。バスケに絶対はない。」




残り7秒。


海南ゴール下、インサイドの4人、そして土屋と牧が塊となって、入り乱れている。


『キュ!キュッキュ!』


「青島、いったー!!」


「武藤、スイッチ!」


「こっちや!!」


6人の声とバッシュの音が飛び交う。

そのとき、6人の塊から、土屋が飛び出した。

牧は、赤井の大きな体に行く手をふさがれている。


「!!!」


(よし!!!)


ワンフェイク、桜井が冷静に土屋にボールを送る。


(任せましたよ!!土屋さん!!)


『バシ!!』




「土屋だーーー!!」

「キターーー!!」




土屋がボールを受け取った。




残り5秒。


土屋が踏み込む。


そして、高く飛ぶ。


(!!!)


「ぐぉーー!!」

高砂が、必死にチェックに飛ぶが、土屋は、その上からジャンプシュートを放った。



『シュ!』




残り3秒。




緩やかに回転するボールは・・・。




『ガコン!!』




リングの奥にあたり、小さく跳ねた。




「外れたーーー!!」

「万事休す!!!」

「海南の勝利だーーー!!!」




だが、




『トン!』




「えっ!?」

「なっ!?」

「しまった!!!」




何者かが、落ちてくるボールに再び触れた。

それは、シュート後、飛び込みリバウンドに向かった土屋であった。



ボールは、再び宙に浮き、海南ゴールを襲う。

泥臭く、必死にボールを追いかけた土屋が、最終局面で気合のプレーを見せた。




『ビィーーー!!』




試合終了を告げるブザーがなった。




ボールは、まだ宙に浮いている。

会場全ての人間が、ボールを行方を追っていた。







続く。

#126 【あれが神だ】

2009-06-01 | #05 海南 選抜編
第4Q 残り59秒

大栄 58
海南 59




愛和メンバー。

「残り1分・・・。」

「どっちが勝つか検討がつかねぇな。」

「残り時間、大栄ボールを考えれば、大栄のほうが有利ですね。」




大栄のオフェンス。

牧は、土屋にフェイスガード。

土屋も素早い動きを見せるが、振り切ることができない。


(ちぃ。)


(お前には、仕事はさせん。)


牧の泥臭いディフェンス。




「牧のあんな表情、初めて見たぜ。」

「土屋は、仙道並、あるいはそれ以上か・・・。」

三井と赤木。




桜井が冷静にボールをトップでキープしている。

(ますます、ディフェンスが厳しいなっとる。こりゃ、土屋さんは、使えへんな。)

(こいつ、焦りもしねぇ。全国のPGって、みんなこんなに冷静なのかよ。)



シュートクロック 5秒



ハイポで面を取る赤井に桜井からのパスが供給。

武藤の裏を取り、パスを要求する青島にボールが渡る。


「ぐっ!」


武藤が懸命に腕をあげるが、青島が左手一本で、シュートを沈めた。




「いいぞ!いいぞ!青島!!青島!!」

大栄ベンチでは、青島のシュートを称える声が響く。




「よっしゃーー!!」

青島が吼える。




「土屋抜きでも、きっちり決めてきたな。」

「こりゃ、明日の相手は、大栄ですかね。」

「まだわからないワン。」



大栄 60
海南 59




海南のオフェンス。

牧同様に、土屋もフェイスガードで牧にあたる。


「しつこいな。」


「お前に、ボールを持たせへん。」



(ちきしょう。あっちも牧さんにはボールを持たせねぇってか。)

周りを見渡す清田に、神が合図を送る。


『コクッ。』

(そうっすね。牧さんがいなくても、俺たちでやってやりましょう。)




「大栄のディフェンスが、また厳しくなった!!」

「時間がない!速く攻めないとーー!!」




武藤と高砂が、神の逆サイドに固まる。

そして、清田から神へパスが渡る。


神は、3Pラインより、1m以上離れたところで、ボールを受け取った。

神の前には、大阪の名ディフェンダー小池。

その奥には、大きなスペースが空いている。


(3Pか?ドライブか?)


海南のインサイド作ったスペースが、小池の判断を鈍らせる。


(まだ遠い!ここは、ドライブや。)


『ジリ。』

小池が、ドライブに備え、やや下がった。



その瞬間、



ややゆったりと構えた神が3Pを放った。


(なんやて!!)




「遠い!!」

「届くわけない!!」




「えっ!?嘘でしょ??遠すぎでしょ。」

と中村。

「神君としたことが、珍しく焦ったわね。」

弥生の顔には落胆にも似た表情を見せていた。




だが、ボールはリングを一直線に目指している。

会場に静寂がおとずれる。




(そうだ。静まれ。俺は、この音が聞きたいんだ。)


観客席の三井と清田が、ネットに全神経を寄せる。




そして・・・。




『スパ!!』




「キターーーー!!!」

「うわーーー!!」

「嘘だろ!?」

「遠すぎーーー!!」




3Pライン1.5m離れての神の3Pが決まる。




「神ーーーー!!!」

「ナイッシューーー!!!」

海南ベンチは総立ち。

本日一番の盛り上がりを見せる。




「あっ・・・入った・・・。」

「えっ・・・なんなのあのこは・・・。」

弥生と中村と反対に、彦一は叫ぶ。

「あれが神さんなんや!!アンビリーバブルシューター神宗一郎さんなんやーーー!!!
神さんには何だってありやーー!!もう驚きまへんで!!」




会場の多くの人が驚愕している。



「なんだあれ??」

と驚きの諸星。

「マンガじゃないんだし。」

と愛和の今村。


「ぶはっ。すげーなあいつ。」

と笑う河田。

「ありえないだろ。」

と苦笑いの沢北。




『ボキッ!』

高頭は、興奮のあまり、扇子を折った。


だが、海南の選手に驚きはない。


(まさか、この場面で入れてくるとはな。全く恐れ入ったぜ。)

「さすが、神さん!!」

「いいぞ!神!!!」




もちろん、この2人にも。

「あれが神だ。」

「さすがに練習試合でみたときは驚いたが、もう慣れた。あいつの3Pに、不可能なんてない。」

赤木と三井はどこか、誇らしげであった。



第4Q 残り15秒、大栄にとって、重くのしかかる3点が海南に追加された。

大栄、絶体絶命のピンチを迎える。

だが、この男の目は、まだ死んでいなかった。



(まだや。)



大栄 60
海南 62






続く。

#125 【最終局面】

2009-05-30 | #05 海南 選抜編
大栄 45
海南 47




牧が土屋の注意を引き、武藤、高砂が壁を作り、清田からのパスを神が沈めた。

5人でもぎ取った2点が、この試合初めて大栄からリードを奪った。




「やはり、大栄のマンツーは、ゾーンほどの完成度はない。」

高頭の脳裏に勝利の文字がよぎる。




「みんな、まだ焦る時間やない。1本確実にいくで!!」

土屋が声をかける。




「さすが、土屋君。冷静ね。勝ち方を知っている。」

と弥生。



だが、




「土屋にも牧がマッチアップだ!!」

「エース対決!!」




「牧もディフェンスが巧くなったな。」

「深津さんに比べると、一歩劣っていましたが、今は同等といっていいかもしれませんね。」

「そんなことないピョン・・・ワン。」

「あっ、間違えた!動揺している!!」

笑う沢北を深津が睨む。

「すっすいません・・・。」




大栄のオフェンス。

大栄は時間を使いながら、攻めてくる。

だが、今までと違うところ。

それは・・・。




「牧のディフェンスが凄い!!」

「あれでは、土屋もボールが持てない!!」




ボールは、大栄の4人で回していた。


だが、大栄はバランスオフェンス。

土屋がいなくとも、点が取れる。


『ザシュ!』


清田を交わし、桜井のジャンプシュートが決まる。




「同点!!」

「大栄も負けていない!!」




「土屋さえ抑えればと思ったが、浅はかだったか。」

高頭が仰ぐのをやめ、腕を組んだ。




海南のオフェンス。

清田が、桜井を抜けぬまま強引なシュートを打つ。




「バカ!そんなシュート打つな!!」

と三井。

「やはり1年だ。勝利に焦っている。」

と赤木。




牧もリバウンドに参戦する。

ゴール下は、6人の体が激しいポジション争いをしている。


「リバウンドー!!」


『ガシ!!』


ボールをキャッチしたのは・・・



大阪のリバウンド王赤井。




「清田が焦った!」

「桜井が走っている!!」




『スポ。』


清田が突っ込んだため、桜井はフリーに。

その桜井に、赤井からのロングパスが供給され、冷静にレイアップを決めた。



大栄 49
海南 47




「再び、大栄が逆転だーー!!」




(くそっ!俺のせいだ!!何やってんだ!俺は!!)


「悔しがっている時間があるなら、思い出せ!藤真の言葉を!!さぁ、いくぞ!」


『バシ!!』


牧が清田の腰を思いっきり叩いた。


「おう!?藤真さんの言葉・・・??」


-----------------------------------------------------------------------

<<回想>>

神奈川混成チーム 対 海南

練習試合


「自分でいくか、神を使うか、他の誰かを使うか、その状況状況で、正しく判断するんだ!
牧のようなペネトレイトを目指すなら、その一瞬の判断力、決断力を磨くんだ!」


「聞く耳を持て!冷静さを保て!周りをよく見ろ!」


「清田。俺はお前を高く評価している。もしかすると、牧以上にかもしれない。」


「神奈川県代表として、頑張って来いよ!!」


-----------------------------------------------------------------------


清田は、練習試合のときに、藤真の放った言葉を思い出していた。

そして、かみ締めていた。


(こういうときほど、冷静になるんだ。)


『パンパン!!』

清田は、2度、自分の頬を叩いた。



「よし!!いくぜ!!!」

「お!?」

「ん!?」

コートの選手らが驚く。


「ふっ、ふっきれたか。」

「ゲームメイクは任せたよ。」


『コクッ。』


清田がボールをキープ。

桜井の動き、そしてコート上の選手の動きを見ている。

神が小池を押し込み、外に開く。


(あかん!)


小池も神を追いかけるが、神は再びゴール下に切れ込んだ。


(しもうた!)


逆をつかれた小池。

ノーマークでゴール下に駆け込む神。


「わいがいく!」

青島が神のマークにつくが、その瞬間、ノーマークの武藤に鋭いパスが通った。


『ザシュ!』


武藤が手堅くバンクシュートを決める。




「うぉーー!同点!!」

「今のパス、見たか!?凄かったぞ!!」




「ナイスパスだ!」

と牧。

「うすっ!」

清田の顔は微笑んでいる。


「あんなパスがくるなんて、ビックリしたぜ。」

「もういっちょ、行きましょう!!」にかっ。

清田のワンパスで、再び同点に追いつくが、




「土屋の3P---!!」

「牧でも抑えられないのか!!」




3Pラインより、少し遠めから、3Pを成功させた。

「よっしゃー!!」



お返しとばかり、牧がパワードリブルで、突っ込む。


『ガシ!』


高砂のスクリーンを利用し、赤井からファウルを奪う3点プレー。

ボーナススローも沈めた。




「牧も負けてねぇーー!!」

「試合の行方がわからないーー!!」




大栄 52
海南 52




その後、試合は、譲らぬ展開のまま6分が経過した。

「海南は、清田君の3Pを含めた7点だけ・・・。」

「対する大栄は、3本のシュートを決めたのみ・・・。
最終局面を迎えて、お互いのディフェンスが、より一層よくなっているわ。」




試合残り時間59秒で、いよいよ雌雄が決する。


大栄 58
海南 59







続く。

#124 【両校の思惑】

2009-05-29 | #05 海南 選抜編
2分間のインターバル

大栄 45
海南 45




第3Qは、真田の投入により、海南が23点を獲得、9点差を一気に縮め、振り出しに戻した。


真田壮太 10得点。

武藤と代わった。


-----------------------------------------------

PF…#7 真田 壮太 185cm/2年

PF…#9 武藤 正 184cm/3年

-----------------------------------------------


「武藤さん。あとはお願いします。」

「あぁ。安心して休んでいろ。」

「はい。そうさせていもらいます。」


「清田、あとは任せたよ。」

「真田さんのおかげでだいぶ休めました。土屋は俺が止めます!!」

「頼もしいな。」


「ナイスパス。壮太。」

「神もさすがだよ。お膳立ては整ってある。あとは、神、お前が主役だ。」

「うん。わかっている。」

2人の同級生が握手をする。


「よし!第3Qは、ようやくうちらしさが出たんじゃないか。」

高頭は扇子を広げる。

「第4Qで同点なら、次のQも土屋が中心だ。」

「土屋を抑えれば、勝ちっすね。」

「あぁ。相手も同じこと考えている。牧を抑えれば、勝ちだってな。そこでだ。
牧、お前には土屋についてもらう。」


「!!!」


「監督、俺は!?俺じゃダメなんですか?」


「いいや。そういうことではない。大栄は、間違いなく牧に、土屋がつくだろう。
牧、悪いが土屋を抑えることに専念してくれないか?」

「ええ。監督がいうなら。」

牧は、監督の意見に納得していた。


「清田。お前がPGだ。」

「俺がですか?この重要な場面で??」

「そうだ。」

「・・・。」


自信家の清田から、自信が消えた。


「大丈夫だ。」

牧が清田の頭をぐちゃぐちゃにする。

「ゲームメイクは任せたよ。」

神の優しく声をかける。

「異論はない。」

と武藤。

「負けてもお前のせいにはしない。」

と高砂がぼそっという。

「高砂さん!!」


清田は、味方をくるっと見渡し、

「よし!!やってやるぜ!!」


(3年生最後の全国大会、ぜってぇー勝ち抜いてやるぜ!!)


『バチィーーン!』


ヘアーバンドを付け替えた。




一方、大栄ベンチ。

「同点に追いつかれるとはな。正直、思ってもへんかったわ。」

「さすが、海南や。」

「あの#7にやられたな。」

「だが、あいつはもう出てきいへん。」

「そやな。資料にも書いてあったな。」


「問題は、ここからや。どないする、土屋?」

「やはり、海南は牧なんや。牧が中心なんや。」

「で、どないする?」

「わいが牧についたる。抑えたる。」

「!!」

大栄選手は、1度は驚くも、

「土屋がいうなら、わいは何もいわへん。」

「わいもや。」

「土屋さんに、任せますわ。」

「よし!!残り10分、牧を完璧に抑えたるわ!!」

「おう!!」



エースがエースを抑える。

両校の思惑は一致した。




第4Q、海南のスローインから、最後の10分が開始される。




「あーー!!牧に土屋がついているーー!!」

「PGは、清田だ!!」

「海南がまた奇策だーー!!」




「奇策じゃねぇよ。PG清田は、勝利への布石だ。」

「あぁ。あとは、神がどう絡むか。」

練習試合で、1度PG清田を見ているだけに、赤木と三井に驚きはない。



反対に、観客同様、山王選手、愛和選手の目には、奇策と映っていた。




清田がボールを運ぶ。

マークマンは、桜井。

(牧さん以外のやつなら、負けへん!!)

桜井の強いプレッシャー。



だが、



『ダム!』


『キュッキュ!!』


『ダム!』




「あっ、あれは?」

「牧の十八番キラークロスオーバー!」

「抜いたーー!清田が抜いたーー!!」




ドリブルで大栄ゴールを襲う清田。

土屋は、牧の動きを気にして、動けない。

武藤が、高砂が、フリースローライン上で2枚の壁を作った。

神は、壁を掠めるように、小池を壁に当て、逆サイドへ。

そこに、清田からのパス。



『ザシュ!』


神のミドルシュートが決まる。


「よっしゃーー!」

清田が吼える。


神を生かすために、上級生が壁役に徹した。

その気持ちに応えた神。

海南が、この試合初めてとなるリードを奪った。



大栄 45
海南 47






続く。

#123 【ミラクルヒーロー】

2009-05-26 | #05 海南 選抜編
第3Q残り1分

大栄 43
海南 40




一向に縮まらない点差。

中盤から終盤にかけて、ターンオーバーはない。

両校のオフェンスは、確実に点に結び付けていた。



「壮太。まだいけるか?」

「えぇ。あと1分、任せてください!土屋さんを止め、俺のプレーで同点に追いついてみせます!!」

「ふっ、頼もしいな。」




大栄のオフェンス。

時間いっぱい使おうとしているが、海南はタイトにあたっている。

桜井は、ボールをキープしているだけで、精一杯な状態であった。


(くそ!この時間の牧さんの集中力は、ハンパない。)


「桜井!」

苦し紛れに放ったパスを、土屋が受け取った。


このQ4度目の土屋と真田の1on1。


クロスオーバーからバックステップ。

フェイダウェイ気味のシュートを放つ。




「高い!また決められる!!」




真田は、負けじと鬼気迫るシュートチェック。



『ガコン!!』



ボールは、リングに弾かれた。



(ちっ。)



『バシ!』


リバウンドは、スクリーンアウトをしている高砂の前に落ちた。



「よし。ナイスディフェンスだ。」

「はい。」



(動きがようなったで。)


出場時間が残り1分となったところで、真田は全ての力を出し切ろうと、懸命に体を動かしていた。




海南のオフェンス。

大栄は、ゾーンを解いていた。

ゾーンではどうしても神が空いてしまうからだ。

桜井が牧を、小池が清田、神には土屋、真田に青島、そして、赤井が高砂をマッチアップした。



(残り40秒。1点差で終わりたいところだな。)

牧が4人の動きを見ている。


高砂が、ハイポとローポを移動し、神と真田がポジションチェンジを繰り返す。



『ガシ!』



「あっ!」



死角から、桜井に清田がスクリーン。



牧が桜井を抜くも、ディフェンスのチーム大栄学園の中でも名ディフェンダーと呼ばれている小池がスイッチをした。

そう簡単には、抜かせない。


牧は、一気に中央から強行突破を図った。

ハイポには、高砂が壁となって、小池を待ち受けている。



『ガシ!』


(!!)


小池は、高砂のスクリーンで進行方向を阻まれた。


赤井が牧をとめにかかる。

「入れさせん!!」



「赤井!待てやー!!3点プレーを狙ってるんや!!」

土屋の声は、赤井に届かない。



だが、



『ヒョイ。』


『バス。』


『シュパ。』




牧が選択したプレーは、バスカン狙いの3点プレーでなく、確実に2点をもぎ取るアシストであった。

牧のペネトレイトにあわせてきたのは真田。

フリーでゴール下を決めた。



「必ずあわせて来ると思ったぜ。」

「えぇ。俺もパスがくると思っていました。」



『トン!』

2人の拳がぶつかった。



残り29秒、3点差・・・。

海南選手も、大栄選手も、観客も牧の3点プレーを疑わなかった。

そのために、牧にばかり意識が集中してしまい、真田の動きを見過ごしてしまっていた。



(すげー。牧さんも、真田さんも・・・。本当は、俺があわせなくちゃいけないのに・・・。
牧さんが真田さんを引き出し、真田さんが牧さんを引き出している・・・。なんか、悔しいぜ。)



大栄 43
海南 42

残り28秒。




海南はオールコートであたるも、24秒時間いっぱいに使われ、青島の外したシュートを赤井が、気合でねじ込む。

再び3点差。



残り6秒。

フルスロットルの牧が一気に大栄コートを襲う。

この日、一番の瞬発力を見せた真田が青島のマークを振り切った。


『バシ!』


真田にボールが渡る。



「青島!わいがいくで!!」

土屋がカバーにはいる。



『キュ!』


『ダム!!』


ワンフェイクから、バックロール、そのまま後方へ飛んだ。

このプレーは、土屋が中盤で見せたプレーと全く同じであった。

だが、身長、ジャンプ力ともに土屋のほうが上。




「つかまる!!」

「土屋のほうが高い!!」




土屋の手が真田のシュートコースを塞ぐ。



だが、真田の口元が緩んだ。


頭の上にあったボールを降ろし、後ろに落とす。



(なんやて!?)


(さすがだよ・・・。神。)



『バシ!』

真田の後ろで、ボールを受け取ったのは、フリーの神であった。


神のマークマン、青島は、真田のリバウンドを獲るため、ゴール下に向かっていた。



「しもうた!!」



『シュ!』


素早いシュート。

と同時に、第3Q終了のブザーがなる。



『ビィーー!!』




『・・・』


ブザーの音で、ネットを揺らす音はかき消された。




「入ったーーー!!」

「神の3P---!!」

「同点ーーー!!!」

「真田のパス、凄すぎ!!」




第3Qが終了する。

同点弾となる神の3Pを演出したのは、ミラクルヒーロー真田壮太であった。



大栄 45
海南 45





続く。

#122 【縮まらない点差】

2009-05-25 | #05 海南 選抜編
大栄 31
海南 27




大栄のオフェンス。

桜井は高い位置でボールをキープしている。



シュートクロック 8 7 6



『ビュン!』


土屋めがけて桜井から鋭いパスが放たれた。


『バス!』




「土屋対#7!!」

「いけーー!!土屋ーー!!」




『キュ!』


ワンフェイクから、バックロール。

そのまま、後方へ飛んだ。




「巧い!!」

「だが、真田も外してねぇ!!」




真田も懸命に手を伸ばすが、ボールはその上をいく。



『ザシュ!!』



土屋のフェイダウェイが決まった。




「ナイッシュ!土屋!土屋!」

大栄ベンチが沸く。




「ドンマイです。真田さん。」

清田が真田に優しく声をかけた。




海南のオフェンス。

会場がざわつき始めた。




「なんだ、あのオフェンスは?」

「変わったフォーメーションだな??」




「ほうー。」

観客席の堂本がうなずく。

「なんですか、あれは?」

「4アウト。
インサイドを1人にして、4人がアウトサイドに位置することによって、インサイドのスペースをあける。
通常、強いセンターがいるチームが用いるオフェンスだが、
海南の場合、ペネトレイトの鬼・牧がいるため、インサイドのスペースをあけることで、その効果は絶大となる。
しかも、外には名シューター神と、シューターへの片鱗を覗かせている清田が構えている。
高頭監督も渋い作戦を考えてきたな。」

「海南も大栄を前に奥の手を出さざるを得なかったってことっすね。」

「リバウンドが穴だワン。」

「んじゃ、その4アウトとやらをしっかり見せてもらいましょうか。ぶはっ。」




45°にいる牧がボールをキープ。



「なんや、これは!?」

「気にすんな。ゴールは一つや。」

「中を固めるんや。2-3で対応や。」

戸惑う大栄は、2-3のゾーンで対応した。



逆サイドの45°には真田。

高砂は定位置、ハイポに位置どった。

ボールは、牧から神へ渡るが、前半では考えられない場所で受け取る。



左0° コートの隅。



『シュ!』


クイックリリースで、3Pを放つ。


『シュパ!』


鮮やかに決まった。




「3点差!射程圏内!!」

「速すぎる!!」




「さすがにあの深い位置からの神のクイックリリースは、2-3じゃ防ぎきれんな。」

と赤木。

「今のは速かったな!だが、あいつはこんなもんじゃない。」

三井は誇らしげに語る。




(2-3じゃ、防ぎきれへんか。)

土屋は思った。




大栄のオフェンス。

前半同様、スローオフェンスを展開する大栄。

土屋を囮に、小池が開く。


『ザシュ!』


24秒ギリギリのジャンプシュートが成功する。




「手堅いワン。」

「縮まっているようで、変わらない。」

「土屋が巧く、オフェンスをコントロールしていますね。」

「シュート、パスだけではなく、ボールを持っていないときも、スクリーンに、囮と、
素晴らしい動きをみせている。」

「まさに、オールラウンダーと呼ぶに相応しいっすね。」

「目立ちがり屋のエースとは違うワン。」

「なっ!?」

(何か、俺には冷たいんだよな・・・。)

「ワン!?」

「いっいえ、何も・・・。」




海南のオフェンス。

土屋が、3本の指を立て、回す。


『キュ!』


土屋がトップ、左右に小池と桜井、ゴール下を青島と赤井の2人で守る。

3-2のゾーンで、外を警戒した。

ボールをキープしている牧を、土屋と小池が囲む形になっている。



『ダムダム!』


牧は、ドリブルをつきながら、徐々に後ろに下がる。

土屋と小池も徐々に間合いをつめた。

その瞬間、清田が高い位置につく。

高砂はハイポをキープ、後ろには青島がついていた。

神と真田が、大きく外に広がる。


ハーフコートを広く使う海南のオフェンス。



『バシ!』


土屋の脇から、清田へのパスが放たれる。

清田は、すかさずハイポの高砂へ。

青島が腰を落とすが、ボールは素早く神へ。

赤井が間合いをつめるが、逆サイドからゴールに向かってくるフリーの真田にパスを入れた。



『シュパ!』


真田がゴール下を決めた。


ドリブルを使うことなく、パスだけでゴールを攻める完成されたパスワーク。




「完璧だな。」

「あぁ。練習試合のときよりも、完成度が上がっている。」

と湘北の2人。




「牧さんのパス、よくあそこを通しましたね。」

「牧にしか見えないコースがあるんだろうな。」

「虎、お前には見えたか?」

「・・・。いえっ。俺には・・・。」

(悔しいけど、今の俺にも牧さんは止められそうもない。)



大栄 35
海南 32




その後も、大栄は土屋を中心に、海南はパスワーク主体で、ゴールを攻めた。

また、海南のオールコートプレスに、大栄は1-2-1-1のゾーンプレスで対抗するも、お互いにボールを奪うことはできなかった。

海南のオールコート対策は万全であった。

大栄もまた、土屋を囮に、桜井の瞬発力を活かしたドリブルで、プレスを破ることに成功していた。

オールコートを用いるチームは、オールコートの対策法を熟知しているものなのである。

結果、第3Qも残り1分。点差は縮まっていなかった。

お互い突破口が見つからないまま、第3Q最後の攻防に挑む。



大栄 43
海南 40






続く。

#121 【消耗戦】

2009-05-23 | #05 海南 選抜編
大栄 31
海南 24




第3Q開始早々の神のスティールから、牧を経由し、清田がレイアップを決める。


そして。


『キュッキュ!!』




「出たーーー!!海南のオールコート!!」

「大栄より先に仕掛けてきたーー!!」




「時間、得点差を考えれば、当たり前だ。」

と諸星。




ボールを入れるのは、SG小池。

牧は桜井を、神と清田が土屋、真田が青島、高砂が赤井についた。




「すげー!ディフェンスだ!!」

「ボールが入れられない!!」




桜井が牧を振り切る。

ボールは桜井に渡るが、すぐに牧が止める。


(ちぃ!)


続けて、神が桜井を囲んだ。


(くそっ!)


身長差15cm神の脇を抉るように、桜井が抜きにかかる。



そのとき、



「桜井!こっちや!!」

土屋がパスを要求した。


小池のスクリーンに、清田は遅れをとっていた。



『バス!』


土屋にパスが通った。




「大栄が破ったーー!!」

「海南のオールコートが破られたーー!!」




『キュ!』


『ダム!』


『キュ!』


『バシ!』



(なっなんやて!?)



ボールは、土屋の手元から転げ落ちていた。


土屋の前には、膝元に手を伸ばす真田の姿があった。



「ビンゴです。」




「#7だーー!!」

「土屋からスティール!!」




転がったボールは、真田がキープ。

すかさずフリーの神へパスを送った。




「来るぞ!!」

「神さんの3P!!」

打つ前から、海南ベンチに歓声が起こる。




『シュポ!』


しっかりと狙いを定めた海南の長距離砲は、味方、観客の期待を一身に背負い、リングを打ち抜いた。




「きたーーー!!」

「期待通り!!」

「4点差!!」




「よし。」

牧は、小さく拳を握る。


「ナイッシュ!神!!」

「さすがだな、神さんは。」

賞賛を受ける神が一言。


「もう1本。」



『キュ!』


(一瞬で、ボールを奪いおった。間合いをつめられたの気付けへんかった・・・。)

土屋は真田の後姿を見つめた。




再び、桜井にボールが渡る。

牧、神が囲みにかかる。


(くそっ!豊玉とは比べもんにならへん。)


ピボットから、ドリブルをするも、コーナーへと追い詰められる。


(あかん!!)


ボールは、無常にも牧にスティールされた。


キャッチした神から清田へ。



だが、



『バチィーン!!』


土屋が清田のシュートをチェック。



『ピィーー!!』


同時に、土屋のファウルを告げる笛がなった。



(土屋め。わざとだな。)


土屋は、1度時間を止め、桜井に冷静さを取り戻させる時間がほしかった。



「桜井。さっきは、せっかくのパスをすまんかった。申し訳ない。」

「つっ土屋さん。いえ、そんなことあらへん。今のファウルだって、わいのために。」

「牧は、No.1PGの称号を得るに相応しい男や。
だが、わいは、お前の全てが牧に劣っているとは思ってへん。」

「・・・。」

「冷静になれ。お前なら、抜けるはずや。」

「・・・・・・。はい。」




清田のフリースロー。



1本目を外した。




「プレッシャーっすね。」

「予想以上に土屋を巧く抑えている。その疲れもあるのかもしれない。」

と愛和メンバー。




「うむ。」

高頭は扇子を仰ぎながら、考えごとをしている。

(そろそろ、清田も限界か・・・。)




清田の息は荒い。



「清田。ディフェンスを変わろう。」

「えっ!?」



清田の2本目。




「外したーー!!」

「もったいない!!」





「かまわない!ディフェンス1本とめよう!!」

土屋には真田がついた。


「真田さん!?」

「清田は、小池に。神は、青島をマーク。」


真田の突然の指示ではあったが、真田の考えは、高頭、牧と一致していた。

すぐに、ディフェンスが入れ替わる。


「俺にはこのQしかない。やらせてほしい。」

「真田さん・・・。任せましたよ!!」

「任せておけ。」




海南は一旦ひいた。


(この#7、さっきの動きからゆうと、かなりの実力者。侮れへんな。)




「マークマンが変わりましたね。」

「これで、ミスマッチが解消できた。
あとは、真田君が土屋君をどこまで抑えられるかだわ。」

「真田さん・・・。頑張ってください!!」



一進一退の攻防は続く。




第3Q

大栄 31
海南 27






続く。

#120 【秘密兵器】

2009-05-22 | #05 海南 選抜編
大栄 31
海南 22




ハーフタイム中。


「予想以上のロースコアですね。」

「あぁ。だが、大栄にすれば、予定通り。いつも通りってところだな。」

「度々、インサイドが空くんすけど、土屋さんが巧くカバーしてるんすよね。」

「もう1枚。オフェンスオプションがほしいな。海南は。」

観客席の愛和選手が話をしている。




「あわわーー!えらいこっちゃ!こんな海南見たことないで!!どうするんやろか!?」

「もうあれしかない。出し惜しみなんてしてられないわ。」




大栄ベンチ。

C赤井が声を出す。

「ええやないか。土屋!このまま、うちのペースで運ぶんや!
桜井!どうや、牧と対戦した感じは?」

タオルで顔を拭う桜井。

「しんどいです。後半、もっと動きがようなることなら、正直しんどいですわ。」

「大丈夫や。間合いをあけ、抜かへんディフェンスをしてれば、牧は抑えられる!なぁ、土屋?」

「あっあぁ。」

(そう簡単にはいかへん思うけどな。)

そういうと、土屋は海南ベンチをみた。




一方、海南ベンチ。

自分達のペースではない、厳しい試合を強いられている海南の5人の表情は、
体力的にも、精神的にも、苦しくなっていた。

「さすが、ディフェンスのチーム大栄だな。
これまで、オールコートはないものの、2-3に、3-2、マンツーと3つのディフェンスを敷いてきた。」

と高頭が、選手に声をかける。


「ちくしょう!!ねちねちディフェンスして、だらだらオフェンスして、
大栄はせこいバスケしやがって!!こんなロースコア、海南のバスケじゃねぇぜ。」

と不満を口に出す清田。

すぐに高頭が声を出した。

「ロースコア歓迎だ。どんなに少ない得点でも、相手より1点でも多く取っていたら、
それが勝利なんだ。それがスポーツなんだ。ロースコアなんて気にすることではない。
相手よりも点を多く取る。そこに集中するんだ。」

「うっ。」

当たり前のことをいわれ、言葉が出ない清田。


「つまり、後半は、もっとオフェンシブに点を獲りにいくってことですね?」

「その通りだ。」

牧にうなずく高頭。


「もう準備はできてある。」


そういうと、おもむろにジャージを脱ぐ選手が。

背番号には、7の数字が書かれてある。

「大丈夫なのか?」

と心配そうに声をかける牧。

「えぇ。この日のために、2、3回戦をパスしてきたんですから。」

と笑った。

「よし!武藤に代わって、真田を入れる。4アウトで点を獲って来い!ワンショットで沈めろ!!」

「はい!!」


(4アウトを完璧に守れるゾーンはない。)

自信を持って選手を送り出す高頭であった。



-----------------------------------------------

PF…#9 武藤 正 184cm/3年

PF…#7 真田 壮太 185cm/2年

-----------------------------------------------




「海南は、#7を入れてきたな。」

「あの顔は、去年の#14か?」

「たまにしかでないが、なかなかの実力者だワン。」

「海南の秘密兵器ってところかな。」



大栄 31
海南 22




大栄のボールで、第3Qが開始される。

時間をかけて、ゆっくりとパスを回す大栄に対し、海南は一瞬の隙も見せない。

ディフェンスに集中している。

真田は、PF青島をマークした。

その青島に、桜井からのパス。


『ダム!』


力強く押し込むも、真田はしっかりと抑え込む。


そして、


「青島!後ろや!」


『バシ!』


真田の動きに集中していた青島の手から神がボールを奪った。


「しもうた!!」


「神、ナイスカット!」


「牧さん!」

ボールは、牧へ。


「戻るんや!!」



海南の速攻、牧と清田が一気に駆け上がる。




「速い!さすが、海南!!」




牧に食らいつく桜井。


(なっ!)


ボールは、清田の前、絶妙なコースへ放たれる。


『パス!』


清田が冷静に静かにレイアップを決めた。


「柳葉に触発されて、派手にいくと思ったが。」

「今日は、神さんゲームですから。」

そういうと、2人は涼しげな顔をしている神をみた。


『コクリ。』

神は小さくうなずいた。



海南の反撃の狼煙が静かに上がった。




大栄 31
海南 24






続く。

#119 【キープレイヤー】

2009-05-20 | #05 海南 選抜編
大栄 4
海南 4




試合開始から90秒。

両校ともに2本のシュートを成功させた。

だが、すでに、土屋、牧、青島と3つのブロックが記録されていた。




「これは、簡単に点が取れないかもな。」

諸星の読みは当たっていた。




その後、4分間、両校は無得点であった。


それは、清田が土屋を抑えていた功績も大きいが、
大栄のディフェンスの前に、海南が攻め倦んでいたところも大きかった。


だが、この男によって、均衡が崩される。



(こいつ、大人しすぎやしねぇか?)

清田は一抹の不安を覚えていた。



ここまで、大栄のキープレイヤー土屋の目立った動きといえば、神のシュートブロックのみであった。




大栄オフェンス。


アウト、インとボールを回し、アウトサイドの土屋の手にボールが渡る。


そして。


『シュ!』



「しまった!!」

「なっ!?」



『スポ!』



意表をつく土屋の3Pが決まった。




「ようやく点が入ったーー!!」

「やっぱり、決めたのは土屋だ!!」

「いいぞ!土屋ーー!!」




シュートクロック残り18秒の出来事であった。

スローオフェンスを展開する大栄にとって、非常に早い時間でのシュートであった。


清田の頭の中には、この時間でのシュートはないという固定概念があり、それが土屋にボールを持たせ、
そして、シュートチャンスを与えてしまったのである。

清田の、海南の、裏をついた土屋の頭脳プレーであった。



「清田!一瞬たりとも気を抜くな。相手は、土屋だぞ!!」

「はい!すいませんでしたっ。」


(そうだ!土屋だ。俺の相手は、ジュニアにも選ばれている土屋なんだ。
くそ!もう、フリーで打たせるもんか!!)

再び、清田に気合が入る。



このあと、海南は、牧のペネトレイトからの2点と高砂のゴール下の2点、そして神がミドルシュートを決めた。

対する大栄も、体勢を崩しながらも、土屋が2本のジャンプシュート、
そして、C赤井がリバウンドからのシュートを決め、両校が6点を追加し、第1Qが
終了した。



大栄 13
海南 10




「大栄ペースだワン。」

「完璧に大栄ペースだ。」

「まずいっすね。」

と深津と河田と沢北。


「だが、まだ第1Qだ。それに、牧は自他共に認めるスロースターター。まだまだこれからだ。」

と海南を擁護する赤木。


「だから、まずいんだワン。」

深津が突っ込む。


「そのくらい大栄だってわかっている。後半、間違いなく、大栄は牧を潰しにかかる。
第2Qのうちに、リードしておきたいところだな。」


「・・・。」

赤木は、沈黙せざるを得なかった。

「大丈夫だ、赤木。海南には、神もいるさ。あいつが、入りだしたら、誰も止められねぇ。
大栄だって、山王だってな。」

と笑顔で三井がいった。




第2Q、海南のスローインから開始される。


大栄は、マンツーマンディフェンスを敷いてきた。

牧の強気なドリブルを桜井が必死に止めにかかる。


(だんだん、エンジンがかかってきたみたいやな。)


上体をそらし、ドリブルのペースを緩める。


そして、再び一気に加速。


『キュ!』


(速い!!)


あっという間に、桜井は置き去りにされた。


同時に、3Pエリア内では、武藤が清田へ、清田が神へと目まぐるしいスクリーンプレーが行われていた。

そして、神に一瞬の間が空く。

そこに、牧からの強烈なパス。


『バシ!』


だが、神の前には土屋が立っていた。




「そこに土屋かーー!!」

「土屋の読みが冴えている!!」




神は、シュート体勢。

土屋がシュートチェックに跳んだ。


(甘いよ。土屋。)

牧が笑う。


もちろん、神のシュートはフェイクであった。

ワンドリをして、確実に土屋を交わし、3Pを放つ。

綺麗な放物線を描いたシュートは、リングに吸い込まれていった。




「キターーー!!神!!!」

「ワンドリからシュート。めちゃくちゃ速い!!」




「だろ?止まらなくなるぞ。あいつは。」

そう赤木に笑いかける三井であった。




第2Q開始早々に、神の3Pが炸裂。

同点とした。


だが、大栄は焦らない。

パスを回し、時間を使い、清田の上から、土屋がバンクシュートを成功させる。




「憎いほどに、冷静っすね。」

「あぁ。これが大栄だ。」




大栄は、再びマンツーマンで守る。


桜井は、牧との間合いをあけ、抜かれないディフェンス。

4人は、スクリーンを警戒し、声を掛け合い、視野を広く持って、ディフェンスをしている。

清田は、ディフェンスの得意なSG小池にマークされ、神は先ほど以上に土屋にタイトにあたられていた。


第1Q同様、攻め手に欠く、海南。

シュートクロックの時間だけが少なくなっていく。




「残り5秒!!」

「24秒バイオレーションになってしまうで。」

「強力なリバウンダーがいれば、強引なシュートもありだけど、海南のインサイドには、そんな選手はいない。
神君、清田君が抑えられると、海南は攻め手を欠いてしまうわ。」

「大丈夫ですよ。だって、牧君ですよ!きっと、こういうときは牧君がなんとかしてくれますって。」

そういったものの、記者席の中村も心配そうにコートに目を向けていた。




3回戦の秋月戦、苦しい状況を打破したのは、清田と神であった。

だが、今のところ、大栄のディフェンスに抑えられ、なかなかいいプレーができない。


そんなとき、頼れるのは、やはりこの男しかいないのである。


土屋が大栄のキープレイヤーであるように、海南のキープレイヤーは牧なのである。




『ダム!』


キラークロスオーバーを繰り出す牧。

腰を落とし、必死についていく桜井。


さらに、キラークロスオーバーを繰り出した。

連続したクロスオーバーに桜井も体勢を崩す。



だが、シュートクロック残り2秒。




「シュート!!」

「打てーーー!!」




牧が3Pライン手前から、ジャンプシュート体勢に入ろうとした瞬間、牧の前には土屋が立ちはだかった。



『ビィーー!』



無常にも24秒バイオレーションのブザーがなった。

牧の指から、シュートが放たれることはなかった。




「ぐわーー!!」

「土屋の読み、すげーー!!」

「ヘルプが速い!!」




「・・・。」

無言で土屋を見つめる牧。


(ボールへの嗅覚は、No.1かもしれない。)




『ザシュ!』


小池の3Pが決まった。

小池のフリーを演出したのは、土屋のスクリーンプレーであった。

徐々に、ディフェンス、オフェンス問わずその実力を発揮しはじめる土屋。

第2Qの中心にいたのは、紛れもなく土屋であった。



第2Q終了。

大栄 31
海南 22






続く。